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6章 広がる世界と新たな疑問2 世界の果て
426 禍根 (改)
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「とりあえず俺の話は以上だよ。みんなが納得してくれたかは分からないけど」
別荘でガルクーザ出現の考察を行なったはいいけれど、なんか余計なフラグを立ててしまった気がしないでもない。
既に過去に滅ぼされた存在だから安心していたけど、良く考えたら魔物って普通に再登場しても不思議じゃなかったぜっ。
「ガルクーザの出現が人為的なものだったっていう証拠はなにも無いし、獣人族の人口が少なかった理由も判明しなかったからね。今はこれ以上の深堀は無理だと思う。ということで、俺の話はコレでお終いだ」
「はぁぁぁ~……。聞いておいて良かったけど、正直聞きたくなかったの~……」
ガルクーザ人為召喚説は、ひとまずこれにて終了宣言だ。
するとみんなは思い切りゲンナリした顔で、長い長いため息を吐いた。
「ガルクーザの出現が人の手で行われたものかどうかは分からないにしても、呼び水の鏡を使えば普通にガルクーザがまた出てくる可能性があるんだね……。知らないわけにはいかないけど、知りたくなかったの~……」
「ニーナちゃんに同感……。黙っていられても困る案件よねぇ……。救いがあるとすれば、今の私達ならガルクーザを正面から撃破することも夢じゃないことくらいかしら?」
ティムルの言う通り、今の俺達なら相手が古の邪神ガルクーザであっても撃破を想定することは決して無謀ではないはずだ。
石化や発狂に対しても、全状態異常耐性と浄化魔法のコンボで対応できるはず。
というかまさに呪言魔法に対して同じことしたわけだしな。
「ふむ。逆に言えばダンが呼び水の鏡を所持している限り、古の邪神が現れる事はないと言っても良さそうなのじゃ。そう考えれば安心できる……かのう?」
「マグナトネリコと戦った経験がある以上、呼び水の鏡無しでも強力な魔物を生み出す事はできるはずだからね、楽観は出来ないよ」
未だに俺の腕の中に居るフラッタとリーチェが、俺の胸に抱かれたままで真剣に相談し合っている。
最高に可愛い2人が自分の状況も忘れて真面目に語っているシチュエーションって、なんかキュンキュンしてくるな?
「ただフラッタの言う通り、神器である呼び水の鏡を悪用される心配が無いのは、確かに安心材料かもしれないねー」
「図らずとも神器の確保には成功しましたが、使用者の命を代償に異界の扉を開くことが出来る貪汚の呪具なんて物もありましたからねぇ。レガリアは壊滅させましたが、彼らに作り出されたマジックアイテムのことまでは把握できていません。最悪の想定には常に備えておくべきでしょうね」
うんうん。リーチェとヴァルゴが言う通り、ノーリッテのせいで予想外のハプニングが起きそうで怖いんだよなぁ。
あのヤロー、死んでなお俺達を悩ませやがってぇ~。野郎じゃないけど。
組織レガリアについても、俺達は襲ってきたゼノンとノーリッテを返り討ちにしただけで、組織レガリアについては殆ど何も知らないようなものだ。
規模も構成員も、どんなことが行われてきたのかも殆ど知らない。だから本当に壊滅しているのかも実際には分からないんだよな。
そう言えばキュールさんって、ノーリッテの研究を手伝ってたって言ってたっけ? それなら秘密裏に開発されたマジックアイテムの事とかも知ってるかもしれないな。
今度会ったら尋ねてみるとしよう。覚えてれば。
「ニーナも満足してくれたかな? えっち禁止は無しでいい?」
「それは勿論無しでいいけど……。満足したって感じではないかなぁ?」
「……ですよね~」
結局は何も分からないままで不安だけを煽ってしまった形だしな。不完全燃焼もいいところだ。
けれど司令官殿がえっち禁止令を解除したことで、ヴァルゴが怪しい雰囲気を醸し出してしなだれかかってくる。
「ニーナからの許しも出たことですしぃ……。このまま可愛がっていただけるんですかぁ? だ、ん、な、さ、まっ?」
「可愛がって差し上げたいところだけど、出来れば今日中に終焉の箱庭に転移フラグを建てておきたいと思うんだ。リーチェって終焉の箱庭に行ったことあるんだよね? 連れてってくれない?」
「うん。ぼくのポータルならすぐに行けるけど……。徒歩で移動しなくていいのかい? パールソバータまで徒歩で行ったみたいにさ」
パールソバータやヴァルハールに行った時の道中が楽しかったのか、少し残念そうな雰囲気でリーチェが確認してくる。
俺の腕の中で可愛く首を傾げるリーチェにキスを落とし、ついでに一緒に抱きしめている可愛いフラッタにもキスをしてから質問に答える。
「もう俺達が徒歩で移動する意味ってあんまり無いと思うんだよなぁ。あれって高速移動過ぎて旅行感全然無いしさぁ。ニーナはどうかな?」
「んー。私は走るのが楽しいから徒歩でも構わないけど、ポータルでの移動が嫌なわけじゃないかなー? それに旅行するなら、面倒事が全部終わってからゆっくりした方が楽しそうなのー」
「あはーっ、それいいわねっ! 全部片付いたら大型の馬車でも作って、ダンに抱いてもらいながら世界中をゆっくり見て回りたいわぁ。馬車でのえっちも上書きしてもらわなきゃいけないし?」
む、ティムルは移動しながらしたことがあるわけね。それはいけないな。
ティムルの夫として、しっかりと上書きして過去の記憶を洗い流してやらねばなるまいよっ。
「馬車内で激しくされると馬が驚きそうじゃがなぁ。ダンの身体操作性補正なら無用の心配かのう?」
「あー、みんなに抱きつかれた状態で、眠ったニーナを起こさずに注ぎ込んだんでしたっけ? 私も体験してみたいですね、今度お願いしていいですか旦那様っ」
「さっきからグイグイ来るなヴァルゴ!? お願いされたいところだけど、まずは終焉の箱庭に行ってからねっ! えっちするなら全員としたいしさぁ」
今はこれで我慢してねと、みんなとちゅっちゅとキスをする。
おねだり上手のヴァルゴとは、気持ちねっとりと舌を絡み合わせてしまったぜ。
ヴァルゴのせいで少しだけ昂ぶってしまったので、フラッタとリーチェの服の中に手を入れて、既にぷっくりと膨らんで硬くなっている乳首をくにくにと弄って冷静さを保つ。
「終焉の箱庭って王国の東側なんだよね? 最寄りの都市で探索の許可を取ったりする必要はあるかな?」
「最寄りの都市はスペルド王国東端の街エルドパスタムっていうんだけど、終焉の箱庭の探索に許可は必要ないはずよ。フィールド型アウターの入退場を管理するのは実質不可能でしょうしね」
いつもながら、本当にティムルは何でも知っているよなー。
しかし確かにフィールド型のアウターを管理するのは無理か。どこからでも出入り出来ちゃうんだもん。
「ちなみにダンよ。エルドパスタムを治めていたのはフトーク家だったのじゃ。今はタイコール家という獣人族貴族が治めておるようじゃがの」
「へぇ? ヴァルハール以外でも竜人族が治めていた都市があったんだね。考えてみれば当たり前だったのかもしれないけど、ちょっとだけ驚いたよ」
スペルド王国では貴族=領主だもんな。街の数だけ貴族が居て、街の数以上に貴族家は増やせない。
だからフラッタの元婚約者が居たフトーク家とか、ターニアの元婚約者が居たカルフィス家だっけ? そんな感じの大きい貴族が潰れたら、領地を持てずに燻っていた貴族がすぐにその穴を埋めるわけだ。
「ん? パールソバータで思い出したけど、竜人族が幽閉されていたのは奈落だったのに、それに関わっていたのはネプトゥコのカザラフト家だったよね? ってことは、パールソバータの領主は関わってなかったのかな?」
「ああ、そう言えばダンにはその辺の事情を説明してなかったんだっけ。じゃあ簡単に説明するから……ちょっとだけ手加減してくれる?」
カザラフト家の調査を行なったリーチェが、事情を説明してくれるらしい。
彼女の説明を邪魔しないように乳首をこねこねしていた手を止めて、おっぱい全体をゆっくりマッサージするような動きに切り替えて与える刺激を弱める。
ありがとうと俺のほっぺにちゅっとキスをして説明を始めてくれるリーチェ。
……しかしおっぱいを揉み揉みしているのは変わらないのにお礼を言われるって、なんか変に興奮するな?
「ネプトゥコを治めていたカザラフト家って元々、パールソバータを治めるアスリフト家の分家なんだよ。元々は同じ一族で、仲も良かったんだ」
「パールソバータの領主のほうが本家なのね。まぁ奈落とスポットを比較すれば妥当かぁ」
「そう。それにスポットには他に3つも同規模の周辺都市があるじゃない? だからカザラフト家がこれ以上大きくなるのは事実上不可能だったんだ。そこでカザラフト家の当時の当主は更なる勢力拡大を求めて、本家であるアスリフト家に相談したんだよ」
う~ん、貴族の権力争いみたいなものなのかなぁ。創作物ではよく見た話だ。
けど正直な話、この世界での貴族の権力争いって不毛じゃないのかねぇ? 人類の数がそれほど多くないのに権力なんて競い合ってどうするんだろ?
我が家のように真面目に職業浸透を進めたほうが、何者にも屈しない絶対的な力を得ることだって出来たのに。
カザラフト家と言いカルフィス家と言い、人の物を奪うよりも魔物を倒すことに目を向ければ、誰にも嫌われなかっただろうにね?
「これ以上の拡大が見込めないネプトゥコを誰かに譲り、自身はもっと良い場所の領主になろうとしたカザラフト家だったけど、それには王国が認めるほどの実績が必要だった。この国の貴族は全て王家が選定し、各地に割り振っているわけだからね」
「王家って言うか、実質ゴブトゴさんが選定していたんだろうけどなぁ」
「あははっ。言われて見ればそうかもね?」
俺におっぱいをもみもみされながら屈託無く笑うリーチェが可愛すぎて、危うくキスで説明を遮ってしまうところだった。
代わりにフラッタのおっぱいにキスをすることで、なんとか事なきを得ることが出来た。ちゅうちゅう。
「未踏破だった奈落の最深部に到達出来れば、王家への強烈なアピールになる。だからカザラフト家は、大規模なサルベージャーを組織して奈落を探索させてくれって本家に頼んだわけだ。アスリフト家としても分家の勢力拡大は歓迎だったから、快く背中を押したらしいよ」
意外とこの世界の貴族って勢力争いに積極的なのな? 叙爵されることがなによりの名誉って価値観だし。
人が足りなくてなかなか新しい貴族が生まれない。だから限られた席を激しく奪い合ってたってことなんだろうか。
でもそれなら人口を増やして、統治する街の総数を増やしていけば良かったのになぁと思わないでもない。
もしかしてレガリア共が妨害でもしてたのか?
「そんな理由でカザラフト家は大量の物資と人員を奈落に持ち込むことに成功したけど、アスリフト家は特に疑問も抱いていなかったらしいよ。前人未到の奈落の調査が遅々として進まなくても不思議じゃなかったわけだしさ」
「実際は勢力の拡大なんて目指さずに、違法奴隷取引で甘い汁を啜っていたわけね。つうか本当にアスリフト家は無関係だったのか? トカゲの尻尾切りされただけじゃ?」
「んー……。そこを疑いだしたらキリが無いんだけどねぇ……」
カザラフト家とマルドック商会の事件に間接的に関わったティムルとフラッタは、リーチェの話に真剣な顔で耳を傾けている。
反対にほとんど関わりが無かったニーナとヴァルゴは、興味無さげにちょっと暇そうにしているね。
……って、こらこらニーナったら、欠伸しないのっ。
「ぼくの調査が根拠になるんだけど、確かにアスリフト家はカザラフト家の奈落探索には一切関わっていなかったらしいんだ。カザラフト家の成り上がりの為の実績作りなのだから本家の力添えは必要無いって理由で、カザラフト家側から協力を固辞されたみたいでさ」
「ふ~ん……。竜人族の奴隷取引にはレガリアが関わっていたわけだし、カザラフト家の当主はレガリアに属していたのかもしれないな?」
属していたかもしれないというか、間違いなくレガリアに属していたはずだ。
一般に公開されていないガレルさんのアウターすら把握していたレガリアが、カザラフト家の行ないに気付かなかったわけがないのだから。
そもそも竜人族の違法奴隷はレガリアが主導してたようなものだったはずだし、まず間違いないだろう。
「本家に隠れて分家がそんなことが出来るのかと思ったけどさ、ゴブトゴさんに隠れて好き放題やってたことを考えるとありえそうだよ。レガリアの頭だけを潰してしまったのは、ちょっとだけ禍根を残してしまったかもしれないね」
「……頭を潰された者がもがき暴れる可能性があるということかの。かと言ってレガリアの残党を探して潰し回るなど非効率もいいところなのじゃ」
非効率と言うか、実質不可能だと思うんだよね。
規模も人数も分からない、歴史の闇に紛れて活動してきた組織の構成員を全部排除するなんてさぁ。もみもみ。
「いつも通り脱線してごめん。解説ありがとうリーチェ」
「ううん。どういたしまし、てぇっ……!」
解説が終わったので乳首への刺激を再開する。
勿論フラッタの敏感乳首もくいくいと引っ張ってあげる。楽しいっ。
「レガリアの残党に関しては今は置いておこう。他にやるべきことも多いからね。ニーナもポータル移動に不満はないようだから、今日中にエルドパスタムに行って終焉の箱庭を見てこよっか」
「ライオネルさんに頼まれた土の採取のためにも、なるべく早めに最深部に到達しなきゃなの。最深部にさえ到達すれば、私達みんなで簡単に運搬できるはずだからねー」
「あはーっ。花壇と畑を作る為に青い顔をして土を運んでいたダンが懐かしいわねー。今では全員が転移魔法と重量軽減スキルを持ってるんだもの。びっくりしちゃうわぁ」
「そうでしたっ。マグエルの自宅作りには関われなかったのですから、今後旦那様の成す事には全て参加させてもらいたいんですよっ。私だけ仲間外れは嫌です~」
ヴァルゴを迎えたのは年が明けてからだもんねぇ。
その頃には既に俺達の生活基盤は整っていたわけだから仕方ないとは言え、確かにヴァルゴだけ体験していないことは多いのかもしれない。
「というかヴァルゴ。今日は随分積極的に甘えてくるじゃない? いいよいいよーっ」
「あ、そうですかね……? もしかしたらムーリに当てられてしまったのかもぉ……」
頬に手を当てて赤面するヴァルゴを抱きしめて、愛しい気持ちに逆らわずにちゅっちゅと何度もキスをする。
「みんなが可愛すぎてこのままじゃ寝室に篭っちゃいそうだから、早いところエルドパスタムに行こうか。終焉の箱庭で夕日を見るのも楽しみだしさ」
「覚えててくれたのっ!? みんなと一緒にあれを見るの、ぼくもすっごい楽しみなんだっ!」
「お前が話してくれたことを忘れる訳ないだろ? それじゃリーチェ、早速案内してくれるかな?」
「うんっ! 任せてよっ!」
待ちきれないとばかりに俺の手を引っ張るリーチェ。
そんな彼女の姿をみんなが微笑ましく見守って……、ないな?
ティムルとニーナがリーチェに抱きついて、同時によしよしなでなでを始めたぞ?
フラッタとヴァルゴを抱き締めた俺は、ニーナとティムルに抱きしめられたリーチェが発動したポータルで、スペルド王国東端の都市エルドパスタムに向かったのだった。
別荘でガルクーザ出現の考察を行なったはいいけれど、なんか余計なフラグを立ててしまった気がしないでもない。
既に過去に滅ぼされた存在だから安心していたけど、良く考えたら魔物って普通に再登場しても不思議じゃなかったぜっ。
「ガルクーザの出現が人為的なものだったっていう証拠はなにも無いし、獣人族の人口が少なかった理由も判明しなかったからね。今はこれ以上の深堀は無理だと思う。ということで、俺の話はコレでお終いだ」
「はぁぁぁ~……。聞いておいて良かったけど、正直聞きたくなかったの~……」
ガルクーザ人為召喚説は、ひとまずこれにて終了宣言だ。
するとみんなは思い切りゲンナリした顔で、長い長いため息を吐いた。
「ガルクーザの出現が人の手で行われたものかどうかは分からないにしても、呼び水の鏡を使えば普通にガルクーザがまた出てくる可能性があるんだね……。知らないわけにはいかないけど、知りたくなかったの~……」
「ニーナちゃんに同感……。黙っていられても困る案件よねぇ……。救いがあるとすれば、今の私達ならガルクーザを正面から撃破することも夢じゃないことくらいかしら?」
ティムルの言う通り、今の俺達なら相手が古の邪神ガルクーザであっても撃破を想定することは決して無謀ではないはずだ。
石化や発狂に対しても、全状態異常耐性と浄化魔法のコンボで対応できるはず。
というかまさに呪言魔法に対して同じことしたわけだしな。
「ふむ。逆に言えばダンが呼び水の鏡を所持している限り、古の邪神が現れる事はないと言っても良さそうなのじゃ。そう考えれば安心できる……かのう?」
「マグナトネリコと戦った経験がある以上、呼び水の鏡無しでも強力な魔物を生み出す事はできるはずだからね、楽観は出来ないよ」
未だに俺の腕の中に居るフラッタとリーチェが、俺の胸に抱かれたままで真剣に相談し合っている。
最高に可愛い2人が自分の状況も忘れて真面目に語っているシチュエーションって、なんかキュンキュンしてくるな?
「ただフラッタの言う通り、神器である呼び水の鏡を悪用される心配が無いのは、確かに安心材料かもしれないねー」
「図らずとも神器の確保には成功しましたが、使用者の命を代償に異界の扉を開くことが出来る貪汚の呪具なんて物もありましたからねぇ。レガリアは壊滅させましたが、彼らに作り出されたマジックアイテムのことまでは把握できていません。最悪の想定には常に備えておくべきでしょうね」
うんうん。リーチェとヴァルゴが言う通り、ノーリッテのせいで予想外のハプニングが起きそうで怖いんだよなぁ。
あのヤロー、死んでなお俺達を悩ませやがってぇ~。野郎じゃないけど。
組織レガリアについても、俺達は襲ってきたゼノンとノーリッテを返り討ちにしただけで、組織レガリアについては殆ど何も知らないようなものだ。
規模も構成員も、どんなことが行われてきたのかも殆ど知らない。だから本当に壊滅しているのかも実際には分からないんだよな。
そう言えばキュールさんって、ノーリッテの研究を手伝ってたって言ってたっけ? それなら秘密裏に開発されたマジックアイテムの事とかも知ってるかもしれないな。
今度会ったら尋ねてみるとしよう。覚えてれば。
「ニーナも満足してくれたかな? えっち禁止は無しでいい?」
「それは勿論無しでいいけど……。満足したって感じではないかなぁ?」
「……ですよね~」
結局は何も分からないままで不安だけを煽ってしまった形だしな。不完全燃焼もいいところだ。
けれど司令官殿がえっち禁止令を解除したことで、ヴァルゴが怪しい雰囲気を醸し出してしなだれかかってくる。
「ニーナからの許しも出たことですしぃ……。このまま可愛がっていただけるんですかぁ? だ、ん、な、さ、まっ?」
「可愛がって差し上げたいところだけど、出来れば今日中に終焉の箱庭に転移フラグを建てておきたいと思うんだ。リーチェって終焉の箱庭に行ったことあるんだよね? 連れてってくれない?」
「うん。ぼくのポータルならすぐに行けるけど……。徒歩で移動しなくていいのかい? パールソバータまで徒歩で行ったみたいにさ」
パールソバータやヴァルハールに行った時の道中が楽しかったのか、少し残念そうな雰囲気でリーチェが確認してくる。
俺の腕の中で可愛く首を傾げるリーチェにキスを落とし、ついでに一緒に抱きしめている可愛いフラッタにもキスをしてから質問に答える。
「もう俺達が徒歩で移動する意味ってあんまり無いと思うんだよなぁ。あれって高速移動過ぎて旅行感全然無いしさぁ。ニーナはどうかな?」
「んー。私は走るのが楽しいから徒歩でも構わないけど、ポータルでの移動が嫌なわけじゃないかなー? それに旅行するなら、面倒事が全部終わってからゆっくりした方が楽しそうなのー」
「あはーっ、それいいわねっ! 全部片付いたら大型の馬車でも作って、ダンに抱いてもらいながら世界中をゆっくり見て回りたいわぁ。馬車でのえっちも上書きしてもらわなきゃいけないし?」
む、ティムルは移動しながらしたことがあるわけね。それはいけないな。
ティムルの夫として、しっかりと上書きして過去の記憶を洗い流してやらねばなるまいよっ。
「馬車内で激しくされると馬が驚きそうじゃがなぁ。ダンの身体操作性補正なら無用の心配かのう?」
「あー、みんなに抱きつかれた状態で、眠ったニーナを起こさずに注ぎ込んだんでしたっけ? 私も体験してみたいですね、今度お願いしていいですか旦那様っ」
「さっきからグイグイ来るなヴァルゴ!? お願いされたいところだけど、まずは終焉の箱庭に行ってからねっ! えっちするなら全員としたいしさぁ」
今はこれで我慢してねと、みんなとちゅっちゅとキスをする。
おねだり上手のヴァルゴとは、気持ちねっとりと舌を絡み合わせてしまったぜ。
ヴァルゴのせいで少しだけ昂ぶってしまったので、フラッタとリーチェの服の中に手を入れて、既にぷっくりと膨らんで硬くなっている乳首をくにくにと弄って冷静さを保つ。
「終焉の箱庭って王国の東側なんだよね? 最寄りの都市で探索の許可を取ったりする必要はあるかな?」
「最寄りの都市はスペルド王国東端の街エルドパスタムっていうんだけど、終焉の箱庭の探索に許可は必要ないはずよ。フィールド型アウターの入退場を管理するのは実質不可能でしょうしね」
いつもながら、本当にティムルは何でも知っているよなー。
しかし確かにフィールド型のアウターを管理するのは無理か。どこからでも出入り出来ちゃうんだもん。
「ちなみにダンよ。エルドパスタムを治めていたのはフトーク家だったのじゃ。今はタイコール家という獣人族貴族が治めておるようじゃがの」
「へぇ? ヴァルハール以外でも竜人族が治めていた都市があったんだね。考えてみれば当たり前だったのかもしれないけど、ちょっとだけ驚いたよ」
スペルド王国では貴族=領主だもんな。街の数だけ貴族が居て、街の数以上に貴族家は増やせない。
だからフラッタの元婚約者が居たフトーク家とか、ターニアの元婚約者が居たカルフィス家だっけ? そんな感じの大きい貴族が潰れたら、領地を持てずに燻っていた貴族がすぐにその穴を埋めるわけだ。
「ん? パールソバータで思い出したけど、竜人族が幽閉されていたのは奈落だったのに、それに関わっていたのはネプトゥコのカザラフト家だったよね? ってことは、パールソバータの領主は関わってなかったのかな?」
「ああ、そう言えばダンにはその辺の事情を説明してなかったんだっけ。じゃあ簡単に説明するから……ちょっとだけ手加減してくれる?」
カザラフト家の調査を行なったリーチェが、事情を説明してくれるらしい。
彼女の説明を邪魔しないように乳首をこねこねしていた手を止めて、おっぱい全体をゆっくりマッサージするような動きに切り替えて与える刺激を弱める。
ありがとうと俺のほっぺにちゅっとキスをして説明を始めてくれるリーチェ。
……しかしおっぱいを揉み揉みしているのは変わらないのにお礼を言われるって、なんか変に興奮するな?
「ネプトゥコを治めていたカザラフト家って元々、パールソバータを治めるアスリフト家の分家なんだよ。元々は同じ一族で、仲も良かったんだ」
「パールソバータの領主のほうが本家なのね。まぁ奈落とスポットを比較すれば妥当かぁ」
「そう。それにスポットには他に3つも同規模の周辺都市があるじゃない? だからカザラフト家がこれ以上大きくなるのは事実上不可能だったんだ。そこでカザラフト家の当時の当主は更なる勢力拡大を求めて、本家であるアスリフト家に相談したんだよ」
う~ん、貴族の権力争いみたいなものなのかなぁ。創作物ではよく見た話だ。
けど正直な話、この世界での貴族の権力争いって不毛じゃないのかねぇ? 人類の数がそれほど多くないのに権力なんて競い合ってどうするんだろ?
我が家のように真面目に職業浸透を進めたほうが、何者にも屈しない絶対的な力を得ることだって出来たのに。
カザラフト家と言いカルフィス家と言い、人の物を奪うよりも魔物を倒すことに目を向ければ、誰にも嫌われなかっただろうにね?
「これ以上の拡大が見込めないネプトゥコを誰かに譲り、自身はもっと良い場所の領主になろうとしたカザラフト家だったけど、それには王国が認めるほどの実績が必要だった。この国の貴族は全て王家が選定し、各地に割り振っているわけだからね」
「王家って言うか、実質ゴブトゴさんが選定していたんだろうけどなぁ」
「あははっ。言われて見ればそうかもね?」
俺におっぱいをもみもみされながら屈託無く笑うリーチェが可愛すぎて、危うくキスで説明を遮ってしまうところだった。
代わりにフラッタのおっぱいにキスをすることで、なんとか事なきを得ることが出来た。ちゅうちゅう。
「未踏破だった奈落の最深部に到達出来れば、王家への強烈なアピールになる。だからカザラフト家は、大規模なサルベージャーを組織して奈落を探索させてくれって本家に頼んだわけだ。アスリフト家としても分家の勢力拡大は歓迎だったから、快く背中を押したらしいよ」
意外とこの世界の貴族って勢力争いに積極的なのな? 叙爵されることがなによりの名誉って価値観だし。
人が足りなくてなかなか新しい貴族が生まれない。だから限られた席を激しく奪い合ってたってことなんだろうか。
でもそれなら人口を増やして、統治する街の総数を増やしていけば良かったのになぁと思わないでもない。
もしかしてレガリア共が妨害でもしてたのか?
「そんな理由でカザラフト家は大量の物資と人員を奈落に持ち込むことに成功したけど、アスリフト家は特に疑問も抱いていなかったらしいよ。前人未到の奈落の調査が遅々として進まなくても不思議じゃなかったわけだしさ」
「実際は勢力の拡大なんて目指さずに、違法奴隷取引で甘い汁を啜っていたわけね。つうか本当にアスリフト家は無関係だったのか? トカゲの尻尾切りされただけじゃ?」
「んー……。そこを疑いだしたらキリが無いんだけどねぇ……」
カザラフト家とマルドック商会の事件に間接的に関わったティムルとフラッタは、リーチェの話に真剣な顔で耳を傾けている。
反対にほとんど関わりが無かったニーナとヴァルゴは、興味無さげにちょっと暇そうにしているね。
……って、こらこらニーナったら、欠伸しないのっ。
「ぼくの調査が根拠になるんだけど、確かにアスリフト家はカザラフト家の奈落探索には一切関わっていなかったらしいんだ。カザラフト家の成り上がりの為の実績作りなのだから本家の力添えは必要無いって理由で、カザラフト家側から協力を固辞されたみたいでさ」
「ふ~ん……。竜人族の奴隷取引にはレガリアが関わっていたわけだし、カザラフト家の当主はレガリアに属していたのかもしれないな?」
属していたかもしれないというか、間違いなくレガリアに属していたはずだ。
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そもそも竜人族の違法奴隷はレガリアが主導してたようなものだったはずだし、まず間違いないだろう。
「本家に隠れて分家がそんなことが出来るのかと思ったけどさ、ゴブトゴさんに隠れて好き放題やってたことを考えるとありえそうだよ。レガリアの頭だけを潰してしまったのは、ちょっとだけ禍根を残してしまったかもしれないね」
「……頭を潰された者がもがき暴れる可能性があるということかの。かと言ってレガリアの残党を探して潰し回るなど非効率もいいところなのじゃ」
非効率と言うか、実質不可能だと思うんだよね。
規模も人数も分からない、歴史の闇に紛れて活動してきた組織の構成員を全部排除するなんてさぁ。もみもみ。
「いつも通り脱線してごめん。解説ありがとうリーチェ」
「ううん。どういたしまし、てぇっ……!」
解説が終わったので乳首への刺激を再開する。
勿論フラッタの敏感乳首もくいくいと引っ張ってあげる。楽しいっ。
「レガリアの残党に関しては今は置いておこう。他にやるべきことも多いからね。ニーナもポータル移動に不満はないようだから、今日中にエルドパスタムに行って終焉の箱庭を見てこよっか」
「ライオネルさんに頼まれた土の採取のためにも、なるべく早めに最深部に到達しなきゃなの。最深部にさえ到達すれば、私達みんなで簡単に運搬できるはずだからねー」
「あはーっ。花壇と畑を作る為に青い顔をして土を運んでいたダンが懐かしいわねー。今では全員が転移魔法と重量軽減スキルを持ってるんだもの。びっくりしちゃうわぁ」
「そうでしたっ。マグエルの自宅作りには関われなかったのですから、今後旦那様の成す事には全て参加させてもらいたいんですよっ。私だけ仲間外れは嫌です~」
ヴァルゴを迎えたのは年が明けてからだもんねぇ。
その頃には既に俺達の生活基盤は整っていたわけだから仕方ないとは言え、確かにヴァルゴだけ体験していないことは多いのかもしれない。
「というかヴァルゴ。今日は随分積極的に甘えてくるじゃない? いいよいいよーっ」
「あ、そうですかね……? もしかしたらムーリに当てられてしまったのかもぉ……」
頬に手を当てて赤面するヴァルゴを抱きしめて、愛しい気持ちに逆らわずにちゅっちゅと何度もキスをする。
「みんなが可愛すぎてこのままじゃ寝室に篭っちゃいそうだから、早いところエルドパスタムに行こうか。終焉の箱庭で夕日を見るのも楽しみだしさ」
「覚えててくれたのっ!? みんなと一緒にあれを見るの、ぼくもすっごい楽しみなんだっ!」
「お前が話してくれたことを忘れる訳ないだろ? それじゃリーチェ、早速案内してくれるかな?」
「うんっ! 任せてよっ!」
待ちきれないとばかりに俺の手を引っ張るリーチェ。
そんな彼女の姿をみんなが微笑ましく見守って……、ないな?
ティムルとニーナがリーチェに抱きついて、同時によしよしなでなでを始めたぞ?
フラッタとヴァルゴを抱き締めた俺は、ニーナとティムルに抱きしめられたリーチェが発動したポータルで、スペルド王国東端の都市エルドパスタムに向かったのだった。
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