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6章 広がる世界と新たな疑問2 世界の果て
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「でっか!? お風呂でっかーっ!?」
「ふっふーんっ! ここが我が家のお風呂なのーっ」
ニーナが平らなおっぱいを目いっぱい張って、驚く俺にドヤ顔を見せつけてくる。
彼女が作ってくれた別荘の浴室は、マグエルの自宅よりも更に巨大なものだった。
横幅が8メートルくらい? そして奥行きが5メートルくらい無いかこれ。
もう浴槽って言うより、小さめのプールでは?
え、これニーナが1人で作ったってマジ? 普通に凄くない?
元々の建物を改装したマグエルの自宅と違って1から手作りしたこちらの別荘は、ニーナの思い通りの間取りに作れたってことなんだろうなぁ。
「でも、流石に水を張る余裕は無かったのー。だからみんな、ちょっとだけ協力して欲しいのー」
ニーナの号令で、巨大浴槽に水を張る為に家族みんなで動き出す。
ただ浴槽が広い分、水を溜めるのがかなり大変だった。
我が家の家族はみんな行商人を浸透させているので重量はさほど苦にならなかったけど、1度に運べる水量なんてそんなに多くないからね。どうしても往復回数は増えてしまった。
各部屋に扉が付いてなくて良かった、とか思ってしまったよ。
2つの井戸から手分けして大量の水を運び込む。
しかしラトリアだけは唯一行商人を浸透させていなかったので、俺のやる気向上の為に、俺に抱きついてもらってずっとキスをしてもらった。
なんとか浴槽がいっぱいになるまで水を運び込んで、フレイムランスで加熱する。
その間もずーっと俺はラトリアとキスを続けているわけだがねっ。
「失敗したなぁ。水の運搬まで考えてなかったの。お風呂が広すぎてかなり時間かかっちゃうねー」
お湯加減を調節しながら、ニーナは少し後悔を零す。
誰も疲労している様子はないけど、お風呂に入る為にかける時間としてはちょっと長すぎるかなぁ? 何か対策を考えないと。
「レインメイカーで水を生み出すのは……流石に贅沢すぎるわよねぇ。アイテム生成で水玉を一気に作れたら解決するんだけど、1つずつしか作れないかぁ」
「アイスコフィンも水になってはくれないようじゃしのぅ。みんなで分担すれば手間でも無いと思うが、入りたいと思った時に直ぐに入れないのは少し面倒なのじゃ」
ティムルがレインメイカーとアイテム生成を、フラッタがアイスコフィンの可能性を否定する。
こうなってくるとポンプとか逆支弁? の知識が欲しくなってくるよぉ。
俺でも知ってるサイフォンの原理じゃあ、井戸の水を浴槽に移動するのは無理だしぃ。
「まぁまぁ、それはおいおい考えればいいでしょ? みんなも早く入りなって、いいお湯だよー?」
みんながウンウンと唸っているのを尻目に、風呂好きのリーチェが服を脱いで体を流して1番風呂に飛び込んだ模様。
ま、確かに今悩む必要は無いか。次いつ別荘で過ごすかも分からないしな。
ラトリアとキスしたままでみんなの服を脱がしていき、ラトリアとフラッタのおっぱいを両手でむぎゅむぎゅ揉みながら、1番風呂を楽しんでいるリーチェと1つになる。
お湯よりも熱くて気持ちいいよぉ。
広いお風呂でお湯とみんなを思い切り楽しんで、お風呂から広いベッドに移動してまた思い切り楽しんで、最後に隣のベッドに移動してみんなを抱きしめて眠りについた。
初めて帝国の人間と会うのだから、しっかりと休んで万全の状態で臨まないとね。
朝食で腹を満たして、みんなのお腹は別のものでもいっぱいにして準備は万端だ。
ムーリとエマと手を繋いで別荘の外に出た。
「えっ!? ダ、ダンさん待って……! こ、ここでするのはっ……はぁんっ!」
「い、いくら塀で囲われてるからと言って、外でなんて……! あんっ! やぁん!」
今回城に行くのは仕合わせの暴君だけでいいはずなので、登城しない4人を青空と太陽の下でお腹いっぱいに満たしてあげて送り出す。
夜に続きをしようね。
「ん?」
4人を送り出して、さて自分達も城に向かうかとポータルを詠唱しかけたとき、別荘の広大な敷地が目に入る。
これだけ広い敷地だったら、やり方次第で擬似的な上水道とか作れそうな気がするな?
「ん~……。そんなに簡単な話ではない、かぁ? でも……」
確かプライミングポストって水脈を掘り当てているんじゃなくて、地中の魔力を水に変換して井戸にしているってマジックアイテムだった気がするから……いや、あれも予想でしかないんだっけ?
でもまぁ試してみる価値はありそうかな。
「旦那様? 城に向かうのではないのですか?」
「っとと、ごめんごめん。ちょっとお風呂の準備について考えちゃってた。今考えることじゃなかったね」
きょとん顔のヴァルゴをよしよしなでなでして、今度こそスペルディアに転移した。
「あっ、お待ちしておりました。ようこそ王城へ。只今ご案内いたしますね」
城の前に転移すると、俺達に気付いた門番さんが直ぐに対応してくれた。
貴族を殴る機会を設けた縁で、城の兵士さんたちとは結構仲良くやらせてもらっているのだ。
こんなに真面目で誠実な仕事をしている兵士さんたちにあそこまで嫌われてるなんて、本当にスペルド王国の貴族って大半が腐りきってるよなぁ。
ソクトルーナ家とグラフィム家があんなにも真っ当な貴族なのは種族の違いのせいなのか、王都の貴族達を反面教師としたからなのか。
兵士さんに案内されて城の中を歩いていると、別の兵士さんがゴブトゴさんに連絡がついたことを伝えに来てくれた。
どうやら案内される部屋には、既にキュールという女性も待機しているらしい。わざわざ報告どもっす。
そうして案内されたのはすっかり見慣れた会議室。マーガレット殿下やバルバロイ殿下と会った部屋だった。
この部屋には良い思い出が無いんだよなぁなんて思っていると、案内の兵士さんが扉をノックし室内に声をかける。
「失礼致します。仕合わせの暴君の皆様をご案内して参りました」
「ご苦労。入ってもらってくれ」
「はっ!」
案内の兵士さんに続いて入室する。
部屋の中にはゴブトゴさんと、若くて綺麗な女性が1人座っていた。
座っているので身長は分かりにくいけど、恐らくそんなに背は高くなさそうだ。
ヴァルゴと同じ紫色の肌に灰色の瞳をしているので、この女性が魔人族の歴史学者であるキュールさんに違いないだろう。
髪は短めの黒髪で、だけど癖っ毛で所々跳ねているようだ。
あまり身嗜みに気を使わない人なのかな? 学者のイメージそのままだ。
着席を促されたので、ゴブトゴさんとキュールさんだと思われる女性と向き合う形で腰を下ろした。
俺達が席に着いたのを確認するとゴブトゴさんが口を開く。
「本日はご足労感謝する。なかなか連絡が取れなくて少し困っていたところだった」
「申し訳無いね。ちょっと留守にしてたもんだからさ」
キュールさんがどんな人物なのかは分からないけれど、他国の人間を城に滞在させるのは気を使うだろうからなぁ。
ゴブトゴさんとしては一刻も早く片付けてしまいたい案件だったに違いない。
そんな時に、家族みんなと別荘生活を満喫しててごめんねっ! とは流石に口には出しません。
「ダン殿には面倒な挨拶は不要だと思うので、早速紹介させてもらうぞ。こちらの女性がダン殿に手紙を送ってきたキュール殿だ。タラム族……、魔人族の女性で、ヴェルモート帝国に属しておられる歴史学者だ」
ゴブトゴさんの紹介が途切れるまでしっかりと待ってから、キュールさんは軽く会釈してきた。
「初めまして。只今ご紹介に預かったキュールです。お会いできて光栄ですよ、仕合わせの暴君の皆さん」
キュールさんの口調はおっとりとしたもので、動作を見る限りはとても戦えるようには思えない。
あまり強引な手段を選ぶ相手のようには見えないな。
ただし、組織レガリアが変なマジックアイテムを沢山開発していたから、単純な戦闘能力だけで油断するわけにはいかない。
相手から決して目を離さずに挨拶を返す。
「初めましてキュールさん。仕合わせの暴君のダンです、よろしく」
俺達の自己紹介は必要なさそうだったので、俺が代表して挨拶するに留める。
実際に俺が挨拶を返しても、他のみんなが挨拶を返さなくても、キュールさんは特に反応を見せなかった。
さて、相手の出方が分からないけど、少なくともおれは腹芸なんて出来やしないからな。
前置きも回り道も必要ない。用件をとっとと聞いてしまおうか。
「本日は神器について話をしたいということだったよね。それでこうして実際に会ってみて、いったいどんな話がしたいのかな?」
「随分と気が早いですね? 早速本題ですか。まぁいいでしょう」
いきなり本題に入るとは思っていなかったのか、少しだけ意外そうに目を見開くキュールさん。
ふんっ。早い早いって評価は聞き慣れてるもんでねっ。今更気にしてられませーん。
「ですが、神器の話はあまり多くの方に聞かれないほうがいいのではないですか? 奥様たちや宰相殿のいるこの場でお話しても、本当に大丈夫でしょうか?」
「うちの家族は全員が神器を知っているから問題ないよ。ゴブトゴさんも立場上立ち会わないわけにはいかないでしょ?」
俺の問いかけにゴブトゴさんは頷いて見せた。
ゴブトゴさんはスペルド王国の宰相殿だからね。隣国の人間がどんな話をしてくるのか自分で確かめないわけにはいかないだろう。
「そう、ですか。問題なければお話を始めさせていただきますね」
キュールさんは1度姿勢を正して、俺の方を真っ直ぐに見詰めてくる。
そんな彼女の様子からは緊張がヒシヒシと伝わってくる。
言い辛そうにしているけれど、いったいどんな話が跳び出てくるかねぇ?
「……では不躾なお願いですが、まずは神器を見せていただけないでしょうかっ!?」
「へ?」
「本当に貴方はレガリアを……それも2つも所有しているのでしょうか……!? 疑っているわけではありませんが、それでも出来れば確認させていただきたいなと……!」
「……ふむ」
申し訳無さそうにしながらも、神器の確認を強く要望してくるキュールさん。
当然の要求なんだろうけれどちょっと肩透かしだったな? 神器を寄越せー、くらい言ってくるもんだと思ってたけど。
……この程度の要求なら、突っ撥ねる意味も悩む必要も無いよな?
「見せるのは構わないよ。でも呼び水の鏡はここじゃ取り出せない。アウターの外であれを取り出すのは危険すぎるから」
「えっと、それはどういうことでしょう? 呼び水の鏡は異界から魔力を呼び込む神器だと聞いております。それが何故、アウター内でなければ見せてもらえないということになるのですか?」
ふぅん、神器の知識はあるみたいだけど危険性までは知らないって感じなのかな?
ま、普通の空間をアウター化させる可能性なんて、俺だってこの目で見なきゃ信じられなかったかもしれない。キュールさんのこの反応は普通か。
……神器の情報って、あまり気軽に拡散しないほうがいいのかなぁ?
でも正直な話。そんなことまで考慮してられないよね。俺の手には余る代物だしぃ。
それに、キュールさんは既に神器の存在を認識している相手だ。隠す意味はあまり無いだろう。
「呼び水の鏡が呼び込んだ魔力は、新たなアウターを生み出す力になるんだ。だからアウターの外で呼び水の鏡を取り出すわけにはいかない」
「あ、新しいアウターを生み出すだって……!? そんなことが本当に……!? いや、だからこそ神器と呼ぶに相応しいのか……!?」
大きく目を見開いて驚愕の表情を見せたかと思うと、直ぐに拳を顎に当てて考え込んでしまったキュールさん。
あ~、なんか学者っぽい反応って感じするわぁ。
「……横から申し訳ないがダン殿。出来れば私にも神器について教えてもらえないだろうか?」
キュールさんがブツブツと呟き始めたのを見て、ゴブトゴさんが神器について訪ねてきた。
「ゴブトゴさんも神器に興味あるんだ?」
「興味というか、このまま立ち会っても何も分からないままになりそうなのでな。基礎知識が足りておらん感じがモヤモヤするのだ」
立ち合っているのに、知識が足りないために蚊帳の外にいるように感じちゃうわけか。
う~ん。ゴブトゴさんのことは信用してるし、もう話しちゃってもいいのかな? スペルド王国の実質的な統治者だと思うし。
「おっけーゴブトゴさん。だけど俺だって自分の知っている事しか言えないし、俺の知っている事が間違っていないとは断定できない。それだけは頭に入れておいてね?」
「それで充分だ。そもそも現時点で私は何も知らないのだからな。教えてもらえるだけでもありがたい」
キュールさんが自分の世界に浸っている間に、ゴブトゴさんに神器について説明していく。
俺の知識だってノーリッテから言われたことしかないんだけどね。
天地開闢より伝わる、神が作り出したと言われる3種のマジックアイテム。
その凄まじい効果と、それに伴う危険性。知っている限りの事をゴブトゴさんと共有する。
俺の話を最後まで黙って聞いてから、ゴブトゴさんはため息交じりに感想を零した。
「そんな危険な物を、彼の組織の長が所有していたのか……。ダン殿の手に渡ったのは幸いと見るべきだな」
「……宰相って立場からして、そんなマジックアイテムを俺個人で所有しているのは見過ごせないんじゃないの? 国で管理した方がいいとか思わないわけ?」
ゴブトゴさんが神器に興味を示さないのが少し意外に思えて、疑問そのままに問いかけてみる。
しかし俺の問いかけに、馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに大きく首を振るゴブトゴさん。
「城で管理する意味などないだろう。ダン殿がその気になれば、どんなに厳重な警備を敷いても護りきれんしな。むしろダン殿に持っていてもらう方が安全だと判断する」
「……こんな物騒なもん、早いところ手放したいんだけどねぇ。物が物だけにその辺に捨てるわけにもいかないから困っちゃうよぉ」
「ふっ、手放したいと思っているダン殿が所有している限り、神器が悪用されることは無さそうだな?」
おお? ゴブトゴさんが今微かに笑みを浮かべたぞ?
この人の笑顔を見るのって、何気に初めてじゃないっけ?
「呼び水の鏡はアウターの中でなら取り出せるのだな? であれば宰相である私の権限で、本日だけ特別に始まりの黒への入場を許可しようではないか」
「おっ、マジで? さっすがゴブトゴさん、話が分かるねぇ」
「私もこの目で神器レガリアを確認しておきたいしな。ただし探索の許可は私には出せんから、本当に入るだけになってしまうが」
残念ながらゴブトゴさんの権限では、最深部を目指して探索する許可は出せないのだそうだ。
今回はキュールさんとゴブトゴさんに神器を見せる為に入るわけだから、本当に入り口までの入場になりそうだな。
それでも新しいアウターを見学できるのは、ちょっとワクワクしてくるよ。
「つうことで、移動するよキュールさーん。そろそろ戻ってきてくれるかなー?」
「へっ!? あっ、ああっと済まない、聞いてなかったっ。なっ、何の話だったかな……!?」
「ささっ、立って立って。キュールさんのお望み通りに神器を見せてあげるんだからグズグズしないのっ」
「えっ? えっ?」
戸惑うキュールさんに構わず席を立つ。
未だ状況が把握出来ていないキュールさんと一緒に、俺達は会議室を後にするのだった。
「ふっふーんっ! ここが我が家のお風呂なのーっ」
ニーナが平らなおっぱいを目いっぱい張って、驚く俺にドヤ顔を見せつけてくる。
彼女が作ってくれた別荘の浴室は、マグエルの自宅よりも更に巨大なものだった。
横幅が8メートルくらい? そして奥行きが5メートルくらい無いかこれ。
もう浴槽って言うより、小さめのプールでは?
え、これニーナが1人で作ったってマジ? 普通に凄くない?
元々の建物を改装したマグエルの自宅と違って1から手作りしたこちらの別荘は、ニーナの思い通りの間取りに作れたってことなんだろうなぁ。
「でも、流石に水を張る余裕は無かったのー。だからみんな、ちょっとだけ協力して欲しいのー」
ニーナの号令で、巨大浴槽に水を張る為に家族みんなで動き出す。
ただ浴槽が広い分、水を溜めるのがかなり大変だった。
我が家の家族はみんな行商人を浸透させているので重量はさほど苦にならなかったけど、1度に運べる水量なんてそんなに多くないからね。どうしても往復回数は増えてしまった。
各部屋に扉が付いてなくて良かった、とか思ってしまったよ。
2つの井戸から手分けして大量の水を運び込む。
しかしラトリアだけは唯一行商人を浸透させていなかったので、俺のやる気向上の為に、俺に抱きついてもらってずっとキスをしてもらった。
なんとか浴槽がいっぱいになるまで水を運び込んで、フレイムランスで加熱する。
その間もずーっと俺はラトリアとキスを続けているわけだがねっ。
「失敗したなぁ。水の運搬まで考えてなかったの。お風呂が広すぎてかなり時間かかっちゃうねー」
お湯加減を調節しながら、ニーナは少し後悔を零す。
誰も疲労している様子はないけど、お風呂に入る為にかける時間としてはちょっと長すぎるかなぁ? 何か対策を考えないと。
「レインメイカーで水を生み出すのは……流石に贅沢すぎるわよねぇ。アイテム生成で水玉を一気に作れたら解決するんだけど、1つずつしか作れないかぁ」
「アイスコフィンも水になってはくれないようじゃしのぅ。みんなで分担すれば手間でも無いと思うが、入りたいと思った時に直ぐに入れないのは少し面倒なのじゃ」
ティムルがレインメイカーとアイテム生成を、フラッタがアイスコフィンの可能性を否定する。
こうなってくるとポンプとか逆支弁? の知識が欲しくなってくるよぉ。
俺でも知ってるサイフォンの原理じゃあ、井戸の水を浴槽に移動するのは無理だしぃ。
「まぁまぁ、それはおいおい考えればいいでしょ? みんなも早く入りなって、いいお湯だよー?」
みんながウンウンと唸っているのを尻目に、風呂好きのリーチェが服を脱いで体を流して1番風呂に飛び込んだ模様。
ま、確かに今悩む必要は無いか。次いつ別荘で過ごすかも分からないしな。
ラトリアとキスしたままでみんなの服を脱がしていき、ラトリアとフラッタのおっぱいを両手でむぎゅむぎゅ揉みながら、1番風呂を楽しんでいるリーチェと1つになる。
お湯よりも熱くて気持ちいいよぉ。
広いお風呂でお湯とみんなを思い切り楽しんで、お風呂から広いベッドに移動してまた思い切り楽しんで、最後に隣のベッドに移動してみんなを抱きしめて眠りについた。
初めて帝国の人間と会うのだから、しっかりと休んで万全の状態で臨まないとね。
朝食で腹を満たして、みんなのお腹は別のものでもいっぱいにして準備は万端だ。
ムーリとエマと手を繋いで別荘の外に出た。
「えっ!? ダ、ダンさん待って……! こ、ここでするのはっ……はぁんっ!」
「い、いくら塀で囲われてるからと言って、外でなんて……! あんっ! やぁん!」
今回城に行くのは仕合わせの暴君だけでいいはずなので、登城しない4人を青空と太陽の下でお腹いっぱいに満たしてあげて送り出す。
夜に続きをしようね。
「ん?」
4人を送り出して、さて自分達も城に向かうかとポータルを詠唱しかけたとき、別荘の広大な敷地が目に入る。
これだけ広い敷地だったら、やり方次第で擬似的な上水道とか作れそうな気がするな?
「ん~……。そんなに簡単な話ではない、かぁ? でも……」
確かプライミングポストって水脈を掘り当てているんじゃなくて、地中の魔力を水に変換して井戸にしているってマジックアイテムだった気がするから……いや、あれも予想でしかないんだっけ?
でもまぁ試してみる価値はありそうかな。
「旦那様? 城に向かうのではないのですか?」
「っとと、ごめんごめん。ちょっとお風呂の準備について考えちゃってた。今考えることじゃなかったね」
きょとん顔のヴァルゴをよしよしなでなでして、今度こそスペルディアに転移した。
「あっ、お待ちしておりました。ようこそ王城へ。只今ご案内いたしますね」
城の前に転移すると、俺達に気付いた門番さんが直ぐに対応してくれた。
貴族を殴る機会を設けた縁で、城の兵士さんたちとは結構仲良くやらせてもらっているのだ。
こんなに真面目で誠実な仕事をしている兵士さんたちにあそこまで嫌われてるなんて、本当にスペルド王国の貴族って大半が腐りきってるよなぁ。
ソクトルーナ家とグラフィム家があんなにも真っ当な貴族なのは種族の違いのせいなのか、王都の貴族達を反面教師としたからなのか。
兵士さんに案内されて城の中を歩いていると、別の兵士さんがゴブトゴさんに連絡がついたことを伝えに来てくれた。
どうやら案内される部屋には、既にキュールという女性も待機しているらしい。わざわざ報告どもっす。
そうして案内されたのはすっかり見慣れた会議室。マーガレット殿下やバルバロイ殿下と会った部屋だった。
この部屋には良い思い出が無いんだよなぁなんて思っていると、案内の兵士さんが扉をノックし室内に声をかける。
「失礼致します。仕合わせの暴君の皆様をご案内して参りました」
「ご苦労。入ってもらってくれ」
「はっ!」
案内の兵士さんに続いて入室する。
部屋の中にはゴブトゴさんと、若くて綺麗な女性が1人座っていた。
座っているので身長は分かりにくいけど、恐らくそんなに背は高くなさそうだ。
ヴァルゴと同じ紫色の肌に灰色の瞳をしているので、この女性が魔人族の歴史学者であるキュールさんに違いないだろう。
髪は短めの黒髪で、だけど癖っ毛で所々跳ねているようだ。
あまり身嗜みに気を使わない人なのかな? 学者のイメージそのままだ。
着席を促されたので、ゴブトゴさんとキュールさんだと思われる女性と向き合う形で腰を下ろした。
俺達が席に着いたのを確認するとゴブトゴさんが口を開く。
「本日はご足労感謝する。なかなか連絡が取れなくて少し困っていたところだった」
「申し訳無いね。ちょっと留守にしてたもんだからさ」
キュールさんがどんな人物なのかは分からないけれど、他国の人間を城に滞在させるのは気を使うだろうからなぁ。
ゴブトゴさんとしては一刻も早く片付けてしまいたい案件だったに違いない。
そんな時に、家族みんなと別荘生活を満喫しててごめんねっ! とは流石に口には出しません。
「ダン殿には面倒な挨拶は不要だと思うので、早速紹介させてもらうぞ。こちらの女性がダン殿に手紙を送ってきたキュール殿だ。タラム族……、魔人族の女性で、ヴェルモート帝国に属しておられる歴史学者だ」
ゴブトゴさんの紹介が途切れるまでしっかりと待ってから、キュールさんは軽く会釈してきた。
「初めまして。只今ご紹介に預かったキュールです。お会いできて光栄ですよ、仕合わせの暴君の皆さん」
キュールさんの口調はおっとりとしたもので、動作を見る限りはとても戦えるようには思えない。
あまり強引な手段を選ぶ相手のようには見えないな。
ただし、組織レガリアが変なマジックアイテムを沢山開発していたから、単純な戦闘能力だけで油断するわけにはいかない。
相手から決して目を離さずに挨拶を返す。
「初めましてキュールさん。仕合わせの暴君のダンです、よろしく」
俺達の自己紹介は必要なさそうだったので、俺が代表して挨拶するに留める。
実際に俺が挨拶を返しても、他のみんなが挨拶を返さなくても、キュールさんは特に反応を見せなかった。
さて、相手の出方が分からないけど、少なくともおれは腹芸なんて出来やしないからな。
前置きも回り道も必要ない。用件をとっとと聞いてしまおうか。
「本日は神器について話をしたいということだったよね。それでこうして実際に会ってみて、いったいどんな話がしたいのかな?」
「随分と気が早いですね? 早速本題ですか。まぁいいでしょう」
いきなり本題に入るとは思っていなかったのか、少しだけ意外そうに目を見開くキュールさん。
ふんっ。早い早いって評価は聞き慣れてるもんでねっ。今更気にしてられませーん。
「ですが、神器の話はあまり多くの方に聞かれないほうがいいのではないですか? 奥様たちや宰相殿のいるこの場でお話しても、本当に大丈夫でしょうか?」
「うちの家族は全員が神器を知っているから問題ないよ。ゴブトゴさんも立場上立ち会わないわけにはいかないでしょ?」
俺の問いかけにゴブトゴさんは頷いて見せた。
ゴブトゴさんはスペルド王国の宰相殿だからね。隣国の人間がどんな話をしてくるのか自分で確かめないわけにはいかないだろう。
「そう、ですか。問題なければお話を始めさせていただきますね」
キュールさんは1度姿勢を正して、俺の方を真っ直ぐに見詰めてくる。
そんな彼女の様子からは緊張がヒシヒシと伝わってくる。
言い辛そうにしているけれど、いったいどんな話が跳び出てくるかねぇ?
「……では不躾なお願いですが、まずは神器を見せていただけないでしょうかっ!?」
「へ?」
「本当に貴方はレガリアを……それも2つも所有しているのでしょうか……!? 疑っているわけではありませんが、それでも出来れば確認させていただきたいなと……!」
「……ふむ」
申し訳無さそうにしながらも、神器の確認を強く要望してくるキュールさん。
当然の要求なんだろうけれどちょっと肩透かしだったな? 神器を寄越せー、くらい言ってくるもんだと思ってたけど。
……この程度の要求なら、突っ撥ねる意味も悩む必要も無いよな?
「見せるのは構わないよ。でも呼び水の鏡はここじゃ取り出せない。アウターの外であれを取り出すのは危険すぎるから」
「えっと、それはどういうことでしょう? 呼び水の鏡は異界から魔力を呼び込む神器だと聞いております。それが何故、アウター内でなければ見せてもらえないということになるのですか?」
ふぅん、神器の知識はあるみたいだけど危険性までは知らないって感じなのかな?
ま、普通の空間をアウター化させる可能性なんて、俺だってこの目で見なきゃ信じられなかったかもしれない。キュールさんのこの反応は普通か。
……神器の情報って、あまり気軽に拡散しないほうがいいのかなぁ?
でも正直な話。そんなことまで考慮してられないよね。俺の手には余る代物だしぃ。
それに、キュールさんは既に神器の存在を認識している相手だ。隠す意味はあまり無いだろう。
「呼び水の鏡が呼び込んだ魔力は、新たなアウターを生み出す力になるんだ。だからアウターの外で呼び水の鏡を取り出すわけにはいかない」
「あ、新しいアウターを生み出すだって……!? そんなことが本当に……!? いや、だからこそ神器と呼ぶに相応しいのか……!?」
大きく目を見開いて驚愕の表情を見せたかと思うと、直ぐに拳を顎に当てて考え込んでしまったキュールさん。
あ~、なんか学者っぽい反応って感じするわぁ。
「……横から申し訳ないがダン殿。出来れば私にも神器について教えてもらえないだろうか?」
キュールさんがブツブツと呟き始めたのを見て、ゴブトゴさんが神器について訪ねてきた。
「ゴブトゴさんも神器に興味あるんだ?」
「興味というか、このまま立ち会っても何も分からないままになりそうなのでな。基礎知識が足りておらん感じがモヤモヤするのだ」
立ち合っているのに、知識が足りないために蚊帳の外にいるように感じちゃうわけか。
う~ん。ゴブトゴさんのことは信用してるし、もう話しちゃってもいいのかな? スペルド王国の実質的な統治者だと思うし。
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「それで充分だ。そもそも現時点で私は何も知らないのだからな。教えてもらえるだけでもありがたい」
キュールさんが自分の世界に浸っている間に、ゴブトゴさんに神器について説明していく。
俺の知識だってノーリッテから言われたことしかないんだけどね。
天地開闢より伝わる、神が作り出したと言われる3種のマジックアイテム。
その凄まじい効果と、それに伴う危険性。知っている限りの事をゴブトゴさんと共有する。
俺の話を最後まで黙って聞いてから、ゴブトゴさんはため息交じりに感想を零した。
「そんな危険な物を、彼の組織の長が所有していたのか……。ダン殿の手に渡ったのは幸いと見るべきだな」
「……宰相って立場からして、そんなマジックアイテムを俺個人で所有しているのは見過ごせないんじゃないの? 国で管理した方がいいとか思わないわけ?」
ゴブトゴさんが神器に興味を示さないのが少し意外に思えて、疑問そのままに問いかけてみる。
しかし俺の問いかけに、馬鹿馬鹿しいと言わんばかりに大きく首を振るゴブトゴさん。
「城で管理する意味などないだろう。ダン殿がその気になれば、どんなに厳重な警備を敷いても護りきれんしな。むしろダン殿に持っていてもらう方が安全だと判断する」
「……こんな物騒なもん、早いところ手放したいんだけどねぇ。物が物だけにその辺に捨てるわけにもいかないから困っちゃうよぉ」
「ふっ、手放したいと思っているダン殿が所有している限り、神器が悪用されることは無さそうだな?」
おお? ゴブトゴさんが今微かに笑みを浮かべたぞ?
この人の笑顔を見るのって、何気に初めてじゃないっけ?
「呼び水の鏡はアウターの中でなら取り出せるのだな? であれば宰相である私の権限で、本日だけ特別に始まりの黒への入場を許可しようではないか」
「おっ、マジで? さっすがゴブトゴさん、話が分かるねぇ」
「私もこの目で神器レガリアを確認しておきたいしな。ただし探索の許可は私には出せんから、本当に入るだけになってしまうが」
残念ながらゴブトゴさんの権限では、最深部を目指して探索する許可は出せないのだそうだ。
今回はキュールさんとゴブトゴさんに神器を見せる為に入るわけだから、本当に入り口までの入場になりそうだな。
それでも新しいアウターを見学できるのは、ちょっとワクワクしてくるよ。
「つうことで、移動するよキュールさーん。そろそろ戻ってきてくれるかなー?」
「へっ!? あっ、ああっと済まない、聞いてなかったっ。なっ、何の話だったかな……!?」
「ささっ、立って立って。キュールさんのお望み通りに神器を見せてあげるんだからグズグズしないのっ」
「えっ? えっ?」
戸惑うキュールさんに構わず席を立つ。
未だ状況が把握出来ていないキュールさんと一緒に、俺達は会議室を後にするのだった。
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