異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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6章 広がる世界と新たな疑問1 蜜月の日々

402 ※閑話 成長 (改)

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「青き災害。秘色の脅威。白群の恐怖。碧落より招くは氷塊。汝、撃ち穿つ者よ。ヘイルストーム」


 ムーリちゃんの流暢な詠唱が終わると、雹の弾丸が魔物たちを次々に撃ち抜いていく。


 修道士、魔法使い、攻撃魔法士、探索魔法士、回復魔法士まで浸透を終えていて、現在支援魔法士のムーリちゃんの攻撃魔法の威力は凄まじいものがあるの。

 これならいい加減、最深部に突入しても問題なさそうかな?


「お疲れ様ムーリちゃん。すっかり魔物狩りにも慣れたね。もう最深部でだって問題なく戦えそうなの」

「ありがとうございます。ターニアさんが根気良く指導してくださったおかげですっ」


 声とおっぱいを弾ませながら私にお礼を告げるムーリちゃん。


 確かにこの娘の訓練に付き合っている時間は私が1番長いかもしれないけど……。私が導いてあげられたかと言われると自信が無いの。

 ダンさんとヴァルゴちゃんの方が、よっぽどムーリちゃんを正しく導いてあげている気がするなぁ。


 ムーリちゃんは魔物狩りどころか、激しい運動さえも殆ど経験したことがなかったらしいんだけど、それゆえに動きに変な癖がついていることもなかった。

 加えて本人の真面目な性格、子供達を守るために自覚した力不足、そして好色家の職業補正が上手く絡み合って、ムーリちゃんは一気に腕を上げてしまったの。


 この娘が武器を手にして、まだ半年も経っていないなんて信じられないの……。


 2人でスポットに潜り続ける事に始めは不安も覚えたものだけど……。

 中級攻撃魔法まで覚えた今のムーリちゃんは、かつてのパーティメンバーよりもよっぽど頼りになるなぁっ。


「あ、魔玉が発光してますね。今日の分はこれで達成ですっ」

「了解なのー。それじゃ帰ろっかムーリちゃん」


 両腕でおっぱいを圧縮するムーリちゃんに頷きを返す。

 自分の持っている魔玉も発光している事を確認して、アナザーポータルでスポットを脱出した。




「それじゃ本日もご指導、宜しくお願いしますっ」

「こちらこそよろしくなのっ。そのおっぱいみたいに、お手柔らかにねー?」


 回収したドロップアイテムを換金したら、マグエルの自宅でムーリちゃんと模擬戦を開始する。


 私もまだまだ未熟だけど、それ以上に未熟な今のムーリちゃんには、実践も訓練も同じくらい大切なの。

 だから魔玉が発光した日は自宅に戻って、後は暗くなるまでひたすら私と槍の稽古を繰り返すことに決めたんだ。


「やーっ!」

「その調子なのっ。攻撃する時も常に回避を忘れちゃ駄目だよっ!」


 運動こそしてこなかったムーリちゃんだけど、獣人族だから元々身体能力は低くない。何よりも、ヴァルゴちゃんっていう最高のお手本もいる。

 ふふっ。ムーリちゃんの今後が楽しみなのっ。


「せぃっ! やぁっ!」

「…………」


 ……それにしても、槍を振るうたびに弾むおっぱいがすっごく邪魔そうなの。

 大きいおっぱいに憧れることは多かったけど、ムーリちゃんを見てると少し同情しちゃうなぁ。


 でもダンさんって、ムーリちゃんとリーチェさんのおっぱい大好きだからなぁ。

 やっぱり大きいほうが羨ましいかもぉ~?


 ムーリちゃんのおっぱいに度々意識を割かれながら、休憩も挟まず槍の訓練を続けた。




「大分暗くなってきたねぇ。今日はこのくらいで上がろっか」

「ふぅ~……。ありがとう、ございましたぁ……」


 私の訓練終了宣言に、ホッとしたように深く息を吐くムーリちゃん。

 持久力補正のおかげで余力はあるみたいだけど、ずっと集中しているのは大変だもんね。


「はいどうぞっ。水分は遠慮なく補給しておくのっ」

「あ、ありがとうございますぅ~。働かせちゃって済みませんっ……!」

「同じパーティメンバー、同じダンさんの妻同士なんだから気にしないのっ。それにダンさんが帰ってきたら、今以上に汗をかく事になっちゃうんだからねーっ?」


 ムーリちゃんに飲み物とタオルを渡してあげると、彼女は美味しそうにゴクゴクと喉を鳴らしている。

 その動きに連動して2つの山がぶるぶる震えるのが、本当にド迫力なのっ……!


 っていうかこんな物ぶら下げてたら、槍の動きに支障が出ちゃいそうだなぁ。


「ムーリちゃんって、おっぱいに振り回されたりしないの?」

「あー……。そういう苦労は結構ありましたねぇ……」


 私の明け透けな問いかけに、苦笑いを浮かべるムーリちゃん。


「修道服はぴっちりしてるので、ある程度おっぱいを固定してくれるんですけど、そのせいでおっぱいが余計に強調されちゃってぇ……」


 教会で体験した苦労話を恥ずかしそうに語るムーリちゃん。

 おっぱいが無くてもとっても可愛いムーリちゃんだから、きっと沢山の好奇な目線で見られてきたんだろうなぁ。


 ……そう言えばダンさんも、ムーリちゃんとリーチェさんの2人に小さめの修道服を着せて楽しんでいたっけ?

 結局脱がすくせに、いったい何が楽しいんだろー?


「魔物狩りを始めて装備品を身に付けるようになった今は、かなり楽になったんですよ? 装備品は体に合わせてサイズが変わってくれますからね。おっぱいに振り回される心配も無くなりましたっ」

「え、ええ……? 私から見た感じじゃぶるんぶるん揺れてたけど……。ムーリちゃんの感覚じゃ、あれでも固定されてる方なんだねぇ……」


 そう言えばリーチェさんも、魔物狩りに行くときには装備の下をガチガチに固定してたっけ。

 今までは気にならなかったけど、ダンさんに敏感にされちゃったとか何とか……。


 ダンさんは、暇さえあればおっぱいにしゃぶりついてくるもんねぇ。私やニーナですら、衣擦れが気になるくらいにされちゃったよぉ。


「おっぱいはともかく、いつも私の訓練に付き合ってくれて本当に感謝してます。私じゃターニアさんの訓練相手にはならないでしょうに……」


 少しだけ申し訳無さそうにしながらも、お礼を口にするムーリちゃん。


「いやいやムーリちゃん。むしろ私がまともに訓練できる相手って、ムーリちゃんしかいないんだってば」


 確かにまだムーリちゃんと私の間には大きな技術の差があるけど、私と他のみんなとの技術差のほうがもっと大きいんだよ?

 仕合わせの暴君は言わずもがな、ラトリア様やエマさんだって達人と言って差し支えないレベルの剣士なの。


 だからむしろ私の方こそ、ムーリちゃん以外の家族と気軽に手合わせなんて出来ないんだよねぇ……。


「ムーリちゃんの稽古を見てあげることで自分の動きの粗に気付いたりするし、ちゃんと私の訓練にもなってるのっ。それに、どんどん上達していくムーリちゃんを見てるのも楽しいからっ」

「そう、なんですか? 正直ピンと来ませんけど、ターニアさんの足を引っ張っていないならいいんですが……」


 困惑した表情を浮かべながらも、ムーリちゃんはそれ以上追及してくることはなかった。

 中級攻撃魔法の使い手なんて魔物狩り全体でも一握りしかいないと思うのに、ムーリちゃんはまだ自信が持てないんだなぁ。


「心配しないでムーリちゃん。私達傾国の姫君は、ちゃーんと一緒に成長できてるの。ダンさん達の成長が早すぎるだけだから、あの人たちを基準に考えちゃ駄目なのっ」

「そう……なんですかねぇ。最近はダンさん達だけじゃなくって、ワンダ達幸福の先端を筆頭に、子供達の成長も著しいですから。なかなか自信が持てませんよぅ……」

「あ~……。それは比べる相手が悪いんだよムーリちゃん……」


 教会の子供達はダンさん達が持っている常識に基づいて活動してて、ダンさん達を目標にして活動してるんだもん。

 あの子たちの方が、今までの常識では考えられない異常な速度で成長してるんだからね?


 私達もダンさんを基準に動いてはいるんだけど……。

 私達の場合は、寝室でかなり時間を取られちゃうからさっ。


 アライアンスボードが必要になるほどの大所帯になってしまった、孤児たちのトライラムフォロワー。

 初期から活動し始めた何組かは、既にスポットの最深部に突入しているほどの魔物狩りになってしまったの。


 しかも彼らはダンさん達を見て、ダンさん達を普通の魔物狩りだと思っているから、最深部に行って稼げるようになっても、決して歩みを止める気が無いの。

 更に、冒険者に転職できた子が出身の街に戻って活動し始めたことで、人手に余裕が出来た各街からまた魔物狩り志望の子供がマグエルにやってくるんだから困っちゃうのっ。


 稼げる魔物狩りが増えてきただけに留まらず、新しい魔物狩りの誕生も止まらない。

 トライラムフォロワーもトライラム教会も、これからどんどん成長していくんだろうなぁ。


「……正直さ、もう子供達は守らなきゃいけないほど弱くないと思うの」

「ええっ。みんなとっても逞しくなってくれましたよねっ」


 子供達の成長と将来性を心から喜ぶムーリちゃん。

 だけど、これからも成長が止まらないトライラムフォロワーのことを考えた私は、ついつい余計なことを言ってしまう。


「だからさ……。ムーリちゃんが無理して今以上の力を求める必要は、無いんじゃないかな?」


 ムーリちゃんが武器を手にしたのは、子供達を守りたかったからだと聞いている。


 だけど子供達は守られる存在どころか、逆にムーリちゃんを守ってくれるくらいに頼もしく成長してくれたと思う。

 だからムーリちゃんが強さを求める必要なんて、もう無くなっちゃったんじゃないの?


 確かに戦う力があるに越した事はないけれど、武器を持たない生き方があったっていいんじゃないかなぁ。


「ムーリちゃんはどうしてそんなに強くなりたいって思うのかな? もう充分、とか思わないの?」

「私が強さを求める理由、ですかぁ……」


 私からの問いかけに、腕を組んで考え込むムーリちゃん。

 って、おっぱいが凄い事になってるよっ!?


 強さを求める明確な理由も無いのに、アウターの最深部で戦えるほどの戦闘力を身につけてしまったのなら……。

 それは少し危うい気がするの。


 力を求める意思と覚悟が無ければ、いつかきっと自分の強さに振り回されちゃうから。


「やっぱり1番の理由は、弱いままでいたくなかったってことですかねぇ」


 まるで自分の考えを今言葉に起こしているみたいに、慎重に語り出すムーリちゃん。


 強くなりたいのではなく、弱いままでいたくなかった。

 始めは強さを求めたのではなく、弱さを嫌ったと語るムーリちゃん。


「私が弱かったせいで救えなかった命が沢山ありました。私が強ければ未然に防げた悲劇が沢山ありました。そんな弱い自分が嫌で、強い自分になりたくって……。そんな想いで槍を手にしたような気がしますよ」

「……ムーリちゃんが救えなかった命は、ムーリちゃんのせいで失われたわけじゃないと思うの」


 ムーリちゃんの言葉に、面白くもない答えを返してしまう。


 ムーリちゃんの言葉の裏側に、いったいどれ程の悲劇が積み重なっているのか……。

 いったい私はどれだけ子供だったのか……。


 彼女の送ってきた日々の重さに、打ちのめされたような気になってしまう。


 今までの私は、呪いを受けて家族とも上手くいかなくて、自分こそが世界で1番不幸なんだとばかり思っていた。


 けれど、不幸はどこにだって転がっている。

 痛みや苦しみは当人にしか理解できないもので、比べられるようなものじゃないんだ。


「あははっ。やっぱりニーナさんのお母さんですね。ニーナさんがダンさんにいつも同じことを言ってますよっ」


 私の搾り出すような慰めの言葉を、軽快に笑い飛ばすムーリちゃん。

 ……槍ではまだ私のほうが強いかもしれないけれど、既にムーリちゃんの方が私なんかよりよっぽど強いんじゃないかなぁ?


「そんなターニアさんには私の気持ち、分かってもらえるんじゃないかなって思うんですっ」

「……え?」

「ターニアさんがニーナさんを大切に想うように、私も教会で預かる子供達は我が子だと思って接してきたつもりです。……だからねターニアさん。子供達の死を仕方なかったことだなんて、私には絶対に割り切れないんです……」


 悲しそうな寂しそうな表情を浮かべながら、どこか遠くを見るムーリちゃん。


 毎年のように我が子が奴隷に落ち、毎年のように我が子が命を落としていく環境。

 だけど残された子供達の為に、自棄になることも出来ない地獄の日々。


 ムーリちゃんはそんな苦しみの中に、何年も身を置いてきたんだ。


「縁あって親子になったのに……。私が弱いせいで守ってあげられなかった。だから子供を守ってあげられなかった自分の弱さが許せませんし、救えなかった子供達を忘れることも出来そうにありません」


 ……死んでしまった子供達に出来ることは、もう何も無いけれど。


 そう言って、ムーリちゃんは私のほうに向き直る。

 私を見詰める眼差しには決意と覚悟、そして一抹の後悔の念が宿っているように感じられた。


「子供を亡くした母親のくせに、私だけがこんなに幸せにしてもらって……。そこに罪悪感や後ろめたさが無いわけじゃないですけど。優しかったあの子たちならきっと、私の幸せを心から願ってくれているはずだから……」


 一旦言葉を切って、私にニッコリと微笑みかけてくれるムーリちゃん。

 その笑顔は彼女の送ってきた壮絶な日々を一切感じさせない、本当に素敵な表情だった。


「だから私は今の幸せを護りぬくために、守れなかった子供達に胸を張ってもらえるように、強い母親になりたいんだと思います。弱い自分が原因で何かを失くすのは……もう嫌ですからねっ」


 ムーリちゃんの笑顔を見て、なんだか無性に恥ずかしくなってしまう。


 私もニーナも、確かに不幸な毎日を送っていたと思う。

 けれど何も得られない日々だった代わりに、失うモノも無い日々だったんじゃないのかと。


 ムーリちゃんのように沢山の子供を亡くしたり、ティムルちゃんのように弄ばれた挙句に捨てられたり……。

 リーチェさんみたいに、望まぬ偽りの人生を強要されることなんてなかったじゃない……!


 ……なんだか自分が歩んできた呪われた人生が、酷く甘ったれたものだったんじゃないのかと思えてしまう。

 そんな風に何も言えないでいる私に構わず、ムーリちゃんは淡々と語り続ける。


「以前ダンさんが言ってくれたんです。成長っていうのは、過去の後悔を未来に繰り返さない為に、自分に不足している要素を自覚することだと思うって」

「不足している要素を自覚する。それが成長……?」

「過去に起こった事は変えられない。だけど、過去を活かすか殺すかを決めるのは自分次第なんだって。だから過去の後悔を無駄にしないために、過去の悲劇を今の糧にするべきだって」


 過去に起こったことは変えられない。

 だけど過去に体験した事の価値は自分自身で決められる……。


 その言葉の意味を必死に考える私に、それにしてもっ、と笑顔を浮かべるムーリちゃん。


「笑っちゃいません? こんなことを言うダンさん自身は、過去だってあっさり取り戻しちゃうのにっ」

「……あ」


 ムーリちゃんの話を聞いて、ダンさんの異常すぎる成長速度の秘密に少しだけ触れられた気がした。

 ダンさんはこの世界に来たばかりの頃からずっと、ニーナの呪いを解く為に不足していることを、フラッタちゃんの家族を助ける為に不足している事を、リーチェさんの抱える事情を解決する為に不足している事を、常に模索していたんだ。


 この世界の誰もが諦める解呪も、王国最強の竜爵家を襲った悲劇を払う強さも、偽りの英雄譚の発端であったスペルド王国建国の真相も……。

 ダンさんだけは始めから1度も諦めることなく、必死に追いかけ続けてたんだ……。


 ダンさんのあの異次元の強さの秘密は、鑑定でも職業設定でもない。

 大切な人を護りたい、絶対に悲劇を起こして堪るかっていう断固たる決意だったんだ……!


「……敵わないなぁ。私は自分の呪いだけならまだしも、ニーナの解呪まで諦めちゃったっていうのにさぁ……」

「敵いませんよねぇ……。誰も救えない日々に絶望していた私を、あっさりと教会ごと救っちゃうんですもんっ」


 ムーリちゃんと2人で笑い合う。

 私達、まだまだダンさんの隣りに立てる日は遠そうだねー?


 えっちが好きでキスが好きで、おっぱいが大好きなダンさん。


 我が侭な私達の旦那さんは、いったい何処までの事態を想定していて、いったいどうしたら満足してくれるんだろう。

 あの人は私達の為に、どこまで強さを求めてしまうだろう。


 ……私も、もっともっと強くならなきゃいけないなぁ。

 大切な人に守ってもらうだけなんて、そんなの私らしくないもんねっ。
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