異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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6章 広がる世界と新たな疑問1 蜜月の日々

382 ※閑話 2年目の雨 (改)

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「ん~……? なんだか暗いままなのぉ……」


 ダンが目を覚まして、みんなと朝の日課を終えたっていうのに、辺りはまだ暗いままだった。

 暗い中で身支度を整え寝室を出ると、ザァザァと激しく屋根を叩く雨の音が耳に届く。


 ……今日は雨かぁ。

 随分強く降っているみたいなのに今まで気付かなかったのは、リーチェが寝室の音を遮断してくれていたからかな?


 ダンとフラッタの2人とそれぞれ手を繋いで、みんなで一緒に玄関先まで移動し、外の様子を見に行ってみる。


「うわぁ……。雨で庭が見えませんね……」


 外の様子を見たラトリアが、みんなの気持ちを代弁するような呟きを溢す。

 ラトリアの言う通り、外は庭の様子を窺うことも出来ないくらいの土砂降りで、その激しい雨音は会話に支障が出るほどだった。


「久しぶりに強い雨だね。今日は何も出来そうにないなぁ。みんなもお休みで大丈夫?」

「そうね。移動魔法を使えばアウターに直接転移することは可能だけど、今の私たちにそこまでする必要は無いものねぇ」


 ダンの提案にティムルが賛同し、他のみんなも大丈夫と微笑んでいる。

 去年の私達は1日働けないと苦しかったけど、今の私達は生涯働かなくてもお金に困る事はないんじゃないかなぁ?


 ……でもダン。今って休暇の真っ最中じゃなかったっけ? 休暇中のお休みっておかしくないー?


「確かニーナは家の改築中だったと思うけど、この雨で何か問題が起きたりしないかな? 俺に手伝えることかあったら遠慮なく言ってね? ……俺が手伝っちゃうと、ニーナが秘密にしてくれてる意味が無くなっちゃうけどさ」

「ふふ。心配してくれてありがとうダン」


 でもあの家はもうボロ屋じゃなくなってるから、このくらいの雨ならなんとも無いのっ!

 だから今日は私もゆっくりしたいなーっ。


 私のほっぺにちゅっとキスをして、それじゃまずはゆっくり朝ご飯を食べようねって、私の手を引いてくれるダン。

 暗い炊事場でみんな一緒に食事の用意をして、フラッタの淹れてくれたお茶を飲んだ。


「ふぅ~…………」


 みんながフラッタのお茶を口にしたことで、会話が途切れて静かになる。

 家族みんなが揃っているのに食堂には雨の音だけが響いていて、なんだか不思議と心地良い雰囲気を感じられた。


「意外なのじゃ。お休みと言うから寝室に引っ張り込まれると思っておったのに、なんだか随分とゆっくりしておるのう?」


 お茶を淹れ終わったフラッタが、ダンの膝にちょこんと座りながら可愛らしくダンにおねだりをする。

 そんなフラッタの頭を撫でながら、ダンは面白そうに小さく笑った。


「はは。そう言えばマグエルに着いたばかりの頃にも雨の日があってさ。その時にニーナに同じことを言われたんだよ。すぐに寝室に行くと思ってたってさ」

「あはっ。そんなこともあったねー」


 確かあの日のお茶はダンが淹れてくれたんだっけ。


 あの時の私には真っ暗な家の中で、傍にいるダンの顔を見ることすら出来なかったのに、今は雨の暗がりの中でもみんなの顔が良く見えるようになっている。

 あの頃とは職業浸透数が違いすぎるもんねぇ。


 ……ん? でも五感上昇補正の少ないムーリや母さんは、この暗がりは不便かもしれないの。

 そう思った瞬間、ダンは部屋の照明を点けてくれた。


 これも去年の家には無かった、魔玉で光るマジックアイテム。


「今日はもう、1日ゆっくり過ごさない? 今のうちに夕飯まで作っちゃってさ。寝室に食事を持ち込んで、お話したり触れ合ったりして過ごしたいなぁ」

「えぇ~? せっかく寝室にいるのにえっちしないなんて勿体無くないかな? 1日中ぼくの体を好きにしていいからぁ~」


 しなを作りながらダンに抱きついて、蠱惑的におねだりするリーチェ。

 女の私から見てもドキッとしてしまうほどに魅力的なリーチェに、ダンは微笑みとほっぺへのキスで返す。


「えっちしないとは言ってないし、お前の体は毎日好きにさせてもらってるでしょー?」


 笑いながらリーチェを優しく撫でるダン。


 ダンはとってもえっちだけど、本当に甘えたい時はあまりえっちをしたがらない。

 お話をしたり撫で合ったり抱きしめ合ったり、ただ私達と同じ時間を過ごせれば満足してしまう。


 まるで私達と過ごす幸福な時間には、快楽さえも要らないみたいに。


「んも~、ダンったら仕方ないの。それじゃまずはお料理からだねー」


 えっちなダンが垣間見せた本音の甘え。なら私はそれを受け入れるだけ。

 ダンの手を引き炊事場へと向かう私の姿を見て、みんなも今日はダンの好きにさせようと思ってくれたみたいだった。


「あはーっ。流石にコレだけあれば足りるわよねぇ? フラッタちゃん? リーチェ?」

「ふはははーっ! 寝室に料理を運ぶというのも新鮮なのじゃーっ」


 たった今朝食を終えたばかりなのに、またみんなで沢山の料理を作って寝室に運ぶ。


 その間もダンは何度も私たちに悪戯してくるけど、いつもみたいなえっちなイタズラは1度もなくて、頭を撫でたり頬ずりしたり抱きしめたり。

 なんだかえっちをしている時よりも、ずっとずっと幸せそうにしていた。


 ダンが私達を愛してくれているのは間違いない。そしてダンが凄くえっちなのも間違いないの。

 だけどダンはきっと、私達と一緒にいることそのものに幸せを感じているんじゃないかなぁ。


 ダンがとってもえっちなのは……。

 きっとみんなの方がダンに触れて欲しいと思っているからなんだ。


「はは。このベッドの上で服を着たまま過ごすなんて新鮮だなぁ」

「んもーっ。ダンさんがそうしたいって言うからそうしてるんじゃないですかーっ」


 寝そべるダンの正面から抱きついたムーリが、全身をダンに擦りつけながらダンの体中にキスを続けている。


 すっかり見慣れた大きなベッドに服を着たまま寝転がり、みんなそれぞれくっついて、リラックスして会話を楽しむ。

 私は母さんに、フラッタはラトリアに抱きしめてもらっていて、ティムルはリーチェをよしよしなでなでしているみたい。


 ダンの両側にはそれぞれエマとヴァルゴが納まっていて、うっとりした表情でダンに頭を撫でられている。


「去年の雨の日はこの屋敷の中はまだ真っ暗で、家の中には俺とニーナの2人だけだったんだよね。まさかこんなに沢山のお嫁さんを貰う事になるなんて、あの時は夢にも思ってなかったよ」


 2人だけの、闇に閉ざされた家の中。

 まるで世界には私達2人しか存在しないかのように感じられた、去年の雨の日。


 あの日私はダンに導かれて、死んだと思っていた父さんと母さんのことを思い出すことが出来たんだった。

 ……父さんのことを救ってあげることは出来なかったけれど、こうして母さんに抱きしめて貰える日が来るなんて、あの時は夢にも思わなかったなぁ。


「んー? どうしたのニーナ?」

「去年の雨の日にね。ダンに父さんと母さんの話をしたんだよ……」


 あの日のことを思い出してなんだか母さんに甘えたくなった私は、私を抱きしめてくれている母さんの胸に顔を埋めた。


「あれから1年経った雨の日に、こうして母さんに抱きしめてもらえるなんて夢にも思ってなかったの。母さん大好き。大好きな母さんと一緒に幸せになれて、本当に嬉しいの……」


 ダンに出会う前、家族で一緒に暮らしていたころは、母さんに甘えることも好きだと伝えることもしてこなかった。

 1年前に後悔したこと、ダンのおかげでまた思い出すことが出来たから。


 母さん大好き。私を産んでくれて、私を愛してくれてありがとう。


「はぁ……幸せすぎるよぉ。ニーナに好きって言われるのが、ニーナと一緒にこんなに穏やかな時間を過ごせるのが、幸せで幸せで仕方ないよぉ……!」


 母さんがぎゅーっと抱きしめてくれる。

 母さんの匂い、なんだかとっても安心するの。


「母さんを許してくれて……、母さんを愛してくれてありがとうニーナ……。母さんの娘に生まれてきてくれて、本当にありがとう……!」


 あの家に居たとき、最後に母さんに抱きしめてもらったのっていつだったんだろう?

 もう覚えていないくらい久しぶりのはずなのに、母さんに抱き締められる安心感はなんとなく覚えている気がした。


「……妾も、妾も母上のことが大好きなのじゃ」


 私が母さんに抱きしめられているのを見て、他のみんなもお互いに甘える事にしたみたい。

 みんな自分の想いを言葉にして、改めて大切な相手に伝え始めた。


「強くて綺麗で、そして誰より家族想いの母上のことが大好きなのじゃ。母上が無事で本当に良かったのじゃ……」

「私も大好きですよフラッタ。貴女とシルヴァは私とディアの幸せそのものなんですからね。幸せになってくれてありがとうフラッタ。これからももっともっと幸せになってくださいね?」


 絶世の美貌を持つ竜人族の母娘が抱き合う光景に、ダンじゃなくっても見蕩れてしまうの。

 2人ともとっても綺麗なのに、それ以上に優しげで暖かい母娘の抱擁。


「ほら見てリーチェ。私達の家族って素敵な人ばっかりでしょ? そんな家族に貴女を迎えられて、お姉さん嬉しいわぁ。これからもよろしくね?」

「うぅ……。なんだかダンに愛してもらうよりも幸せを感じちゃうよぅ……。454年間の孤独なんて、この1年で全部取り立てられちゃった気がするなぁ……。これからも宜しくねっ、ティムル」


 ドワーフのティムルが、エルフのリーチェを抱きしめる光景。

 我が家ではありふれた当たり前の光景だけど、このためにダンがどれ程壮絶な1年を潜り抜けてきたのかを知っている人はあまりにも少ない。

 だけどダンの苛酷な歩みを誰よりも知る2人は、お互いを愛おしそうに抱きしめている。


 そんな2人を見るダンの目が、いつもよりずっと穏やかに思えた。


「旦那様。貴方を超えて最強に至る道を諦めるつもりはありませんが、今日だけは甘えさせてくださいね。ヴァルゴは旦那様の腕の中から出たくありません……」

「何もしない穏やかな時間って、なんだかずっと忘れていた気がしますよ……。ふふ、家族みんなで過ごす幸福な時間、いいですねコレ」


 ダンの腕の中で甘えるヴァルゴとエマ。そして微笑みながら2人の頭を優しく撫でるダン。

 その穏やかで幸福な空気にあてられて、とうとうムーリも動きを止めてダンに抱きついた。


「……愛していますダンさん。ムーリはずーっとダンさんをお慕いしておりました。なのに毎日毎日、前の日よりももっと好きになっちゃって困るんですよっ。もう少し手加減してくださいってばっ」

「手加減して欲しいのも、毎日好きになってるのも俺のセリフなんだけどねぇ……。こんなに可愛くてえっちで最高のお嫁さんに囲まれて、幸せすぎて恐いくらいなんだよ?」


 家族の愛情に満ちた寝室を、雨の音が優しく包む。

 珍しくリーチェが音を遮断していないおかげで、降り注ぐ雨音が妙に心地良かった。


 絶え間無く屋根に打ち付けるは雨の音に誘われて、私たちはせっかく用意した料理にも手をつけないまま、穏やかな2度寝を楽しんだのだった。




「んん~。お腹空いたのぉ……」


 2度寝から目覚めたのは、お昼を回ったくらいの時間だった。

 おはようのキスを2回も出来るなんて最高だねと、いつもより穏やかなキスをしてくれるダン。


 優しい雨音に耳を傾けながら、すっかり冷めてしまった料理を摘み、何も考えずダンの体に手を伸ばす。

 軽いキスとボディタッチを繰り返していると、なんだかだんだんえっちな気分になってくる。


 穏やかな時間も素敵だけど、やっぱり愛して欲しいなぁ?

 ダンの体をサワサワと擦っておねだりする。


「おいでニーナ。でもいつもよりゆっくり触れさせて欲しいんだ。今日は激しくする気分じゃないから」


 私の服に手をかけながら、それでも優しくおねだりしてくるダンに少し申し訳なくなってしまう。


 ごめんねダン。せっかく貴方が甘えてくれたのに、私のほうが我慢出来なくなっちゃったの……。

 やっぱりダンが私達をこれでもかってくらいに抱いてくれるのは、私達の望みであってダンの願いではないんだろうなぁ。


 でもダンにキスされながら体の中を満たされるの、すっごく幸せだし気持ちよすぎるの。

 だからもっともっといっぱい満たして欲しくなっちゃうのっ。


 まるで私の心が読めるみたいにダンは唇を重ねてきて、いつもよりゆっくり穏やかに私の中を満たしてくれた。

 そして当然みんなもダンのことが大好きだから、全員いっぱい愛してもらっちゃったの。






「ごめん。ちょっと雨に濡れてみてもいいかな?」


 何度も何度も満たしてもらって、もう少しで日が傾き始める時間帯。

 私とフラッタを抱きしめて私達のおっぱいを行ったり来たりしながら、ムーリとリーチェのおっぱいでむにゅむにゅと圧迫されているダンが、私の乳首を口に含んだまま思い出したようにお願いしてきた。


「別に構わないけど、どうしてわざわざ雨に濡れたいのー?」

「考えてみたら俺って、この世界の雨をあまり経験してなくってさ。雨の中で少し動きを確認しておきたいんだ」

「……まったくもーっ。お休みって言ったのはダンなのに~っ」


 済みません……と申し訳無さそうな顔を浮かべるダンに、冗談だよーっとキスをする。


 ふふ。なんだか今日のダンはいっぱいおねだりしてくれるの。

 謝らなくていいから、いつももっともっといっぱい甘えてくれていいんだからね?


 私とフラッタのおっぱいを優しくしゃぶりながら、リーチェとムーリにたっぷり飲ませたダンは、確認が終わったら明日の朝までめちゃくちゃにしてあげるからねと、みんなに約束のキスをしてくれた。


 みんなで身支度を整え寝室を出る。

 これから雨に濡れるので、ダンの気が済んだらすぐに体を温められるように先にお風呂の準備を済ませた。


「みんな、俺の我が侭を聞いてくれてありがとう。俺って経験したことが無い事は、どうにも不安で仕方なくってさぁ……」


 双剣を手に雨の中に足を踏み入れるダン。

 激しく降り注ぐ雨はダンの体を瞬く間にずぶ濡れにしてしまったけれど、当のダンはあまり気にした風でもないの。


 雨の中ダンは目を瞑り、普段あまり見せないほどに集中力を高めていく。

 その凄まじい集中力は玄関先で見守る私たちにも伝播して、なんだか圧倒されてしまうの。


 極限の集中状態で、ダンは動きを確かめる様に静かに剣を振り始める。


 流れる様に淀みなく、まるで雨など降っていないかのように振るわれるダンの双剣。

 少しずつ加速していくその剣閃は、次第に降り注ぐ雨粒すら斬り飛ばしていく。


「「…………っ」」


 ヴァルゴとフラッタが息を飲む。

 きっと2人の目にも今のダンの動きは見えていないんだろう。私にも全然見えてないし。


 ダンが誰にも気を使わない状況でしか発揮されない、世界呪を滅ぼした時にすら見せていなかったほどの神速の剣。

 技術では到達できない、職業補正を完全に極めたダンにしか許されない、ダンにしか知覚できない速度域。





「……ふぅ。雨の中でも動けそうだね。みんな、付き合ってくれてありがとう」


 音さえも置き去りにする速度で数分間双剣を振ったダンは、いつもの笑顔に戻って私たちにお礼を言った。

 そんなダンに飛びつくヴァルゴとフラッタ。


「旦那様ーっ! あまりヴァルゴを置いて行かないでくださいよーっ! 私に最強になれって言ったのは旦那様なんですよ!? なのに旦那様が私より早い速度で強くなるのは止めてくださいよーっ!?」

「凄かったのじゃー! 目に映らないほど速いのに、その動きに少しの乱れも感じなかったのじゃ! 妾もやってみたいのじゃ! すっごく綺麗だったのじゃー!」

「いやぁ今のは補正に頼りきった動きだから、2人が目指す先にある動きじゃないと思うよ? あーもう2人とも可愛いなぁ。ちゅっちゅっ」


 鼻の下を伸ばしながら2人にキスを繰り返すダン。

 どこか近寄りがたい雰囲気さえ纏って双剣を振るっていた姿は霧散し、すっかりいつものえっちなダンの姿に戻ってくれた。


「さぁダン、早くお風呂に行こっ。今のダンすっごくかっこ良かったから、かっこいいダンにいっぱい愛して欲しくなっちゃったのっ」

「んもーニーナってばぁ。そんなこと言われたら、俺の方こそ我慢出来なくなっちゃうってばぁ~」


 参ったなぁ~と、デレデレとしたちょっとかっこ悪い笑顔を浮かべるいつものダン。


 私達がいなかったら、ダンは誰も追いつけない場所からきっと戻って来れなくなってしまう。

 だから私達が、しっかりダンを捕まえてあげなきゃいけないのっ。


「みんなえっちじゃなくても最高のお嫁さんいなのに、その上で誰よりもえっちなんだもん。我慢なんて出来る訳ないじゃないかーっ!」

「我慢なんてする必要無いのっ! 我慢せずにいーっぱいえっちしようねっ!」


 了解です司令官殿ぉっ! と叫んだダンは、ヴァルゴとフラッタを抱き上げてお風呂に直行した。

 まったく。家族が増えても、とってもえっちなところは変わらないんだからーっ。


 1年でこの家の家族はこんなに増えて、雨の日だって暗闇に閉ざされることも無くなり、ダンは雨なんかものともしないくらいに強くなってしまった。

 来年の雨の日には、いったい何が変わっているのかな?


 ……少なくとも、お嫁さんの数は絶対増えていると思うんだよねっ。
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