異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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5章 王国に潜む悪意3 世界を呪う者

361 穏やかな朝 (改)

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 朝の日差しで目が覚める。

 腕の中にはリーチェとフラッタ、そしてそこから連結しているみんながいる。


 みんなと一緒に目覚めるのはいつも通りだけれど、俺もみんなも服を着ているのは凄く珍しい気がするね?

 でも、たまにはこんな朝も悪くないなぁ。


 みんなとイチャイチャエロエロラブラブするのは3度の飯より大好物だけど、安心しきった寝息を立てるみんなの寝顔は、肌を重ねた後だとなかなか見れない気がするんだよね。

 ……みんなへとへとになっちゃうから?


 寝ているみんなにこっそり悪戯するのは大好きだけど、流石に今は自重しておこうかな。

 世界中で俺だけが見ることを許された、愛しくて堪らないこの光景に自分で水を差すなんて馬鹿のすることだからね。


 みんなが起きるまで、この宝物のような時間をゆっくりと楽しむことにしよう。


「すぅ……。すぅ……」


 みんなの穏やかな寝息をBGMに、みんなが目を覚ますのを暫く待った。






「くぅ……。くぅ……」


 ……いつまで経っても、誰も起きないんだけど?


 昨日はエロいこともせずに寝たっていうのに珍しいな?

 可愛いみんなの無防備な寝顔なんて永遠に見ていられるから、全然退屈しないけどね。


 マグナトネリコと戦ったパーティメンバーは疲労が溜まっていたのかもしれないけど、ムーリたち4人も起きないとは珍しい。


 なんで今日に限ってみんな起きないのか。

 それはきっと、リーチェが完全に気を許してくれているからなんだろう。


 なんだかんだ言って、長い間孤独な時を過ごしてきたリーチェは眠りが浅かった。

 俺におっぱいを吸われていても、舌を吸われていても眠れる反面、誰かが起きれば自分も目を覚ますし、明るくなっても目を覚まさないことは珍しかった。

 家族には気を許してくれていたけど、それでも心のどこかで警戒心が残っていた気がする。


 だけど今のリーチェは本当に熟睡している。

 頭を撫でてもほっぺをむにむにしても、全然起きる気配がない。


 リーチェに残っていた最後の警戒心が解けたことで、みんなも無意識のうちに安心したのかもしれないなぁ。

 1人だけ一線を越えられないリーチェのこと、みんなもずっと気にしてたから……。


「ん、ふぅ……」

「あ、起きた? おはようニーナ」

「あ~……。ダン、おはよ……」


 1番始めに目を覚ましたのはニーナだった。

 眠そうに俺に挨拶をしてくれるニーナを見て、そう言えばニーナって結構寝ぼすけさんだったことを思い出す。


 寝惚け眼で自分が抱きしめたままのリーチェに目を向け、そしてふっと微笑むニーナ。


「あは……。リーチェの寝顔、すっごく可愛いの……。なんだかとってもいい朝だね、ダン……」

「そうだねニーナ。すっごく良い朝だよ。今日もいつも通り楽しく過ごせそうだ」

「ん~……。おはようなのじゃぁ……」


 ニーナと挨拶を交わす声で、他のみんなも目を覚まし始める。

 いつもなら起きた人からキスを交わして、そして食事の準備に何人か先に寝室を出て行くんだけど、今日はなんとなくみんなでリーチェが目を覚ますのをゆっくりと待ち続けた。


「あ~、うぅぅ……。もう朝ぁ……?」


 やがてみんなに笑顔で見守られながら、我等がお姫様もゆっくり目を覚ましてくれた。

 こしこしと目を擦る、気だるげなリーチェも新鮮で可愛いなぁ。


「おはようリーチェ。おはようリュート。良く眠れた?」

「ん~……。なんかぐっすり寝ちゃったよぅ……。おはようダン……。えへへ……」


 猫みたいに俺の胸に頬ずりするリーチェ。

 可愛いけど、まだ寝惚けてる感じかな?


 寝惚けたリーチェの頭を撫でていると、ニーナもよしよしなでなでに参戦してきた。


「さぁリーチェ。そろそろ起きるよっ。今日は貴女の大切な日になるんだから、いつまでも寝てたら勿体無いのっ」

「え~……? ぼくの大切な日ってぇ……。大切な……? ……大切なっ!」


 ニーナの言葉に始めはピンと来ていなかったリーチェが、段々顔を真っ赤にして俺に力いっぱい抱きついてくる。

 うん。竜人族やドワーフの全力ハグに比べりゃどうってことないねっ。俺からもぎゅーっ。


「よく寝たあとはいっぱい食べるのっ! いっぱい寝て、いっぱい食べて、いっぱい笑って……、そしていっぱいえっちするよリーチェ!」

「うんっ! いっぱいえっちするーっ!」

「……俺の胸に抱かれたままで、朝から何宣言してんのさ2人とも」


 リーチェも目を覚ましてくれたので、ニーナから順番にみんなとおはようのキスを交わしていく。

 ターニアとキスしたあとに、リュートの為にもう1度ちゅっとキスをする。


 なんだかいつもより寝室の空気が柔らかく感じられた。


「さっ、まずはみんなで朝食を作るのっ。リーチェも手伝ってねーっ」


 みんなで寝室を出て、みんなで朝食作りを始める。

 いつもよりかなり遅い時間だけど、昼には早いので朝食で構わないだろう。


 戦力外のソクトルーナ母娘には配膳だったり単純作業を手伝ってもらって、何食分か賄えるように沢山の料理を準備した。


 しっかし……。エマは料理できることを考えると、竜人族が特別家事が下手ってわけじゃないんだよな。

 使用人だったエマと、生粋の貴族令嬢だった2人を比べるもの酷だけどね。


「いえ、ラトリア様もフラッタ様もお茶を淹れるのは私よりもお上手なんですよ。貴族令嬢の嗜みでもありますから」


 ラトリア様を見縊ってもらっちゃ困りますーっと、エマがすぐさま反論してくる。

 エマって何気にラトリアのこと大好きだよね。


「ゴルディア様は、ラトリア様の淹れるお茶をお飲みになるのが朝の日課だったんですよ?」

「へぇ、それいいね。じゃあ俺はフラッタに淹れてもらおうかなぁ?」


 多分ラトリアの方がお茶を淹れるのが上手いんだろうけど……。

 なんとなくゴルディアさんの日課を奪うような気がしてしまうし、なによりも可愛いフラッタが淹れてくれたお茶が飲みたいからなっ。


 給仕にやってきたフラッタを捕まえておねだりしよっと。


「ねぇねぇフラッタ。今日から毎朝、家族みんなにお茶を淹れてくれないかなー?」

「うむっ。任せるが良いのじゃ! 母上にみっちりと仕込まれたゆえ、期待するが良いのじゃっ!」


 小さいおっぱいに右手を当てて、元気いっぱいに了承してくれるフラッタ。


 貴族令嬢の嗜みというのは本当だったようで、脳筋ルーナ家の令嬢フラッタも、脳筋ルーナ家の当主夫人にしっかり指導されたようだ。

 意外なような気がしないでもないけど、外見だけなら完璧な貴族令嬢だしな、2人とも。


「えへへっ。妾の淹れたお茶からみんなの新しい1日が始まるのじゃーっ!」


 はい可愛い。可愛すぎるよこの人。

 濃縮100%、純度100%の可愛いの塊じゃん。


 リーチェが未だに引っ付いたままなので、おいでおいでとフラッタを呼び寄せてぎゅーっと抱きしめる。フラッタ大好きーっ。


「妾もダンのことが大好きなのじゃ。だけど今は離すが良い。これではお茶が淹れられぬからのっ」


 フラッタにしては珍しく、自分から俺の腕から抜け出て行ってしまった。

 しかし俺から解放されたフラッタはゴキゲンな様子で、鼻歌交じりにみんなのお茶を用意し始める。


 今まで料理の手伝いが出来なくて寂しそうだったもんなぁ。自分の仕事が出来て嬉しいのかな?


 フラッタの淹れてくれたお茶と、みんなで作った朝食をいただきながら、今日の予定を話し合う。


「ダンはキャリア様とゴブトゴさんのところに顔出してきなさいよー? 私が答えられることは多くなかったから、キャリア様はきっとやきもきしてるからねー?」


 からかうような表情のティムルから、今日やるべきことを提案される。


 キャリアさんとゴブトゴさんへの説明かぁ。

 ぶっちゃけ俺の中でもそんなに具体的な計画はまだ立ててないんだけど……。それでも1度顔を出すべきかぁ。


「ねぇねぇリーチェ。今夜はひと晩譲ってあげるから、午後から夕方までは私たちに譲ってくれる?」


 キャリアさんとゴブトゴさんに何を話そうかと頭を悩ませていると、ニーナ司令官が俺の腕の中のリーチェに声をかけてくる。

 会話の内容が素敵過ぎるので、聞き耳を立てながらも口を挟まず様子を見る事にした。


「昨日みたいにゆっくり寝るのも悪くないけど……。やっぱりダンに触れてもらわないと、私たちは生きていけないのっ」

「あっ、も、勿論構わないよっ! って言うかごめんねみんな! ぼくのせいで昨日はダンとえっちさせてあげられなくて……!」


 ニーナが俺のえっちなスケジュール管理を提案し、そしてリーチェがそれを呑む。

 俺だってみんなに触れてないと、もう生きていけないからね。司令官の申し出は願ってもないよ。


 ……ニーナにえっちのスケジュールを管理させるのは、男として微妙に複雑ではあるけど?


「気にしないでくださいリーチェ。普段が肌を重ねすぎなくらいだと思いますからね。たまには昨日の様に休む日があっても良いでしょう」


 謝るリーチェに笑顔で答えるヴァルゴ。


 重ねすぎとは言いますけどね? 俺はもっと肌を重ねたいくらいなんですよ?

 俺の体が1つしか無くて、1日が24時間しか無くて、そしてなんか外野が騒ぐことが多いせいで今の回数に留まっているっていうか?


「それより私たちは、貴女にとって特別な日となる今日を、申し訳無い気持ちで過ごして欲しく無いんです。今日という日を、どうか思う存分楽しんでくださいねっ」

「うん、ありがとヴァルゴ……。でも、楽しむってどうすればいいかなぁ……」

「それでは、城とシュパイン商会への顔出しにリーチェも一緒に行くが良いのじゃ。ダンとデートして来るが良い。リーチェが隣りに居れば、ダンも大人しくしているじゃろうしの」


 後半部分にツッコミを入れたいところではあるけど、デートを提案してくれたのはナイスだフラッタ!

 つまらない報告会も、リーチェとのデートだと思えばやる気も出るよっ。


「ダンさんとリーチェさんが外出している間は自由時間。昼過ぎから夕方までは私たちとのえっちの時間。夜はリーチェさんと過ごしてもらうってことで良いですねっ?」

「……良いですね? って聞かれても、すっごい答えにくいんだよムーリ?」

「初めてリーチェさんを抱くのは、私を初めて抱いてくれたあの宿でいいですか? 予約しておきますっ」


 ……ムーリさんや。貴女一応シスターなんだから、もうちょっと言動抑えてくれます?


 ムーリと初めて夜を過ごした宿でリーチェと初めての夜を過ごす為にムーリに宿の予約を取ってもらうって……。

 これもう一種のプレイでしょ。


 えっちなシスターにはお仕置きとして、その大きなおっぱいを正面からぐにぐにと揉みしだいて差し上げた。


「ほらほらダンさん。いつまでもムーリちゃんのおっぱいを揉んでないで、やることが決まったならさっさと動くっ! おっぱいを揉みたいなら、早く用事を済ませてきなさいっ」


 服の上からムーリの乳首を引っ張って遊んでいたら、早く行けとターニアに窘められてしまった。

 確かに用事をさっさと済ませて、服の中に直接触れたほうが楽しいよねっ。行きますかぁっ。


 全力でムーリの乳首を扱きながら全員と行ってきますのキスをして、お漏らししながら崩れ落ちたムーリには服の上から両方の乳首に行ってきますの噛み噛みをお見舞いしてあげてから、リーチェと一緒にまずはキャリアさんに会いに行った。


「スペルド王国からドワーフの里まで道を通すとか、相変わらずやることがイカレてるわよね、ダンさんって」


 開口一番、真っ向から俺をディスってくるキャリアさん。

 だけど直ぐに表情を引き締め、野心でギラついた眼差しを俺に向けてくる。


「それで、私達は何をすればいいのかしら? 可能な範囲で教えてちょうだい」

「了解。えっとね……」


 かくかくしかじかと、物資輸送路建設について説明する。


 シュパイン商会に協力して欲しいのは、物資の調達と運営スタッフの確保。

 つまり、現在アルフェッカでやってもらっていることの再現だ。


 村を運営出来る人材は現在教育中なので、当面は今まで通りでお願いしておいた。


「まさか国への許可も無く、こんな話を持ち出してくるとはねぇ……。これで許可が下りなかったは勘弁してよぉ……?」

「多分許可してもらえるとは思うけどねぇ……」


 具体的なことがまだ何も決まっていないので、現時点で話せることもあまり無く、キャリアさんとの話は思ったより早く済んだ。


 シュパイン商会のお店を出て、スペルディアのトライラム教会に転移する。

 礼拝堂では護衛もつけずに、ゴブトゴさんが1人で待ってくれていた。


 城には来るなと言われていたので、ラトリアに取り次いでもらって、ゴブトゴさんの方にご足労いただいたワケだ。


「大体の話はラトリア様から伺っている。が、改めて礼を言わせて欲しい。エルフェリア精霊国を……、スペルド王国を守ってくれて、本当にありがとう」


 俺とリーチェに深々と頭を下げるゴブトゴさん。

 ……もうこの人が王様で良くないかな?


「それじゃ、昨晩もラトリアに聞いたと思うけど……」


 昨晩ラトリアから伝えてあったけど、グルトヴェーダの開発とサークルストラクチャーの発注を、俺の口から改めてお願いする。

 そんな俺の提案を、ゴブトゴさんも快く了承してくれた。


「……して、話は変わるのだが」

「へ?」


 直接報告も終わったし早く帰ろうと思った俺に、話は変わるがとひと言おいてから、ゴブトゴさんが少し言い難そうに切り出した。


「実は仕合わせの暴君に、何か褒賞を与えねばと思っているのだ」

「褒賞~……?」


 褒賞かぁ……。別に要らないんだよなぁ。

 ……別に要らないんだけど、それだとゴブトゴさんが困っちゃうのかぁ。


「事が事だけに、あまり大っぴらに公開するのも躊躇われてな。ラトリア様からも、諸君は社会的地位などに興味を持っていないと釘を刺されているし」


 成り行きとはいえ、世界を救ってしまった形だしな。

 もし今回何の褒賞も出なかったっていう前例を作ると、将来に禍根を残しかねない。


 何でも良いから貰うべきなんだけど、何を貰えば良いのか……って、そうだ。


「ゴブトゴさん。それならシルヴァの当主登録と、その妻の貴族登録処理を急ぎで終わらせてもらうことって出来ないかな?」


 俺達への褒賞だからって、貰う側の俺達がメリットに固執する必要は無い。

 ルーナ竜爵家だってもう俺の身内には違いないんだから、この機会にシルヴァを当主にしてしまえないだろうか?


「今の竜爵家って次期当主と当主夫人が運営している形で、当主不在でちょっと不安定な状態なんだよね」

「む……。それはむしろこちらの仕事の遅さを詫びねばならぬ案件なのだがな。最優先で処理させると約束する」


 俺の要望は聞き届けてくれたけれど、ルーナ竜爵家の貴族登録を俺達への褒賞とするのは難しいのか、ゴブトゴさんは少し不満げな表情だ。


「他には何かないだろうか? スペルド王国も王が不在の状態ではあるが、私の権限の範囲で出来る限りのことはさせてもらうが」


 ああ、そういえばボンクラ王も死んでたんだったね。

 じゃあ忙しいであろうゴブトゴさんに色々頼るのは申し訳ないかな。


 今はちょっと思いつかないからと褒賞の話を打ち切って、ゴブトゴさんとの会話を終えた。


「それでは私は失礼しよう。私のような者がいつまでも居座っては、教会にも迷惑がかかってしまうだろうからな」

「トライラム様はそんなことで怒ったりしないと思うよ? 人に祝福を授けてくれた、とっても優しい神様だからね」

「くくっ。世界を救ったダン殿が言うと、妙な説得力を感じるな?」


 俺の言葉を冗談だと思ったのか、ゴブトゴさんは笑いながら上機嫌に去っていった。

 ゴブトゴさんが帰ったあと、礼拝堂の中には俺とリーチェの2人だけが残される。


「リーチェ。ちょっとだけ付き合ってくれる?」

「え? うん。構わないけどなにするの?」

「祝福の神トライラム様に、リーチェとの婚姻を祝福してもらおうってね」


 2人で礼拝堂の中心に行き、すっかり見慣れたシンプルなデザインの教会のシンボルの前に2人で立つ。

 トライラム教会に神像が無いのは、神とは各々の信じる心に宿るものだから、という考えから来ているらしい。安定の頭トライラム教会ですね。


「祝福の神トライラム様。俺がこの世界に来た事に、貴方の意図があったのかは分かりませんけど……。それでも心から感謝します」


 目の前のシンボルに向かって、心からの感謝を伝える。

 もしも神様が俺の心に宿っていたとしたら、感謝の気持ちを伝える手間が省けたとでも考えよう。


 俺に続いて、リーチェもシンボルマークを真っ直ぐに見詰めて口を開いた。


「……祝福の神トライラム様。いつかは貴方を恨んだ日もあったかもしれません。だけど、今は貴方に心から感謝しています」


 運命を呪い孤独に苛まれ、いつしか神を恨んでしまったリーチェ。

 それでも魂に誓った誓約を必死に護り抜いた果てに、なんとか神への感謝を取り戻すことが出来たようだ。その幸運にこそ感謝したい。


「俺の妻であるリーチェとリュートを、俺と出会うまで守ってくれて……。本当にありがとうございましたっ」

「ぼくを愛する夫と出会わせてくれて、本当にありがとうございました……!」


 リーチェと2人で、教会のシンボルに深く頭を下げる。


 伝わるかどうかは分からない。意味がある行為なのかも分からない。

 だけど、感謝の気持ちを口にしたかった。


 2人一緒に頭を上げて、今度は2人正面から抱きしめ合って見つめ合う。


「リーチェ・トル・エルフェリア。リュート・マル・エルフェリア。2人を生涯愛することを、祝福の神トライラム様の前で改めて誓います」

「リーチェ・トル・エルフェリアもリュート・マル・エルフェリアも、生涯ダンを愛することを、祝福の神トライラム様の前で改めて誓います」


 この世界に教会で愛を誓い合うような慣習は無いらしいけれど。

 ずっと俺を導いてくれたトライラム様に、リーチェとリュートを幸せにすると宣言したかったんだ。


「リーチェ、リュート。これからもよろしくね」

「こちらこそ。不束者ですが、どうぞよろしくお願いします」


 トライラム様の前で永遠の愛を誓い合う俺とリーチェ。そしてリュート。

 真っ直ぐに俺を見詰める、そのあまりにも美しい翠の瞳に見蕩れていると、リーチェがふっと笑みを浮かべた。


「……ふふ。まさか1年も経たないうちに、しかも姉さんと一緒に愛してもらえるなんて夢にも思ってなかったよぅ。君は初めて会ったあの時から、ずっとずっとぼくの予想なんか軽々飛び越えちゃっていたけどね?」

「俺としては1年もかかった事が悔しいんだけどね。お前っていう最高の女性と1つになれないなんて辛すぎたよ」


 ずっとずっと心は想い合っていたのに、肌を重ねられないのは辛かったよ。

 リーチェに愛してもらえて最高に幸せだったけど、そんなお前を愛してやれなかったのが最高に苦しかったんだ。


「……ごめん。今夜リーチェもリュートも余さず貰ってやるけど、ちょっとだけ前借りさせてもらっていいかな?」

「え? あ……」


 目の前の女性が愛おしくて堪らなくなって、返事を待たずに唇を重ねる。

 無人の礼拝堂で、教会のシンボルマークの前で、永遠の愛を約束する誓いのキス。


 トライラム様。バカップルでごめんなさい。

 でも貴方が俺達を出会わせたせいなんだから、ちょっとだけ大目に見てくださいねー。


 2人きりの礼拝堂で、2人の口から漏れ出す滑りを帯びた水の音だけがいつまでも続いていた。
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