異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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5章 王国に潜む悪意3 世界を呪う者

342 ※閑話 私のもの (改)

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「ラトリアには許可を貰ったから、今日は2人きりでデートしようよ、エマ」


 突然すぎるダンさんのお誘いに、私の頭はパニックを起こしてしまう。


 ダンさんとデート? 私が? 2人っきりで……!?

 嬉しい! 愛するダンさんと2人っきりでデートするなんて夢みたい! なにをしましょうかっ?


「……なに、を?」


 混乱した頭で、それでもダンさんとのデートを思い浮かべて……、思い浮かべようとして気付く。


 ……なにを、しましょう?

 デートって、いったいなにをしたらいいんでしょう……?


 ずっと竜爵家にお仕えしてきた私は勿論、デートなんてしたことない。

 ゴルディア様とラトリア様も私がお仕えする前からの許婚で、一般的な男女の付き合い方はしてこられなかったと思う。


 そう、デートの参考に出来る知識が私の中に存在していないのだっ……!


「あははっ。エマの初めての相手になれるなんて光栄だねっ」


 慌てふためく私を見て、ダンさんは笑いながら教えてくれた。


「エマ。難しく考えなくていいよ。俺がエマと一緒に居たいだけなんだからさ。エマも同じ気持ちでいてくれたらそれで充分だ」


 私と一緒に居たいだけ。

 愛する人にそう告げられて、自分の頬が急速に熱くなるのが自分でも分かった。


 短命な竜人族で考えるともう寿命を迎えてもおかしくない年齢だっていうのに、我ながら舞い上がりすぎでしょっ……!


 だけど舞い上がっていると分かっていても、年甲斐もなくはしゃいでいると分かっていても……。

 一緒に居たいなんて言われたら嬉しくて仕方ないし、一瞬でも長く一緒に過ごしたいと思ってしまう。


 だからどうしたらいいのか分からなくても、私はデートを了承してしまった。


「いやぁ、断られたらどうしようかと思ったわぁ……!」


 大袈裟に息を吐いてから、笑顔で右手を差し出すダンさん。


 ……貴方のお誘いを断る訳ないじゃないですかぁ。

 なのにそんなに本気で安心されると、恥ずかしいやら嬉しいやら……! せっかく1度落ち着いたのに~!


「それじゃ行こうかエマ。難しく考えないで、今日は気軽に楽しんでくれたら嬉しいよ」
 

 差し出された愛する人の右手に、そっと自分の手を重ねる。

 うわぁ……。ダンさんの手は暖かいなぁ。


 手を繋いだだけで感動してしまった私を急かすこともなく、私が満足するまでダンさんは静かに待ってくれた。

 そんなダンさんにお礼と謝罪を告げて、ダンさんと手を繋いでマグエルの街に繰り出した。


「とりあえず少しブラブラしよっか。歩いているうちに何か面白いものが見つかるかもしれないしね」


 なにをしたら良いのか分からない私に対して、何もしなくていいとばかりに歩き始めるダンさん。

 最早すっかり見慣れたマグエルの街並みも、ダンさんと2人きりだと思うといつもと違って見えてくる。


 ラトリア様でもシルヴァ様でもフラッタ様でもない、愛する男性と手を繋いで街を歩く。

 自分にそんな日がやってくるなんて、夢にも思わなかったなぁ。

 
「でもダンさん。何で今日は私と2人で出かける事にしたんですか? ダンさんには沢山の愛する女性がいるっていうのに……」

「その愛する女性の中に自分も入ってるって事、エマには忘れて欲しくないなぁ? ま、これからたっぷり刻み込んであげればいっかぁ」


 物凄く軽い口調で恐ろしいことを口走ってませんか!?

 毎日身も心も粉々になるくらいに刻み込まれてますからっ! これ以上刻み込まれたら死んじゃいますってばっ!


 焦って抗議する私の頬に、ちゅっとキスをするダンさん。


「俺は愛するみんなと過ごす時間が大好きなんだけどさ。俺って暴君で我が侭だから、それだけじゃ満足出来なくなる時があるんだよ」

「えぇ……? 皆さんと一緒でも満足出来ないのに、私と2人で出かけるんですか……?」

「みんな一緒に居たいとも思うけど、そんなみんなをそれぞれ独り占めしたくなっちゃう時もある。だから今日はエマを独り占めしたくて、エマとデートしようって思ったんだ」


 微笑みながらも真剣な目で、私を独占したいと宣言するダンさん。


 ああ、これが愛する人に独占される喜びなのね……。

 毎日これでもかってくらいに愛されているのに、改めて言葉にされると全身が痺れて融けてしまいそうなほどに幸せを感じる……。


 幸せすぎて足を止めてしまう私を、ダンさんは微笑みながら待っていてくれる。


「それに沢山肌を重ねてきたけど、俺ってエマの事を何も知らないような気がしてさ。大好きなエマの事をもっと知りたいなって思ったから、今日1日一緒に過ごそうってね」


 わわわ、私のことなんて何にも面白くないからぁ……!

 街中で手を繋いで、そんなに真剣な眼差しで大好き大好きって何度も言わないでぇ……! 体に力、入らなくなっちゃうからぁ……!


 歩けなくなったらお姫様抱っこしてあげるからね、というダンさんの言葉で、辛うじて私の足は地面の感覚を思い出すことが出来た。

 お姫様抱っこ……。して欲しいけど、街中は恥ずかしいですってばっ!



 手を繋ぎながらも覚束ない足取りでゆっくりと向かった先は衣料品店。

 元々ティムルさんと古くから取引をされていた店らしく、その縁から孤児院とトライラムフォロワーの衣装と寝具を一手に引き受け、ダンさんたち……いいえ、私達家族とも親交が深いお店だ。


「いらっしゃいませーっ。毎度ありがとうございまーっす」


 私達が入店すると直ぐに店長の女性がやってきて、ダンさんと親しげに挨拶を交わしている。

 その様子に小さく嫉妬しようとする私に、そんな暇さえ与えてくれないのが私の愛する人だった。


「それで、今日はエマに服を選んであげたいんだ。けど俺って服にあまり詳しくないから、悪いんだけど店長さんも協力してくれない?」

「……えっ、えぇっ!?」


 わわた、私の服をダンさんが選ぶっ!? き、聞いてないですって! 

 ……って、服屋さんに来たんだから服を買うに決まってるよね! 私、察し悪すぎ~っ!


「へぇ~? ダンさんが服を選ぶのって珍しいですねっ。いっつも皆さんに着せ替え人形にされてるイメージしかないですよ?」

「俺はあまり服装に拘りが無いからね。みんなが俺に着せたい服を着ればいいかなって。だから流行り廃りに疎くってさ。エマに着てもらいたい服を俺と一緒に選んでもらえたら助かるよ」


 し、使用人の私に衣装なんて必要ないですってば!

 必要な場合でも自分で買うから大丈夫、大丈夫ですってばー!


「残念だけど今日のエマは使用人じゃなくて、俺の恋人で奥さんだからね。夫として、愛する妻にプレゼントの1つくらいさせて欲しいんだ」

「あははっ。相変わらず夫婦円満で羨ましいですっ。そういう事情でしたら、私も張り切ってご協力させてもらいますよーっ!」


 恋人で、奥さんで、愛する妻……。ダンさんが私の旦那様……。

 ダンさんの言葉で頭が飽和状態になった私は、ダンさんと店長さんに好き勝手着せ替えさせられてしまった。




「はぁ~。エマ、可愛いすぎーっ。その服、すっごく似合ってるよっ」

「はぅぅ……。あ、あんまり言わないでぇ~……」


 数時間後。そこには私のために購入した沢山の服を持つダンさんと、購入した衣装を身にまとった私の姿。

 い、1着買ってもらうだけでも恐縮ですのに、そんなにいっぱい買われなくてもぉ……。


「ダーメ。我が家にはお嫁さん用の衣装部屋があるんだから、エマにもどんどん服を買ってもらわなきゃ困るんだからね?」


 服を買ってもらわないと困るって、ダンさんあのお店のオーナーか何かなのっ!?

 っていうかこんなに沢山買ってもらったら、私のほうが困るんですってばぁ!


「せめて私に荷物を持たせてくださいってばぁ……! ダンさんに荷物を持たせたままだなんて落ち着きませんよぉ……!」

「ふふ。竜人族のエマのほうが力は強いんだろうけどね。脆弱な人間族さんでも、好きな女性の前でくらいは格好つけさせてもらいたいんだよ」


 困るのに……。困るんだけど、ダンさんに好きだと言われる度に幸せで思考が停止する。


 後から思い返したらポータルを使って荷物だけ先に家に送ることも出来たのに、幸せに浸された私の思考はそんなことにも思い至れなかった。

 思考が停止した私は、両手が塞がっているからというダンさんの言葉を真に受けて、自分からダンさんの腕に抱きついたまま散策を続けた。




「マグエルって、本当に笑顔に溢れたところですよね……」


 ダンさんの腕に抱きついたままマグエルの街を見て回る。


 長い間ヴァルハールで過ごしてきたけれど、マグエルの人々はなんだかみんな笑顔で活気に満ち溢れているように見えた。

 痩せ細ったり汚れている子供の姿も殆ど見かけることはなく、子供も大人もみんな笑っている。


「はは。エマは自分に尽くされると凄く困るのに、他の人が幸せそうにしているのを見ているとき、すっごく優しい表情になるね。今のエマ、すっごく素敵だよ」

「えっ? あっ……」


 マグエルの街並みを見ていた私を、いつの間にかダンさんが見詰めていた。

 そのままダンさんにちゅっと軽くキスをされて、近くにあった腰かけに2人で腰を下ろした。


「ねぇエマ。良かったらエマの話、聞かせてくれないかな?」

「私の話、ですか?」

「ラトリアに出会う前、ラトリアに出会った後、シルヴァやフラッタが生まれたときとかさ。エマが幸せだったって思ったこと、辛いなって思ったこととか、色んな話を聞かせて欲しいんだ」


 ラトリア様に出会う前と後……。嬉しかったこと、辛かったこと……。

 私を見詰めるダンさんの瞳に誘われるように、記憶の奥底に眠る遠い日々を思い返す。


 ラトリア様と出会う前のことは、正直もうあまり覚えていなかった。

 覚えていないことすらダンさんに聞かれるまで気付かないくらい、私の人生はラトリア様と共にあったんだ。


 ソクトヴェルナ家に引き取られてラトリア様とお会いしたころは、とにかく毎日が怖かったなぁ。

 ラトリア様は初対面の私にも凄く良くしてくださったけれど、孤児だった私にとって、貴族であるソクトヴェルナ家の生活は恐怖と不安でいっぱいだったような気がする。


 失敗をしたら、嫌われたら……。

 捨てられるだけならまだいい。もしかしたらその場で殺されるかもしれない……!


 ラトリア様もヴェルナ家の皆様もとても良くしてくださったのに、本当に臆病な娘でしたね、私は。


 次第にラトリア様ともヴェルナ家の皆様とも打ち解けていって、ラトリア様とゴルディア様が婚姻を結ばれた日に立ち会うことが出来た時は、自分のことのように嬉しかったのを覚えている。


「ダンさんはもう知ってると思いますけど、ラトリア様ってお転婆で人の話を聞かないところがありましてね。ゴルディア様と私が後始末に奔走することもしばしばあったんですよ」

「シルヴァやフラッタにもツッコまれてたもんねぇ。ゴルディアさんだけじゃなく、エマも大変だったんだ?」

「大変でしたよー? で、その度にゴルディア様と2人でラトリア様を叱るんですけど、叱られているラトリア様が本当に可哀想なくらいに縮こまっちゃって……。最終的にこっちが折れちゃうですよ~……」

「ぶははっ! しょんぼりしてるラトリアが目に浮かぶよ! ラトリアって相手の為にーって暴走するから、その相手に怒られるとすっごい落ち込んじゃうんだろうなーっ」

「そうそう! 相手の為を想ってるのに相手の話を聞かないんですっ! 私もゴルディア様も何度も注意してるのに、ラトリア様ったら直ぐに忘れちゃって……!」


 私の話を聞かせて欲しいと言われたのに、私の口から飛び出すのはヴェルナ家で、ルーナ家で過ごした日々のことだった。

 そんな私の話を凄く楽しそうに聞いてくれるダンさんの反応が嬉しくて、私の口もどんどん軽くなっていく。


 ……なんだか私、ラトリア様の悪口みたいなことも言ってないかしら?

 でもダンさんに分かるー! って言ってもらえるのが嬉しすぎて口が止まらないよーっ。


「はははっ。エマとラトリア、ルーナ家の家族は切っても切れない関係だってことは良く分かったよ。でも逆に不思議になっちゃったな」

「ふふっ。なにがですか?」

「答えにくい質問だったら答えなくていいけど……。聞いていいかな?」


 少し申し訳なさそうに私の様子を窺うダンさん。

 何かな? ダンさんに聞かれて困るような話って何も思いつかないけど……。


 どうぞ、とダンさんに続きを促す。


「うん。ラトリアを抱いた俺にエマが惹かれたのは割と納得がいったんだけどさ。なんでエマはゴルディアさんを受け入れなかったんだろうなって思ったんだよ」

「……それは、確かに答えにくい問いかけですね」

「エマとラトリアってお互い凄く大切に想い合ってるし、ゴルディアさんに一緒に貰ってもらっても良かったんじゃないの? ゴルディアさんは受け入れなかったのに、どうしてエマは俺の事を好きになってくれたのかな?」


 ダンさんの言葉に、改めて自分がゴルディア様を受け入れなかった理由を考える。


 以前は、ラトリア様とゴルディア様の間を邪魔したくなかったと説明したし、私自身そう思っていた。

 だけど私の幸せはラトリア様の幸せで、ルーナ家が幸せになるほど私も幸せを感じていたような気がする。


 ゴルディア様を嫌ってたわけでもないし、私が望めばラトリア様も受け入れてくれただろう。

 なのに私は身を引く事を選び、43歳になるまで独り身を貫く事になった。


 ゴルディア様、ラトリア様に婚姻の世話を切り出されても、それを断ってまでルーナ家と共に生きる事を選んだのだから、確かにゴルディア様を受け入れても良かったんじゃ……?


 自分の記憶を掘り起こす私を、ダンさんは私の頭を撫でながら黙って待ってくれている。


 ダンさんとゴルディア様。2人ともラトリア様が愛した男性。

 なのに私はゴルディア様を受け入れず、ダンさんのことは受け入れた。2人はいったい何が違ったんだろう?


 そんな私の脳裏を過ぎるのは、ヴェルナ家に引き取られたばかりの私の姿。


「……そう、か。そういうことだったんだ……」


 私自身ですら気付かなかった心の奥底の想いを、衝動に任せて口にする。


「……幼い頃にヴェルナ家に引き取られた私は、ラトリア様と共に人生を歩んで参りました。ラトリア様が喜べば私も嬉しく、ラトリア様が泣けば私も悲しかった。ラトリア様の人生は、等しく私の人生であったのだと思います。でも……」


 ずっと一緒に過ごしてきた私とラトリア様。

 だけどゴルディア様は、そんな私よりももっと早く、ラトリア様に寄り添っておられたから……。


「ゴルディア様は、私がラトリア様と人生を共にする前からラトリア様の心に存在していたんです。全てを共に体験し、共に分かち合ってきた私とラトリア様だけど。ゴルディア様だけは、私と出会う前からラトリア様の中に既にあったから……」


 ソクトヴェルナ家に引き取られて、失敗しないように、嫌われないようにと怯えて暮らしていた私。

 そんな私の中で、ゴルディア様だけはラトリア様と共有していない、ラトリア様だけのものだったんだ。


 大好きなラトリア様に嫌われないように、大切なラトリア様が大事にしているものには触れようとは思わなかったんだ……!


「……なるほどね。話してくれてありがとうエマ」


 自分でも気付かなかった心の奥底に触れて慄く私の頭を抱き寄せ、額にそっと口付けをするダンさん。


「予定よりちょっと早いけど、エマを愛したくて仕方ないから宿に行こう。街デートは終わりになっちゃうけど構わないかな?」


 なんだか少し辛そうなダンさんの様子が気になったけど、ダンさんに愛したいと言われて断ることなんて出来そうもない。

 構いませんと頷くと、彼はニッコリ笑って私に熱いキスをしてきた。


 自分の舌に絡まるダンさんの舌の感触が気持ち良くて、ダンさんの首に両腕で抱きついて貪るようにダンさんの口を吸う。

 そんな色に溺れた私は、ダンさんが私を抱きあげてポータルで宿に転移し、部屋のベッドに押し倒されるまで全く気付かなかった。


 ダ、ダンさん! 身体操作性補正を無駄に活用しないでくださいよぉっ!


 私の唇は塞いだままで、器用にお互いの衣装を剥ぎ取っていくダンさん。

 お互い裸になった所でキスを中断し、真剣な眼差しで私を見詰めてくる。


「エマ。お前が俺のものであるように、俺もお前のものだって事を忘れないでね。お前は何の遠慮もせずに、俺の全部を受け取っていいんだよ」

「え……? あっ、んんっ……!」


 ダンさんの言葉に戸惑う私に構わず、ダンさんは私の中に侵入はいってくる。

 私の中をゆっくりと往復しながら私を両手で抱き締めたダンさんは、空いている口で私の耳元で愛を囁いてくる。


「大好きだよエマ。エマのこと愛してる。凄く気持ちいいよエマ。だからエマも気持ちよくなって。俺を感じて、俺の全部を受け取って、エマぁ!」


 体の奥に熱いモノが流し込まれる。

 私にピッタリと密着して愛を注ぎ込んでくるダンさんは、まるで懇願するように私に囁き続ける。


「俺はエマのものだから。俺の中身は全部エマに渡すからね。俺はラトリアも愛してるけど、今この瞬間は間違いなくエマだけの俺だから」


 その後もずっと私に愛を注ぎ続けるダンさん。

 絶対に離さないと両腕で抱きしめられながら、何度も何度も熱い想いを注ぎ込まれる。


 なんだか必死なまでに私を愛してくれるダンさんの姿に、お腹だけじゃなくて胸の中まで熱くなってくる。


「エマ。もう絶対に放さないからね。俺は生涯エマを愛し続けるから、生涯俺の愛を受け取ってくれエマ。エマに渡した俺の中身は、エマだけに渡す俺の気持ちだから」


 私の物。私だけの物。


 ダンさんがどうしてこんなに必死に私を愛してくれるのか良く分からない。

 けどなんだか胸の中が熱くなって、収まり切れない熱さはやがて私の瞳から零れ落ちた。

 
 ……自分が何で泣いているのか分からない。

 だけど、なんだか幸せな気がする……。


 ぼやけた視界の中で愛する人を見詰めながら、彼が注いでくれる愛情の全てをただひたすらに受け止め続けた。


 心から貴方を愛します。私だけを愛してくれる、ダンさんを……。
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