異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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5章 王国に潜む悪意2 それぞれの戦い

314 マモンキマイラ② 熱視の真価 (改)

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「クリープリーパーって……! 自分が刈り取られる側なんじゃない、もうっ!」


 熱視を発動させた私の目に映ったのは、魔力で繋がったマモンキマイラとクリープリーパーの姿だった。


 オリハルコンダガーでクリープリーパーの首を飛ばす。

 叫喚静刻で魔力を搾り尽くす。


 そうして殺されたはずのクリープリーパーの魔力は、大気に還元されずにマモンキマイラに吸収されていく。


 原理は分からないけれど、クリープリーパーを殺すたびにマモンキマイラの体力が回復していたみたいね。

 調子に乗って眷属を殺せば殺すほど、マモンキマイラには常時ヒールライトがかけられていたようなものだった……!


「ったく、してやられたわ……」


 まさか眷属の存在が攻撃用じゃなくて、回復の要だったなんてね……!

 ダンに熱視の真価を教えてもらっていなかったら、力尽きるまでクリープリーパーを殺し続けてしまっていたかもしれないわ……。


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


「ねぇティムル。ドワーフ族ってさ、熱視の能力を勘違いしてる気がするんだ」


 改めて名匠の浸透を進めていた私に、突然ダンがこんなことを言い出した。


 なんでドワーフ族でもないダンが、ドワーフ族の種族特性である熱視について語り出したのか良く分からなかったけれど……。

 名匠の発見、熱視の発現方法を特定したダンの言葉を聞かないわけにはいかないわよね。


「まず始めに、ティムルの熱視の認識を確認させてもらうね?」


 私が聞く体勢を取ったと判断したダンは、私のことを背後から抱きしめながらゆっくりと語り出した。


「熱視は物体、もしくはスキルの熱を視覚化する能力で、上級レシピでのアイテム製作には熱視の発動が不可欠。これで合ってるかな?」


 頬ずりしながら耳元で囁かれるダンの声に酔いしれながら、間違いないわと彼に言葉と頬ずりを返す。


「あーもうティムル可愛すぎぃ。ちゅっちゅ」


 んもぅ。貴方にキスの雨を降らされるのは最高に好きなんだけど、今は話の続きをお願いしたいのよー。


「それで今回俺達って、オリジナルアイテム開発を試してみたじゃん? その過程で俺は神鉄武器のウェポンスキルジュエルの生産にも成功したよね?」

「神鉄武器のウェポンスキルは、貴方が勝手に独断で生み出したんじゃなかったかしらー?」

「まぁまぁ聞いてよお姉さん。咆哮のスキルジュエルを始めて生み出した時って、かなりの魔力を使って長時間スキルを発動してたんだけどさ……」


 頬ずりしながら両手を私の服の中に差し込んで、私のおっぱいを揉んでくるダン。

 真面目な話をしているからか、乳首への刺激は控えてモミモミと優しく揉み込んでくる。


 本当におっぱいが好きな人ねぇと和んでいた私は、次のダンの言葉を理解するのが遅れてしまった。


「生産スキルを発動しても……、んだよ、ティムル」

「…………え?」

「アイテム開発を試して、失敗例も成功例も何度も体験したけどさ。成功して完成品が出来ても、失敗して素材が失われても、スキルを途中でキャンセルしても、そこに熱の発生は確認できなかったんだ」


 戸惑う私に丁寧に説明してくれるダン。

 私の思考は止まり、おっぱいに与えられる刺激ばかりに意識がいってしまう。


「意識してなくて気付くのが遅れたけど……。俺の五感補正ですら温度変化を感じ取れなかったんだから、まず間違いないと思うんだ」

「そんな……、そんなはずないわよダン……。熱視で熱を見れるのは間違いないし、上級レシピ製作でスキルの温度上昇をこの目で何度も確認したのよ……?」

「うん。熱視が温度を視覚化できるのは合ってると思う。間違っているのは上級レシピ製作時のケースの方だよ」

「どういう、こと……?」

「ティムル。上級レシピ製作で熱視が見ているのは、温度じゃなくて魔力の濃度だと思うんだ」

「温度じゃなくて……、魔力……? んぁっ……!」


 ダンの言葉を反芻して理解しようとするけれど、指で扱かれ始めた乳首からの刺激が思考を邪魔して考えが纏まらない。


「人間族は例外としても……。ドワーフ族の熱視だけ、妙に戦闘力が低すぎるとは思っていたんだ」


 私の乳首をくいくいっと優しく引っ張りながらも、ダンは至極真面目な口調で話を続けていく。


「いくら生産に特化した種族だとは言え、獣化、竜化、精霊魔法に魔技と比べて、熱視だけ活躍の幅が狭すぎるよね? ドワーフ族全員が職人になるとも限らないのにさ」

「はぁぁぁんっ……!」


 気持ちいい……。ダンに触られると気持ちよくなりすぎるのぉ……!

 ダンは私の乳首を玩具にしながらも、私がダンの話を聞けるギリギリの快感に留めてくるから、お姉さんもどかしくて仕方ないわよぉ……!


「熱視が熱と魔力を視覚化できる能力だと考えると、色々腑に落ちるんだ」

「腑に、落ちる……ってぇ?」

「アウターのトラップなんかも魔力によって設置されているものだから、探索魔法無しでも熱視で発見できるようになるし、視認が非常に困難な精霊魔法を目で捉えることも出来る。エルフ族の天敵として相応しい能力だと思うんだ、魔力視の能力は」

「ねっ、ねねね熱視じゃなく、ってぇ……。ま、魔力、視ぃ……?」

「後で試してみたいんだけど、熱視なら気配遮断も見破れるんじゃないかな。もしそうなら由々しき事態だよね」

「あぁんっ! 話が、話が頭に入ってこないっ、からぁっ……! 1回乳首弄るのやめ……、引っ張っちゃだめぇぇぇ……!」


 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


 あのあとダンが盛り上がっちゃって、熱視の検証をしたのは何度もダンにお腹いっぱいにされた後だったのよねぇ。

 すっごく気持ちよかったわぁ……って、余計なことまで思い出してるんじゃないわよ私。


 ダンと詳しく検証した結果、熱視で気配遮断スキルを見破ることこそ出来なかったけれど、誰かが姿を消している不自然な魔力の流れなら目で見ることが出来た。

 物凄く集中すればダンの体を巡る職業補正の動きも、おぼろげにだけど見ることが出来た。


 ダンの体で体温が上がっている部分、魔力操作で制御されている部位なんかも把握することが出来たわ。

 今後色んな事に活かさなきゃねっ。


「もうアンタの好きにはさせないわよぉ?」


 熱視で暴いた、眷属からの体力の循環回復。


 循環回復以外は殴ってくるだけなので、竜王と比べるとかなり単純な能力のように感じるけれど、タネが分からないと破れない厄介な能力だわ。

 だけどタネが分かれば対処も簡単。眷属を放置すればいいだけね。


 コイツはジジイとネフネリを触媒として生み出された存在なんだから、もしかしたらアウターから生み出された竜王よりも性能が下なのかもしれないわねぇ。


「ジジイ……いえ、ロジィにネフネリ。私、アンタたちのことがずっと大嫌いだったわ。……だから遠慮なく滅ぼさせてもらうからっ!」


 歯軋りを続けるマモンキマイラに死刑を宣告する。


 アンタを殺す理由は積年の恨みって奴よ。間違ってもイントルーダーになったアンタたちの魂を解放する気なんてないわ。

 アンタたちが魔物に堕ちようが、そんなの私の知ったことじゃないから。


「行くわよ、覚悟しなさいっ!」


 熱視を発動したままマモンキマイラに駆け寄り、乱気流を纏ったオリハルコンダガーを叩きつけていく。


 気持ちが落ち着いたおかげでマモンキマイラの攻撃が良く見える。

 私の動きについてこれないクリープリーパーの動きなんか、魔物察知での把握で充分すぎる。


 私への攻撃に巻き込まれて、何度かクリープリーパーが潰される。


 だけどマモンキマイラが潰したクリープリーパーからは魔力の供給は行われないみたい。

 厄介な能力だけに、発動には細かい制限があるのね。


 熱視を発動したままで死闘を演じるのは今回が初めて。

 だから今まで気付けなかった色々な事に気付く事が出来た。


「これが熱視の視界……。ドワーフ族が本来見られるはずの世界……!」


 熱視で見ると、魔物は本当に魔力の塊で構成されているということが良く分かる。

 体を動かす度に魔力が流れ、魔力の流れを見れば次の動作を予想することも難しくない。


 ダンに熱視の真価を聞かされても、竜化や魔迅に比べて戦闘力は低いと思い込んでいた。

 けどそれはとんでもない勘違いだったわね。


 職業補正も目で見れる私は、相手が魔物であろうが人間であろうが、魔力の流れで相手の動きを察知することが出来る。

 ニーナちゃんの凄まじい敏捷補正も、フラッタちゃんのブレスの兆候も、ヴァルゴの魔迅の動きも、リーチェの精霊魔法だってこの眼で捉えることが出来るのだ。


 こんなの、常に相手の手札を見ながら戦えるようなものじゃないの……。

 私の戦闘能力が低いのは、ただ私が熱視を使いこなせていなかったからなんだっ!


「遅いっ! そんなの喰らってあげられないわよっ!」


 ただでさえ敏捷補正でマモンキマイラを上回っていたのに、熱視で魔力の流れを見る事によって動きの予測まで出来てしまう。


 振り下ろされる拳をギリギリで躱して、その腕に乱気流を叩き込み続ける。

 いつの間にか体力を削り終えていたらしいマモンキマイラの4本の腕は、私がつけた切り傷でボロボロの状態になっている。


「ギリギリギリギリギリギリ……!!」


 悔しそうに、不快な音を立てて歯軋りをするマモンキマイラ。

 だけど私の碧眼はマモンキマイラの動きを全て把握し、万が一を起こす可能性さえ排除していく。


「乱っ、気流ーーっ!」


 私に襲い掛かるボロボロの腕目掛けて、2本のダガーから同時に乱気流を叩き込む。

 手首の先から斬り飛ばされる、マモンキマイラの巨大な拳。


「…………っ」

「隙だらけよぉっ!」


 怯むマモンキマイラに構わず、棒立ちの足に乱気流を叩き込み続け、右前足の膝から下を切り離す。

 小さなダガーの斬撃でも巨大なイントルーダーの体を切り飛ばせるなんて、乱気流は本当に強力なウェポンスキルだわ。


「そうだ、いまならっ……!」


 そこでふと思いつき、マモンキマイラの体の下を駆け抜けて背後を取り、左後ろ足に向かってインパクトノヴァを連射する。


「神代より誘われし浄命の旋律。精練されし破滅の鉾。純然たる消滅の一矢。汝、我が盟約に応じ、万難砕く神気を孕め。インパクトノヴァ」


 思わぬ負傷に動揺して反応が遅れたのか、足先に手が届かなかったからなのかは分からないけれど、今回は受け止められることもなくマモンキマイラの左後ろ足は弾け飛んだ。


 斬り飛ばした腕と弾け飛んだ足から、大量の出血と共に魔力が大気に還っていくのが分かる。

 熱視でマモンキマイラの魔力の流れを注視しながら、残った足と腕を1本1本インパクトノヴァで丁寧に吹き飛ばしていく。


「もう私の攻撃魔法を止められるなんて思わないでっ!」


 私の魔法を受け止めようと魔力を集中した場所を外してインパクトノヴァを撃ち続け、4本の腕と足は全て欠損し、残った頭部で歯軋りしながら私を睨みつけてくるマモンキマイラ。


 その怒りと憎悪に満ちた視線を受けても、最早何も感じない。

 負け犬の視線なんて、どうでもいい!


「青き風雪。秘色の停滞。白群の嵐。碧落より招くは厳寒。蒼穹を阻み世界を閉ざし、空域全てに死を放て。アークティクブリザード」


 行動阻害効果のあるアークティクブリザードを展開し、鬱陶しいクリープリーパーたちの動きを止める。


 手足を失い眷族を凍らされ、一切の抵抗が出来なくなったマモンキマイラ。

 私はその正面に立ち、オリハルコンダガーを構える。


「……私は貴方達のことが大嫌いよ。ロジィには様々なものを奪われ続け弄ばれたし、ネフネリには散々足を引っ張られ、商会を引っ掻き回されたからね」

「ギリギリギリギリ……!!」


 私の言葉に反応することもなく、ただ歯軋りを続けるマモンキマイラ。


「でも貴方達が居なければ、私はきっとダンと出会うことが出来なかった。だからそのことだけは感謝してあげる」


 魔物となった彼らに私の言葉が届いたとは思わないけれど、ダンと出会わせてくれたことへの感謝だけは伝えたかった。


 自己満足の言葉を告げた後は、2人にされた仕打ちを思い出してダガーを握る手に力を込める。


 よくも……。

 今までよくも散々やってくれたわねええええっ!!


「自分で稼ぎもしないくせに、商会の金をどんだけ使い込めば気が済んだのよアンタはぁっ!! アンタが湯水の如く無駄遣いするお金で、いったいどれだけの人が助けられたと思ってんの!!」


 ネフネリ! アンタいったいいくら無駄金を使い込んだと思ってるのよぉっ!!

 自分では1リーフも稼がないくせに、毎日のように王金貨級の出費をしてくれちゃってさぁっ!


 行商なんて大して稼げないのよっ!?

 アンタの贅沢のために私がいくら切り詰めた生活を強いられたか分かるっ!?


「今度また人に生まれ変われたら、自分たちの生活費すら厳しい状況でもムーリたちを援助し続けた、ダンとニーナちゃんを少しは見習いなさいっ!!」


 だっていうのにアンタったら、感謝するどころか逆恨みで嫌がらせばっかり!

 心底ウンザリしてたのよっ、アンタにはぁっ!


 乱気流乱気流、乱気流ーーーっ!!


「若い娘が好きなら古くなった女は解放しなさいよっ! アンタのくっだらない独占欲のせいでどれだけの女の未来が奪われたと思ってるのっ!?」


 激情に任せてオリハルコンダガーを振るい続ける。

 やっている事は完全に八つ当たりだと分かっているけれど、ぶつけている相手は私を怒らせた張本人なんだから、八つ当たりでも構わないわよねっ!


「興味が無いなら捨てなさいよっ!! 興味が無いくせに解放する気も無いなんて、アンタはどれだけ女を弄べば気が済むのよっ!!」


 このバカバカバカっ!!

 乱気流っ! 乱気流ーーっ!!


「このクソジジイ! もしもアンタに再会できたら、どうしても言ってやりたいことがあったのを思い出しちゃったわよ! アンタって、何十年も一方的に女を弄んできたくせにさぁ……!」


 ダンと会って初めて知った恋のときめき。

 ダンに抱かれて初めて知った愛の温もり。


 ダンと愛し合って初めて知った、天上の快感。


「何度触れられてもアンタには嫌悪感しか抱けなかったわ! アンタに触れられても不快感しか覚えなかったわ! アンタは女を欲望のままに弄んだつもりなんでしょうけど、アンタに抱かれた女は誰1人、アンタに快楽を覚えることはなかったわよっ!!」


 心が抱きしめられるような安心感。

 2人の体の境界線が無くなるような一体感。


 この先もずっと幸せな日々が続くと確信できる、期待感。


「50人以上も女を一方的に弄んでおきながら、その誰をも満足させられなかったなんて笑っちゃうわ!! 地獄に落ちたらもう1度女を勉強し直すことねっ、このヘタクソジジイーーーーーっ!!」


 乱気流で斬りつけながらインパクトノヴァを詠唱し、最後はマモンキマイラの頭部を粉々に吹き飛ばしてやった。

 吹き飛ぶ寸前、私の言葉を聞いたマモンキマイラが呆気に取られたような表情になったのは、きっと私の気のせいに違いないわ。


「あはーっ。さいっこうの気分だわーっ!」


 なんだか胸のつかえが取れたかのような、凄く清々しい気分ね。

 ジジイにヘタクソって言えただけで、こんなに爽快な気分になれちゃうなんてっ。


 あの時の私は……、私以外のジジイに買われた女たちも慰みものにされるのは仕方ない状況だったんだから、せめて気持ち良くくらいはして欲しかったわよ。


 女が全員ジジイに拒否感を抱いていたとは言えさぁ。

 1度だって、1人だって気持ちよくしてあげられないなんて……。


 いくらなんでもヘタクソすぎでしょ、あのエロジジイっ。
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