異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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5章 王国に潜む悪意1 嵐の前

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 ラトリアから告げられた各地のアウターの異変。

 恐らくメナスがイントルーダーを集める為に、各地の魔物を討伐して回っているのだろう。


「アウターからの魔物消失……。私たち以外の誰かが……?」

「しかも複数個所……なのじゃ。これは由々しき事態のようじゃのう……!」


 うちのメンバーは事の重大さに顔を顰めている。

 ヴァルゴはイントルーダーと戦った事は無いけれど、造魔で生み出された竜王を見たことがあるからか、事態の深刻さを理解しているようだ。


「ダンと同等の魔力を持っている相手なんているとは思えないけど、造魔には生贄召喚があるんだよね……。時間と手間をかければダンじゃなくてもイントルーダーを召喚することは出来ると思うの」

「アウターエフェクト5体に守らせていた竜人族牧場を解放しても何のリアクションも無かったのは、イントルーダーを集めていたから……ね。嫌になっちゃうわぁ……」

「イントルーダーを召喚するのは並大抵じゃないと思うけど……。それでも、竜王クラスの魔物が複数同時に襲ってくる可能性は出てきたかな……」

「私たちも竜王戦の頃と比べて強くなっているし、ヴァルゴだって加入してるけど……。複数体のイントルーダーを相手するには、ちょっと戦力不足かもしれない……わねぇ」


 ニーナとティムルが、彼我の戦力差に慄いている。

 イントルーダー単体でもやばいのに、そのイントルーダーを倒しているメナス、イントルーダーが引き連れている従者など、相手の戦力がどれほど膨れ上がったのかは見当もつかない。


「しかも相手の戦力はイントルーダーだけではないからのぅ。普通の魔物狩りはアウターエフェクトにすら太刀打ちできないのじゃ。だというのにここにきてイントルーダーまで相手にせねばならぬとはの……!」

「アウターエフェクトの厄介なところは移動魔法が適用可能な事と、人と同じように潜伏が可能なことかな。使い方次第ではイントルーダーよりよほど恐ろしいくらいなのに……!」


 フラッタとリーチェは、アウターエフェクトに再注目している。


 俺達にとっては雑魚に成り果ててしまったアウターエフェクトだけど、この世界の基準では最強の魔物として扱われていて、殆どの魔物狩りは対抗出来ないほど強大な存在だ。

 そんな魔物がほぼ無制限に生み出され、移動魔法を使い人に紛れ込んでいるという事実に背筋が凍る。


「敵にイントルーダーとアウターエフェクトを両方揃えられたのは、痛いね……!」

「まったくなのじゃ……! 舐めてかかっていたつもりはなかったのじゃが、それでもまだまだ敵を甘く見すぎていたのやもしれぬ……!」


 単純な戦闘力が頭抜けて高いイントルーダーと、使い方次第では幅広い運用が可能なアウターエフェクト。

 どっちか片方でも死ぬほど厄介だっていうのに、両方揃ってしまうと出来る事が格段に広がってしまう……!



「……いくら旦那様でも、このままでは手が足りません。守人たちにも職業浸透を急がせましょう。アウターエフェクトを任せられる戦力が有ると無いとでは、我々の負担が大きく変わりますからね」


 ヴァルゴは決意に満ちた目で俺を見つめてくる。

 魔人族の悪を貫く槍の力、ペネトレイターに頼って欲しいと目で訴えかけてくる。


 ペネトレイターの戦闘技術には何の不安も無い。

 なので職業浸透さえ進んでくれれば、アウターエフェクトくらいは軽く蹴散らしてくれるはずだ。


「イントルーダーという魔物については分かりませんけれど……」

「ムーリ?」

「ダンさんが望むのであれば、きっとトライラム教会も全面的に協力してくれるはずですっ! 勿論トライラムフォロワーだってそうです! 子供達が守られるだけの存在ではないと言ったのはダンさんです。どうか私たちのことも頼ってください!」


 かつては助けを待つことしか出来なかったムーリが、自分たちに頼れと手を差し伸べてくれる。


 トライラム教会やトライラムフォロワーたちに協力を要請するのか。

 手が回らなくて守ってあげることが出来ないのであれば、事情を話して共闘してもらうほうがかえって安全だったりする……、かな?


「勿論我が竜爵家も全面的に協力いたしますよ。保護している竜人族だってきっと協力してくれるでしょう。時間的猶予がどの程度あるのかは不明ですが、事情を説明して職業の浸透を進めさせたいと思います」

「ダンさんと仕合わせの暴君は沢山の人と関わり、手を取り、そして救ってきたんです。その恩返しの機会に恵まれたというのであれば、みんな喜んで手を貸してくれることでしょう」


 ラトリアとエマも協力を約束してくれる。


 ぺネトレイター、トライラムフォロワー。トライラム教会、竜爵家と竜人族。

 どこまで仕上げられるかは分からないけれど、どうやら俺達には頼りになる味方が沢山いるらしい。


「……うん。ちょっと落ち着いてきたよ。ムーリ。ラトリア。エマ。3人ともありがとう。3人の言葉、凄く嬉しいよ」


 敵の強大さに思わずビビっちゃってたけれど、俺達だけで戦うわけじゃないんだ。

 何が起きたって、みんなと一緒ならきっと大丈夫のはずだ。


「俺達がこの世界を守るなんて、そんな傲慢なことは考えない事にする。犠牲が出るかもしれない。後悔する事になるかもしれない。それでもみんなと一緒に戦ってみたいんだ」

「ええ。直接的な戦闘のお手伝いは出来ませんけど……。それでも一緒に戦わせてくださいっ」

「皆さんの相手は私にとっても主人の仇です。どうか私にも手伝わせてください」


 力強く頷いてくれるムーリたちが頼もしい。

 敵の恐ろしさなんかよりも、みんなの頼もしさのほうがずっとずっと強く感じられる。



 よしっ! 先のことを考えて悩んでも仕方ない!

 イントルーダーとアウターエフェクトの大群が襲ってくるかもしれないのなら、その情報を共有して協力を仰ごう!


「……ただ、実際に何をしてもらうかはまだ提示できない。まずはラトリアに各地の状況を調べてもらわないといけないかな」

「了解です。直ぐに各地のアウターを調査しますね」


 真剣な表情でラトリアが首肯する。


 頼もしいみんなと一緒に戦えるのは心強いけど、俺達がメナスの動きを全く把握出来ていないのは問題だろう。

 メナスが何を企んでいたとしても、今の俺達には未然に防ぐ手段が無い。常に先手を取られる事を覚悟しないといけないな……。


 でも防ぐ手段が無いのなら、何かが起こる事を前提に、何が起こっても大丈夫なように備えておけばいいだけだ。


「ニーナ、ティムル、フラッタ、リーチェ、ヴァルゴ。俺達がみんなを守るんじゃなく、みんなと一緒に戦う時が来たみたいだよ。みんなと一緒に必ず勝利を収めて、そしてみんなで幸せになろうね」

「みーんなとっくにダンに幸せにされちゃってるのーっ! 敵なんか関係無く、私たちはとっくに幸せなんだよーっ」

「あはーっ! 私だけ力不足を感じることが多かったから、ダンと肩を並べて戦えるのがすっごく嬉しいわーっ」

「ふはははっ! ニーナの言う通りじゃなっ! 幸せになるために勝利を目指すのでは無く、今ある幸せを失わないために、妾達は必ず勝利せねばならぬのじゃっー!」

「……ふふ。ずっと独りだったぼくが、大好きなみんなと一緒に戦えるなんて夢みたいだよ。もうみんなと一緒だってだけで誰にも負ける気はしないかなっ」

「職業浸透も戦闘経験でも劣る私を信頼してくださって、本当に光栄です……! 旦那様とみんなの信頼を裏切らぬよう、我が槍にて全てを貫き滅ぼしてご覧に入れましょう!」


 ニーナもティムルもフラッタもリーチェもヴァルゴも、仕合わせの暴君メンバーは気合充分といった様子だ。

 何の不安も恐怖も感じさせないみんなの姿に、漠然と抱いた不安感が溶けて無くなっていくようだ。


 ここに居る8人が愛おしくて仕方ない。けれど押し倒すのはお預けだ。

 みんなと甘い毎日を過ごす為に、今はやるべき事をやらないとね。




「ムーリたちにも1度竜王を見てもらおうか。これからみんなで奈落に行こう」


 イントルーダーとの対峙経験があるか無いかで共有できる危機感が変わってきそうだから、ムーリたちには1度、竜王様による圧迫面接を受けてもらう事にする。


 みんなで奈落の中継地点に転移して、ロード種、デーモン種、そして竜王を造魔で呼び出してみせる。


「はーっ……! はーっ……! はーっ……!」

「……そしてこれがイントルーダーだよ。造魔、ブラックカイザードラゴン」

「――――っ……!」
 

 大きく目を見開き、滝のような汗を流すムーリ。

 アウターエフェクトまではなんとか耐えたムーリだったけど、イントルーダーである竜王の姿を見た途端に、恐怖で呼吸が出来なくなってしまったようだ。


「こ……これが……、竜、王……!」

「こ、こんな魔物が、存在していた、なんてっ……!」


 流石に剣の達人だけあって、ラトリアとエマは竜王を前にしてもなんとか心が折れずに対峙できていた。

 けれどそれが限界だったようで、2人は竜王を消し去るまで指1本動かすことも出来ないほどに全身が強張っていた。


「ムーリ、ラトリア、エマ。お疲れ様。頑張ったね。偉かった」


 造魔竜王を消して、動けなくなった3人を安心させてやる為に力いっぱい抱きしめる。


 頑張ったね3人とも。

 でも今のがイントルーダーで、これから俺達に襲いかかってくる相手なんだ。


「……安心していいよ。イントルーダーなんかに大切なお前達を絶対に傷つけさせやしないからね」


 震える3人を抱きしめて、力強く俺を見詰めてくれるパーティの5人を見て、改めて誓う。


 俺は、お前達を不幸にしようとするこの世界を絶対に許さない。

 この世界全てを滅ぼしてでも、必ずお前達を幸せにしてみせる。必ずお前達と一緒に幸せになってみせるからな。


 さて、それじゃ疲弊しきってるムーリたちを早く休ませてあげないと。


「俺は1度3人を宿に送ってくるから、その間にみんなには魔物狩りをしててもらっていいかな?」

「んー? 勿論構わないけど、1度探索を切り上げたのにこのタイミングで魔物狩りするのはどうしてなのー?」

「休む前にヴァルゴの射手と狩人を浸透させようかなって。明日1日かけて射手と狩人を浸透させるのは効率が悪すぎるからさ」

「あらぁ? まるで明日はヴァルゴに職業設定をしてあげられないみたいな言い方じゃなぁい? もしかしてダンは別行動する気なのぉ?」

「うん。明日俺は教会や守人の集落に行って、敵の脅威を直接伝えてこようかと思ってるんだ。その間みんなには職業浸透を優先してもらおうと思ってるから、今日のうちに浸透しにくい斥候にしておきたいんだよねー」


 現状俺は職業浸透がほぼ終わっている状態で、みんなの職業浸透はまだ不十分だ。

 だからみんなには職業浸透を優先してもらい、細々した用事は俺が担当した方が効率がいいと思う。


「今回ムーリたち3人にはイントルーダーの相手はさせられないから、そのつもりでいてね」

「う、うぅ……。力不足で済みませんけど、戦闘面ではとてもお力にはなれそうもないですぅ……」

「もしかしたら双竜の顎の2人には、アウターエフェクトまでは相手してもらうかもしれない。今の2人の実力なら安心して任せられると思うからね」

「……ええ、お任せくださいっ。もう2度とアウターエフェクトなんかに後れは取りませんよ……!」


 真っ赤な瞳を決意の炎で更に燃え上がらせたラトリアが、力強く頷いてくれる。

 大丈夫。ラトリアもエマも格段に腕を上げてるから。絶対に負けたりしないよ。


 3人をパワーレベリングして最前線に立たせる案もあるかもしれないけれど、生兵法で大切なみんなを危険に晒すわけにはいかない。

 3人には実力に見合った場所で戦ってもらう事にして、イントルーダーは仕合わせの暴君6人で対処するしかないだろうな。

 少なくとも、現時点では。


「職業浸透が終わったら竜王を使って訓練をしよう。悪いけどこうなってしまった以上は、竜王様にも徹底的に協力してもらおうか」

「……そうじゃな。竜王に申し訳無く思うのであれば、竜王に恥じぬくらいに腕を上げるべきなのじゃ」


 少し複雑そうな表情を浮かべながらも、フラッタは小さく頷き同意を示してくれる。


 イントルーダーに対抗するためには、イントルーダーとの戦いを経験するのが手っ取り早い。

 せっかく竜王を無限湧きできる状況にあるんだ。竜王には馬車馬のように働いてもらう事にしよう。


 明日の方針が決まったところで、まずはムーリ達を宿まで送り届ける。



「すぐに戻ってくるからね。そしたら恐怖でも不幸でも無く、幸せと快感でめっちゃくちゃにしてあげるよ」


 自分達の実力不足に歯痒い想いをしている3人に、大丈夫だよって想いを込めて口付けをする。


 お前たち3人のおかげで前向きな気持ちになれたんだ。感謝してる。

 その感謝の気持ちは今夜いっぱい注いであげるから、ちょっとだけ待っててね。ちゅっ。



 3人をベッドに寝かせてから奈落に戻って、直ぐにニーナたちと合流する。


 ヴァルゴの射手は瞬く間に浸透を終え、ついで狩人も浸透。

 予定通り斥候に設定して、本日の延長戦は終了だ。



 狩人 最大LV50
 補正 体力上昇 魔力上昇- 持久力上昇 身体操作性上昇
    幸運上昇 装備品強度上昇
 スキル 生体察知


 斥候 最大LV100
 補正 体力上昇 魔力上昇 持久力上昇+ 敏捷性上昇+
    身体操作性上昇+ 幸運上昇 装備品強度上昇
 スキル 魔物察知



「お待たせだよー。恐怖も不安も忘れるくらいに、さいっこうに気持ちよくしてあげちゃうよーっ」


 宿に戻ると、早速9人での大乱交の始まりだ。

 直前まで魔物狩りをしていた反動なのか、仕合わせの暴君の5人は凄く積極的で最高に気持ちいいし、ムーリたち3人も不安を抱いていたのか、安心を求めて積極的に縋りついてくる。


 これからはメナスがいつ行動に出るか分からないので、徹夜して体調を崩すわけにはいかない。

 なので、みんなにが気絶するまで感謝の気持ちを伝え続けて眠りについた。



 翌朝目覚めたみんなをキスしながら貫いて、失神という名の2度寝を堪能してもらう。


 大変な状況下に置かれているのかもしれないけれど、みんなを抱きしめる事を自重する気なんて無いからね。

 ああもうみんな可愛すぎるぅ。ちゅっちゅっ。


 足の付け根や別の場所から俺の注いだ愛が溢れているみんなと口付けを交わし、グロッキーなみんなを残して1人宿を後にする。

 そしてまずは、トライラム教会本部に足を運ぶ事にした。


「あら? ダンさんがお1人でこちらにいらっしゃるなんて珍しいですね?」


 アポ無し訪問だったので流石に教主のイザベルさんには会うことが出来なかったけれど、運よくテネシスさんには会うことが出来た。

 事情を説明して、トライラム教会と教会兵に協力をお願いする。


「お話は分かりました。この話は私からイザベルに報告しておきますが、私の権限で皆さんに協力することをお約束いたしますね」


 ふふっと微笑みながら、二つ返事で協力を約束してくれるテネシスさん。


「ありがとう。トライラム教会が強力してくれるのは心強いよ」

「こちらこそ感謝しますよ。職業浸透の仕組み、魔玉を用いた浸透度測定など面白い話を聞かせてもらって……。非常に有意義なお話聞くことができました。本当にありがとうございます」


 レガリアという脅威の情報だけを共有するのもなんなので、職業浸透についても共有する事にした。

 大雑把に見積もって、魔玉を1つ発光させる間に職業レベルが10上がっていると仮定して、基本の3職は魔玉3個で浸透、みたいな基準というか目安を設けることにしたのだ。


 基準が定まれば、職業浸透へのモチベーションアップにも繋がってくれるはずだ。


「それにしても、レガリア……、ですか。ちょっと記憶が曖昧で申し訳無いのですが、トライラム教会に残っている古い記録の中にもレガリアという名前を見たことがある気がするんですよね……」

「トライラム教会の記録にレガリアが?」

「ええ、確か見た覚えがあるんですよ。ですからダンさんのことがなくても、レガリアという存在とトライラム教会は、思った以上に古くから関係しているような気がします」


 ああ、以前チラッと話してもらったと思うけど、トライラム教会ってスペルド建国よりも古くから存在していた宗教団体なんだったっけ。

 リーチェの話、エルフの里よりも教会で調べてみた方が早いかぁ?


 レガリアという記述については改めて探してみる、とテネシスさんは約束してくれた。



 トライラム教会を出て、次は聖域の樹海に転移する。


「よくぞ参られたダン殿ぉっ!!」


 ……守人の皆さんさぁ。俺の姿を見るなり跪くの、そろそろやめてくれないかな?


 ルドルさんとカランさんに会って、レガリアや迫っている脅威について報告し、魔人族たちの協力をお願いする。


「バロールの民の行方を知っているはずである、レガリアのメナス……。この名、覚えておきますぞ……!」

「我々を頼ってくれたダン殿を逆に頼るのは恐縮なのだが……。済まんが何人か転職の面倒をみてもらえないか? もう既に3つの職業の浸透を終えた者が出始めているのだ」

「もう3つの浸透が終わってるの? 流石守人、頼りになるねぇ」

「ダン殿に頼ってもらえて光栄なんだが、少々転職魔法陣が足りておらん。出来れば、転職魔法陣の種類を増やしてもらえるとありがたい」

「了解。ここは惜しまず魔法陣を設置していこうか」


 カランさんの要請を受けて、新たに魔法使いと修道士と職人の転職魔法陣を設置した。


 それとは別に職業設定スキルを使って、冒険者と行商人になってもらった人も何人か居る。

 冒険者の浸透が終われば、とうとうアナザーポータルが使用可能になる。

 これからは積極的に森の外に出て、職業ギルドのお世話になってもらわないとね。


「魔祷士……ですか? 済みません、聞いたことは無いですな」


 ついでにルドルさんを始めとして、各集落で魔祷士のことを聞いてみたけれど収穫は無かった。

 守人の人たちに職業の話題を振っても仕方ないらしい。



 3つの集落で用事を済ませ、最後にトライラムフォロワーに協力を要請する。


「シスターに聞いてるよ。でも今のところ何をするわけでもないって話じゃん?」

「僕達は今まで通り魔物狩りをして、少しでも力をつけておくね。それが結局はダンやシスターのお手伝いになると思うから」


 俺が来る前にムーリが簡単に話を通してくれていたので、とてもスムーズに話を終えることが出来た。


 子供達は巨悪との戦いに少し興奮しているようだけど、お前らはあくまでサポート要員だからね?

 でも出来るだけ頑張って職業浸透を進めておいて欲しい。


「あ、そうだリオン。冒険者ギルドで頼めばフォアーク神殿って場所に行けるんだけど、そこで探索魔法士になる事ができそうだぞ。リーチェが言ってた」

「えっ!? フォアーク神殿って何に転職するか分からないんじゃないのっ!?」

「リーチェが言うには、この職業になりたい~って強く思えば、ある程度狙って転職出来るんだってさ」


 職業を獲得した状態でなりたい職業を強く意識していれば、どうやらフォアーク神殿でも狙った職業になれそうだよー、とはリーチェの弁だ。


 サウザーは職人の浸透も間もなく終わり、念願の武器商人になれそうだ。

 スポットで素材を集めてパーティメンバーの装備を作る、か。俺達も同じことしたなぁ。


 なんて微笑ましく思いながら幸福の先端の話を聞いていたのに、ワンダからの相談で冷や水をぶっ掛けられてしまった。


「俺、コットンとピレーネの2人と婚姻を結ぼうと思ってるんだ」

「はぁっ!? ……え、マジでっ!?」


 ワンダとコットンが婚姻っすか!

 しかも2人同士に娶るって、こいつマジで言ってんの!?


「コットンがずっと苦労してたの見てたから、俺が支えてやりたいって思ってさ。2人も家族に迎えるのは大変だけど、せっかく友達になったピレーネと離れ離れにさせるのは可哀想だしさっ」

「か、可哀想って、えぇ……?」


 ワンダ、お前14歳だろぉ……?

 それでお嫁さんが2人とか爆発しろよ。


 ってそんなことを俺が言ったら、それはそれで批判が集まりそうだけどさぁっ!


「今まで踏ん切りがつかなかったけど、2人に俺の気持ちを伝えてくるっ。そしてダンが言っている脅威を払うことが出来たら、正式に婚姻を結ぼうと思ってるんだ!」


 ……ちょっと待てワンダ。

 これって完璧に『俺、この戦いが終わったら結婚するんだ』そのものじゃないかっ! 対決前に変なフラグ立ててんじゃないってばぁっ!


「……ワンダとコットンたちが決めることだから、俺から言うことは無いかな。3人で思い切り幸せになってくれたら嬉しいよ」


 ま、フラグなんか叩き折ってやればいいかぁ。

 俺が叩き折るまでもなく、自力で幸せになれる力をもう身につけてそうだけどさ。


「だけど、お前達の子供を孤児にするのは許さないからなワンダ。2人もお嫁さんをもらうんだったら、何が起きても生きて戻ってきて、家族全員で幸せになれよ?」

「ええっ!? 孤児じゃなかったらトライラムフォロワーに参加出来ないんじゃないのかっ!? どうしよう!?」

「いや、どうしようじゃねーからっ!」


 ワンダのリアクションに、思わず素でずっこけてしまった。


 お前の子供が孤児になっちゃったら、お前とコットン両方死んでるからね?

 まだ婚姻も結んでいないのに子供の話をしても仕方ないけど、アライアンスに参加させる為に両親が命を絶ってどうすんだっての。
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