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4章 マグエルの外へ3 奈落の底で待ち受ける者
281 穴 (改)
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魔人族の集落に転職魔法陣を設置し、最低限の武器も用意できた。
全ての用事を済ませたけれど、時間はまだ日没前。きっとみんなもまだ戻ってこないよなぁ。
なら俺が奈落に行って、みんなと合流した方が早いかもしれないね。
思い立ったらすぐ行動だ。
移動魔法のコンボ使用で、一気に奈落12階層まで転移した。
「さて、みんなの居場所は……」
ステータスプレートを通してパーティメンバーの位置を確認すると、やっぱりかなり離れた場所にいるみたいだ。
ここから全力で走って、みんなが帰還する前に合流できるかなぁ……って、おお?
「ダンー! 迎えに来たよーっ!」
俺が動き出す直前に目の前に転移してきたリーチェが、俺に呼びかけつつも抱きついてきてくれる。
「迎えに来てくれて嬉しいよリーチェ。ぎゅー」
ぎゅーっと抱きついてくるリーチェ、可愛すぎるぅ。
そして強く抱きしめるほどに存在を主張してくる、高反発な2つの霊峰が気持ちよすぎるよぉ。ぎゅーっ。
「でも、迎えがリーチェだけっていうのも意外だね。他のみんなも来ても良さそうなものなのに」
「うんっ。ニーナがね、ダンが抱きつかれて1番嬉しいのはぼくだからって、ぼくを送り出してくれたんだっ」
……ニーナって俺の性癖を鑑定するスキルでも持ってるんじゃないかなぁ?
そして俺の性癖に対するニーナの発言への絶対的な信頼度よ……。
「くっ……! た、確かにリーチェに抱き付かれるのが1番気持ちいいですっ……!」
「えへへ。ダンに気持ちいいって思ってもらえてるの、すっごく嬉しいなっ」
にしても、はぁ~……、
いくらなんでもこのお姫様、可愛すぎるんですけど? ぎゅー。ちゅっちゅっ。
「それでティムルがね。5人で迎えに行ったらダンはそのまま帰っちゃうだろうから、12個目の中継点に来てもらう為に、迎えは1人のほうがいいわねって」
「……確かにティムルの言い分を否定出来ないな。リーチェ1人でもお持ち帰りしたいくらいだもん」
俺は奈落の探索にそこまで興味はない。俺が興味津々なのはみんなのエロボディだけだ。
全員と合流しちゃったら、1秒でも早く宿に帰ることだけしか考えられなくなりそう。
「あははっ。それじゃお持ち帰りされる前にみんなと合流しよっか。帰る時ははみんな一緒で、ね?」
了解だよーとほっぺにキスをしている間に、リーチェがアナザーポータルを詠唱する。
現れたアナザーポータルにリーチェと抱き合ったままで入って、みんなのいる場所まで転移した。
「「ダンーっ! 待ってたのー!」じゃーっ!」
合流した途端に飛び込んでくるニーナとフラッタも抱きとめて、リーチェと合わせて4人で団子状態になってしまった。
でもフラッタ。今日はプレートメイルを外してて偉いぞっ。
「ティムルとヴァルゴもおいでー。ちょっと隙間が無いかもだけど?」
「あはーっ。首を傾げながら誘わないでくれるー?」
「わ、私も遠慮はいたしませんよ……? え、えーいっ」
ティムルとヴァルゴも巻き込んで6人でお団子になり、みんなの柔らかさと温かさ、それに匂いに包まれて物凄く安心してしまう。
俺もうみんながいなきゃ生きていけないよーちゅっちゅっ。
気の赴くままにお団子キスをしながら鑑定をする。
ニーナとフラッタが悪魔祓いがLV100になっているので、同じく悪魔祓いのリーチェも浸透を終えたことだろう。
ティムルは弑逆者が、ヴァルゴは魔導師がLV100になっている。
どうやら全員の職業浸透が終わってくれたみたいだね。
「それじゃ私とフラッタは弑逆者でお願いするのっ」
「うむっ! これで妾たちもクルセイドロアが使えるようになるのじゃーっ」
「ぼくも弑逆者を狙うよーっ! 悪魔祓いに転職出来たんだし、弑逆者だってなれるはずさっ」
フーナとフラッタはそのまま弑逆者に設定。リーチェもフォワーク神殿で弑逆者を狙うそうだ。
「ふふ。私もクルセイドロア狙いで悪魔祓いをお願いね?」
「では旦那様。私は察知スキルを目指して射手をお願いできますか」
ティムルは逆に悪魔祓いを選択。そしてヴァルゴが射手を選択した。
悪魔祓い 最大LV100
補正 体力上昇 全体魔力上昇+ 魔法攻撃力上昇+
五感上昇+ 全体幸運上昇+ 装備品強度上昇+
スキル 対不死攻撃力上昇+ 対悪魔攻撃力上昇+
全体魔法耐性+ 聖属性魔法 対魔法障壁
弑逆者 最大LV100
補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 敏捷性上昇+
五感上昇+ 身体操作性上昇+ 装備品強度上昇+
スキル 対不死防御力上昇+ 対悪魔防御力上昇+
全体物理耐性+ 聖属性魔法 対物理障壁
射手 最大LV30
補正 身体操作性上昇- 持久力上昇-
スキル 射撃時攻撃力上昇
「おっけー。リーチェ以外の職業は希望通り設定したよー」
……うん。ここまでなら特に何も問題は無いんだ。ここまでは。
だけど、ヴァルゴが新しく獲得してしまった職業が大問題なのだよ。
魔祷士LV1
補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 魔法攻撃力上昇+
敏捷性上昇+ 五感上昇+ 身体操作性上昇+ 装備品強度上昇+
スキル 魔技消費軽減 魔技使用制限緩和
魔祷士か。祈祷師なら分かるけど……。流石に聞いたことがない職業だな。
スキル的に考えて、魔人族の種族専用職業の可能性がかなり高い。
現れたタイミングを考えると、魔導師を浸透させることが魔祷士の前提条件だったんだろうか?
しかし、魔技の消費軽減は分かりやすいけれど、使用制限緩和ってなんだ?
「なぁなぁヴァルゴー。魔祷士って職業に聞き覚えはー?」
魔祷士は魔人族の専用職業の可能性が非常に高いので、一応ヴァルゴにも確認を取る。
まぁ職業の知識って時点で、ヴァルゴが知っている可能性は低い気がするけどね。
「魔祷士ですか……。済みませんが知りませんねぇ。種族専用職業なんてものがあることすら、皆様と出会ってから知りましたからね。お役に立てずに済みません」
予想通りの答えを返すヴァルゴをよしよしなでなで。
職業の話を、数百年単位で転職縛りしていた守人に聞いても分からないよね。
それじゃヴァルゴ。暇な時間を見つけて魔祷士の検証をしていこうか。
今は他の職業浸透を優先すべき時だけど、魔技使用制限緩和ってスキルは気になりすぎるからさ。
「さっ。それじゃ帰ろ……」
「待ちなさーーーーいっ!!」
「へっ!?」
転職も済んだし、早くみんなとベッドインしたいから早速アナザーポータルを起動しようとすると、凄い剣幕のニーナから待ったがかけられた。
「このまま帰っちゃったらダンをここまで呼んだ意味がないでしょっ! リーチェにダンを呼んでもらったのは、ダンにこの先を見て欲しかったからなのっ!」
「この先……って、13階層のことかな? なにかあったの?」
「何かあったというかなんと言うか……。見てもらうのが手っ取り早いと思うのじゃ。さぁダンよ。奥に向かうのじゃっ」
お団子から抜け出した好色家姉妹に両手を引っ張られ、4人団子のまま奥に引き摺られていく。
流石は獣人と竜人。パワー半端ないっすねっ!
2人に両手を引っ張られて進むと、12個目の中継地点の終わりが見えてきた。
「お、あれが中継地点の出口……。いや、なんだ?」
視界の先、中継地点の外側が真っ暗になっている事に気付く。
真っ暗……? 探索魔法のトーチを使用しているのに見えないのか?
「ダンに足を運んでもらったのはこれを見せたかったからなのよ。恐らくは奈落の最深部の中でも、更に最も深い部分だと思うんだけど……。貴方はどう思うかしら?」
「どう、って……」
ティムルの吐息を耳元に感じながら、中継地点の終わり、真っ暗な領域の手前までやってきた。
今までのアウターでは、最深部の外周は黒い壁で覆われていたケースしか見たことがなかった。
しかし奈落のこの黒い空間は……、壁じゃない?
「これ……。ひょっとして、魔力なのか……?」
真っ暗で何も見えないけれど、下から上に向かって、超高密度の魔力の流れを感じる。
魔力が満ち過ぎていて視界が得られない?
そんなことありうるのか?
「魔力が下から上へ……。下から?」
暗闇の先をよく見ると、どうやら中継地点の先には地面が無いみたいだ。
視界が得られないためにどれほどの規模なのかは見当もつかないけれど、中継地点の先には大穴が開いていて、穴の下からとめどなく魔力が噴き出し続けているようだった。
「冒険者ギルドで、奈落は別の世界と繋がっている、なんて説明されたでしょ? だからこの先に安易に踏み込んでいいものか、ぼく達だけじゃ判断がつかなくってさ」
俺にしがみ付く力を強くして、高反発なおっぱいをぎゅうううっと押し付けながら話すリーチェ。
「移動魔法が使えるから問題ないとも思えるんだけど、もし仮に別の世界に繋がってしまったら……。帰還できるかどうか分からないからねぇ」
「別の世界なんて言われても普通はピンとこないんだけど、私達の場合はダンがいるからねー。別の世界って言われちゃったら警戒しないわけにはいかないの」
リーチェさん、ニーナさん。帰還が確実なら貴女達、この真っ暗な穴の中に飛び込む気満々だったんですぅ……?
お、俺は躊躇うけどなぁ……? みんな怖くないのぉ?
それにしても、異なる世界から膨大な魔力が流入しているって、割と最近似たような話を聞いたばかりだよね。
「……これは、まるで呼び水の鏡みたいな状態だね。開拓村跡地に置かれていた呼び水の鏡からは、今思えば大量の魔力が噴き出していたんだ。あのままアウター化を放置していたら、開拓村周辺が奈落みたいなことになっていたのかもしれない」
この穴の底がどうなっているのか、呼び水の鏡のような触媒が置いてあるのか、本当に異世界に繋がっているのかは分からないけれど……。
みんなが侵入を思い留まったのは正解だね。安易に踏み込むには不確定要素が多すぎるよ。
「呼び水の鏡でここと同じことが起こせるとしたら……、やはり危険ですね。これほどの勢いの魔力の奔流、聖域の樹海では受け止めきれないでしょう」
「流石に開拓村での魔力放出はここまでではなかったけれど……呼び水、だからねぇ。時間経過で魔力の流入量が増加する可能性は否定できない」
「世界の魔力バランスが崩れ、世界中のいたる所がアウター化し、強力な魔物が跋扈する地獄のような未来が訪れてしまうかもしれません。まさしく世界滅亡の危機、ですね……!」
視認出来ない穴の先を睨みながらヴァルゴが語る、全世界アウター化の可能性。
メナスはそこまで知っていて呼び水の鏡を用いたのか、それとも何も考えずに設置しただけだったのか。
どちらにしても、アウター化を気軽に引き起こすような相手を野放しには出来ない。
異世界に繋がっているとも言われるアウター奈落。
この穴の先がどうなっているのか興味は尽きないけれど、今リスクを取ってまで確かめることじゃないよね。
「みんなには申し訳ないけど、この穴の調査は今はやめておこう。他にやるべきことはいくらでもあるからね。職業浸透を進める場合は12階層を狩場にして欲しい」
「ん、謝らなくて大丈夫。私たちも危険性は分かってるの」
俺の言葉にすぐに頷いてくれるニーナ。
この光景を見ちゃうと、この先が安全には見えないもんなぁ……。
「そうだねぇ……。守人の問題が解決して、開拓村が機能して、リーチェの問題を解決できたら、その時に改めて挑戦してみたいかなっ」
危険性は分かってるけど、行ってみたい気持ちは隠す気ないのね。
街から街へ移動するのも困難だったニーナが、奈落の底を確かめに行きたいなんて言うようになったんだねぇ。
どこに行くにも一緒に行こうね。
だからその為に、王国に残っている問題を全部片付けなきゃな。
「そう言えばみんなの浸透が終わってるけど、やっぱりアウターエフェクトもイントルーダーも出てこなかったのかな?」
「どちらも出てないわね。私達は鑑定が使えないから確実じゃないけど、レッサーデーモン、イヴィルスレイブ、サベージドレイクの3種類しか出現してないと思うわ。カラーバリエーションは豊富だったけどねー?」
肩を竦めながらティムルが報告してくれる。
でもヴァルゴ以外は分析官が出てるんだから、誰か1人くらいは鑑定を習得してもいいんじゃないの?
……って、今はみんなが戦闘力を伸ばしたい状況だから厳しいのか。
分析官の補正はかなり優秀だけど、スキルは鑑定だけで、戦闘に活かせるスキルじゃないからなぁ。
「……これは仮説でしかないけれど。アウター内の魔力が一定以下になった時に、最後の防衛手段として呼び出されるのがアウターエフェクトやイントルーダーだと思うんだ」
「最終防衛手段?」
「アウターエフェクトの出現条件は、魔物を殺し続けることなのじゃ。ではなぜアウターエフェクトやイントルーダーなどという強力な魔物が必要になるかを、ダンが来るまで皆で考えてみたのじゃ」
リーチェが提示した仮説をフラッタが引き継ぐ。
「魔物もドロップアイテムも、アウターの魔力が生み出している存在だと考えると、魔物の魔力を奪い職業を浸透させ、ドロップアイテムを回収する妾たち魔物狩りは、迷宮からしたら魔力泥棒みたいなものなのじゃ」
「……だから魔力を奪われないために、強力な魔物で防衛を?」
「アウターエフェクトやイントルーダーが出現すると、一定時間魔物の出現が無くなるよね? まるでアウターが魔力枯渇を起こしているみたいにさ」
「アウターが魔力枯渇を……?」
「これは竜人族のブレスのように、アウターにとっての切り札である強力な魔物の召喚に大量の魔力を投入している為だと思うんだよ。でも奈落ではこれだけ勢いよく魔力が供給され続けているおかげで、アウターの魔力が枯渇する心配が無く、最終防衛手段に踏み切る必要もないんじゃないかなって」
フラッタとリーチェによる、アウターエフェクトやイントルーダーとアウターとの因果関係。
確かめる術はないけれど、否定する材料もないな。
だけど、もし2人の意見が正しいのだとすれば、魔物を狩り続けた場合、いつかアウターが消滅してしまう可能性があるんじゃないだろうか?
そう言えば竜王のカタコンベで竜王を倒した後、竜王のカタコンベの魔物達は俺達を襲ってこなくなったんだよね。
最強の手駒であるイントルーダーを撃破してしまった俺達を排除するのを、アウター側が諦めてしまった、みたいな理由があるんだろうか?
「真相は分からないけれど……。突発的に強力な魔物が出てこないのはありがたいね。出来ればみんながクルセイドロアまで使えるようになってくれるとメナスの造魔スキルもそれほど脅威じゃなくなるから、奈落にいる間に頑張って浸透させようか」
「「「はいっ!!」」」
ただクルセイドロアやインパクトノヴァみたいな強力な魔法や、フレイムフィールドやドラゴンズネストみたいな範囲攻撃魔法は、対人戦では全く攻撃効果が無いからね。
対魔物戦闘力を上げた後は、やっぱり対人戦スキルの向上を視野に入れないといけない。
……いや、今の俺達より対人スキルが上の相手って、ちょっと想像できないかな?
宿に帰ってムーリたちと合流し、みんなと一緒に夕食がてら話し合いをする。
まずはラトリアとエマが嬉しそうに、シルヴァの魔物狩り復帰を報告してくれた。
「まだ病み上がりではありますが心配ないでしょう。シルヴァは竜王のカタコンベはとっくに踏破済みですからね。5人の妻たちの浸透を進めるためにも、なるべく早く探索を始めたいって」
シルヴァは職業補正に頼りきった愚か者ではなく、ゴルディアさんとラトリア直伝の剣術の達人だからな。
出会った頃のフラッタよりも剣術の腕は上だろうから、5人の新人が一緒でも危険は無いんだろう。
「シルヴァ様の奥様達は戦闘経験は全くありませんが、それでも竜人族ですからね。身体能力は低くないんです」
身体能力に優れた竜人族が、ラトリアとエマという達人に指導を受けているんだもんな。
下手すりゃ既にワンダ達より強い可能性すらありそうだ。
「まずは5人で戦士になってもらいまして、旅人、商人の3つを浸透させたら別々の職についてもらう予定です。トライラムフォロワーの子達を参考にさせてもらいました」
エマとラトリアも一緒についているみたいだから、磐石のサポート体制だ。
シルヴァとラトリアの2人は旅人の浸透を目指し、まずはインベントリを使えるようになりたいとのことだった。
「今回迎えた5人の妻達も頑張ってはいますが、私やシルヴァと同じ水準の戦闘力を求めるのは難しいでしょう。シルヴァには1人でも5人の妻を護りきれるように、冒険者や探索魔法士は浸透してもらわないといけないでしょうね」
ニコニコと語るラトリア。
どうやらシルヴァの話を出来るのが嬉しくて堪らないみたいだ。
ゴルディアさんは俺にはどうしようもなかったけれど、ラトリアがゴルディアさんに託されたシルヴァとフラッタの両方を助けてあげられたのは本当に幸運だった。
ニコニコのラトリアとエマを両側に侍らして、2人をよしよしなでなでしながら幸せな気持ちに浸る。
だけどそんな幸せな時間は、ラトリアから告げられた言葉で終わりを告げた。
「そう言えば以前竜王のカタコンベで、一定時間魔物が出なくなったことがあったじゃないですか。なんだか最近各地のアウターでも同じようなことが起こってるらしいですよ?」
「…………なんだって?」
「ヴァルハールの時と同じで、すぐに元通りに魔物が出るようになったみたいですけどねー」
ラトリアの報告に、一瞬思考が停止する。
竜王のカタコンベで起きた魔物消失事件。
その真相は、俺達がイントルーダーである竜王を倒してしまった事で起きた、アウターの魔力枯渇現象だ。
あれと同じことが各地で起こっている……?
それの意味するところは、誰かが各地のアウターで、イントルーダーを……!?
「……悪いラトリア。その話詳しく聞きたい。どこのアウターで、いつから起こり始めたのか調べてもらえるかな?」
「えっ? えっ? し、調べるのは構いませんけど、どうしたんですか皆さん……?」
誰かが、なんてしらばっくれるのはやめよう。
各地でイントルーダーを狩っている人物は、恐らく十中八九メナスだ。
そして、もしもメナスがイントルーダーを討伐してしまったとしたら大問題だ。
なんせ他ならぬ俺自身が、イントルーダーを造魔スキルで複製して見せちゃったんだもんなぁ……!
事態の深刻さを理解したうちのメンバーと、状況が理解出来ていないムーリたち3人。
しっかし、各地のアウター、かぁ……。
メナスの野郎……! いったい何体のイントルーダーを討伐しやがったんだろうなぁ……!?
全ての用事を済ませたけれど、時間はまだ日没前。きっとみんなもまだ戻ってこないよなぁ。
なら俺が奈落に行って、みんなと合流した方が早いかもしれないね。
思い立ったらすぐ行動だ。
移動魔法のコンボ使用で、一気に奈落12階層まで転移した。
「さて、みんなの居場所は……」
ステータスプレートを通してパーティメンバーの位置を確認すると、やっぱりかなり離れた場所にいるみたいだ。
ここから全力で走って、みんなが帰還する前に合流できるかなぁ……って、おお?
「ダンー! 迎えに来たよーっ!」
俺が動き出す直前に目の前に転移してきたリーチェが、俺に呼びかけつつも抱きついてきてくれる。
「迎えに来てくれて嬉しいよリーチェ。ぎゅー」
ぎゅーっと抱きついてくるリーチェ、可愛すぎるぅ。
そして強く抱きしめるほどに存在を主張してくる、高反発な2つの霊峰が気持ちよすぎるよぉ。ぎゅーっ。
「でも、迎えがリーチェだけっていうのも意外だね。他のみんなも来ても良さそうなものなのに」
「うんっ。ニーナがね、ダンが抱きつかれて1番嬉しいのはぼくだからって、ぼくを送り出してくれたんだっ」
……ニーナって俺の性癖を鑑定するスキルでも持ってるんじゃないかなぁ?
そして俺の性癖に対するニーナの発言への絶対的な信頼度よ……。
「くっ……! た、確かにリーチェに抱き付かれるのが1番気持ちいいですっ……!」
「えへへ。ダンに気持ちいいって思ってもらえてるの、すっごく嬉しいなっ」
にしても、はぁ~……、
いくらなんでもこのお姫様、可愛すぎるんですけど? ぎゅー。ちゅっちゅっ。
「それでティムルがね。5人で迎えに行ったらダンはそのまま帰っちゃうだろうから、12個目の中継点に来てもらう為に、迎えは1人のほうがいいわねって」
「……確かにティムルの言い分を否定出来ないな。リーチェ1人でもお持ち帰りしたいくらいだもん」
俺は奈落の探索にそこまで興味はない。俺が興味津々なのはみんなのエロボディだけだ。
全員と合流しちゃったら、1秒でも早く宿に帰ることだけしか考えられなくなりそう。
「あははっ。それじゃお持ち帰りされる前にみんなと合流しよっか。帰る時ははみんな一緒で、ね?」
了解だよーとほっぺにキスをしている間に、リーチェがアナザーポータルを詠唱する。
現れたアナザーポータルにリーチェと抱き合ったままで入って、みんなのいる場所まで転移した。
「「ダンーっ! 待ってたのー!」じゃーっ!」
合流した途端に飛び込んでくるニーナとフラッタも抱きとめて、リーチェと合わせて4人で団子状態になってしまった。
でもフラッタ。今日はプレートメイルを外してて偉いぞっ。
「ティムルとヴァルゴもおいでー。ちょっと隙間が無いかもだけど?」
「あはーっ。首を傾げながら誘わないでくれるー?」
「わ、私も遠慮はいたしませんよ……? え、えーいっ」
ティムルとヴァルゴも巻き込んで6人でお団子になり、みんなの柔らかさと温かさ、それに匂いに包まれて物凄く安心してしまう。
俺もうみんながいなきゃ生きていけないよーちゅっちゅっ。
気の赴くままにお団子キスをしながら鑑定をする。
ニーナとフラッタが悪魔祓いがLV100になっているので、同じく悪魔祓いのリーチェも浸透を終えたことだろう。
ティムルは弑逆者が、ヴァルゴは魔導師がLV100になっている。
どうやら全員の職業浸透が終わってくれたみたいだね。
「それじゃ私とフラッタは弑逆者でお願いするのっ」
「うむっ! これで妾たちもクルセイドロアが使えるようになるのじゃーっ」
「ぼくも弑逆者を狙うよーっ! 悪魔祓いに転職出来たんだし、弑逆者だってなれるはずさっ」
フーナとフラッタはそのまま弑逆者に設定。リーチェもフォワーク神殿で弑逆者を狙うそうだ。
「ふふ。私もクルセイドロア狙いで悪魔祓いをお願いね?」
「では旦那様。私は察知スキルを目指して射手をお願いできますか」
ティムルは逆に悪魔祓いを選択。そしてヴァルゴが射手を選択した。
悪魔祓い 最大LV100
補正 体力上昇 全体魔力上昇+ 魔法攻撃力上昇+
五感上昇+ 全体幸運上昇+ 装備品強度上昇+
スキル 対不死攻撃力上昇+ 対悪魔攻撃力上昇+
全体魔法耐性+ 聖属性魔法 対魔法障壁
弑逆者 最大LV100
補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 敏捷性上昇+
五感上昇+ 身体操作性上昇+ 装備品強度上昇+
スキル 対不死防御力上昇+ 対悪魔防御力上昇+
全体物理耐性+ 聖属性魔法 対物理障壁
射手 最大LV30
補正 身体操作性上昇- 持久力上昇-
スキル 射撃時攻撃力上昇
「おっけー。リーチェ以外の職業は希望通り設定したよー」
……うん。ここまでなら特に何も問題は無いんだ。ここまでは。
だけど、ヴァルゴが新しく獲得してしまった職業が大問題なのだよ。
魔祷士LV1
補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 物理攻撃力上昇+ 魔法攻撃力上昇+
敏捷性上昇+ 五感上昇+ 身体操作性上昇+ 装備品強度上昇+
スキル 魔技消費軽減 魔技使用制限緩和
魔祷士か。祈祷師なら分かるけど……。流石に聞いたことがない職業だな。
スキル的に考えて、魔人族の種族専用職業の可能性がかなり高い。
現れたタイミングを考えると、魔導師を浸透させることが魔祷士の前提条件だったんだろうか?
しかし、魔技の消費軽減は分かりやすいけれど、使用制限緩和ってなんだ?
「なぁなぁヴァルゴー。魔祷士って職業に聞き覚えはー?」
魔祷士は魔人族の専用職業の可能性が非常に高いので、一応ヴァルゴにも確認を取る。
まぁ職業の知識って時点で、ヴァルゴが知っている可能性は低い気がするけどね。
「魔祷士ですか……。済みませんが知りませんねぇ。種族専用職業なんてものがあることすら、皆様と出会ってから知りましたからね。お役に立てずに済みません」
予想通りの答えを返すヴァルゴをよしよしなでなで。
職業の話を、数百年単位で転職縛りしていた守人に聞いても分からないよね。
それじゃヴァルゴ。暇な時間を見つけて魔祷士の検証をしていこうか。
今は他の職業浸透を優先すべき時だけど、魔技使用制限緩和ってスキルは気になりすぎるからさ。
「さっ。それじゃ帰ろ……」
「待ちなさーーーーいっ!!」
「へっ!?」
転職も済んだし、早くみんなとベッドインしたいから早速アナザーポータルを起動しようとすると、凄い剣幕のニーナから待ったがかけられた。
「このまま帰っちゃったらダンをここまで呼んだ意味がないでしょっ! リーチェにダンを呼んでもらったのは、ダンにこの先を見て欲しかったからなのっ!」
「この先……って、13階層のことかな? なにかあったの?」
「何かあったというかなんと言うか……。見てもらうのが手っ取り早いと思うのじゃ。さぁダンよ。奥に向かうのじゃっ」
お団子から抜け出した好色家姉妹に両手を引っ張られ、4人団子のまま奥に引き摺られていく。
流石は獣人と竜人。パワー半端ないっすねっ!
2人に両手を引っ張られて進むと、12個目の中継地点の終わりが見えてきた。
「お、あれが中継地点の出口……。いや、なんだ?」
視界の先、中継地点の外側が真っ暗になっている事に気付く。
真っ暗……? 探索魔法のトーチを使用しているのに見えないのか?
「ダンに足を運んでもらったのはこれを見せたかったからなのよ。恐らくは奈落の最深部の中でも、更に最も深い部分だと思うんだけど……。貴方はどう思うかしら?」
「どう、って……」
ティムルの吐息を耳元に感じながら、中継地点の終わり、真っ暗な領域の手前までやってきた。
今までのアウターでは、最深部の外周は黒い壁で覆われていたケースしか見たことがなかった。
しかし奈落のこの黒い空間は……、壁じゃない?
「これ……。ひょっとして、魔力なのか……?」
真っ暗で何も見えないけれど、下から上に向かって、超高密度の魔力の流れを感じる。
魔力が満ち過ぎていて視界が得られない?
そんなことありうるのか?
「魔力が下から上へ……。下から?」
暗闇の先をよく見ると、どうやら中継地点の先には地面が無いみたいだ。
視界が得られないためにどれほどの規模なのかは見当もつかないけれど、中継地点の先には大穴が開いていて、穴の下からとめどなく魔力が噴き出し続けているようだった。
「冒険者ギルドで、奈落は別の世界と繋がっている、なんて説明されたでしょ? だからこの先に安易に踏み込んでいいものか、ぼく達だけじゃ判断がつかなくってさ」
俺にしがみ付く力を強くして、高反発なおっぱいをぎゅうううっと押し付けながら話すリーチェ。
「移動魔法が使えるから問題ないとも思えるんだけど、もし仮に別の世界に繋がってしまったら……。帰還できるかどうか分からないからねぇ」
「別の世界なんて言われても普通はピンとこないんだけど、私達の場合はダンがいるからねー。別の世界って言われちゃったら警戒しないわけにはいかないの」
リーチェさん、ニーナさん。帰還が確実なら貴女達、この真っ暗な穴の中に飛び込む気満々だったんですぅ……?
お、俺は躊躇うけどなぁ……? みんな怖くないのぉ?
それにしても、異なる世界から膨大な魔力が流入しているって、割と最近似たような話を聞いたばかりだよね。
「……これは、まるで呼び水の鏡みたいな状態だね。開拓村跡地に置かれていた呼び水の鏡からは、今思えば大量の魔力が噴き出していたんだ。あのままアウター化を放置していたら、開拓村周辺が奈落みたいなことになっていたのかもしれない」
この穴の底がどうなっているのか、呼び水の鏡のような触媒が置いてあるのか、本当に異世界に繋がっているのかは分からないけれど……。
みんなが侵入を思い留まったのは正解だね。安易に踏み込むには不確定要素が多すぎるよ。
「呼び水の鏡でここと同じことが起こせるとしたら……、やはり危険ですね。これほどの勢いの魔力の奔流、聖域の樹海では受け止めきれないでしょう」
「流石に開拓村での魔力放出はここまでではなかったけれど……呼び水、だからねぇ。時間経過で魔力の流入量が増加する可能性は否定できない」
「世界の魔力バランスが崩れ、世界中のいたる所がアウター化し、強力な魔物が跋扈する地獄のような未来が訪れてしまうかもしれません。まさしく世界滅亡の危機、ですね……!」
視認出来ない穴の先を睨みながらヴァルゴが語る、全世界アウター化の可能性。
メナスはそこまで知っていて呼び水の鏡を用いたのか、それとも何も考えずに設置しただけだったのか。
どちらにしても、アウター化を気軽に引き起こすような相手を野放しには出来ない。
異世界に繋がっているとも言われるアウター奈落。
この穴の先がどうなっているのか興味は尽きないけれど、今リスクを取ってまで確かめることじゃないよね。
「みんなには申し訳ないけど、この穴の調査は今はやめておこう。他にやるべきことはいくらでもあるからね。職業浸透を進める場合は12階層を狩場にして欲しい」
「ん、謝らなくて大丈夫。私たちも危険性は分かってるの」
俺の言葉にすぐに頷いてくれるニーナ。
この光景を見ちゃうと、この先が安全には見えないもんなぁ……。
「そうだねぇ……。守人の問題が解決して、開拓村が機能して、リーチェの問題を解決できたら、その時に改めて挑戦してみたいかなっ」
危険性は分かってるけど、行ってみたい気持ちは隠す気ないのね。
街から街へ移動するのも困難だったニーナが、奈落の底を確かめに行きたいなんて言うようになったんだねぇ。
どこに行くにも一緒に行こうね。
だからその為に、王国に残っている問題を全部片付けなきゃな。
「そう言えばみんなの浸透が終わってるけど、やっぱりアウターエフェクトもイントルーダーも出てこなかったのかな?」
「どちらも出てないわね。私達は鑑定が使えないから確実じゃないけど、レッサーデーモン、イヴィルスレイブ、サベージドレイクの3種類しか出現してないと思うわ。カラーバリエーションは豊富だったけどねー?」
肩を竦めながらティムルが報告してくれる。
でもヴァルゴ以外は分析官が出てるんだから、誰か1人くらいは鑑定を習得してもいいんじゃないの?
……って、今はみんなが戦闘力を伸ばしたい状況だから厳しいのか。
分析官の補正はかなり優秀だけど、スキルは鑑定だけで、戦闘に活かせるスキルじゃないからなぁ。
「……これは仮説でしかないけれど。アウター内の魔力が一定以下になった時に、最後の防衛手段として呼び出されるのがアウターエフェクトやイントルーダーだと思うんだ」
「最終防衛手段?」
「アウターエフェクトの出現条件は、魔物を殺し続けることなのじゃ。ではなぜアウターエフェクトやイントルーダーなどという強力な魔物が必要になるかを、ダンが来るまで皆で考えてみたのじゃ」
リーチェが提示した仮説をフラッタが引き継ぐ。
「魔物もドロップアイテムも、アウターの魔力が生み出している存在だと考えると、魔物の魔力を奪い職業を浸透させ、ドロップアイテムを回収する妾たち魔物狩りは、迷宮からしたら魔力泥棒みたいなものなのじゃ」
「……だから魔力を奪われないために、強力な魔物で防衛を?」
「アウターエフェクトやイントルーダーが出現すると、一定時間魔物の出現が無くなるよね? まるでアウターが魔力枯渇を起こしているみたいにさ」
「アウターが魔力枯渇を……?」
「これは竜人族のブレスのように、アウターにとっての切り札である強力な魔物の召喚に大量の魔力を投入している為だと思うんだよ。でも奈落ではこれだけ勢いよく魔力が供給され続けているおかげで、アウターの魔力が枯渇する心配が無く、最終防衛手段に踏み切る必要もないんじゃないかなって」
フラッタとリーチェによる、アウターエフェクトやイントルーダーとアウターとの因果関係。
確かめる術はないけれど、否定する材料もないな。
だけど、もし2人の意見が正しいのだとすれば、魔物を狩り続けた場合、いつかアウターが消滅してしまう可能性があるんじゃないだろうか?
そう言えば竜王のカタコンベで竜王を倒した後、竜王のカタコンベの魔物達は俺達を襲ってこなくなったんだよね。
最強の手駒であるイントルーダーを撃破してしまった俺達を排除するのを、アウター側が諦めてしまった、みたいな理由があるんだろうか?
「真相は分からないけれど……。突発的に強力な魔物が出てこないのはありがたいね。出来ればみんながクルセイドロアまで使えるようになってくれるとメナスの造魔スキルもそれほど脅威じゃなくなるから、奈落にいる間に頑張って浸透させようか」
「「「はいっ!!」」」
ただクルセイドロアやインパクトノヴァみたいな強力な魔法や、フレイムフィールドやドラゴンズネストみたいな範囲攻撃魔法は、対人戦では全く攻撃効果が無いからね。
対魔物戦闘力を上げた後は、やっぱり対人戦スキルの向上を視野に入れないといけない。
……いや、今の俺達より対人スキルが上の相手って、ちょっと想像できないかな?
宿に帰ってムーリたちと合流し、みんなと一緒に夕食がてら話し合いをする。
まずはラトリアとエマが嬉しそうに、シルヴァの魔物狩り復帰を報告してくれた。
「まだ病み上がりではありますが心配ないでしょう。シルヴァは竜王のカタコンベはとっくに踏破済みですからね。5人の妻たちの浸透を進めるためにも、なるべく早く探索を始めたいって」
シルヴァは職業補正に頼りきった愚か者ではなく、ゴルディアさんとラトリア直伝の剣術の達人だからな。
出会った頃のフラッタよりも剣術の腕は上だろうから、5人の新人が一緒でも危険は無いんだろう。
「シルヴァ様の奥様達は戦闘経験は全くありませんが、それでも竜人族ですからね。身体能力は低くないんです」
身体能力に優れた竜人族が、ラトリアとエマという達人に指導を受けているんだもんな。
下手すりゃ既にワンダ達より強い可能性すらありそうだ。
「まずは5人で戦士になってもらいまして、旅人、商人の3つを浸透させたら別々の職についてもらう予定です。トライラムフォロワーの子達を参考にさせてもらいました」
エマとラトリアも一緒についているみたいだから、磐石のサポート体制だ。
シルヴァとラトリアの2人は旅人の浸透を目指し、まずはインベントリを使えるようになりたいとのことだった。
「今回迎えた5人の妻達も頑張ってはいますが、私やシルヴァと同じ水準の戦闘力を求めるのは難しいでしょう。シルヴァには1人でも5人の妻を護りきれるように、冒険者や探索魔法士は浸透してもらわないといけないでしょうね」
ニコニコと語るラトリア。
どうやらシルヴァの話を出来るのが嬉しくて堪らないみたいだ。
ゴルディアさんは俺にはどうしようもなかったけれど、ラトリアがゴルディアさんに託されたシルヴァとフラッタの両方を助けてあげられたのは本当に幸運だった。
ニコニコのラトリアとエマを両側に侍らして、2人をよしよしなでなでしながら幸せな気持ちに浸る。
だけどそんな幸せな時間は、ラトリアから告げられた言葉で終わりを告げた。
「そう言えば以前竜王のカタコンベで、一定時間魔物が出なくなったことがあったじゃないですか。なんだか最近各地のアウターでも同じようなことが起こってるらしいですよ?」
「…………なんだって?」
「ヴァルハールの時と同じで、すぐに元通りに魔物が出るようになったみたいですけどねー」
ラトリアの報告に、一瞬思考が停止する。
竜王のカタコンベで起きた魔物消失事件。
その真相は、俺達がイントルーダーである竜王を倒してしまった事で起きた、アウターの魔力枯渇現象だ。
あれと同じことが各地で起こっている……?
それの意味するところは、誰かが各地のアウターで、イントルーダーを……!?
「……悪いラトリア。その話詳しく聞きたい。どこのアウターで、いつから起こり始めたのか調べてもらえるかな?」
「えっ? えっ? し、調べるのは構いませんけど、どうしたんですか皆さん……?」
誰かが、なんてしらばっくれるのはやめよう。
各地でイントルーダーを狩っている人物は、恐らく十中八九メナスだ。
そして、もしもメナスがイントルーダーを討伐してしまったとしたら大問題だ。
なんせ他ならぬ俺自身が、イントルーダーを造魔スキルで複製して見せちゃったんだもんなぁ……!
事態の深刻さを理解したうちのメンバーと、状況が理解出来ていないムーリたち3人。
しっかし、各地のアウター、かぁ……。
メナスの野郎……! いったい何体のイントルーダーを討伐しやがったんだろうなぁ……!?
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