異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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4章 マグエルの外へ2 新たな始まり、新たな出会い

255 開拓村再興草案 (改)

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「あっ……、ふぁぁ……!」


 連日執拗にしゃぶってあげた成果か、ヴァルゴの乳首も少しずつ感度が上がってきている気がする。

 巫女装束って着衣えっちしやすくて素晴らしいなぁ。ちゅぱちゅぱ。


 口と乳首に何度もキスをしながら、可愛く喘ぐヴァルゴを何度もいっぱいになるまで満たしてあげた。




 ヴァルゴの中を不安なんかが入り込む隙間も無いほど満たしてあげた後、ムーリも合流して本日の夕食が始まる。

 ムーリは今日からターニアさんに槍を習い始めたそうだ。


「スポットの入り口くらいなら、1人でも出入りできるようになっておきたいんですよね。そうすれば私だってお金を稼げるようになるわけですし」

「ワンダ達が順調に成長してるんだから、ムーリまでお金を稼げるようにならなくても平気なんじゃ?」

「今まで激務だったから仕方ない部分もありますけど、自分達でお金を稼げれば助けられる命があったわけですから……。このまま無力なままでいるのは嫌だなって」

「……そっか」


 まったく、ムーリは頑張り屋さん過ぎるよ。よしよしなでなで。

 でも戦う力を磨くことは悪いことじゃないからね。無理せず頑張って。


「ねぇねぇダン。ちょっと話は変わるんだけどさー」

「ん? どうしたのニーナ」

「今までは暗殺者なんてダンくらいしかいないって思ってたんだけどさぁ。獣爵家の職業浸透方針を考えると、獣爵家の当主は気配遮断が使えてもおかしくないんじゃないのかなぁ?」

「……うわ。ニーナってば、また嫌な想定をしてくれるねぇ」


 でも確かに、弓を習うこと、野盗狩りを推奨している事の2点を考えると、獣人族の専用職業は暗殺者の先にあってもおかしくないんだよなぁ。

 これは早いところニーナに暗殺者になってもらわなきゃ駄目だな。


「あっ、そうそう」


 おっと、今度はティムルから何か報告があるみたいだ。

 みんなで別行動をすると、夕食時の話し合いが賑やかになるねぇ。


「私のオリハルコンダガーについているスキル、咆哮なんだけどね。発動すると一定範囲の魔物の動きを強制的に止める効果があるみたいなの」

「なるほど。テラーデーモンが放ってきた恐慌効果のある叫び声と同じなのかな」

「ただし攻撃効果は無いみたいだから、強力なような使えないような、判断が難しいスキルみたいね」


 威力も無いなら本当にテラーデーモンの能力そのまんまだな。

 でも瞬発的な火力さえ確保できれば、魔物の動きを封じるメリットは非常に大きい。ティムルがインパクトノヴァまで覚えたらかなり有用になりそうなスキルだ。


「それでダン。今ソウルが2つあるから、貴方の神鉄武器も作ってしまうべきだと私は思うの」

「俺の武器を? いや構わないけど、一応なんで?」

「ミスリル武器だとイントルーダー戦では役に立てなかったし、ヴァルゴも含め、貴方以外全員がオリハルコン以上の武器を持っている状態でしょ? ダンの武器の水準が低いっていうのは、仕合わせの暴君にとって放置できない問題だと思うの」

「妾もティムルに賛成なのじゃ。ダンだけがミスリル武器の現状はあまり良くない。 ダンは仕合わせの暴君の要なのじゃ。ダンが戦えないと妾たち全員の危険性が跳ね上がってしまうのじゃ」

「ふむ……」


 ティムルとフラッタの言うことは尤もだ。


 今もスポットで虐殺してるし、いつイントルーダーが現れてもおかしくない状態だと言えるだろう。

 竜王戦では攻撃力の低さが浮き彫りになってしまったわけだし、いつまでもミスリル武器に甘んじているわけにはいかないかぁ。


 ティムルの名匠を封印中だから、アウターレア武器が出にくくなってるってのもあるしな。


「そうだね。それじゃお願いしていいかなティムル」

「あはーっ! 勿論いいに決まってるわよーっ!」

「素材にするのはフレイムソウルのほうでお願いするよ。構わないかな?」

「えっ、なんで? 聖属性素材のセイントソウルで作った方が使いやすくないかな?」


 武器の素材にフレイムソウルを選択したことが不思議だったようで、リーチェが首を傾げながら口を挟んできた。


 でもさリーチェ。竜王がアニマライザーとか使ってきやがったし、今後も聖属性が安定して使えるとは限らないじゃない?

 それにフレイムロードと俺には因縁があるからさ。巡り合わせのほうを優先したいのよ。


「ダン様は私に品質の良い槍を渡して、自分は品質の低い剣で戦っていたのですか? なのに魔迅を使っても歯が立たないなんて、ダン様の技量には感服いたしますね」

「はは。単純に槍が使えなかっただけだよ。災厄のデーモンスピアもヴァルゴに使ってもらって喜んでるさ」


 ヴァルゴの魔迅はなー。今の熟練度だと初見殺しにしかならないんだよね。

 積極的に使っていって、呼吸するくらい自然に使えるようになろうな。




「それじゃ素材の用意も済んだし、いっくわよーっ! 抗い、戦い、祓い、貫け。力の片鱗。想いの結晶。顕現。神鉄のロングソード」


 碧眼のティムルがスキルを発動する。

 まずは青鉄、聖銀、精霊銀のロングソードを作り、重銀のロングロードを完成させ、そこに銀とフレイムソウルを混ぜ込んで、俺用の神鉄のロングソードが完成した。



 神鉄のロングソード
 獄炎 無し 無し 無し 無し



 おお? なんか如何にもなスキルが付いているぞ。

 ティムルのオリハルコンダガーにも専用スキルがついてたし、神鉄装備にはユニークスキルが付与されるものなんだろうか?


 魔力吸収が無くなったのはちょっと痛いなぁ。イントルーダー戦では魔力吸収がかなり重要な役割をこなしてくれてたし。

 なるべく早い段階で、魔力吸収と魔法妨害は付与しておかなきゃな。


「ありがとうティムル。凄く嬉しいよ」


 まだ碧眼のままだったティムルを、ぎゅっーと抱き締める。

 ナイフと皮の靴、木の盾から始まった俺の魔物狩り生活も、とうとう神鉄武器を手にするまでになっちゃったんだなぁ……。


「大好きなお姉さんが作ってくれた武器だから、スキルを追加して一生愛用するからね」

「あはーっ。ダンに自分の作った武器を使ってもらえるなんて、ドワーフとしてこれ以上の幸せなんてあるわけないわよぉ。貴方と会う前の人生ってなんだったのって言いたくなるくらい、幸せすぎーっ!」


 ティムルの方からも力いっぱい抱き付いてきて、俺の頬にスリスリと頬ずりをしてくる。このお姉さん可愛すぎーっ。


 さぁみんな。そろそろ入浴して寝室に行こうか。

 今日も大好きなみんなのこと、全力で愛してあげるからね。


 全員好色家が浸透し終わっているので、お風呂でも寝室でも遠慮せずに全力で可愛がってあげて、昨日徹夜した分今日はみんなでもみくちゃになって眠りについた。




「おはようみんな。朝のちゅーちゅータイムが始まるよー」

「あはっ。ダンったら今日は何処にキスしてくれるのかなー?」


 勿論体中隅々までキスしてあげるに決まってるでしょニーナ! ちゅっちゅっ。


 目が覚めて、ニーナから1人ずつ順番にゆっくりと愛し合ってから朝食を取る。

 今日はシュパイン商会に出向いて話を聞かなきゃいけないので、遅れるわけにはいかないよ。


「いただきまーっす」


 リーチェとムーリを左右に抱き寄せながら、ティムルとフラッタに食事を手伝ってもらう。

 ニーナはターニアさんの隣りでニコニコと俺の様子を眺めているね。


 以前はリーチェとムーリの直パイを揉みながら、ティムルに後ろからキスをされ、フラッタの中に注ぎ込みながら、ニーナに食事を口に運んでもらうというような王様みたいな朝食風景だった気がするけれど、ターニアさんがいるおかげで我が家の風紀が保たれている気がするなぁ。

 いやちょっと待て。今日の朝食風景も充分王様レベルだぞ? 麻痺してる麻痺してるぅ。


「あ、ちょっと待ってムーリ」

「はい? どうしたんですか?」


 朝食後、家を出る前にムーリの職業を戦士にしてあげる。

 ターニアさんと一緒にスポットに入るムーリに、戦闘職が無いのは少し危険だからな。


「ふふっ。ダンさんは心配性ですねっ。でもありがとうございますっ」


 転職のお礼に、正面から抱き付いておっぱいを押し付けるムーリから熱烈なキスを受けてしまう。

 こんなことされたら毎日転職させなきゃいけなくなるじゃないかー。ちゅうううう。


 未だに法王なんて俺しかいないだろうけれど、分析官と法王を浸透させることが出来た事で、俺の中で職業設定の意識が少し変わった気がする。

 少なくとも愛する家族くらいには職業設定の恩恵を存分に享受させてあげたいね。




「それじゃ行きましょダン。キャリア様をお待たせしたくないからね」


 朝食が終わってシュパイン商会の本店舗、かつてティムルが任されていた店舗に足を運ぶ。


 入店すると取次ぎの必要も無く奥に案内され、中にはキャリアさんと、他に2名の女性が待っていた。


「トーレ様にオディ様!? どうしてお2人までここにいるんですかっ!?」

「久しぶりねティムル。キャリアから話は聞いてるわよぉ?」

「キャリアさんだけじゃ手が回らないって私たちも呼ばれたのよぉ。なんでも大きい魚を捕まえたらしいじゃないっ」


 ティムルと知り合いでキャリアさんとも親しそうだから、ジジイの元妻の、現シュパイン商会の首脳陣って感じかな?

 わーわー言いながらびっくりしているティムルを見ると、仕事の出来る人たちなんだろうね。


 そう言えばティムルより年上の奥さんたちは、シュパイン商会の利益を無視したりしない、とか言われたんだっけ?


「貴女達、旧交を温めるのもそのくらいにしておきなさい」


 やはりキャリアさんがシュパイン商会のドンなのは間違いないらしく、再会を喜び合っていたティムルたちが表情を引き締めた。

 どうぞと促されたのでみんなでソファーに座る。


「おはようダンさん。昨日ティムルに話をされたけど、面白い話を持ち込んでくれて感謝してる」

「こっちこそ、キャリアさんが乗り気だって聞いてホッとしてるよ」

「ダンさんはシュパイン商会に利益を齎してくれるとは思ってたけどねぇ……。正直言って想像を遥かに超えてたわぁ……」


 やれやれと、心底呆れたように肩を竦めて見せるキャリアさん。

 その間に、出されているお茶とお茶請けも全て鑑定にかけて、安全を確かめておく。


 キャリアさんのことは信用してるけど、どこかで悪意を持った奴らが関わってる可能性もあるからね。

 というかキャリアさんこそ狙われてもおかしくないだろうな。対策はしてると思うけど。


「こっちの2人はトーレとオディ。私やティムルと同じ、元ジジイの妻って奴ね」


 キャリアさんもティムルも、元シュパイン商会会長のことをジジイとしか言わなくて怖いわぁ。

 俺もここまでみんなに嫌われないように気をつけなきゃなぁ……。


「開拓村の再興事業なんて始まったら、とてもティムルと私だけじゃ手が足りないと思ってね。ダンさんへの紹介も兼ねて今日は同席させたの」

「トーレです。ティムルだけじゃなくて、とても綺麗な奥さんが沢山いるみたいですね。その誰もがとっても幸せそうで素敵です」

「オディと申します。ティムルを攫われちゃったのは痛かったけど、そのティムルを通して私たちを頼ってくれたこと、ありがたく思いますわ」

「ティムルから聞いてるなら紹介は要らなそうだけど、ティムルの旦那やってるダンです。口調は崩してもらって構わないよ。俺もティムルの身内だと思って接するから」


 面食いのジジイが妻に選んだだけあって、トーレさんもオディさんもかなりの美人さんだ。

 流石に年齢の影響は感じさせるけど、未だに充分美人の部類に入るだろう。若い頃は相当モテただろうなぁ。


「それじゃ早速話をさせてもらうね。開発許可はまだ下りてないから、実際に手をつけるのはまだ無理なんだけど」

「その辺もティムルに聞いてるわ。私たちが聞きたいのはダンさんの想定だから構わないわよ」


 紹介が済んだので、まずは開拓村再興の話から進めていく。

 あくまでまだ本決まりじゃないけれど、150~300人規模の魔人族が転職のためにスペルド王国に頻繁に出入りしなきゃいけない事態になったので、スペルド王国民じゃない彼らがトラブルに巻き込まれないように、緩衝地帯のような村を作りたいんだという話をしていく。


「150~300人規模の魔物狩りが王国に流入するの……!?」

「しかもその全員が、王国最強と謳われる竜爵家と同水準の戦闘技術の持ち主って……!」


 キャリアさんは軽く眉を上げた程度の反応だったけど、トーレさんとオディさんはかなり驚いてくれている。

 キャリアさんは俺との会話への慣れを感じさせるねっ。


「守人の魔人族の集落は、スポットの最深部に行くよりも深い場所にあると思って。そんな場所で取れるドロップアイテムをほぼ独占できるとしたら、シュパイン商会の利益は計り知れないと思うんだ」


 開拓村に関わる見返りとして提示するのは、魔人族が持ち込む侵食の森のドロップアイテムだ。


 守人たちは通貨を必要としない生活をしているので、転職費用や王国での滞在費、装備品を購入するお金を除けば、多少シュパイン商会側に有利な取引でも文句は出ないだろう。

 しかも生活圏がアウター内のため、転職の頻度は王国民よりもかなり高く、開拓村の利用はかなり頻繁になるはずだ。


「その代わり、王国の知識や常識に疎い彼らがトラブルに巻き込まれないように、王国内を案内したり、転職をサポートしてあげたりする場所が欲しくてね。それが今回の開発のコンセプトなんだ」

「……開拓村は壊滅したばかりで復興の目処は立っていない。フレイムロードが現れた上に近くに拠点も無いから、リーパーたちも殆ど寄り付かない状態。そして村の開発資金はダンさん持ちで、シュパイン商会からの持ち出しは殆ど必要無い。でいいのよね?」


 確認してくるキャリアさんに頷きで答える。

 あくまで開発は俺達が立ち上げることで、シュパイン商会は協力者という立場なのだ。そんな彼女たちに資金を投入させるわけにはいかないよ。


「俺達ちょっと金を稼ぎすぎててね。なるべく王国に流したいと思ってるんだよ」

「……相変わらず、とんでもないことをサラッと言うねぇ。お金を稼ぎすぎだなんて、私も言ってみたいわ」

「俺とキャリアさんでは必要としてるお金も違うからね。あまり気にしすぎないでくれると助かるよ」


 究極的な話をすれば、生活費と人頭税さえ確保できれば充分なんだよね。

 装備品だってティムルが作ってくれるし、魔玉も自前でいくらでも光らせられちゃうから。


「それと将来的にもう1つくらい町を作るかもしれなくてさ。その為のノウハウを積んでおきたいってのもある」

「あら? そっちは私達を関わらせてくれないのかしら?」

「いや、多分シュパイン商会にお手伝いをお願いすると思う。でもまだ構想段階で、ティムルにも話した事が無い話なんだよ」


 ティムルが、聞いてないよー!? って顔をしてるけど、言ってないから仕方ない。びっくりさせてごめんね。


「そっちの話はまだ何も考えてない状態だからね。もし実現するとしても、かなり先の話になると思うんだ」

「……ダンさんのそういう見通しは、あんまり信用しない方が良さそうね」


 真剣な表情でティムルと頷き合うキャリアさん。

 その頷きの意味は追求しないでおきましょう。藪から蛇が出てきそうなんで?


 あまり色々と手を出したくはないんだけどさぁ。

 職業浸透を進めれば進めるほどにお金がとんでもなく稼げてしまうから、お金の使い道を考えておかないとなーって感じで、まだ漠然とイメージしてるだけの話だからね?


「元々の開発村の規模は知らないけど、大体このくらいを想定してるんだ」

「ふ~ん……。もう村と言っていい規模じゃない気がするねぇ」


 細かい事を決めるのはゴブトゴさんから開発許可が下りてからになるけれど、現時点で大雑把な要望を伝えていく。


 500~1000人くらいがいつでも滞在できる程度の規模で、世間知らずの魔人族を食い物にしそうな者を入村させないこと。

 ポータルで各種職業ギルドに案内できる者を常駐させて欲しい、などなど。


「大体のお話は理解したつもりだけど……。これだとダンさんに利益が無さ過ぎないかしら?」


 そんな俺の要望に律儀に頷いて見せながら、だけど突然首を捻るキャリアさん。


「魔人族は転職出来るようになり、私達は莫大な富を得られることになるわ。でもダンさんは、この村を作って何を得られるのかが良く分からないのよね」

「俺がこの村を作る事で得られるものなんて、自由時間に決まってるでしょ?」

「自由時間?」

「今って森の全魔人族の面倒を俺1人で見てる状態なんだよ? 流石にやってられないってぇの」

「うう……。も、申し訳ありません~……」


 話を聞いて、申し訳無さそうに縮こまってしまったヴァルゴをよしよしなでなで。


 ヴァルゴも魔人族も何にも悪くないんだから、謝らなくったっていいんだよー。

 ただ、俺の負担が多すぎる現状を変えたいってだけだからね。


 職業設定は俺にしか使えない能力だけど、転職ってだけなら職業設定は必要無いからさ。


「魔人族が自分達でギルドに赴き、自分達で装備品を購入出来るようになれば、俺の負担が激減するんだよ。そうなれば今魔人族のために使っている時間から、丸々解放されるってわけだ」

「……なるほどねぇ。それはそれは……」


 キャリアさんも他の2人も、物凄くゲンナリした顔で俺に視線を向けてきた。


 職業設定の話はしていないので、恐らく転職希望者を俺が逐一ポータルで運んでいると思ってくれたと思う。

 150~300人規模の魔人族を俺がたった一人でピストン輸送とか、想像するのも恐ろしいね。


「彼らがいないとあの森で良くない事が起こるらしいから、助けないわけにもいかないんだよね。たとえ俺1人で無理してでもさー」

「冒険者ギルドに協力を要請できないの?」

「普通のリーパーが守人の集落に近づいたら殺されちゃうからね。彼らは俺も初見じゃ殺されかけたほどに警戒心が強くて、職業の加護無しに魔物と戦えるほどに技術を磨いた、対人戦のエキスパートだからさ」

「あ~……。そりゃまた、厄介なものを見つけちゃったのねぇ……」


 キャリアさんの下した最終評価を受けて、またしてもヴァルゴがこっそり落ち込んでいる。

 ヴァルゴも魔人族もなにも悪くないって言ってるでしょー? よしよしなでなで。


「うん。ダンさんには同情するけど納得がいったよ。それじゃこっちもある程度話を進めておくから、許可が下りても下りなくても、なるべく早く連絡をちょうだい」

「了解。その時はティムルを通して連絡させてもらうよ」


 ヴァルゴが地味にダメージを受けちゃったけど、キャリアさんに納得してもらったようで何よりだ。


 魔人族の中で法王を育成するルートも考えたんだけど、個人に頼るとイレギュラーな事態に対応できなくなっちゃうからね。

 戦闘力が高くたって、事故や病気の可能性はいつだって付き纏うものだし。


 やはり、転職魔法陣を用いた正規の転職方法を利用できるように整備するのが確実だ。


「シュパイン商会は装備品を扱ってないって話だったけど、村で魔人族用の装備品を独占すれば凄い利益をあげられるんじゃない? 守人の魔人族は、半永久的に侵食の森……いや聖域の樹海で暮らし続けるわけだしね」

「……っ。いや、そりゃ凄まじく魅力的な話なんだけどねぇ。職人が足りてないよ」


 俺の言葉に一瞬目を見開いたキャリアさんだったけど、直ぐに力無く首を振って溜め息を吐いた。


「今だってカツカツの状態で装備品が高騰してるっていうのに、新規参入分の職人なんてどこから引っ張ってくればいいんだい……」

「ドワーフの奴隷って毎年売りに出されてるんでしょ? その子たちを育成すればいいんじゃないの? それにミスリル装備までなら他の種族だって作ることが可能だからね。ドワーフに拘る必要もないよ」

「……いやいや、バカをお言いじゃないよ。村人から職人になるまで、いったい何十年かかると思ってるわけ? 次の世代のための投資のつもりかい?」


 ああ、そう言えばこの世界の職業浸透の知識って遅れてるんだったな。すっかり失念してたよ。


 職人ルートを最短距離で進むと仮定すると、商人、職人、そして各種専門の職人か。

 最低品質の装備品を作るまでなら、2ヶ月もあれば余裕かなぁ?


「村人から各種職人になるまでには3ヶ月もあれば充分だよ」

「…………はぁ?」

「キャリアさん。シュパイン商会で奴隷を片っ端から買ってくれないかな? お金は払うから。そいつらをマグエルで教育して、半年以内に各種職人の数を数倍に増やしちゃおう」


 以前から装備品の品薄と高騰は気になってたんだよね。

 安い装備品が量産されれば魔物狩りを始める人も増えるし、駆け出したちの安全性も増していくはずだ。


「職人になるのに何年もかける意味は無いよ。魔人族の得た素材で、片っ端から装備品を流通させちゃおう」

「ティムルゥ……。お前、なんて男を捕まえちまったのよぉ……。ダンさんって、この世界の常識を変えていくって宣言しちゃってるよぉ……?」


 頭を抱えながらティムルに助けを求めるキャリアさん。

 話を振られたティムルは、ニッコリ笑って言葉を返す。


「私がダンのお嫁さんになった時に、先にお嫁さんになっている娘に言われたんですよ。この人はなんでもないような顔をして何でもしてしまう、とっても非常識な人なんだって」


 これってエンダさんを返り討ちにした時にニーナに言われたんだっけ?

 でもいくらこの世界では常識的なことだって、システム面から見ておかしいことを放っておけなくてさぁ……。


「傍に居る人は堪ったものじゃないってないんだって話、キャリア様も実感できました?」

「堪ったものじゃない、かぁ……。まさにそれだよぉ……。非常識だけど、それをやられるとみんなが幸せになっちゃうからやるしかない。本当に堪ったものじゃないわぁ……」


 装備品が高額な理由は、需要に供給が追いついてないからだと言われたんだよね。

 シュパイン商会が装備品に参入できない理由も職人が足りていないから。


 なら職人を増やしちゃえばいいじゃないの精神だ。


「これから一気に魔物狩りの数も増えるからね。今の職人の数じゃどっちにしても対応できない時代が来るよ」

「う~……! 既に100人規模で魔物狩りを増やしているダンさんが言うと怖すぎなんだけどぉ?」


 トライラムフォロワーのみんなもスポットの奥に入れるようになれば、装備素材を自前で調達してくることも可能になってくるわけだし。

 絶望している奴隷達にも手に職をつけてあげれば、自分を買い直すことも出来るだろう。


 現在困窮している者たちにお金が回れば、魔物狩りと奴隷の死亡率が下がって、人口も一気に増えていく可能性が高い。

 うん。やらない理由が無いな。お金も人もどんどん回していこう。
 

「これが奴隷購入資金ね。お釣りは残さなくていいからよろしく~」


 とりあえずキャリアさんに王金貨30枚ほどを渡して、奴隷購入をお願いしておく。

 王金貨を渡されたキャリアさんはやっぱり頭を抱えてしまったけれど、俺別に何も悪くないよなぁ?
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