異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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4章 マグエルの外へ2 新たな始まり、新たな出会い

234 1つめの到達点 (改)

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 呆けているニーナを抱きしめながら、みんなにもニーナのステータスプレートを見てもらう。

 ムーリにもニーナのステータスプレートは見せたことがあるので、なにが起こったのかはすぐに理解してくれるはずだ。


「これはつまり、ニーナちゃんの解呪に成功したってことでいいのかしら? エリクシールなんて手に入れられなかったのに、いったいどうして……?」

「ピュリフィケーションじゃったかの? 聞き慣れない魔法なのじゃ。先ほどの魔法でニーナの解呪に成功したということなのじゃろうが……」

「うん。さっきの魔法は浄化魔法のピュリフィケーションって言ってね。状態異常を解除してくれる魔法なんだってさ」


 首を傾げるティムルとフラッタに、浄化魔法のことを説明する。

 やっぱりピュリフィケーションは、貴族であるフラッタも聞き覚えがないようだ。


「呪いは全状態異常耐性で防げるステータス異常だから、浄化魔法でも解呪可能だと思ったんだ。でも確証が無かったから言えなかったんだよ」


 仮に解呪出来なくてもニーナもみんなも俺を責める事はないだろうけれど、きっとがっかりするのは隠せないだろうからね。

 今回はサプライズで試させてもらったんだよ。


「浄化、魔法……? そんなの聞いたことがないよ……!? 魔法に優れた種族であるエルフが、なんでそんな魔法を知らないのさっ……!?」

「浄化魔法って修道士の先で見つけたんだよ。だからエルフは知らないんだろ」


 魔法関係に強いエルフだからか、浄化魔法そのものよりも、浄化魔法の存在を知らなかった事実の方に慄くリーチェ。

 だけど俺からしたら不思議でも何でもないんだよなぁ。


「修道士すら少ないエルフは全体回復魔法も一般的じゃなかったんだろ? 治療魔法が使えるエルフだって少なそうだ。なら浄化魔法まで使えるエルフが居なくても不思議じゃないと思うよ」

「しゅっ、修道士を極めていくと、状態異常を治療できる魔法が習得出来るんですかっ……!? でもそんな話、教会じゃ聞いたことがありませんよっ!?」

「うん。テネシスさんもイザベルさんも司祭だって言ってたからね。その先にある浄化魔法を知らなくても無理はないよ」


 リーチェに続いて、修道士ルートに強いはずの教会でも浄化魔法を知られていないと混乱するムーリ。

 恐らく聖者になる為には、司祭の他に慈善家と篤志家の浸透が不可欠だ。だけど初期職っぽい慈善家にすらギルドが存在してないからなぁ。


「だけど以前テネシスさんが、昔はもっと上の職業まで進んだ人がいたって言ってたんだ。だから修道士の先に浄化魔法への道が続いているのは間違いないと思うよ」


 職業知識の独占なんて考えずに、万人にどんどん職業浸透を進めさせていけば、多種多様な職業が発見できただろうにねぇ。

 既得権益を守る事に固執しすぎて、世界全体の力を衰弱させてしまうとか馬鹿もいいところだ。


 本当に優秀な支配者なら、生かさず殺さずで上手く国民を制御するもんじゃないのぉ?


「ダン。本当に……? 本当に私の呪い、解呪されたの……?」


 抱きしめているニーナが、搾り出すような震える声で話しかけてくる。

 ニーナを腕から解放して、まだ少し焦点が合っていない茶色の瞳を見ながら、はっきりと告げる。


「うん。ニーナの呪いは間違いなく解呪されたみたいだよ。もうニーナはステータスカードの開示要求に怯えることもなくなるんだ」

「私の、ステータスプレート……。もう、みんなに見せても、いいの?」


 少しずつ目の焦点が合い始めるニーナの頭を、優しくよしよしなでなで。


 呪われた人生はもう終わりだよニーナ。

 これからはこの世界の誰もが享受している、普通の人生が待ってるんだよ。


「ニーナ。明日ニーナのポータルでステイルークに戻って、ニーナとティムルの奴隷契約を破棄してこようね」

「あ、呪い……。だからもう、奴隷じゃ……?」

「だからニーナ。正式に俺のお嫁さんになってくれるかな?」


 呪いを解放したから、改めて君に結婚を申し込むよ。

 君と初めて1つになった日の朝に、君に約束した通りにね。


 俺の言葉に、少しずつ目に力が戻ってくるニーナ。そんな彼女を見詰めながら、俺は静かにニーナの返事を待ち続ける。


「……………………やだ」

「っ!?!? うええええっ!?」


 夢にも思っていなかったニーナの返答に、思わず絶叫してしまう。


 こ、ここに来てまさかのプロポーズ失敗っ!? うっ、嘘でしょニーナ!? 嘘だと言ってよニーナぁっ!?

 え、浄化魔法のこと黙ってたの、そんなに怒ってるのニーナ!? でも確証がなかったから仕方ないんだよ!?


 頭の中がグチャグチャになってしまった俺の胸に、ニーナが飛び込みしがみ付いてくる。


「明日まで待つなんてやだっ! ダン! 今すぐステイルークに行くのっ!」

「…………へ?」

「1秒でも早くダンのお嫁さんにならなきゃ、もう我慢できないのーっ!」


 そっちのやだかよっ! まじで一瞬心臓止まりかけたじゃんかぁっ!


「ほらいくよっ! グズグズしないっ! 早くいくのーっ!」

「って待ってニーナ! 俺達もう2人きりの家族じゃないんだからねっ!?」

「はやくーっ! はやくするのーっ!」


 手を引っ張らないで!? ああもう引っ付いてていいから!

 痛い痛い! 背中バンバン叩かないでってば! 分かってます! 急ぎますからぁっ!


「……こんな感じで締まらなくてて悪いけど、ニーナの呪いを解呪出来たんだ。だから奴隷契約を破棄して婚姻を結びたいと思う」


 ニーナを背中にくっつけたままで、ニヤニヤしながら俺とニーナを眺めているティムルと向き合う。


「ティムル。生涯俺のお嫁さんとして、俺達と共に生きてくれるかな?」

「断る訳ないでしょーっ! こっちはずーっと待ってたんだからねっ!」


 俺からのプロポーズの返事を一瞬で流したティムルは、すぐに俺に背を向けてフラッタの手を引いてくる。


「さっ、早く早くっ! フラッタちゃんこっちおいでーっ!」

「ちょーっ!? ニーナと一緒に急かすのやめてくれる!? 一応俺なりのけじめなんだからさーっ!?」


 と言っても、1秒でも早く婚姻したいのは俺も同じだから、本気で怒れないのが辛いんだよなーっ!

 ティムルに手を引かれて俺の前に連れられてきた、ニコニコと笑顔を浮かべている世界一可愛いフラッタの顔を見ながら求婚する。


「待たせたねフラッタ。可愛いフラッタも、正式に俺のお嫁さんになってくれるかな?」

「あったり前なのじゃー! これでようやくみんなと本当の家族になれるのじゃっ!」


 そしてフラッタも直ぐにくるりと背を向けて、リーチェの小麦色の手をしっかりと握った。


「ほらリーチェ! そんなところに突っ立ってないで早くこっちに来るのじゃっ!」


 サクサクプロポーズが済んでいくのは良いんだけど、もうちょっとこう、余韻的なものは無いんですかねぇ?

 フラッタに手を引っ張られて連れてこられたリーチェにも、翠の眼を見詰めながらしっかりと宣言する。


「リーチェ。お前も俺のお嫁さんになってくれるかな? ……っていうか婚姻契約は結んでも大丈夫? その辺ちょっと分からないんだけど」

「うんっ! 契約にはなんの問題もないよっ。ぼくのことも貰ってくださいっ!」


 どうやら婚姻契約を結ぶことは可能らしい。

 満面の笑みでプロポーズを受けてくれるという、ようやく俺が期待していた反応を返してくれたリーチェだったけど、直ぐに最高の笑顔を曇らせて俯いてしまった。


「……ただ、契約には影響がない分、婚姻を結んでも今までと出来ることは変わらないと思うんだ……。せっかくダンのお嫁さんになれたのに……」

「ふふ。リーチェをお嫁さんに出来るだけで今は充分だって」


 俯くリーチェを両腕で捕らえて、ぎゅーっ! と抱きしめる。

 肉体的に繋がれないのは残念だけど、リーチェと家族になれるだけでも最高に幸せだってばーっ!


「ニーナの呪いだって解呪してみせた。イントルーダーだって撃破してみせた。この調子でお前の問題だってすぐに解決してみせるから、安心して貰われてくれよ」

「……うん。ぼくのこと、ちゃあんと全部もらってね? そしてぼく以外のみんなのことも、残らずちゃんと貰ってあげてね……?」

「心配するなって。誰1人として手放す気は無いからさ」


 リーチェをぎゅーっ! っとしたままで、ムーリに向き直る。


「ムーリもお待たせ。3ヶ月くらい待たせちゃったけど、ようやく正式にムーリを迎えられるよ」

「毎日散々愛してもらったから、全然待たされた気がしないですよーだっ!」


 満面の笑みを浮かべて、べーっ! っと舌を出すムーリ。

 そんなムーリをリーチェと一緒にぎゅー! っと抱きしめる。


「ムーリ。俺のお嫁さんになって、子供達の将来を一緒に見守ってくれるかな?」

「勿論お受けしますよっ! 正式にダンさんに迎えて貰えるの、信じられないくらい嬉しいですっ!」


 リーチェとムーリも自分から力いっぱい抱き付いてきてくれる。

 ああもう、このエロボディコンビめっ! 抱き心地最高すぎるぅ。ぎゅーっ。


「んっ! それじゃすぐに行くよダン! ちょうど私も冒険者だしねっ!」


 だけど最高の抱き心地を堪能している暇は無さそうだ。

 パンパンと手を叩いて、ワクワクした笑顔を浮かべたニーナが移動を宣言する。


「ラトリアには悪いけど、今晩は夫婦水入らずで過ごさせてもらうんだからっ! さぁさぁいっくよーっ!」


 みんなに引っ付かれた団子状態の俺を、ニーナがグイグイと引っ張っていく。

 ゴールさん、夜分に申し訳ないね。でももうこの流れは止められないよ……。


「あ、そう言えば婚姻契約ってどうするの? 奴隷契約みたいに、奴隷商人に結んでもらうわけじゃないんでしょ?」

「ああ、婚姻契約はパーティ結成と同じよ。当人同士がステータスプレートに宣誓して、お互いが心から同意すれば婚姻成立ね」


 元人妻のティムルが、俺の疑問にあっさりと回答してくれた。

 なるほど。面倒な手続きや難しい形式みたいな物は無いのね。ちょっと安心。


 これ以上面倒な手続きを経由するとか、ニーナが暴れだしそうだもんなぁ……。


「虚ろな経路。点と線。見えざる流れ。空と実。求めし彼方へ繋いで到れ。ポータルーっ!」


 屋敷の玄関先で、詠唱高速化を適用してポータルを発動するニーナ。

 どんだけ急いでるのよっ! 気持ちは背中がズキズキと痛むほどに分かりますけどっ!


「…………っ」

「……ニーナ?」


 だけど自分の使用したポータルの前で、不安げに立ち尽くすニーナ。

 自分で発動したポータルに、いつまで経っても踏み込むことが出来ないようだ。


「ふふ。生まれて初めての移動魔法なんだもん。緊張するのは仕方ないよ」

「あっ……」


 そんなニーナの手を握って、みんなも一緒だよと微笑みかける。


「手を繋いで一緒に入ろう? 移動魔法を使っても、繋いだ手は放さないからね」


 大丈夫だよニーナ。鑑定しても状態異常は消え去ってる。君の呪いは、もう完全に消え去ってるんだから。

 1人で踏み出すのが不安なら、手を握って一緒に進もう。


「あはっ。私の幸せって、この手を繋いだところから始まったんだよね……」


 俺と繋いだ自分の手を見ながら、感慨深げに呟くニーナ。

 そして手から俺に視線を移し、不安なんて欠片も感じさせない最高の笑顔を見せてくれた。


「この手を放さない限り、私はずっと幸せでいられそうなのっ」

「ならニーナはずっと幸せで居られるね。この手は絶対に放さないから」

「私だって放さないのっ! 行こうダン! 私たちはもっともっと幸せになるのっ」


 俺の手を強く握り返してきたニーナは、今度は躊躇うことなくポータルに飛び込んだ。


 ポータルの先は、ステイルークの奴隷商館の前だった。

 初めて訪れた時にゴールさんに取り次いでくれた門番の男が、驚いた様子で俺達を見ている。


「俺のこと覚えてるかな? 開拓村の避難民の1人でダンって名乗ったんだけど」

「お、覚えてるよ……。っていうか忘れる訳ないだろ……」

「覚えてるなら話は早いね。ゴールさんに、ニーナの事で大至急取り次いで欲しいんだけど」


 金貨1枚を握らせながら、こちらの用件を伝える。

 手元の金貨に一瞬目を落としたあと、ヘコヘコと頭を下げる門番さん。


「へへ、旦那。たった1年で、随分とまぁ稼いだみたいじゃないですかぁ」

「おかげさまでね」

「へへっ。すぐに会長に取り次ぎますんで、申し訳ないすけどこちらで少々お待ちを」


 飛ぶように商館に走っていく門番の男。
 
 忘れる訳ない、かぁ。避難民で村人、そして奴隷をタダで寄越せだもんなぁ。客どころか集りだもん。そりゃ忘れないかぁ。



 すぐに中に通されて、例の応接室に案内される。

 俺と一緒のニーナの姿を見たゴールさんは、ワナワナと震えながら驚愕の表情を浮かべている。


「つい最近、たった1年で解呪出来ると思ってない、と申し上げたばかりですのに……。まさか丸1年もかからずに解呪に成功してしまうとは……!」

「今年中には解呪出来そうだとも言ってたでしょ。何も間違ってないって。ゴールさんの期待通り、ちゃんと今年中に解呪してみせましたよ」


 積もる話も無くはないんだけど、さっきからニーナとティムルに肩とか背中をバシバシ叩かれてるので、さっさと本題に入ってしまおう。

 俺、ニーナ、ティムルのステータスプレートをゴールさんに渡し、奴隷解放をお願いする。


「本当に……! 本当に呪いが消えているっ……! たった1年で、よくぞ……!」

「まぁまぁそういうのは後にしてください。俺の肩と背中が限界なんで?」


 こっちは脆弱な人間族さんなんですよ。

 獣人族とドワーフ族にビッタビッタ叩かれて、結構深刻に痛いんですよぉ。


「おおっ、これは失礼しました。早速始めさせていただきましょう」


 俺とニーナとティムルの3枚のプレートを重ねて、なにやら詠唱を始めるゴールさん。


 ステータスプレートの契約の中で、なんで奴隷契約にだけスキルが必要なんだろうね? 当人同士で完結していないからなのか、それだけ強力な縛りなのか。


「お待たせしました。奴隷解放は無事終了しました。ステータスプレートをお返しします」


 なんとなくデジャヴを感じることを言いながらステータスプレートを返してくれるゴールさん。



 ダン 男 26歳 紳商 仕合わせの暴君
 ニーナ ティムル フラッタ リーチェ ムーリ
 貸付 50,000,000リーフ(ムーリ)



 ゴールさんが宣言した通り、奴隷契約の項目が消失している。

 元々情報が少ないステータスプレートの表記が、更に寂しくなっちゃったな。


「それじゃ奴隷解放も無事に済んだことだし、他のみんなもステータスプレートを出してくれる?」


 ここに来る前にプロポーズは済ませてしまってるけどね。

 それでも正式な婚姻契約を結ぶんだから、もう1度みんなと正面から向き会いたいんだよ。


「ムードもロマンも何も無いけど、1秒でも早くみんなと婚姻を結びたいんだ。だからちょっとだけ俺に付き合って欲しい」


 ステータスプレートを持った5人に並んでもらって、みんなと向き合うように立つ。

 ニコニコと俺を見詰める5人の様子に、プロポーズをやり直す必要性なんて無さそうだけど、これもまた俺なりのケジメなんだ。


「俺は、ダンは正式にみんなに婚姻を申し込みます。ニーナ。ティムル。フラッタ。リーチェ。ムーリ。俺と結婚してください」


 1人1人の顔を見て、1人1人の名前を呼ぶ。

 こんなに素敵な女性が5人も俺のお嫁さんになるなんて。そう思ったらちょっとだけ笑ってしまった。


「ちょっとお嫁さんの数が多いけど、みんな一緒に楽しく暮らして生きたいんだ。これからもよろしくお願いします」

「はいっ! ニーナはダンと婚姻を結びたいですっ!」


 俺とニーナのステータスプレートが発光し、互いのプレートに名前が記載される。

 お互いが心から同意すれば婚姻は成立するんだっけ。ニーナと心が繋がったみたいでなんだか嬉しいな。


「お嫁さんはまだまだどんどん増やしていいからねーっ!」

「ちょっ!? 婚姻成立直後になに言い出すのさっ!?」


 せっかく婚姻契約成立で感動してたのに、まさかのニーナの発言で感動がどっかいっちゃったよっ!?


「目標は、ダンのお嫁さんだけでアライアンス組んじゃったりっ?」


 嫁だけでアライアンスって、何人だよそれぇっ!? ふざけんなってのーーっ!

 でも既にフルパーティでしたねぇ! ラトリアを入れればの話だけどっ! 何も言い返せませんでしたーっ!


「はい。私は、ティムルはダンと婚姻を結ばせていただきます」


 ニーナとわちゃわちゃしていると、俺とティムルのステータスプレートが光る。

 これでティムルの婚姻契約への意識も上書きできたかな?


「はぁ……。好きな人と婚姻を結べるのが、こんなに嬉しいなんて……」


 自分のステータスプレートを愛おしそうに抱き締めるティムル。

 だけど直ぐに満面の笑みを浮かべながら、ポロポロと静かに涙を溢し始めた。


「あはーっ。お姉さん幸せすぎて、気を失っちゃいそうよぉ……」

「大好きなティムルの事はまだまだ幸せにしてあげるつもりだけどね? 気絶しても絶対に放さないから、何処までも幸せになっていいからね……」


 ティムルがどっかのジジイに奪われた物は、俺が全部奪い返してやるからね。

 形ある物もない物も、過去だろうが俺と出会う前のことでも、全部ねっ!


「フラッタ・ム・ソクトルーナは、ダンと婚姻を結ぶと誓うのじゃーっ!」


 泣き笑いのティムルを抱きしめていると、俺とフラッタのステータスプレートが光る。

 元気いっぱいのフラッタを見て、ティムルの涙もようやく止まってくれたみたいだ。


「これでダンと、ニーナとティムルとリーチェとムーリと、本当に家族になれたのじゃーっ!」
 

 バンザーイと両手を掲げて、嬉しそうにくるくる回って見せるフラッタ。

 フラッタには何にも問題なかったのに、今まで待たせちゃってごめんね。


「世界一可愛いフラッタをお嫁さんに迎えられるなんて、これ以上ない幸せだよ。これからも宜しくね」

「世界一かっこいいダンのお嫁さんになれて、妾こそ最高に幸せなのじゃっ! ダンっ、大好きなのじゃーっ!」


 胸に飛び込んできたフラッタを、ティムルと一緒に受け止める。

 早くシルヴァも助け出して、ラトリアも責務から解放してあげようねー。


「ぼくも……! リーチェ・トル・エルフェリアは、ダンと婚姻を結びたいです……!」


 俺とリーチェのステータスプレートが光る。

 無事に婚姻契約が成立したようでひと安心だ。


「まさかぼくが……、ぼくが家族を持てる日が来るなんて、夢にも思わなかったな……!」

「これからも宜しくな。もうリーチェのこと、絶対に独りになんてしないからね」


 自分のステータスプレートを見詰めて感極まっているリーチェに、決意を込めて宣言する。


 まだリーチェのことをちゃんと迎えられたとは言えないんだけどさ。

 今まではなんの繋がりも無かったから、婚姻が成立しただけでも本当に嬉しいよ。


「はい。ムーリはダンさんの婚姻契約をお受けしますっ」


 リーチェをよしよしなでなでしていると、 俺とムーリのステータスプレートが光る。

 ムーリとはニーナとティムルに続いて長い付き合いだったなぁ。ようやく迎えてあげられてひと安心だ。


「はぁ~……! 私のステータスプレートにダンさんの名前があるよぅ……。私の魂、ダンさんと繋がっちゃったんだぁ……!」


 ……ムーリは普通に感動しただけなのかもしれないけど、言動がなーんかエロいんだよなぁ。


 ま、いいか。ムーリのエロボディは一生俺専用のエロボディなんだから。


 全員との婚姻契約が成立した自分のステータスプレートを見てみる。



 ダン 男 26歳 紳商 仕合わせの暴君
 ニーナ ティムル フラッタ リーチェ ムーリ
 ニーナ(婚姻) ティムル(婚姻)フラッタ・ム・ソクトルーナ(婚姻)
 リーチェ・トル・エルフェリア(婚姻) ムーリ(婚姻)
 貸付 50,000,000リーフ(ムーリ)



 契約欄長いわぁ……。たった、とい言うのもどうかと思うけど、たった5人でも大分長い。

 婚姻契約44人とかなに? ステータスプレートからはみ出ないの?


「1年前のあの日、ステイルークを旅立った日に約束した通り、俺とニーナの関係が婚姻に変わるところに立ち会ってもらいましたよ、ゴールさん」


 ゴールさんに俺のステータスプレートを見せながら話しかける。


「今日は夫婦で盛り上がってるのでこれで失礼します。お礼はまた後日に。出来ればその時に、ニーナの両親の話が聞きたいと思ってます」

「了解しました。彼女の両親については、私以外の年寄りにも声をかけておきます。ですので、出来れば日程を決めてもらえませんか?」

「日程ですか……。そうですねぇ」


 今日と明日は寝室から出れる気がしないので、明後日の日中に改めて訪れることを約束し、奴隷解放料金の金貨6枚を支払って奴隷商館を後にする。


 ポータルでマグエルの自宅に戻って、全員で寝室に直行。

 これから結婚初夜を存分に楽しませてもらおうじゃないか!


 ニーナ。ティムル。フラッタ。リーチェ。ムーリ。

 俺の大好きなお嫁さん。大切な家族。これからもずっと、よろしくお願いします。


 もう絶対に、誰にも不幸なんか近づけさせないからね。
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