異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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4章 マグエルの外へ1 竜王のカタコンベ

227 迷惑 (改)

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 みんなでひと晩中愛し合って朝になった。

 いつも通り竜王のカタコンベに先行する為、ニーナと一緒にフラッタの部屋を出ると、部屋の外でラトリアが待っていた。


「あ、あのっ……! 昨晩は、大変な無礼を働いてしまい、申し訳あり……」

「ラトリア。そういう形だけの謝罪は要らないから。何が悪かったのかも分かってないのに適当に謝る方が、よほど失礼じゃないの?」


 ラトリアの言葉を遮り、彼女の謝罪を形だけと斬り捨てるニーナ。

 俺が思ってる以上に、ニーナも怒ってるのかなぁ?


「今晩もう1度話し合おうか。俺の考え、ラトリアの考えをもう1度話そう。俺の考えも分かってないのに、お前の考えを押し付けられても困るよ」

「あっ、あのっ! 今話していただくわけには……?」

「……なるほど。昨日ニーナも言った通り、ラトリアは俺を甘く見てるんだね? 竜化しても俺に負けたくせに、所詮平民だと思って侮ってるんだ?」

「し、失言でしたっ! 申し訳ありませんっ!」


 壁際に後ずさったラトリアを通り過ぎる。


 ……ちっ、気分悪いなぁ。抱いた女と対等な関係でいられないってのは、最高に気分が悪い。

 そんな俺の気持ちを察してくれたのか、ニーナが手を引いてこの場から離れさせてくれた。


「ダンは私のことを意外って言ってたけど、ダンこそ思ったより怒ってるね?」

「まぁねぇ。ラトリアに悪気は無いとは言え、超えちゃいけないラインを越えてきてるから」


 流石に今夜もくだらないことを言うようだったら、フラッタの母親だろうがゴルディアさんが命をかけて守った女だろうが、俺の手で殺してやってもいいくらいには怒ってるよ。

 出来ればそんな事態は回避したいんだけどねぇ……。


 胸に溜まったフラストレーションを振り切るように、竜王のカタコンベを駆け抜けた。




「よし。気持ちを切り替えて今日もがんばろーっ!」

「「「おーっ」」」


 いつも通り、最深部でみんなと合流。

 昨日からのストレス発散するつもりで魔物狩りをしようねー。


 今日から俺とニーナの察知スキル持ち2人で魔物を集める事にする。ぶっちゃけ魔物狩りはもう訓練にならないからね。


 今までよりも効率よく魔物を狩れるようになって、早速ニーナの支援魔法士がLV50になった。


「勿論次は回復魔法士でお願いっ! 攻撃魔法の威力が上がってきて、魔法で戦うのも楽しくなってきたのっ!」


 分かるー。その気持ち分かるよニーナ。

 最初は殴った方が早いだろって思うけど、浸透が進むごとに攻撃魔法の威力が上がるのが凄く楽しいんだよねー。



 回復魔法士LV1
 補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
 スキル 回復魔法



 これでニーナもヒールライトプラスが使えるようになるし、魔導師の条件も満たせるね。

 ニーナもインパクトノヴァを使えるようになれば、仮に分断されても1人でアウターエフェクトを殺せるようになると思う。

 んー。そういう意味ではティムルにも魔導師まで浸透させてあげたいけど、名匠を外すのも悩ましいんだよなぁ。


「あはははははっ! あははははははっ!」


 笑い声を上げながら大量の魔物を引き連れる獣人の少女。ヴァルハールに新たな怪談が生まれようとしていますね?


 もう魔物狩りではあまり訓練にならないんだけど、俺とニーナで魔物を集めるのと、他の3人で魔物を殲滅するのを競ってるのは訓練になってる気もするなぁ。

 スキルの使い方とか誘導ルートとか、微妙に考えながら動かなきゃいけないし。


 そして気配遮断は魔物にも効果があって、魔物とのエンカウントを無視したい時なんかには有効なスキルになりそうだ。

 でも今の俺とニーナの移動速度についてこれる魔物には会った事がないし、他の皆はアナザーポータルで移動しているので、やっぱりあまり使い道は無さそうだ。




「本日のスキルジュエルさん、ご案内~っ」


 今日のスキルジュエルは、持久力上昇+を獲得することが出来た。

 初の大効果スキルのドロップで、持久力上昇って凄く大事なんだけど、好色家が浸透し切ってるうちのメンバーには全く必要無いんだよなー。ムーリにさえ必要無いんだよぉ。

 あぁ……。インベントリにスキルジュエルが溜まっていくぅ。



「おっと、今日も出てくれたみたいだね」


 これ以上は今日中の浸透は無理かなーなんて思い始めた頃、なんとアウターエフェクトの出現兆候があった。

 ニーナと一緒の魔物集めが功を奏したのか、連日のアウターエフェクトだ。


 いや、本来はアウターエフェクトの出現を喜んじゃダメなんだけどね? 神鉄装備と浸透的には、アウターエフェクトの出現は歓迎なんだよね。

 一応鑑定したらマインドロードだった。お前の出番はもう無いよ。じゃあね。


 一瞬で消し飛ばして、マインドソウルというドロップアイテムを回収。マインドソウルって微妙に変な言葉に感じてしまうね?


「な、なんかアウターエフェクトの方が、通常の魔物より弱く感じちゃうわね……」


 さてと。時間もいいし、今日はこれで終わりかな? ティムル、ボーっとしてないで帰るよー?



 俺が守護者と聖者LV54で暗殺者LV24。ティムルの名匠LV126。

 アウターエフェクトのおかげで、ニーナの回復魔法士と、フラッタの探索魔法士が共に浸透してくれた。


 タイミング的にニーナがラッキーで、フラッタがちょっと勿体無かったね。


「私は勿論魔導師ーっ! 私もアウターエフェクト倒せるようになりたいっ!」

「妾は支援魔法士でお願いするのじゃ。ダンが散漫を防いでみせたサンクチュアリを使えるようになっておきたいからの」


 それぞれが結構真面目な理由で職業を選択してるなぁ。

 ニーナとフラッタをよしよしなでなでしながら職業設定。



 魔導師LV1
 補正 魔力上昇+ 魔力上昇 魔法攻撃力上昇+ 魔法攻撃力上昇
 スキル 上級攻撃魔法 詠唱速度上昇


 支援魔法士LV1
 補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
 スキル 支援魔法



 さて帰還しましょうかねぇ。

 今日は帰ってからの方が面倒臭そうで参っちゃうね。



 今日は全員でドロップアイテム等の売却を済ませ、ムーリを攫ってきて領主邸で夕食を取る。


 暗い雰囲気の夕食をさっさと済ませて、そのまま話をすることにした。昨日までの楽しい夕食の雰囲気が台無しだよまったく。

 さて。まずは俺とラトリアの認識の齟齬から修正していこうかな。


「ラトリア。俺達は社会的地位にも権力にも一切興味が無いんだ」


 まずは単刀直入に、俺の意見をラトリアに伝える。

 ラトリアが俺達に送りつけようとしている物に、一切価値を感じていないのだと断言する。


「地位も権力も押し付けられたって迷惑なんだよ。なのにお前の価値観を俺達に身勝手に押し付けてくるな」

「な、なぜですか……!? 爵位を得て貴族籍を得ることは、これ以上ないほどに名誉なことなんですよ……!?」

「母上。それを価値観の押し付けじゃと申しておるのじゃよ。何故分からぬ……!?」


 ラトリアって俺に質問をしておきながら、俺の言葉を聞く気が無いようにしか思えないんだよな。


 そんなラトリアを、フラッタがもどかしそうに問い質す。

 かと思えば直ぐに思い直した様に頭を振って、別のアプローチをするフラッタ。


「……いや、分からなくてもいいのじゃ。分からなくていいから、余計なことをするでない」

「よ、余計なことですって……!? 叙爵を助けるのが、余計なことっ……!?」


 全然ピンと来てないねぇ。

 家を守るために必死になって42歳まで生きてきたラトリアだ。だからこそ、叙爵されることを名誉だと思わない価値観が信じられないのかもね。


「……母上。竜爵家が資金難だからと、今ここで妾がスキルジュエル10個をポンッと渡したらどう思うのじゃ?」

「は、はぁ? スキルジュエル10個なんて、そんな馬鹿な話……」

「たとえばの話じゃよ母上。質問したのじゃから答えてくれるか」

「い、言うまでもなく、そんなの迷惑に決まってますっ……!」

 
 真剣なフラッタの様子に、ラトリアさんも困惑しながら口を開く。


「スキルジュエルは換金にも時間がかかりますし、そんな数のスキルジュエル、出所だって探られるでしょう。余計なトラブルを呼び込むだけに決まって……」

「そうじゃよ母上。母上が妾たちにやっている事は、まさにそれなのじゃ。価値があるからと勝手に押し付けられても、そんなもの無用のトラブルを招くだけなのじゃ」

「なっ……! 貴族籍ですよっ!? スキルジュエルとは話が……」

「同じじゃ母上。先ほどダンははっきりと、母上の行為を迷惑じゃと言い切った。それを勝手に押し付けているのは母上じゃ」

「ですからそれはっ……! 皆さんがまだ良く理解できていないだけで……!」

「母上。ここまで言っても、まだ妾たちの言っていることが分からぬかのう?」


 何か言いたそうに、でも次の言葉を発せずにいるラトリア。

 んー、スキルジュエルの例えは現実感が無くてイメージできなかったかな?


 それならばと、インベントリに収納してある13個のスキルジュエルを取り出す。


「ほらラトリア。これ全部お前にやるよ」

「なななっ!? スキルジュエルが、こんなにっ!?」

「遠慮するなよ。竜爵家って資金難なんだろ? 今はインベントリの肥やしになってるからさ。遠慮なく受け取れよ」

「……ダンさん。今の私とフラッタの話、聞いてました? 価値があるのは分かっていますが、スキルジュエルをいただいても迷惑なんです」

「うん。お前こそ俺とフラッタお話聞いてた? 価値があるのは分かってるけど、貴族籍を貰っても迷惑なんだ」


 ラトリアの言葉をそっくりそのままお返しする。

 貴族籍が価値あるものなんてことは流石に分かってんだよ。分かった上で要らないし、迷惑だと言っているのにさぁ。


「俺達にとって貴族籍を押し付けられるのは迷惑だって、はっきり言ってるよ? なんでお前は人の話を聞く気がないのに、相手は話を聞いてくれると思うんだ?」

「待って……! 話を、私の話をですね……!」

「はぁ~……。腹割って話そうかラトリア」


 フラッタには悪いけど、俺も結構怒ってんだよね。

 こういつまでも平行線だと、時間の無駄感も酷いし。


「俺は今、お前がフラッタの母親だからってだけでこうやって話をしてやってる。そうじゃなかったら、もうとっくに斬り殺してるところだよ」

「……っ」


 俺の言葉に息を飲むラトリア。

 しかしそれでも納得がいかなかったようで、恐る恐る俺に質問の言葉をぶつけてくる。


「…………私には、ダンさんがそこまで貴族籍を嫌うのかが理解できません。どうして私を殺してまで、貴族籍を辞退したがっておられるのですか?」

「逆だラトリア。なんでお前は俺の不興を買ってまで俺に貴族籍を押し付ける?」

「押し付けるって……! ですからこれは大変名誉なことで……!」

「お前さぁ。無意識に俺のことを下に見てるって気づけよ。平民の価値観なんか始めっから頭ごなしに否定してるんだよお前は」

「み、見下してなどっ……! そんなことは決して……!」


 物凄く自然に、俺……、というか平民を馬鹿にしてるんだよねぇ。

 まるで貴族以外は人間でもないとでも思ってるみたいだ。


「なにが強い男に抱かれたいだよ、馬鹿馬鹿しい。自分こそが見下しておいてよくそんなことが口に出来るね?」

「みっ、見下してなんていませんっ! 私は誰よりもダンさんの強さを……!」

「俺は1分でお前以外のこの屋敷の人間全員を皆殺しにしてくることも出来るよ。ひと晩でヴァルハール中の竜人族全てを殺してみせることも簡単だよ? それを本当に分かってる?」


 生体察知まで駆使したら、本当に1人残らず殺すのも容易いね。

 スペルド王国最強とか言われてたラトリアなんか、瞬きの間に殺しちゃえるんだよ?


「そんな相手の不興を買ってまで、自分の我が侭を押し通すか普通?」

「我がっ、我が侭なんかじゃ……!」

「なにが竜人族は強さを崇拝してるだよ。自分を負かした相手にだって従う気は全く無いんじゃないか」


 決闘に勝った時のことを思い出してしまうよ。

 俺が竜人族に勝ったってのに、誰も動いてくれなかったよなぁ。


「お前に俺の価値観を理解しろとは言わないよ。でも今ここでステータスプレートに宣誓してもらえないかな? お前は俺達に対して、独断で何も行動しないってさ」

「私はっ! 私は皆さんの為を思って……!」

「それが押し付けだって言ってるのが理解できないなら、何もしなくていいよ。ラトリアに俺達を理解してもらおうなんてもう思わないから。さっさと宣誓しろよ」

「母上っ! ダンは本気で母上を殺せる男なのじゃっ! はよう宣誓するのじゃっ!」


 いやいや、フラッタの母親をそう簡単に殺したりはしないって。

 でもこれだけ話が通じない人と会話するのって、疲れるし不快なんだよねぇ。


「ラトリア。1分以内にステータスプレートとゴルディアさんに誓え。もう俺達に対してくだらない押し付けをやめるとな」

「叙爵を、くだらない押し付け、ですって……!?」


 驚愕しているラトリアを無視して、ステータスプレートを取り出す。


「1分を過ぎたら、エマーソンさんから順にこの屋敷の人間を殺していく。屋敷の人間がいなくなったら、ヴァルハール中の人間を殺していく」

「なっ、なにをっ……」

「話が通じないなら武力行使させてもらうよ。悪いね」


 口にした内容を必ず実行すると、ステータスプレートに誓約する。


 誓約されたステータスプレートを見たラトリアは、青い顔をしている。

 と思ったらフラッタが席を立って、ラトリアさんの頬を思い切りひっぱたいた。


「母上ぇっ! 竜爵家どころかヴァルハールを、竜人族を滅ぼす気なのかぁっ! 怯えてないで、さっさとステータスプレートに誓わぬかぁっ!」

「おおお、己が本質。魂の系譜。形を持って現世に示せ。ステータスプレート。わた、私はもう、仕合わせの暴君に対して、勝手なことはしません……! 亡き夫ゴルディアとステータスプレートに誓って、2度と勝手は致しませんっ……!」


 ラトリアが誓約を口にすると彼女のステータスプレートが発光し、同時に俺のステータスプレートの誓約が消失する。

 良かった。どうやらヴァルハールを滅ぼさずに済んだようだ。


 ヴァルハールが滅んだら竜人族も滅びそうだよなぁ。知ったことじゃないけど。


「さて。それでもう1つ確認しておきたいんだが……」


 ラトリアには悪いが俺にとってはここからが本番だ。

 返答次第では、ヴァルハールも王国も俺の手で今すぐ滅ぼしてやる。


「ラトリア。なんで仕合わせの暴君を王都に登城させることにした? 俺とフラッタとリーチェの3人じゃなく、パーティ単位で呼んだのはなんでだ?」

「……え? そ、それは勿論、皆さんがパーティだからですよ? 協力者はフラッタの参加しているパーティ、として報告したから、パーティ単位で呼ばれただけで……」


 俺の質問は拍子抜けだったのか、少し肩の力を抜いて答えるラトリア。

 分かってなさそうだがラトリア。俺が怒ってるのはそっちなんだよ。貴族籍とかぶっちゃけどうでもいいんだ。


「お前、ニーナの呪いのことも知ってるよね? 登城なんてした場合、ニーナのステータスプレートの提示を断るのも恐らくは無理だよね?」


 登城により発生する、強制的なステータスプレートの開示要求。

 なんでお前は


「なぁラトリア。この国の王と多くの貴族がいる前でニーナの呪いを知らしめて、なにがしたかったんだお前は?」

「あ、と……。それ、は……」

「お前と会った日にニーナの事情は話したよな? それを理由に登城を断ったし」


 フラッタも立ち上がってるし、もう俺が座ってる意味もないよな?

 立ち上がってラトリアに近づき、ラトリアの目を見て語りかける。


「ほら、また俺が竜人族を皆殺しにしたくなる前にとっとと答えろよラトリア」

「あ……のっ……。え……と」

「まさかとは思うけどさぁ。呪われた少女を受け入れている心優しきパーティ、なんてスペルディアで触れ込みをするつもりだった?」

「……っ」

「最終的に呪いが解ければ、その間にニーナがどんな扱いを受けても知ったことじゃないって思ったの? 呪いがどんな扱いを受けるのか知っておきながら?」


 ラトリアの赤い瞳が恐怖に揺れている。

 だけどその揺らぎすら許さずラトリアを視線で射抜き、彼女の本音を覗き見る。


「黙秘は許さないよ。10秒以内に答えろラトリア」


 座っているラトリアの胸倉を掴んで無理矢理立たせる。


「済み……、ませんっ……! 解呪の……、情報を集め、ようと……!」

「ラトリア。迷惑だ。凄い迷惑してるんだよ。お前が俺達に対してやってることは、その全てが迷惑なんだよ」

「す、済みませんっ、でした……! け、軽率で、し……」

「フラッタには悪いけど、はっきり言わせて貰うぞラトリア。竜爵家を助けたのを後悔するくらい、こっちは迷惑してんだよ……!」


 フラッタが唇を噛み締めているのが見えたけど、これだけは譲れないんだよ。

 ニーナのことを窮地に陥れようとする行為を、黙って見てはいられない。


「ラトリア。俺の言葉を繰り返せ。お前が俺達の為にやった全てのことは、殺してやりたいくらいに迷惑なことなんだよ」

「私が、やったことは……。全てが殺されてもおかしくないほど、迷惑だった……」


 素直に復唱したラトリアを椅子に下ろしてやる。

 そのラトリアの瞳を見て、諭すように語り掛ける。


「相手のことを考え抜いたうえでやることなら、それがもし間違っていても怒る気は無いよ。でもね?」


 怯えるラトリアの顎を持ち上げて、視線を逸らすことを決して許さず語りかける。


「ラトリアがしてることは、こっちの迷惑を全部無視して、お前が勝手に押し付けてきてるだけなんだよ。お前のやってることは全部迷惑で、押し付けで、余計なお世話なんだよ」

「私は……、皆さんの為を思ってと言いながら、皆さんのことを何も考えて、いなかった……?」

「ゴルディアさんとフラッタがいなかったらとっくに殺してるよ? お前はそれほどの迷惑を俺達にかけたと自覚しろ」


 俺は家族の為ならこの世界だって滅ぼしてやると、もう大分前から決めてるんだよ。


 放心しているラトリアを離して、フラッタを抱きしめてよしよしなでなで。

 ごめんなフラッタ。辛い立場に立たせちゃって。でもまだラトリアって、俺の1番じゃないんだよね。


 ラトリアとニーナなら、否応もなくニーナを優先させてもらう。


「母上。母上は絶対にやってはならないことをしたのじゃと知って欲しい……」


 俺の腕の中で、フラッタが悲しげに口を開く。


「母上がニーナに対してしたことは、最早攻撃と言ってもいいのじゃ。ニーナに攻撃を加えることは、ダンにとっても妾にとっても、絶対に許すことは出来ないことなのじゃ……!」

「そん……なっ……! そんな、つもりはなくて、私はただ、皆さんにお礼がしたくて……!」

「みんなは優しいから、ギリギリまで堪えてくれたのじゃ。じゃがな母上……」


 困惑するラトリアをきっと睨みつけ、フラッタが決定的な言葉を口にする。


「母上が妾たちにしたことは、明確なまでの敵対行為であり……。攻撃なのじゃ」

「こ、攻撃って……! そんなっ、そんなつもり、じゃ……」

「ニーナの呪いを周知する行為。これは妾たちに対する攻撃行為に他ならぬのじゃ。母上は竜爵家を救ってくれた相手に、恩を仇で返したのじゃよ……」


 搾り出すようなフラッタの苦言。その苦言の意味を必死に反芻するラトリア。


 ラトリア。悪気がなければ何をしたっていいわけじゃないんだよ。

 それが善意であろうが悪意であろうが、相手を考えずに押し付けて良い訳ない。


 俺はもうみんなに少しも傷ついて欲しくないんだ。最終的に解呪に繋がればその過程はどうでもいいとか、そんな舐めたことをされるわけにはいかないね。

 ……浄化魔法次第では、登城までには解呪に成功しているかもしれないけどさ。
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