異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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4章 マグエルの外へ1 竜王のカタコンベ

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 最高に盛り上がった夜を越えて。

 さぁ7日目の探索を始めるとしましょうかね。

 今日は篤志家と弑逆者がLV100に到達する予定なので凄く楽しみだ。


「いっくのじゃーっ!」


 雄叫びと共に振り下ろされるフラッタのバスタードソード。


 今日からキス休憩するのはやめて、休憩中は手合わせをすることにした。

 みんな昨日の手合わせで、自分の技術がどんどん洗練されていく快感を覚えてしまったらしく、唇よりも剣を合わせようという話になったのだ。

 積み重なった持久力補正のおかげで俺達には全く疲労が溜まらないし、スポットと言いここと言い、アウターの最深部でキスしまくってるほうが頭おかしいので、むしろ健全化して正常化したと言えるね。


「ぐぬぬーっ! ダン、早すぎるのーっ!」


 いやいや、そう言うニーナも滅茶苦茶早いからね? 気を抜いたらぶった切られちゃうんだってば。


 バスタードソード使いのフラッタも、ダガー使いのニーナとティムルも、俺の技術をそのまま盗んでも仕方ない。

 だから俺がラトリアに対してやったように、俺の動きの本質を解析してその情報を自分の技術に反映していくのだ。

 俺も技術を盗まれる側になったんだなぁとシミジミ思ってしまうねぇ。


「なん、っで! ダガーよりも早いのよ、貴方はぁっ……!」


 これでもラトリアから剣を盗んだ身だからね。そう簡単にティムルに負けてあげるわけにはいかないよー?


 しかしキスよりはまだいいと思うけど、アウターの最深部で真剣で手合わせしてるのも大分異常じゃないかな?

 キスしてるよりも、ただジッと待っているだけよりもよほど為になるので、文句なんか1つもないんだけどさ。ちょっとだけ口が寂しいなぁ?


 そして先日LV89だった篤志家と弑逆者が、とうとうLV100を迎えて浸透してくれた。


 篤志家は確定じゃないけど弑逆者は間違いなく浸透した。

 なぜなら、聖属性魔法が融合したから。


「其は悠久の狭間に囚われし、真理と聖賢を司る者。無間の回廊開きし鍵は、無限の覚悟と夢幻の魂。神威の扉解き放ち、今轟くは摂理の衝撃。クルセイドロア」


 詠唱を終えた瞬間、俺を中心に聖属性の衝撃波が超広範囲に放たれたのが分かる。


 その攻撃範囲は俺を中心に半径80メートルくらいか。

 一瞬で全範囲の魔物を吹き飛ばして、全ての魔物をドロップアイテムに変えてしまった。強い。


「ダン、今の魔法、なに……? ぼくも見たことが無い魔法だったんだけど……」


 おお、流石のリーチェも聖属性の融合魔法は知らなかったか。

 ぼうっとするリーチェをよしよしなでなでしながら、今の魔法を解説する。


「聖属性魔法を2つ浸透させたら融合したんだよ。クルセイドロアって魔法で、聖属性の全範囲攻撃だね」

「え、えええ……? 聖属性の融合魔法……!?」

「ひと言で言うなら、聖属性版のサンダースパークだと思ってもらえればいいと思うよ。ただ威力はクルセイドロアの方が高いかな?」

「悪魔祓いを浸透させたのは知ってるけど、他に聖属性を扱える職業なんてあったっけ……? 聖騎士の聖属性付与、アニマライザーとは別なんだよね?」

「うん。多分ロード種を倒した時だと思うんだけど、弑逆者って職業を見つけてね。恐らくデーモン種討伐で悪魔祓い、ロード種討伐で弑逆者になれるんだと思う」


 俺の言葉に、俺の腕の中に居るままでブツブツと考え始めるリーチェ。


 今考えると、断魔の煌きもアウターエフェクトをそれなりに討伐した経験があるんだろうなぁ。じゃないと聖属性魔法って使えないんだもん。

 そりゃフレイムロードに後れを取ったりはしないわけね。


「ホーリースパークまでは稀に見たことあるけど……。聖属性魔法の融合なんて聞いたことないよ。なんでなんだろう……?」

「そりゃ多分、他の人には鑑定が使えないからじゃない?」

「え?」


 クルセイドロアの使い手が居ないのは、分析官と法王がいないせいに違いない。


 レアな職業に転職できても、その職業が自分に浸透しているのが分からないから、下手にフォアーク神殿のお世話になれないんだろう。

 せっかくなれた強力な職業を失ってしまいかねないんだもんねぇ。


「過去にもロード種とデーモン種の両方を討伐した人はいても、悪魔祓いか弑逆者になった後に転職しようと思った人がいなかったってことかぁ……」

「多分ね。恐らく断魔の煌きなんかはどっちも討伐経験あるんじゃないかな」

「言われてみれば不思議でもなんでもないねぇ……。職業が浸透してなきゃ、聖属性魔法を失う事になるんだから」

「うちのパーティはダンのおかげで、本当に最高効率で職業を浸透させられるもんねっ」


 最初期から職業設定の恩恵を受けているニーナが、俺と一緒にリーチェをよしよしなでなでし始める。

 なぜか俺よりもニーナによしよしなでなでされて、照れるように可愛く笑うリーチェ。ぎゅー。


 でもリーチェだって、ホーリースパークを見たことがある時点で大概だと思うけどなぁ。普通の人はアウターエフェクトとの遭遇経験すら殆ど無いみたいだしさ。


「職業浸透が可視化されてて、その上どこでも制限なく転職可能なんて……。この世界じゃ考えられない能力よねぇ」

「ダンは誰よりも職業浸透を進めておるのに、それ以上に技術を磨いているから凄いのじゃ。妾だったらそこまで技術を磨ける気がしないのじゃ」


 感心してくれるティムルとフラッタのこともをよしよしなでなで。

 でもフラッタは初めて会った時に騎士まで浸透させておきながら、めちゃくちゃ技術も磨いてたでしょ。俺の事持ち上げすぎだからね? ぎゅー。


 うん。でもクルセイドロア、完全に威力過剰だわ。

 サンダースパークでも一瞬で全滅するところに更にアンデッド特効までつけたら、ここの魔物が可哀想過ぎる。ひとまずここでは封印かなぁ。



 そのあと3つほど魔物の群れを全滅させたけど、篤志家のLVは100のまま。こちらも浸透したと判断して良さそうだね。

 それじゃ職業設定……。っとと?

 あれ、なんか新しい職業が2つも出てるんだけど。



 聖者LV1
 補正  魔力上昇+ 魔法攻撃力上昇+ 全体幸運上昇+
 スキル 浄化魔法 全体体力自動回復 全体魔力自動回復


 守護者LV1
 補正 全体体力上昇+ 全体物理防御力上昇+ 全体魔法防御力上昇+
    幸運上昇+ 装備品強度上昇+
 スキル 対物理障壁 対魔法障壁 障壁強化



 聖者の職業スキル『浄化魔法』。

 もしかして……、これなのか?
 

 これがどんな意味のスキルなのか分からないけれど、育てないという手は無いな。早速聖者と守護者を設定する。


「……駄目かぁ」


 ふむ、やはりLV1では使用できないね。それだけ強力なスキルって事なんだろうけどさ。


 でも聖者だけはヴァルハールにいるうちに、なにがなんでも100まで上げてやる。LV上限が無かったらその時はその時だ。

 少なくとも浄化魔法の解禁は絶対にしなければ。


 くそ、リーチェに浄化魔法を知っているか聞きたいけど、ニーナをぬか喜びさせたくないな。ここは黙って上げる事にしよう。どうせ数日だ。


 守護者の方のスキル、障壁強化はいまいち効果が実感できない。

 攻撃喰らわないからなーうちのパーティ。融合したら変わるのかなぁ?




「っしゃあああ。どんどんいっくぜーっ!」


 殺る気マックスで魔物を集めていると、昨日1つもドロップしなかった分なのか、今日は詠唱短縮-と装備品強度上昇-という2つのスキルジュエルがドロップした。


 詠唱短縮かぁ。今の俺に必要なスキルなのかなぁ?

 詠唱をしなくていいメリットってのは計り知れないんだけどさ。


 みんなとも相談した結果、やっぱりインベントリの肥やしになってしまった。

 この7日間で1000個以上発光した魔玉と一緒に、当分インベントリの中を賑わせてくださいね。




「くそ……。上がり難いなぁっ……!」


 今日のところはそれ以上に目立ったことは何も起きず、俺は聖者と守護者がLV8と殺人者がLV47、ニーナの探索魔法士がLV37、ティムルは名匠LV96に、フラッタは探索者LV87に到達した。


 領主邸に戻ると、リーチェは豪商に転職しにギルドに行き、ついでにフォアーク神殿の利用手続きを行なってくるそうだ。

 一緒についていってみたいけど、今はそれどころじゃないからなぁ。今は聖者のことで手一杯だ。




「ダン。ちょっといいかな?」

「ん? なぁにニーナ。何か用?」


 夕飯の後、寝室というかフラッタの部屋に行こうと思っていた時、ニーナに呼び止められた。


「ダン? 何かあったの? なんだかずっと難しい顔してるよ?」


 ニーナが心配した面持ちで俺の様子を窺っている。


 ……うん。また失敗するところだった。

 ぬか喜びさせたくないとかいって、それでニーナに心配かけたら本末転倒だ。


「心配かけてごめんね。少し扱いが難しい職業を見つけちゃったから、どうしようかなってね」

「扱いが難しい職業?」

「うん。みんなにも共有したいけど、ちょっとだけ待っててくれる?」

「う、うん。それはダンの自由にしていいけど……」

「心配してくれてありがとうニーナ。でも後ろ向きな理由で悩んでるわけじゃないから安心して」


 そうだ。別に悩んでるわけじゃない。

 もしかしたらこれでニーナの呪いが解けるかもしれないんだ。だったらここは、思い切りやる気を漲らせるところだよねぇ!


 もし今回解呪出来なくても、別の方法を探せばいいだけだ! よぉっし! やる気出てきたーっ!


「ありがとニーナ。ちょっとやる気が漲ってきたよ」

「そ、そう? ダンが元気ならいいんだけど……?」


 キョトンとするニーナをよしよしなでなで。

 でもそんな俺の様子に、ニーナも安心してくれたみたいだ。


 見てろよ聖者! 一気に浸透させてやるからなぁ!


 漲るやる気をみんなにも夜通し注ぎ込んで、体力も気合も万端だ! 朝まで注ぎ込み続けたから、俺以外のみんなの体力はちょっと万全じゃなさそうだけどっ!



 8日目の探索。今日は色々進みそうだなー。


「出たっ……! 出たわよダン……! 神鉄装備のレシピ、解放されたわ……!」


 名匠がLV100を迎えたティムルが、オリハルコン製の武器のレシピの解放を告げる。

 そんなお姉さんを抱きしめて、くるくると2人で回転する。


「はっはーっ! やっぱりティムルお姉さんは最高のドワーフじゃないかよーっ!」

「ありがとダンっ。でもね、材料がちょーっとぶっ飛んでるみたいなのよねぇ……?」

「材料? まぁ重銀もなかなかぶっ飛んでたもんね」

「ダマスカス装備に、銀。それにアウターエフェクトのドロップアイテムを混ぜ込む必要があるみたい……?」

「うわっ……。そりゃ確かにぶっ飛んでるね」


 アウターエフェクトのドロップアイテムを素材にするのかよ。

 流石は神鉄なんて大層な名前が付いてるだけあるなぁ。


 でも神鉄装備は人の手で作れる最高水準の装備品のはずだ。更新しないって手は無いよなぁ?


「それじゃアウターエフェクトを積極的に狩っていこうか。今更アウターエフェクトなんて、素材目当てで乱獲できる相手だからね」

「うむぅ! アウターエフェクトを乱獲するなんて頭がおかしいとしか思わぬのじゃが、妾も微力ながら力を尽くすのじゃーっっ!」


 可愛く張り切るフラッタをよしよしなでなで。

 アウターエフェクト殺しまくって、さっさと聖者を上げちゃうぞぉーっ!

 
 名匠はそのまま変更無しで魔物狩りを再開。

 まず浸透したのは ニーナの探索魔法士だった。


「次は支援魔法士かなっ。回復魔法士はリーチェも浸透してるからねっ」

「はいはーい了解ですよー。支援魔法士……っと」


 ニーナの魔法使いルート、魔導師までいける可能性が普通に出てきたなぁ。

 インパクトノヴァを使えるようになると、対魔物戦が一気に楽になるね。



 支援魔法士LV1
 補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
 スキル 支援魔法



 そしてすぐにフラッタの探索者もLV100で浸透する。


「それでは妾も魔法使いを頼むのじゃ。探索魔法を覚えられれば、アウター内で迷うことも無くなるからの」

「了解だよ。フラッタは魔法使いーっと」


 ガチで遭難しかけたフラッタにとって、マップが分かる探索魔法は思い入れが強そうだ。

 無双魔女っ娘フラッタという響きに、俺の思い入れも強くなりそうな気配がするけど。



 魔法使いLV1
 補正 魔力上昇-
 スキル 初級攻撃魔法



「それにやはりダンを見ているとのう。剣だけを極める危険性も感じるのじゃよ。父上と母上も、魔法が使えていたら違う結果もあったかも知れぬ、とな……」

「……そうだね。フラッタがそう思ってくれるなら、ゴルディアさんとラトリアの悲劇もきっと無駄にはなってないよ」


 フラッタにとってゴルディアさんとラトリアは、強さの象徴だったんだろう。そんな2人が見せた剣術の限界。

 そして対魔物戦での攻撃魔法の有用性は、俺がこれでもかってくらい見せてるからねぇ。剣を極めるフラッタだからこそ、攻撃魔法の有用性は身に沁みている事だろう。


 ともかくこれで、ティムル以外の全員が魔法を使える事になるんだなぁ。凄いパーティだよ我ながら。



「アウターエフェクトさんご到着でーす! 全員全力で瞬殺するよーっ!」


 張り切って魔物を殺しまくっていたら、お昼前にアウターエフェクトの兆候が現れる。

 アウターエフェクトの出現周期がどんどん早まっちゃってきてるなぁ。早く帰った分は訓練できるから良いんだけど。

 
 カラミティデーモンという名前が鑑定できたらすぐにインパクトノヴァとクルセイドロアを連射して、塵も残さず吹き飛ばしてやった。


「全員でって、攻撃魔法の効果指定する暇も無いのーっ!」

「分かってたことだけど、ダンこそどんどん強くなってるわよねぇ……」


 暴れるニーナと呆れるティムルを回収してと。神鉄装備素材を回収させてもらう。


 ……って、あれ? 素材ドロップじゃないし?

 影も形も見ることが出来なかったカラミティデーモンの死んだ場所には、紫の刃のついた長い槍が転がっていた。



 災厄のデーモンスピア
 魔法妨害+ 魔力吸収+ 無し 無し 無し



「ア、アウターレアの武器が、2つ目かぁ……。慣れたつもりだけど驚くよ……」


 ごくりと喉を鳴らすリーチェ。エロく無いはずなのになんかエロいな?


 これも間違いなく名匠のおかげだろうね。

 レアドロップアップや幸運上昇も効いてるのかもしれないけど。


「アイテム名は災厄のデーモンスピア。スキルは魔法妨害と魔力吸収の大効果がついてるね」

「大効果スキルが2つもついたアウターレア武器なのに、槍なので妾たちの中には使い手がおらぬのぅ」


 ぐぬぬと可愛く唸るフラッタ。槍って一般的な武器なんだけど、俺達の間には使い手がいなかったなぁ。


 魔法使いにとっては悪夢みたいな性能なんだけど、これを使うために新たに槍を練習するのも難しいし……。


「残念だけど、これもインベントリの肥やしかしらねぇ……?」


 みんなが口に出すのを躊躇っていた結論を、ティムルお姉さんが代弁してくれる。


「使うとしたら私なんでしょうけど、33にもなって新しい武器の扱い方を覚える自信は無いかしらぁ……」

「うん。いくら性能の良い武器を手に入れたって、扱えなきゃ意味ないの。これはダンのインベントリに仕舞っておいてくれる?」


 ニーナから災厄のデーモンスピアを受け取って、インベントリに収納する。

 う~ん、残念だけど仕方ないね。ドロップ品だとこういうことだってあるさ。


 ……って、滅茶苦茶贅沢な悩みだよなぁこれも。




 槍の収納が済んだら、今度はみんなの浸透具合を確かめる。

 フラッタの魔法使いはLV30で浸透していて、俺の殺人者もLV100になっていて恐らく浸透している。

 聖者と守護者がLV31、ニーナの支援魔法士がLV33、ティムルの名匠LV113になっている。


 アウターエフェクトが出現したおかげで、恐らくリーチェの豪商も浸透したんじゃないかな。


「それじゃフラッタ。次の職業の希望は?」

「勿論探索魔法士になりたいのじゃーっ! これで妾も世界中どこにでもいけるようになったのじゃーーっ!」


 あっはっはー。こんなに可愛いフラッタを1人でどこかにやるつもりはないけどなー。よしよしなでなで。



 探索魔法士LV1
 補正 魔力上昇 魔法攻撃力上昇-
 スキル 探索魔法



「ふははっ! これで竜王のカタコンベに1人で潜ることも出来そうなのじゃっ」

「これでもしルーナ家が財政難に陥っても、フラッタ1人でお金を稼げちゃうねー」


 はしゃぐフラッタをニーナがぎゅーっと抱きしめている。

 ラトリアと2人ならアウターエフェクトが出現しても倒せるだろうね。というか、もうフラッタ1人でも倒せそうだよなぁ。


 さてと、俺は殺人者も上げきったし、次は何にしようかな?

 今更だけど、聖者で守護者な殺人者ってシリアルキラー感ないですかね?


 もう上げてない職業が殆どないんだよなぁ。

 ここは紳商に……って、新しい職業が増えてるじゃないですか。



 暗殺者LV1
 補正 体力上昇+ 魔力上昇+ 持久力上昇+ 敏捷性上昇+
    身体操作性上昇+ 五感上昇+ 幸運上昇+ 装備品強度上昇+
 スキル 全体気配遮断 対人攻撃力上昇+



 ア、アサシンきたーーーっ!?

 犯罪職の行き着く先はこれなの!? 忍者っすか!? 


 スキルが暗殺に特化してて笑っちゃうんだけど? しかも全体効果だよ?

 うん。迷わずセットだね! だって忍者っすよ忍者!


「ニーナーっ。ちょっと生体察知を使ってみてくれないかなー?」

「んー? よく分からないけど分かったのー」


 全体気配遮断の効果を検証しておきたい。全体気配遮断、っと。


「……えっ!? えっ!?」


 びっくりしながら俺や自分の体をペタペタ触って確かめるニーナ。

 でも同じパーティメンバーにニーナに頼むなら、自分で試しても良かったかな?


「え、なにこれ、どういうことなのダン!?」

「ちょっと待ってね。俺も自分で試してみるから」


 ニーナの反応が気になったので俺も生体察知を使用してみると、生体察知にも、勿論魔物察知にも俺達の反応が引っかからなくなっている。

 ステルススキルか。いいね。これはかなり強力なスキルなんじゃないか?


「アウターエフェクトを滅ぼしたことで、新たに全体気配遮断ってスキルを手に入れたんだ」

「け、気配遮断……? それって……」

「どうやら察知スキルに引っかからなくなる効果があるみたいだね。俺も確認したよ」

「えっ!? そんなスキルがあるってマズくないっ!?」


 おお? この世界の住人であるニーナが、ステルス系のスキルにここまで脅威を感じているなんて……!

 と感心しかけた俺は、次のセリフでニーナはやっぱりニーナだということを思い知らされた。


「そんなスキルがあるなら、察知スキルだけじゃ人がいないか確認できない……! つまりアウター内でえっちなこと出来ないってことじゃないっ!」

「…………」


 俺としたことが、あまりの予想外の反応にニーナに言葉を返して上げることが出来なかったぜ……。


 ……でも、ごめんニーナ。

 そもそもアウターの中でえっちなことをしようとするの、やめません?
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