異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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4章 マグエルの外へ1 竜王のカタコンベ

216 面倒 (改)

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 朝になって目が覚めると、腕の中にはティムルとリーチェが収まっていた。

 昨晩は落ち込む2人を慰めながら寝たんだったなぁ。


「おはようみんな。気を取り直して楽しく過ごそうね」


 みんなとゆったりおはようのちゅーを交わした感じ、もう落ち込んでいないかな? でもいつもより多めによしよしなでなでしたり、ぎゅーってしておく。


 高級宿だけあって、ここの朝食は部屋に運び込まれるシステムだった。

 ゆっくり家族だけで食事をしていると、来客の知らせが届く。相手を聞くと、案の定カリュモード商会だ。

 うっぜぇな。本当にいい加減にしろよ……。


 当然会う気も無いので、取り次ぐなとだけ伝えて放置する。


「スペルディアでは数日滞在する予定だったけど、今日出発しちゃおうか。はっきり言って楽しく滞在できる気分じゃないでしょ?」

「そうだねぇ。王都観光楽しみにしてたんだけどなぁ。今の状況だと、カリュモード商会が常に気になっちゃうよねぇ」


 ニーナの楽しみを潰してくれちゃったとか、マジで死ねよカリュモード。


「私もいいわ。というかさっさと別の街に移動したい気分よ……」

「妾は元より観光にはあまり興味がなかったので、皆に任せるのじゃー」

「ぼくも出発に賛成だよ。もう落ち込んだりしないけど、やっぱり腹は立っちゃうから」


 うん。じゃあ今日出発しちゃおうね。

 っと、一応冒険者ギルドで軽く聞き込みだけしておこうかな?


 ゆっくりと朝食を済ませたら宿を引き払って、冒険者ギルドに足を運ぶ。


「お待ちください皆さん!」


 と思ったら、なんか変な男の人に呼び止められた。

 けど止まる義理は無いのでスルー。


「私はカリュモード商会の者です! 昨夜は大変失礼を致しました!」


 なんか叫びながらついてくるんだけど? こっわ。ストーカーか何か?

 ちょうど警備隊っぽい人がいたので、しょっ引くようにお願いする。


「待って! 待ってください! 私は怪しい者じゃっ……、カリュモード商会の者です!」


 悪いね。俺の中じゃカリュモード商会が怪しい者判定なんだよ。


 変な人が警備隊に職務質問を受けてる間に冒険者ギルドでシルヴァの話を聞くも、やはり収穫は無し。

 シルヴァくらいの美形が来たら忘れないってのもあるんだけど、竜人族のパーティが街に来たらまず忘れないよって言われてしまったので、ここには来てないんだろうなぁ。

 やっぱりアウターの周辺を当たるべきだね。


 冒険者ギルドを出ると、さっき職質を受けていた男が立っていた。


「お願いします! 話を聞いてください! 昨夜のことは我が商会としても、とても不本意な事でして……!」


 喚く男を無視して通りすぎる。

 そっちの事情なんて知らないよ。俺達にとっては昨日されたことが全てだ。


 また警備隊の人を呼んだんだけど、どうやら対策されているらしくスルーされてしまった。


 面倒だなぁもう。ステータスプレートを取り出し宣誓する。


「決闘を申し込む。時間は今。場所はここ。我が勝利は相手の死。勝者には名誉を」

「昨日は不肖の妹がとんだ迷惑を……って、えええええ!?」

「決闘を申し込む。時間は今。場所はここ。我が勝利は相手の死。勝者には名誉を」

「ちょちょちょ!? なんでそうなるんですか!? 私の話を……!」

「決闘を申し込む。時間は今。場所はここ。我が勝利は相手の死。勝者には名誉を」


 お前の話なんか聞く義理はない。

 次に来たら問答無用で殺すと言ったんだ。決闘を受けないならただ殺すけど?


「若様! ここはお引き下がりください! あの男は本気ですぞ! 決闘を受けなかったとしても、若様を本気で殺す気です! ここは引いグボァッ!?」


 なんか今更出てきた護衛っぽい男に腹が立ったので、1発ぶん殴って地面に埋めておく。

 今更出てきてんじゃないよ。


 一応キュアライトはかけてやったからありがたく思え。


「ソ、ソダム!? な、なんで!? いきなりなにをするんだっ!?」

「昨日カリュモード商会がこれ以上付き纏うなら、問答無用で皆殺しにすると言ったはずだ。まだ自分が生きてる事に感謝しながらさっさと去れ。2度目は無い」

「そそそそ、そんな話、僕は聞いてないっ! それより僕の話を聞グゲェ!?」


 埒が明かないのでキュアライトボディブローで黙らせておく。たった今2度目は無いって言ったろ?

 でも怪我は一切ないから安心するといいよ。

 地面に転がる男2人を跨いで、スペルディアを後にした。


 流石に王都付近なので、次の街まではそんなに離れていないらしく、とっととそっちの街でゆっくりしよう。


「ダンにしては全く容赦無かったねっ。ティムルとリーチェが落ち込んだのが、本当に許せなかったんだねぇ」


 そういうニーナもちょっと声が弾んでない? ニーナだってティムルもリーチェも大好きだもんね。


「ティムルとリーチェが落ち込んだのもあるけど、昨日邪魔されたのも凄い腹立ってんの。そのどっちもカリュモード商会が原因なんだから、容赦なんてする余地がないよ」

「治療魔法を纏いながらの打撃はエグいのぅ。怪我も残らないし、暴行された証拠が無いのじゃ。ダンのキュアライトは効果も高くて、恐らく傷1つ残らんじゃろうからのぅ」


 エグいと言いながらも感心した様子のフラッタ。

 最高に使いやすい攻撃だよね。特に対人戦で使いやすすぎる。ストレス解消に最適だ。


「……ごめん。正直ちょっとスカッとしちゃった。ありがとダン。でも私のために誰かを殴ったりしなくていいんだからね?」

「あいつらを殴ったのは、警告したのに引かなかったからだよティムル。でもお前のためなら王国くらい滅ぼしても惜しくは無いかな?」

「これじゃスペルディアで活動しにくくなっちゃったね。まぁぼく達にとってはさほど問題ないのかな?」


 リーチェの言う通り、俺達はスペルディアで活動しにくくてもさほどデメリットは無さそうだ。

 始まりの黒は一般に開放されてないし、転職にここを訪れる必要も無いしな。むしろ登城とかで呼び出されてるのがダルいくらいだ。


「この世界って人助けすると、めんどくさいことばっかり起こるよね。ひと言ありがとうって言って、それで終わりで充分なのにさぁ」

「ふふ。めんどくさくってごめんね? でもめんどくさいって言いながら、みんなを助けてくれるダンが好きなのっ」


 俺の言葉を正面から受け取って、それを全てプラスの波動に変換して打ち返してくるニーナ。


 くっ……! 思わずみんなに愚痴っちゃったところに物凄いカウンターを喰らってしまったぜ……!

 またニーナに甘えちゃったなぁ、まったく。


「……愚痴っちゃってごめん。いつも甘えさせてくれてありがとうニーナ」

「えー? いっぱい甘えていいんだよー? でもそうだねー。宿についたらもっといっぱい甘えてもらいたいかなー?」


 そうだね。昨日も少し消化不良だったから、今日は思い切り甘えちゃおうかなぁ?

 なんて思っていたら、次の街で初老の男が俺達を待ち構えていた。


「私はカリュモード商会で会長を務めているモルドラと申します。重ね重ねうちの商会の者が失礼を致しまして、本当に申し訳ございません!」


 頭を下げる男の脇を通り過ぎて街に入る。

 さて、まずは宿を探さないとなぁ。


「皆様のお怒りはご尤もでございますが、何卒話を聞いていただけませんかっ! 私たちは皆様と敵対する意志もなく、出来るだけ皆様のお力になりた……」

「こっちの要望はカリュモード商会に付き纏われたくない、だ。2度と関わるな。纏わりつくな。近づくな。話しかけるな。次は殺す」


 ティムルに宿の場所を聞いてそこに向かう。

 もしもカリュモード商会の経営だったら別の宿を探そう。


「……うん。ごめんダン。私もちょっと面倒くさく感じてきちゃったよ……」

「ニーナが謝ることじゃないよ。実際めんどくさいよねー?」


 大方俺達がスペルディアに入った方向と出ていった方向から行き先を予想して、ポータルを使って先回りしていたんだろうけど、もう話すこともないのに食い下がりすぎだってぇの。

 カリュモード商会が経営していないことをしっかり確認してからチェックインして、俺達に会いに来る客は全部取り次がないようお願いして夕食を取る。


「ストームヴァルチャーを撃退しちゃったから目を付けられたのかもしれないわねぇ。あいつらって本当に危険な野生動物でさぁ。毎年いくつもの商隊が犠牲になったりしてるからねー」


 元行商人だったティムルには、ストームヴァルチャーに何か嫌な思い出があるっぽいよな。

 もしかしたら知り合いや部下が犠牲になったことがあったのかもしれないね。


「ダンの実力が知られたわけじゃないんだろうけど、ダンはダンで数十人もの怪我人を1人で治療しちゃったからね。戦闘能力は未知数でも、その有用性は間違いないって判断されたんじゃないかな」

「ふむ。リーチェが同行しておるから素性はある程度保証されておるからのぅ」


 なるほど。うちのパーティでも俺しか使用できない治療魔法。世間一般的に見てもレアスキルなのかもしれないな。

 そして建国の英雄であるリーチェのパーティメンバーってことで、俺の情報は無くても犯罪者では無いだろうって事は保証されてるようなものなのか。


「それでいてストームヴァルチャーを退ける戦闘力と、治療魔法を使えるパーティなのじゃから、多少無理してでもお近づきになっておきたいということなのじゃなぁ」

「アホくさ。それで当人たちに迷惑かけるってなんだよ。恥の上塗りしてどうするんだか」


 うんうんと頷くフラッタをよしよしなでなで。

 ま、うちのメンバーを見れば、その容姿だけでもお近づきになる動機としては充分だよなぁ。みんな美人過ぎるもん。


 カリュモード商会はその貪欲なまでの積極性で大きい商会に成長出来たのかもしれないけど、今回は裏目に出ちゃったね。

 積極性は大切だけど、嫌がる相手に無理矢理近づいたって不快感しか広がらないっての。


 あ、そう言えばストームヴァルチャーを倒してから鑑定はしたけど、職業設定は試してなかったな。野生動物を倒したのって初めてだし、何か新しい職業は……っと。

 おっとぉ? どうやら新しい職業が増えてるみたいだぞー?



 料理人LV1
 補正 五感上昇- 身体操作性上昇-
 スキル 毒見 インベントリ



 インベントリ持ち、きたーっ! これで64㎥のインベントリは確定したぜっ!

 しかし料理人って。今まで散々料理はしてきてるのに、なんでこのタイミングで得ていたんだ? そしてスキルの毒見ってなに……?


 特別な事と言えば、やっぱりストームヴァルチャーとの戦闘だよなぁ。ってことはもしかして、野生動物を仕留めることが条件か?

 つまり野生動物の肉って、この世界では食材って扱いなんだなぁきっと。


 ニーナ、ティムル、フラッタの3人を鑑定すると、やはり3人とも料理人を獲得している。料理人の転職条件は野生動物を仕留める事で確定かな?


「ん? ダン、どうかしたの? なんだか機嫌良さそうだよ?」

「ふふ。相変わらずニーナには隠し事が出来ないなぁ」


 不思議そうに俺の顔を覗き込むニーナを捕まえて、ぎゅーっと抱き締める。

 ニーナに思考を読まれるの、なんか理解してもらってるって感じで凄く嬉しくなっちゃうんだよなーっ。


「ストームヴァルチャーを倒した事で、料理人って職業が増えたんだ。俺だけじゃなく、みんなも獲得できたみたいだよ」

「へぇ? 料理人って野生動物を倒す事で得られる職業なのねぇ。確か食材や料理に含まれる有毒成分を見抜くスキルがあるのよね」


 何でも知っているティムルお姉さんが、料理人についてもザックリと説明してくれる。

 毒見ってマジで毒見なのね。もしかしてドロップアイテムの食材には毒が含まれていないのかもしれないな。


「って、そんなスキルがあるならリムーバー要らなくない?」

「自分で毒見を持ってる貴族なんておらぬのじゃ。他人のスキルよりも、自分でマジックアイテムを使用した方が安心じゃろう?」


 呆れたようなフラッタの言葉に納得する。

 確かに貴族が野生動物なんて狩るはずがないか。あんなの魔物よりよっぽどやばいって。大商隊が負けかけてたもんなぁ。


「なんだか変なのに絡まれちゃったけど……。職業を得られたしかっこいいダンを見れたし、最終的にはプラスだったかな?」

「ははっ。リーチェがプラスだと思ってくれるならプラスだね」


 部屋に行ってからは昨日邪魔が入った分を取り返すつもりで、みんなとゆっくりイチャイチャを楽しんだ。


 ティムルもリーチェももう落ち込んでない?

 え? まだ落ち込んでるからいっぱいキスして欲しい? 任せろー。


 みんなといっぱいキスをして、みんなのおっぱいにもキスをして、イチャイチャちゅぱちゅぱしながらお互い甘え合って荒んだ心に愛を補充していく。

 愛に満たされてると大抵のことは許せちゃうからこそ、愛し合う行為を邪魔されると最高に腹が立つことを今回の件で思い知った。


 カリュモード商会のことは忘れる事にしよう。

 スペルディアに呼び出されたときがちょっとめんどくさそうだけど、また絡んでくるようならぶちのめしてもいいよね、流石にさぁ。
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