異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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3章 回り始める物語3 1年目の終わり

201 同盟 (改)

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 フロイさんと別れ、ステイルーク警備隊詰め所を後にする。


 ニーナの呪いを理由に登城を渋っておきながら、ステイルークで挨拶回りするのはちょっと迷った。

 だけどステイルークからは結局なんのリアクションも無かったし、この世界に来たばかりの俺に対して親身になって相談に乗ってくれたことは、間違いのない事実だ。


 それに、ステイルークの人たちはニーナとは関わりたくないって感じの対応で、積極的に排除しようって思ってるわけじゃない気がするんだよな。

 もしも本気で排除しようと思ったら、街から出たタイミングで襲えば良かっただけだしさ。俺の考えすぎだったんじゃないかなって思う。



「ただいまー。装備品を買ってきたから、一旦集まってくれるかー?」


 ポータルで自宅に戻り、訓練を受けていた子供達に装備品を配っていく。

 明日から引率を始めてもらう事にして、初日だけは俺も付き合うことにした。ワンダ達だけでも問題ないと思うけど、いきなり投げっぱなしはダメだよな。


 今回装備品で魔玉を500個近く放出して、14歳の孤児30人分の納税で1000個近く処分できるだろうから、後は無理して消費する必要はない感じかなぁ。





「ダン。ちょっと相談があるんだけど、いい?」

「ん? 構わないよ」


 子供達に装備品を配り終えた頃、スポットから帰ってきたワンダに声をかけられた。

 このタイミングの相談ってなんだ? 引率についての話かなぁ?


「実は最近、俺達のパーティにアライアンスの勧誘がしつこくてさぁ。困ってんだ。なんとかならないかなぁ?」

「アライアンス? って、複数パーティの集まりのことだっけ?」


 分からないことは素直に聞くべきだな。

 と言うわけでよろしくお願いします。ティムル先生。


「ああ。ダンはどこのギルドも一切利用してないんだから知らないわよね。ワンダ君たちへの復習も兼ねて、1から説明してあげるわね」


 ティムルがアライアンスシステムについて説明してくれる。


 この世界では1つのパーティには6人までしか所属できない。しかしスポットの中では複数のパーティが合同で活動している場面も見かけた。

 実はそれがパーティアライアンスを利用していた集団だったのだそうだ。


 アライアンスを組む事による最大のメリットは、パーティ人数制限の緩和だ。

 パーティアライアンスを組むと、移動魔法など一部の魔法の効果対象制限が拡張される。職業浸透も、恐らくアライアンスで共有できるのではないか? と言われているそうだ。

 多分俺の全体回復魔法や鼓舞の効果なんかも、アライアンスに波及するんじゃないかな?


「話を聞くに、アライアンスを組むメリットは大きいんじゃないの? なんかデメリットとかあるわけ?」

「ええ、当然デメリットもあるわよ。それも解説していくわね」


 アライアンスを組む最大のデメリットは、当然だけど報酬の分散だ。

 人数が増えるほどに個人あたりの報酬は減るし、恐らく職業浸透も遅れる。この世界の魔物狩りの職業浸透が遅い理由は、アライアンスが一般的だからってのもあるのかなぁ?


 更にアライアンスを組むには冒険者ギルドで専用の手続きをする必要があり、パーティ登録みたいに個人間でのステータスプレートだけで行えるものではないらしい。

 ステイルークでラスティさんも言っていたけど、ステータスプレートの研究が進んだことで、パーティ契約の限定的な拡大に成功したんだそうだ。

 なので専用のマジックアイテムを介した手続きが必要になるという。


 面倒な手続きが必要になるので、アライアンス設立には当然お金もかかる。

 新規アライアンスの登録には金貨20枚ものお金がかかり、更に毎年登録料として金貨10枚が差っ引かれていく。更には登録抹消にも手続きと料金が必要で、金貨5枚ほどの登録抹消料金がかかるそうだ。


 その代わり既に登録済みのアライアンスに参加するのは簡単で、アライアンスリーダーの持つマジックアイテムに、アライアンスに参加するパーティのリーダーがステータスプレートを登録するだけでいいらしい。

 シュパイン商会などの大きい商会は自前のアライアンスを持っていて、護衛として雇った者を登録したり、ドロップアイテム収集依頼の際に登録したりするんだそうだ。


「ワンダ君たちが稼げる魔物狩りだってことはもう知れ渡ってるんでしょ。だけど子供だから見縊られてるでしょうね。好きなように扱えるってね」

「うん。ただ悪意がなくて純粋に勧誘してくれる人もいるから、断るのが少し申し訳なくて……」


 おお。大人に敵意むき出しだったサウザーが、大人の勧誘を断るのが申し訳ないなんて思うようになるとはなぁ。


「私たち、出来れば孤児だけで纏まりたいなぁって思ってるの。今訓練してる子達も合わせれば、登録料は払っていけると思うし」


 そっか。リオンの言う通り、孤児用のアライアンスを設立すべきかな? 変な大人が寄り付いてくるのも防げるだろうし、純粋な気持ちの勧誘も減らせるだろう。


「それじゃムーリの借金にちょっと上乗せする形になるけど、孤児用のアライアンスを設立しちゃおうか」


 借金に上乗せと聞いても、みんなもう驚いたり慌てたりはしない。

 なにせ普通に払える額になったんだもんな。


「ティムル。アライアンスの設立って時間かかるのかな? 可能なら早いところ設立しちゃいたいんだけど」

「時間はかからないけど、いくつか必要なものはあるわねぇ。当然だけど登録料でしょ? あとは代表者のステータスプレート」


 ティムルが必要な物を指折り数えながら教えてくれる。


「あとアライアンスの名前と……、あっアライアンスはパーティ単位での登録になるから、パーティ名も決めておく必要があるわね」


 へぇ? アライアンス名は手続きに必要なのは分かるけど、アライアンスの参加にパーティ名なんて必要になるんだなぁ。


 アライアンスの代表は、大分渋られたけどムーリにすることにした。

 トライラム教会で預かる孤児たちのアライアンスなんだから、俺達が代表になるよりはシスターの方がいいと思う。

 ムーリは常にマグエルにいるんだから、新しい孤児が来ても登録しやすいし。

 それに俺達がアライアンスに参加する意味もないからね。

 
 アライアンス名は何故か横文字でつけるのが通例らしいので、トライラムチルドレンでいいかなって思ったけど、大人になっても所属しやすいように、トライラムフォロワーという名前にすることにした。

 このアライアンス名なら所属もしやすいし、新しい子も参加しやすいでしょ。


「なんでダンたちは参加しないの? 別に参加してもいいんじゃない? 装備の貸し出しとか、アライアンスの決めごとにすればいいんじゃないのかな?」

「ビリー。俺が目指してるのはお前たちの自立なんだよ。保護じゃないんだ」


 俺はあくまで支援者って立場を忘れないようにしたい。

 じゃないとどこまでも世話を焼きたくなっちゃいそうだからなぁ。


「トライラムフォロワーには孤児たちが自立していくアライアンスになって欲しいからさ。そこに俺達が参加するのは、後々邪魔になると思うんだよね」

「自立かぁ。良く分かんないけど、なんかいいね、それ」


 良く分からないと言いながらも、俺の言い分に頷いてくれるビリー。どうやら納得してくれたようだ。


 話がまとまったので、早速冒険者ギルドでアライアンスの申請をする。

 アライアンス名はトライラムフォロワー。代表はムーリ。年末の今結成すると金貨10枚の登録料が少し勿体無いけど、今の俺には痛くも痒くもないね。

 サクッと設立料の金貨20枚、登録料の金貨10枚を支払う。

 
 アライアンス登録用として冒険者ギルドから渡されたマジックアイテムは、名前をアライアンスプレートと言い、見た目的にはクリップボードみたいな感じに見える。

 アライアンスプレートには最大で30パーティまで登録することが可能で、30パーティを超える場合は更に大型のマジックアイテム、アライアンスボードを利用することになる。

 アライアンスボードの性能は基本的にアライアンスプレートと変わらないけれど、ボードの方は同時に500パーティまで登録できて、1㎥のインベントリにギリギリ入るくらいの大きさのマジックアイテムらしい。


 個人でアライアンスボードまで持っている人は多くなく、殆どの場合は街の警備隊や大きな商会などで使用されているんだってさ。

 アライアンスボードを利用するには、アライアンスプレートに25パーティ以上を登録した上で、設立料金王金貨20枚に、年間登録料で王金貨10枚を支払い続ける必要がある。

 ティムルが言うには、シュパイン商会やマルドック商会クラスの大商会ですら、アライアンスボードではなくプレートの方を利用していたそうだ。


 せっかくアライアンスプレートを貰えたので、さっさと登録処理をしてみよう。

 ムーリが所持した状態のアライアンスプレートに、パーティリーダーであるワンダのステータスプレートを接触させれば、無事にアライアンス登録の完了だ。

 アライアンスプレートに幸福の先端と表示されている。ワンダ達のパーティは幸福の先端っていうのかぁ。


「俺達が先陣を切って、みんなを幸せにしていきたいって思ったんだよ。っていうかダンのパーティには名前をつけないの?」

「パーティ名? 別に要らなくない?」

「ダン! 私っ、パーティ名欲しいなっ! パーティ名考えちゃダメかなっ」


 と思ったら、ニーナがめっちゃ乗り気だった!?


「1年間パーティ名が無しっていう人も珍しいわねぇ。普通はギルドとかで必要になるから、パーティ名ってすぐ付けるものなんだけど」

「それはそれでダンとニーナらしい気もするのじゃ。2人はギルドなぞ利用しておらぬし、型に嵌っておらぬからのぅ」


 ティムルとフラッタがおかしそうに笑顔を浮かべる。

 パーティ名に拘らなかったのは、単純に俺とニーナが世間知らずだったってのもあると思うけどねー。


 あとギルドは利用しなかったっていうよりは、利用できなかったんだよ。職業設定と相性悪いんだよね、ギルドの利用って。


「ワンダ達が幸福の先端ってパーティ名なんですけど。私達の幸福はダンさんとニーナさんから始まってますからね。幸福とか幸運とか、そういうパーティ名がいいんじゃないですかねっ!?」

「え、嫌だよそんなパーティ名」


 ムーリの提案をつい素で切り捨ててしまったせいで、ムーリがガーンとショックを受けた表情になってしまった。マジでごめん。

 でも幸福とかってワードを入れると宗教色が強すぎてなんかなぁ。この世界の宗教であるトライラム教会にはクリーンなイメージしかないけどさぁ。


「ぼくたちのパーティはダンで結びついてるからねぇ。ダンをイメージさせるパーティ名だといいんじゃないかなぁ?」

「お、俺のイメージぃ……?」


 俺のイメージってなんだろ? エロいイメージしかないな。

 ん? 俺もみんなもエロいんだから、エロいパーティ名でいいんだろうか?


 いや、いいわけないわ。嫌だわエロいパーティ名なんて。


「ねぇダン。ダンは私たちと出会って、このパーティで過ごして、どんなことを思っているのかな? その気持ちを言葉にしてみて欲しいなぁ」

「ん……。そうだなぁ」


 ニーナの言葉に少し考え込む。

 このパーティ、みんなと過ごして思うのは、もちろん幸せしかない。でも幸せなんて、幸福が嫌なのにパーティ名で使えないってば。


 ん? しあわせ?

 あ、そうか。しあわせだ。俺がこの世界に来て、みんなと出会えて思うのは、みんなと巡り合えた奇跡と感謝だ。


「みんなと過ごして思うのは、仕合わせだね。みんなと巡り合えたから、俺は幸せに過ごせているんだから」

「仕合わせ……、巡り合わせね。うん。私たちにはピッタリの言葉かもしれないわね、仕合わせって」


 全員がバラバラに生まれて、独りじゃ生きていけなかったけど。仕合わせが良かったおかげで巡り合えて、みんなで幸せに過ごせている。

 うん。ティムルの言う通り、俺達にピッタリだ。


「ふむ。妾も良い言葉じゃと思うのじゃが、それだけではパーティ名としてはちょっと短いのじゃ。それにダンのイメージという感じではないかのぅ?」


 ほっぺに人差し指を当てながら、んーと可愛く首を傾げるフラッタ。

 確かに仕合わせだけだと短いか。断魔の煌きみたいに、せめてもう一語必要な感じかなぁ。


「ダンのイメージって言うと……。人の都合を全部無視して、わがままに踏み込んでくるとかかなぁ?」

「ああ、しかも色々なものを無視して、あっさりと問題を解決しちゃうのよねぇ」

「絶対に誰も見捨てる気がないくせに、いつも悪ぶっておるのじゃ」

「強引で人の都合を聞かないで、自分の我がままを通してみんなを幸せにしちゃうんだよねぇ」

「ああ……。凄くよく分かりますよぉ……。幸せにしてくれるのはいいんですけど、もうちょっと加減して欲しいんですよねぇ……」


 ……なんだろう。物凄くディスられてる気がするんだけど?

 ティムルとリーチェの言葉も褒め言葉に聞こえなくもないんだけど、そんな呆れた感じで言われても嬉しくないんだよ?


「我がままで人の都合を全部無視して加減を知らないとか、それなんて暴君だよ」

「あっダン! それだよ! 暴君だよ! それでいいんじゃないかなっ! 私達のパーティは仕合わせの暴君にしようよっ」

「へ?」

「あ、ニーナちゃんナイス! 私もそれに1票入れるわっ」

「んー。ダンはとっても優しいのじゃが、暴君と呼ばれると納得もするのじゃ……?」

「あっはっは! ぼくの王子様から、いつの間にか王様になってたんだね君はっ!」

「はいっ! ダンさんにぴったりのパーティ名だと思いますよっ! こちらの心の準備も待たずに幸せを押し付けてくる辺り、本当に暴君ですっ!」


 ええ、俺そんなに我がままかなぁ? いや確かにみんなを嫁に貰ったことは、俺のわがままを貫いた形になるんだけど……。

 俺って割と、みんなに蹂躙されてないかなぁ? 暴君っていうほど君臨してなくない?

 

 ダン 男 25歳 悪魔祓い 仕合わせの暴君
 ニーナ ティムル フラッタ リーチェ ムーリ
 ニーナ(所有) ティムル(所有)



 だけど既にパーティ名は決定されてしまったようで、俺のステータスプレートにも、しっかり仕合わせの暴君と記載されてしまったのだった。
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