異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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3章 回り始める物語2 ソクトルーナ竜爵家

191 ご報告 (改)

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 恐らく1分間にも満たない、30秒前後の舌への愛撫。それで動けなくなるほど気持ちよくなっちゃうラトリアさんを見て思う。

 フラッタが敏感なのって、五感上昇だけじゃなくて種族的な特性もありそうだな?


 目の前で痴態を晒すお義母さんを見ながら、リーチェとフラッタと共に今の戦いを振り返る。


「魔物を殺してもドロップアイテムが出ないなんてありえるのか? 俺達は本当にマインドロードを殺しきれたのかな?」

「ま、毎度思うけど、この状況でよく真面目な話が出来るね……?」


 今更何を言っているのかねリーチェ君。我が家ではエロこそが日常風景ではありませんかっ。

 一瞬どん引きしやがったリーチェだけど、直ぐに表情を引き締めなおして俺との会話に応じてくる。


「でも確かにおかしいよ。なんでドロップアイテムが出ないんだ……? フラッタのお母さんの支配は間違いなく解けてるんだよね?」

「……解けてるね。鑑定の情報に誤りが無ければ、だけど」


 リーチェの言葉を受けて再度ラトリアさんを鑑定するけど、やはり状態異常は間違いなく解除されている。

 そもそもの話、支配って状態異常の解説からお願いしよう。フラッタも知ってる風だったし、恐らく前例はあるんだろうからね。


「支配は大耐性すら貫通する、非常に強力な精神攻撃だと言われてるね。その代わり同時に1人にしか効果を及ぼせなくて、支配者が死ぬとなんの後遺症も無く支配状態から解放されるんだって」


 つまりラトリアさんが未だに動けないのは、支配以外の理由で間違いないようだ。

 竜爵家の女性は母娘ともども、大変敏感でいらっしゃるようですね?


「支配が解除されてるってことは、マインドロードが死んだって事になるのか。だけど魔物を殺してもドロップアイテムが出ないケースとかってあり得るのかな?」

「むぅ……。妾もそんなケースは聞いたことが無いのじゃ……」


 そもそも今回のケースはおかしいところだらけなんだけどさ。

 人類の敵対者であるアウターエフェクトが、こんな街中でこっそり活動してるのもおかしいし、ルーナ竜爵家にピンポイントで攻撃を仕掛けてるのもおかしい。動き方が魔物っぽくないんだよね。

 家具とかを持ち去ってるあたり、人の意志を感じざるを得ない。


 でもアウターエフェクトを操るなんて、そんなことが可能なのか?


「リーチェ。魔物を操る職業とか、召喚して戦う職業ってあったりするの?」

「……いや、そんな職業は聞いたことないよ。でもダンは、こう言いたいんだね? マインドロードは誰かの意思で、ルーナ竜爵家に攻撃を仕掛けていたんだと」


 流石に俺の言いたい事をすぐに汲み取ってくれるなぁ。

 もしかしたらサモナーやテイマーみたいな職業があるかなぁと思ったんだけど……、リーチェが知らないんじゃ望み薄か?


 でも、魔物って魔力で構成されてるんだよな? そう考えるとスキルや魔法で魔物を操る方法、あってもおかしくない気はするんだよねぇ。


「皆さん……。どうか私の話を聞いてもらえませんか……?」

「えっ?」


 聞き慣れない声が俺達の会話に割り込んでくる。

 どうやらラトリアさんが復活して俺達に声をかけてくれたみたいだ。


 ……なぜか恥ずかしそうに顔を両手で覆ってるけど、今は気にしないでおこう。


「母上! もう大丈夫なのじゃ!? 魔力枯渇も起こしておったじゃろうに!」

「安心してフラッタ。支配が解けた時に体力も魔力も全快したみたいなの。だから今まで動けなかったのは、そちらの男性のせいですよ」


 せいですよ。じゃないから。支配状態とは言え喜々として人を殺しに来たんだから自業自得ですからね?

 貴女を無傷で無力化する方法が他に無かったから仕方ないんだよ。きっと。恐らく。


「先ほどは失礼しました。緊急時でしたのでご容赦ください」


 ラトリアさんに反論するのはぐっと堪えて、まずは紳士的に応対する事にする。

 ぶっちゃけラトリアさん強すぎて、動きを止める方法が思いつかなかったんですよ。お互い無傷で済んだけど、それくらいギリギリの戦いだったので勘弁してください。


「初めましてお義母さん。フラッタを嫁に貰ったダンと言います。それでお話とはなんですかお義母さん」

「……………………へ?」


 どうせまだ話が始まってもいないし、なんかラトリアさんへの愛撫を責められている気配がしたので、この流れに乗って最大の懸念事項をさっさとぶっ放してしまうにした。

 おかげでせっかく復活したのにまた硬直してしまったラトリアさんが回復するまで、もう少し時間がかかってしまった。





 暫くして復活したラトリアさんに、フラッタとの出会いから竜爵家に乗り込んだ経緯をもう1度説明する。


「なるほど……。本当にフラッタは貴方に嫁いでしまったわけですね」


 もっと盛大にキレられるかと身構えながら説明したんだけど、話を聞いたラトリアさんは意外と冷静な反応だ。

 良かった。満年齢12歳の、まだJS相当の娘を誑かすとは何事ですかーっ! とか言われなくて。


 俺達パーティの素性、ここに来た目的、竜爵家の現状と使用人たちの救助が完了している事などもついでに説明しておいた。

 いやどっちが本題なんだよっていうね。


「ダンさんは竜化した私と難なく打ち合い、ブレスもあっさり躱して見せましたからね。フラッタの伴侶として申し分無い力量かと思います。不束な娘ですが、どうぞよろしくお願いしますね」


 俺に向かって静々と頭を下げるラトリアさん。

 この会話の流れ、やっぱりフラッタとの婚姻の話のほうが本題だったのかな?


 っていうか、娘の旦那の判断基準が脳筋過ぎるよラトリアさん……。


「不束どころか最高の女性だと思ってますよフラッタのことは。生涯寄り添い愛し抜きますので、どうか安心してくださいお義母さん」

「妾も! 妾も生涯ダンを愛すると誓うのじゃっ! 母上っ! ダンとの婚姻を認めてくれて、ありがとうなのじゃーっ!」

「じゃないよーーーーっ! 事件の話しようよーーっ!? 竜爵家の異変を解決しに来たのに、なんで結婚のご報告みたいになってるのさーーーっ!?」


 おお、久々に見たなぁリーチェの全力ツッコミ。

 リーチェってエロが絡まないとまぁまぁ常識人だよね。エロが絡むとエロスの権化に成り果てちゃうんだけどさ。


「ダンさん。私のことはどうぞラトリアとお呼び下さい。……貴方にお義母さんと言われるのは、少し抵抗がありますので」


 ん? ラトリアさんって呼ぶのは構わないんだけど……。

 なんでそんなに瞳を潤ませて、舌をチロチロと出し入れされてるんですかね?


「ラトリアさん。それじゃ早速だけどラトリアさんの話を聞かせてもらえるかな? この竜爵家に、いったい何が起こっていたのかを」

「ああっと、済みません。私から言い出しておいて申し訳ないんですけど、先に宝物庫の中を確認させてもらって良いですか?」


 ふむ? なにか大切なものでも仕舞われていたのかな?

 確かに家財道具一式が持ち出されてる状況だ。宝物庫の確認をしたい気持ちは分かる。別に急ぎでもないし、ラトリアさんの好きにさせよう。


 復活したラトリアさんを先頭に、訓練場の奥にある宝物庫に4人で向かった。

 ……なんで訓練場の奥に宝物庫なんて作っちゃったんだよ、竜爵家さんさぁ。


 という疑問を、100枚くらいオブラートに包んで聞いてみる。


「竜人族にとって戦いとは神聖なものなんです。ですから己の腕を磨く場所の隣りに宝物庫を配置して、守るべき物を常に意識しようとした、と主人から聞いております」

「そ、そうなんですね。ありがとうございます……」


 う、う~ん……? 理解できなくもないけど、超絶脳筋思考っすなぁ……。


 宝物庫の扉も、ラトリアさんのステータスプレートであっさり開かれる。でも開かれた宝物庫の中は空っぽで、予想通り何も残されていなかった。

 支配状態のラトリアさんが解錠できるんじゃ、セキュリティもなにもないもんねぇ……。


「……やはり何も残されてはおりませんか。ではこの屋敷にいる意味は無いですね」


 空っぽの宝物庫を確認したラトリアさんは、大して気落ちした風でもなく、軽く息を吐いただけで俺達の方に振り返った。


「ダンさん。フラッタ。ここでは落ち着いて話も出来ませんし、貴方達の家でお話させてもらってもいいでしょうか?」

「へ? そりゃあ構わないですけど、なんでわざわざ……?」


 話を聞いて欲しいと切り出してきたのは自分の方なのに、ここではなく俺達の家で話をしたいと言い出すラトリアさん。


 うーん。別にラトリアさんを家に招待するのは構わないんだけど。なーんか、猛烈に嫌な予感がするんだよなぁ……。


「勿論構わぬのじゃっ! 使用人たちの救助も既に完了しておるからなっ! 母上も安心して我が家に来ると良いのじゃっ!」


 あ、でもフラッタが大喜びで了承してしまったぞぉ? これはもうあとには引けないかなぁ?

 ……なんか凄くニーナに怒られそうな気がするなぁ?





 我が家に戻る前に、屋敷の中を全員で見て回る。

 マインドロードがいなくなったことで散漫の効果も無くなり、フラッタとラトリアさんに手分けして案内してもらって屋敷中を捜索したけど、どうやら幸いな事に死亡者はいなかったようだ。
 
 即身仏状態にされた被害者を思うとあまり喜ぶのもどうかとは思うけど、それでも犠牲者が出なかったのは不幸中の幸いと言って良いだろう。


 ラトリアさんは、救助隊に混ざっていたヴァルハールの役人さんに数日間ヴァルハールを離れると告げ、俺とパーティを組んでポータルを使い、マグエルの我が家まで転移した。

 自宅に着いたらすぐにリーチェとフラッタとステータスプレートを合わせて、みんなのパーティに再加入する。一瞬でも脱退すると、みんなめちゃくちゃ心配しちゃうだろうからね。


 我が家を目にしたラトリアさんは、感心したように小さく息を吐いた。


「ここがダンさんとフラッタの愛の巣ですか。思ったよりも立派な建物で驚きました」

「フラッタの他にも4人ほど妻がいますけどね。仲良くやってますよ」

「……あれだけの実力者ですからね。そういうこともあるのでしょう」


 フラッタの他にも妻が居ますと説明しながら家の中に案内するも、ラトリアさんはあっさりとその事実を受け入れてくれた。


「惜しむらくはダンさんとフラッタの間に子を生せない事でしょうか。2人の子供なら、さぞ強い竜人が産まれた事でしょうに」

「……俺も残念に思いますけどね。こればっかりはどうしようもないですから」


 いきなりハーレム発言をぶっこんだ俺も大概だけど、ラトリアさんも生々しい話をしてくるなぁ。

 でも出生率の低い竜人族としては死活問題なんだろうか? 竜爵家って貴族だし、跡継ぎの問題は常について回るものなのかも?


 そのままラトリアさんを食堂に通してお茶を出す。我が家で話をする時はいつも寝室か食堂なのだ。流石に寝室にはご案内できませんからね。


「じゃあ落ち着いたところで、改めて話を聞かせて欲しいんだ。ルーナ竜爵家になにが起こったのか。そしてシルヴァの安否と行方について」

「……シルヴァのこともご存知であるなら話は早いですね」


 隣りのフラッタが俺の手を握ってくる。その震える小さなその手を、俺は力強く握り返してやった。

 大丈夫だよフラッタ。俺達がついてるからね。


「まず最初に言っておきますが、シルヴァの安否と行方は私には分かりません」

「……っ。そうか、母上も知らないのじゃな……」


 残念なような安心したような、複雑な表情を浮かべるフラッタ。

 流石に芋づる式に問題が解決したりはしないかぁ。年内にフラッタの悩みを全て解決できなかったのは残念だけど、これは仕方ない。


「ですが事の発端はまさにあの事件、マルドック商会虐殺事件なのです。あの事件から私たちルーナ家の運命は、一気に狂ってしまったのです……!」

「……聞かせてください。フラッタの家族に、いったい何が起こったのかを」


 そうしてラトリアさんが語ってくれた事件の概要は、フラッタから既に聞いていたものと大差なかった。


 ある日内部告発によって、竜人族が飼育、販売されている事実が発覚する。

 事実を調査したところ、シルヴァが凶行に走り、被害者も加害者も皆殺しにしてしまった。

 そして犯行現場のブレス痕を確認しに、ルーナ家の当主夫妻が現場に呼び出されたと。


 しかしここからラトリアさんが語ってくれた事は、フラッタが把握している情報とは全く異なる事実だった。


「まず結論から申し上げましょう。私たち夫婦が呼び出された現場には、ブレス痕などどこにもありませんでした」

「なっ……!? それじゃ、それじゃ兄上が犯人だという話はっ……!」

「はい。全く何の根拠も無い、デタラメという事になりますね。シルヴァを犯人だとする根拠であるブレス痕など存在していないのですから」


 ラトリアさんの語る真実を聞いて、フラッタは喜色満面といった様子だ。

 口では犯人に違いないと言いながらも、フラッタはずっとお兄さんの無実を信じていたんだろう。それが今、他でもない母親の口から証明されたのだから嬉しくて仕方が無いのだろう。


 ……だけどラトリアさんの表情は暗い。なにか言い辛いこともあるようだね。


「……フラッタ。良い報告だけでなく、とても悪い報告もあります」

「えっ……?」

「これから語る事は既に現実に起こってしまったことです。気をしっかり持って、心して聞きなさい」

「わ、悪い報告とは何なのじゃ……? き、聞かせて欲しいのじゃ……!」


 悪い報告……。予想出来てしまうな……。

 夫婦で呼び出されたはずなのに、今ここにいるのはラトリアさん1人。そして先ほどまで竜爵家邸にいた当主は、マインドロードが成り代わっていた偽者だったのだ。

 つまり……。


「貴女の父親、ゴルディア・モーノ・ソクトルーナは……、死亡しました」

「…………え」

「貴女の父は、私の主人は、もうこの世にはおりません……」


 ラトリアさんの口から告げられる、残酷な現実。

 しかしその言葉を聞いたフラッタは、その言葉を否定するように弾けるように立ち上がってラトリアさんに言葉を返す。


「嘘なのじゃっ!? 父上ほどの手練れが……しかも母上と一緒にいて、それでも不覚を取ったと……!?」


 ……うん。それは確かに俺もそう思う。

 ラトリアさんも凄まじい手練れだったし、旦那さんも同水準の実力者だったであろうことは想像に難くない。オリハルコン製の武器も持っているとかフラッタが言ってたし、下手すりゃラトリアさんよりも強かったんじゃないの?

 そんな脳筋夫妻が揃っていて、たとえ相手がアウターエフェクトだったとしてもそんな簡単に不覚を取るかな?


「私にもあの時なにが起こったのか、未だに理解が及びません……。ですが主人は私の目の前で落命しました。間違い、ないんです……」

「ラトリアさんレベルの達人が、なにが起こったか分からない……?」


 本気のラトリアさんと手合わせしたからこそ分かる。

 ラトリアさんはリーチェの弓を死角から放たれても対応できるであろうくらいの達人のはずだ。そんな人が、なにが起こっていたのか理解できないだって……?


「ごめんラトリアさん。辛い話かもしれないけど、詳しく聞かせて欲しい」

「はい。私が皆さんにお話したかったのもここからなんです。私を正面から負かし、マインドロードを打ち破った皆さんに、どうしても聞いてもらいたいんです……!」


 懇願するように、ラトリアさんは俺達に話を聞いて欲しいと訴える。自分を負かした相手に、自分が解決出来なかった事態の解決を託すかのように。


 ……流石にもう、聞きたくないなんて言えないよね。

 フラッタという可愛いお嫁さんの実家を襲った悲劇。フラッタの夫として目を逸らすわけにはいかない。フラッタのお兄さんであるシルヴァの行方を追う手がかりにもなるかもしれないしな。


「聞かせてくれ。愛するフラッタのために、俺はその話を聞かなきゃいけないから」


 震えるフラッタの小さな手を改めて握りなおして、ラトリアさんに話の続きを促した。
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