異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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3章 回り始める物語2 ソクトルーナ竜爵家

174 豊穣 (改)

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 朝食とかニーナやフラッタを思い切り楽しんだら、今日の用事の為に動き出す。

 すぐに動けそうにないニーナとフラッタには、それぞれ庭の管理と子供達の指導をお願いし、比較的正常な状態のリーチェを補佐として残していく。

 俺はムーリとティムルの2人を連れて、まずは贔屓にしている大工さんのところへ足を運んだ。


「ほ、ほほほ、本当にこんなに貰って良いんですかいっ……!?」


 発光魔玉を50個ほど渡して、毎月1棟のペースで孤児院をあと3棟立ててもらうように依頼する。

 適当でも良いからと見積もりを出してもらうと、どうやら内装費用まで含んでも1棟50万リーフもあれば建設可能だそうだ。

 以前は40万リーフで建ててもらったんだけど、預かる子供が増えそうなので建物の強度を重視させてもらった結果、ちょっとだけ割高になった模様。今の俺にとっては誤差みたいな金額だけどなっ。


 なので発光魔玉50個をPON! と支払い建設を依頼したら、大工さん達が泡を食ってしまったというわけだ。

 ぶっちゃけ250万リーフは払いすぎではあるんだけどね。今までお世話になってるので感謝も含めた金額だ。これからも長い付き合いになるだろうしね。


 だけど高く払い過ぎたせいで、最優先で孤児院の建設を進めてくれると意気込む大工さん達を宥めるのは逆に大変だった。

 大工さんは俺達専属の職人ってわけじゃないからな。俺達の都合で他の仕事に影響は出したくない。なので毎月1つのペースは必ず守ってくれるようにお願いする。


「多めに金を払っておきながら急いで建てるなって……。アンタ変な客だなぁ?」


 ほっといてください。俺にも周囲にも負担をかけたくないだけなんで。


 30人規模の孤児院が4棟もあれば、当分の間は凌げると思う。その間に巣立っていく孤児も多いだろうし、稼げるようになったら宿を借りたり、家を持ったりしたっていい。


 ワンダ達のペースで換算するなら、半年もあれば4職の浸透は終わるはずだ。

 種族混成していないパーティや、人間族のいないパーティなどはもっと時間がかかるだろうけど、鑑定を使って効率よく浸透を進められれば、1年でどんな子も4つの職業の浸透は終わらせることが出来るだろう。


 来年の春を迎えるまでにワンダ達のパーティ全員が戦士、旅人、商人、修道士の浸透を終わらせてくれている可能性は非常に高い。

 泊まり込みの遠征が出来る様になったら、もっと浸透が早まるだろうなぁ。



 大工さんの工房の次はいつもの服屋さんに移動し、発注しておいた大量のタオルとベッドリネンを受け取った。

 ふっふっふ。行商人である俺とティムルがいれば、大量の荷物の受け取りだってなんの支障も無いぜ。


 更に、今後もマグエルで大量の孤児を預かることが決まったことを伝え、追加で服や毛布など注文し、その代金として魔玉を10個ほど支払っておく。


 あ、そう言えば遠征が終わったのにみんなに服を買ってあげてないな。あとでみんなと自分たちの服を買いに来なきゃ。



「ダンさんって発光魔玉をポンポン支払っちゃいますけど……」


 服屋さんを出た後に、ムーリが少し良いにくそうに俺に苦言を呈してくる。


「魔玉払いだと、硬貨払いよりも多めに払う事になっちゃってませんか? そもそも魔玉も多めに渡してるから、今更なのかもしれませんが……」

「スポットの最深部まで行ける俺たちにとっては、発光魔玉はもう貴重なアイテムじゃないんだよムーリ」


 ムーリの疑問は尤もなんだけど、俺達のパーティに限って言えば、魔玉はもう価値のあるアイテムじゃないんだよなぁ。

 もし足りなくなっても1日で数百個は発光させることが出来るし、発光魔玉と空魔玉合わせて5000近い数がインベントリに収納されてる。だからはっきり言って邪魔なんだよね。


「ダンの言う通りでもあるし、私たちだけが富を独占するのは良くないって理由もあるのよ」

「富を独占、ですか?」

「ケチな金持ちって嫌われるけど、気前が良くて自分達にもお金をいっぱい払ってくれるお金持ちを嫌う人はいないでしょ?」


 ティムルが言うように、他人からの悪感情を回避する狙いもある。


 結局トライラム教会の教義もそこに繋がると思うんだよね。幸福を独占せずに、みんなと共有しろってことだと思うんだよ。

 常に自身が強くあり続け、獲得した富をみんなと分かち合う事で全員が幸せになりましょう、って意味だと俺は解釈してるの。


「……なるほど。それはちょっと考えさせられますよ。与える、齎すではなく、分かち合う、ですか……」

「別に俺の解釈をムーリに押し付けるつもりはないよ。信仰の自由を許しているのがトライラム教会の懐の大きさだしね。みんなが色んな考え方で、色んな方法で最善を尽くせばそれでいいと思うよ」


 テネシスさんの考え方だって、決して間違っているわけではない。あの人のような解釈があったからこそ、トライラム教会は高潔な存在でいられたんだろうから。



 1度家に戻ると、魔物狩りを志願している子供達がフラッタとリーチェの手解きを受けていた。

 新しい志願者は15人。人数のバランスよりも信頼関係を優先した結果、6人、5人、4人の3つのパーティに分かれたようだ。

 15人分の装備を自作するのはやっぱり不自然感が出ちゃうだろうから、マグエルのお店でも買える分は買うべきだな。


 荷物を置いた俺とティムルも子供達の指導に参加していると、畑の方から俺を呼ぶ声が上がった。


「ダンーっ! 出来たよ! 芋が出来てるよーっ!」

「おおっ!? とうとう出来たのかっ! すぐ行くよっ!」


 俺を呼ぶ声に誘われて畑を確認すると、確かにディロと呼ばれるじゃがいもモドキが土の中に沢山出来ていた。

 土を運んだのって9月あたりだったっけ? みんな良く頑張ってくれたなぁ。


 子供達に教わりながら、おっかなびっくりディロの収穫を手伝う。スポットの土は栄養満点で、素人集団の初めての収穫にしては豊作のようだ。

 これは早速今夜の夕飯に提供して、みんなで味見をしなくちゃいけないなっ!



 収穫の手伝いを終えたら、訓練の休憩がてらに15人と嫁全員を連れて再度服屋さんへ顔を出す。子供達には動きやすくて丈夫な服を、俺たち家族には新しい服を1着ずつ購入する。

 ムーリの着替えも我が家にいっぱい置いておくからね? どれだけ汚しても平気なようにっ。


 我が家の分の代金は硬貨で支払っておく。これは経費じゃなくてみんなへの報酬の1つだからな。なんとなく気分の問題だ。



 服を買ったら今度は武器、防具屋に赴き、鉄製武器と皮防具を可能な限り購入する。

 ナイフと皮の靴、そして木の盾しか購入できなかった俺が、店の商品全部持ってこーい! なんて大人買い出来るようになるなんてな。まぁ買ってるのは最低品質の装備品ですけどぉ。


 在庫を全部購入したら他の人に迷惑がかかるかと思ったんだけど、年末に高額な装備品を買いにくる奴なんて殆どいなくて、いたとしても低品質の装備品を必要とするような人間じゃないらしい。

 なので、店にある分は全部持ってってくれと、逆に在庫を押し付けられてしまった。結果オーライだな。


 ということで武器は8名分、防具は5名分を揃えることが出来た。全員分の装備が揃うまでは訓練させて、その間にワンダ達に装備の材料を仕入れてもらうとしよう。




 最後に市場に寄って、食材を大量に購入する。

 この後スペルディアに行って、新たに23人の孤児を迎えることになる。昨日に引き続き、今夜も歓迎会と顔合わせになるだろう。

 流石に食堂は手狭だろうから、炊き出しの時みたいに教会の庭で立食パーティスタイルがいいかな?




「それじゃ準備は任せるよ。新しい子供達を迎えに行ってくるね」

「いってらっしゃい。新しい子供達も、私たちと一緒に幸せになってもらおうねっ」


 うん。そうだねニーナ。俺たちが幸せにするんじゃなくて、自分達で幸せになれるように一緒に支えてあげようね。

 笑顔のニーナたちに見送られながら、ムーリと一緒にポータルでスペルディアに向かった。



 トライラム教会の大聖堂前に直接出て、まずは受付に話をする。すると子供達は既に礼拝堂に集まっているということなので、ムーリと2人で礼拝堂へ移動する。


「お待ちしておりました。ダンさん。シスタームーリ」


 礼拝堂には子供達と一緒にテネシスさんが待っていた。


「この子達が現在教会で預かっている、今年14歳の孤児たちです」


 テネシスさんと挨拶を交わしつつ、子供達を確認する。

 あれ? 23人とかって聞いてた記憶があるんだけど、パッと見て30人以上、40人くらいいるような……。

 
「なんか子供達の数、聞いてたよりも多くないです?」

「えっと、彼らの弟や妹たちも一緒でいいと言われましたので……」


 あー、多い分は兄弟姉妹なのかぁ……って多いなっ!? 人数が1.5倍くらいになるって事は、殆どみんな兄弟がいるのかよっ。


「14歳の23人に加えて、16名の弟妹を含めて39名となりましたが……。大丈夫、でしたでしょうか……?」

「そういう事情であれば構いませんよ。こっちから言い出したことですしね。むしろちゃんと一緒に連れてきてくださってありがたいです」


 こっちの負担を心配するテネシスさんに、問題ないですよと笑顔を返す。

 1番小さい子だと、まだ5歳にもなってなさそうな子もいるなぁ。お兄ちゃんの袖を引っ張る姿は可愛いもんだ。

 
 新しくマグエルに迎える39人の子供達のことは、冒険者ギルドのポータルではなくて教会兵の冒険者がマグエルに送ってくれるそうだ。

 トライラム教会の戦闘部隊と聞くとちょっと鑑定したいけど……、流石に自重しておくか。藪はつつくまい。

 
 マグエルの入り口に子供達を送ってもらって、そこからは徒歩での大行進だ。

 またしても服屋さんに来店し、全員に1着ずつ服を購入する。新品の服に着替えたあとは全員に自分用の毛布を購入してもらった。


 店員さんに商品を用意してもらっていると、暇を持て余した俺に服屋の店長さんの女性が話しかけてきた。


「本日は何度もお買い物してもらって、本当にありがとうございますっ!」


 なんて言われちゃうとちょっと恥ずかしいな。同じ日に3度の来店は流石にやりすぎた。

 度重なる大量購入のせいで商品の用意に手間取っている間、店長さんと世間話をして時間を潰す。


「実は今まで取引させてもらっていたシュパイン商会さんが少し大変な状況で……。このお店にも少なからず影響があったんです」


 あぁ、この店ってシュパイン商会と取引があったのかぁ。そう言えばティムルと知り合いっぽかったもんな、この店長さん。


「シュパイン商会さんも今は本当に大変みたいで、取引先にまで気を配る余裕は無いみたいで……」

「今ゴタゴタしてますもんね、あの商会」

「だけどお客さんのおかげで、年末の大変な時期に収入が確保できて本当に助かりました。今後とも、どうぞ当店をご贔屓にしてくださいねっ」

「今後も孤児が増えるのは決まっているので、こちらこそよろしくお願いします」


 ほんとですかーっ! ときゃーきゃー騒いでいる店長さん。


 年末かぁ。大工さんにも年末の仕事の依頼をとても喜んでもらったんだったなぁ。人頭税や家賃など、年末には誰もが大金を必要としているんだろうねぇ。

 お金が入り用な年末にお金をばら撒くことが出来たので、年内に転移ボーナスC並みの富を手に入れられた意味は本当に大きかったと言える。


 孤児の服とベッドリネンは、あと100人分くらい発注する可能性があることを伝える。早速ご贔屓にしておこうじゃないか。

 なんだか店員全員で店の前まで見送りに来てしまったけど……うん、気にしない事にしよう。


 キラキラと目を輝かせる店員さんたちに見送られて、いったい何が起こってるのって顔をしている子供達を連れてマグエルの教会に子供達を連れていった。


「ここがマグエルのトライラム教会です。今日から皆さんの住むお家になりますね。と言っても教会には入りきらないので、皆さんはあちらに見える孤児院で寝泊りしてもらう事になりますねー」


 ムーリが教会と孤児院を子供達に紹介している。なんかツアーガイドみたい。


 俺たちが遠征で留守にしている間に来た21人の孤児たちは、マグエルに元々といた孤児たちととても仲良くなって、孤児院に移動せずに教会で寝泊りを続けている。おかげでせっかく建てた孤児院が丸々空いていた。

 怪我の功名とでも言うべきか、そのおかげで年内にもう1度子供達を受け入れることが出来たのだ。

 30人を収容するつもりで建てた孤児院に39名を押し込むのは少し申し訳ないけど、小さい子も多いので問題なく暮らしていけるでしょ。


 孤児院に荷物を置いてもらったら、教会に戻って楽しい夕食会の始まりだ。

 町外れで他に民家もないし、どれだけ騒いでも怒られないからね。盛大に騒ごうじゃないかぁっ!


 俺たち家族とムーリのことは紹介だけに留めて、子供の相手は子供達に任せてしまう。

 教会で保護された子供達はみんな良い子だからね。下手に大人が介入するよりも、よっぽど早く仲良くなってくれるだろ。


「力が足りないってティムルを助けるのを諦めた私たちが、こんなに沢山の子供達を笑顔に出来る様になったんだねぇ……」


 ワイワイと楽しそうに料理を頬張る子供たちを眺めながら、感慨深そうに呟くニーナ。

 ニーナが言っているのは、フォーベアでの夕食の時の話かぁ。あの時の俺はニーナ1人だけすら守りきれなくて、随分と視野が狭くて余裕の無い男だったと思うよ。


「そんな状態だったのに、私たちにあんなに良くしてくださって……。ダンさんとニーナさんのおかげで、私たちも誰かを助けられるくらいに幸せになる事ができました……!」


 人を幸せに出来るくらいに自分たちが幸せになった、か。

 面白い考え方だと思うよムーリ。面白いって言うか、素敵な考え方だと思う。


「ダンもニーナちゃんも、出会った人を1人も零すことなく幸せにしちゃうんだから凄いわよねぇ。でも今は私もそのお手伝いが出来るなんて嬉しいわ。お姉さん、これからも頑張っちゃうわよーっ」


 えっちじゃない方面でも頼りにしてますよ、ティムルお姉さん。

 長年商売をしてきた経験、行商人として国中を歩き回ってきた経験。そしてこれからは職人としても活躍してくれそうなお姉さんには頭が上がりませんて。


「何の力も無い時から教会を助けて妾を助けて、出会う人みんなを笑顔にしていったダンとニーナが、今は一流の魔物狩りと言ってもいい力を手にしておるのじゃ。2人はもうその心の赴くままに沢山の人を笑顔にしていくのじゃろうなぁ」


 いやー、フラッタの場合はちょっと違くないかなー? あんなのズルいってば。あの時のフラッタを放置できる奴なんて絶対いないってば。

 ニーナと顔を合わせて、これだからフラッタはぁ……、とため息をつく。


「ダンは本当に我がままだよねぇ。絶対に誰も零したくないからって誰よりも早く強くなってさ……」


 それって俺が我が侭なのかなぁ? 大切な人に幸せになってもらいたい。大切な人を護りたいって思うのって普通じゃないの?


「でもニーナもフラッタもぼくも、まだまだ幸せになれるんだからね? 期待させてね? ぼくたちの王子様」


 リーチェの言葉にゾワリとした感覚が背筋を伝う。

 今ですら幸せで仕方ないのに、まだまだ先があるなんて……。楽しみなんだけど、俺の身が持つか心配なんだよなぁ?


 艶福家先生があの超スペックでLV100だったことを考えると、これ以上エロ系職業が出てくる可能性は低い気がするんだよなぁ……。

 エロ系の職業の転職条件とか、他に何があるだろう? 複数人で交わることで好色家、複数人の異性と心から通じ合う事で艶福家の職業を得たわけだし……。

 あと残ってるのは……、ど、同性、とかっ……!?


 ダメだっ! この思考は深堀しちゃいけないやつだっ!

 好色家と艶福家の相乗効果で、ひと晩中デリバリーし続けても負担が無いんだからいいんだよぉっ! どんなに強力でも、同性愛で得られる職業なんて、絶対に解放しないからなぁっ!


 ……いや、そんなものがあるかどうかすら知らないんだけどさぁ。
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