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2章 強さを求めて3 孤児と修道女
126 レンタル装備 (改)
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抱きしめているムーリさんの体が、俺の腕の中で何度も小さく跳ねている。
両腕はだらんと脱力して、俺の舌の感触に柔らかいその身を震わせているようだ。
まぁ関係ないけどね。これは取り立てだから。さっきやられた分はしっかりと倍返しさせてもらうよ。
ムーリさんの頭突きを受けた時間よりも確実に長い間舌を絡ませ、ムーリさんにキスの仕方を徹底的に教え込んだ。
最後に強く舌を吸って唇を離し、両手でムーリさんの特大おっぱいを鷲掴み、もにゅもにゅと揉みこみながらムーリさんに宣言する。
「ムーリさん……、いやムーリ。お前は俺の女になると言ったんだ。もう取り消させないからね。ムーリの唇もこの特大おっぱいも、俺以外の男に触らせるのは許さない。いいね?」
「は、はいぃぃ……」
とろんとした様子でも、しっかりと返事をするムーリ。
「いいお返事だね。ご褒美をあげる」
「あ……」
特大おっぱいをぐにゅぐにゅと弄びながら、もう1度キスのレクチャーを再開する。
キスはこうやるんだよ。さっきのはほぼ頭突きだからね?
好きにしていいとも言われたんだし、多少は好きにさせてもらっちゃうよっ。これに懲りたら、男の上に簡単に跨るような事はしないようにね?
暫くムーリの体を弄んで、完全に脱力しきったムーリを応接室のソファーに横にする。
「この続きは礼拝日をちゃんと円満に乗り切ってからね? それじゃ明後日また来るから、魔物狩りの件、よろしくね」
返事をする余裕もなさそうなムーリを置いて、教会を後にした。
家に帰ると速攻で施錠して、みんなと一緒に寝室に駆け込む。
だけど皆を押し倒す前に、庭で作業していた子供達の存在が気になってしまった。
「今更の質問で申し訳ないけど、いくら2階だからって、庭仕事してる外の子たちに聞こえちゃわないの?」
「ん、そう言えばダンは知らなかったっけ」
ん? 何のことかなリーチェ。
そしてその言い分だと、俺以外の皆は知っているように聞こえるんだけど。
「安心してダン。ぼくが風に頼んで寝室の声を外に漏らさないようにしてるから。だからぼく達は何も心配せずに、ただ思いっきり楽しんで大丈夫なんだよ」
風に頼んで防音効果を展開している、だとっ……!
ちょちょちょ、ちょっと待って!? それが本当なら、リーチェがいればいつでも何処でも……!?
「こぉらダン。先のことより今は目の前の私たちに集中してっ」
リーチェの能力の有用性に慄く俺を、ニーナがやんわりと窘める。
なんでニーナって俺の考えてること分かるの? ていうか俺ってどれだけ分かりやすい顔してるんだ?
「大分見せ付けられちゃったし、今日はたっぷり相手をしてもらいたいなぁ? あ、ダンから何かしたいことある?」
たっぷりじっくりみんなの相手をするのは決定事項として……、俺がみんなにしたいことかぁ。
「そうだねぇ。1人1人正面から抱きしめながら、思いっきり好きだって伝えたい気分かなぁ? ニーナ、受け止めてくれる?」
「ふふ。もっちろんっ! さぁおいでおいでっ。ダンこそ私の気持ち、零さず全部受け取ってくれるかなぁ?」
両手を広げて俺を迎え入れてくれたニーナと抱き合って、ニーナの1番奥に好きな気持ちを流し込む。
「ふふ。また私を好きな気持ち、大きくなってるね……」
自分のおへその下を愛おしそうに撫でながら、ニーナが俺を見詰めてくる。
「……ダンは不思議なの。相手が増えれば増えるほど、1人1人ももっと好きになってくれるんだもん」
「みんながくれた分をお返ししてるだけだよ。ただ今日は、ちょっとだけいつもより多めかな? 色々あったからね」
次にティムルとも抱き合って、ただお互いに好意を伝え合うだけの甘々の時間を過ごす。
「はぁぁ……。また、また私の事を好きになってくれてるぅぅ……。これじゃ愛しても愛しても追いつかないじゃないぃ……」
「だってティムルが最高に可愛いんだもん。仕方ないじゃん?」
俺と離れたくないと、ぎゅーっと抱きしめてくれるティムルが可愛くて仕方ない。
「それに追いつくも何もないよ。お互いが好きならそれで充分だよ」
そしてフラッタと抱き合って、稽古の時のように、ただお互いのことだけに没頭する。
「ふぅぅ……。心も体も、ダンと1つになったみたいじゃぁ……。魂の底から繋がったみたいに思えるのじゃ……」
「フラッタと抱き合ってると、余計なこと考える余地もないよ。いつも愛してくれてありがとう。大好きだよ」
最後にリーチェと抱き合って、貪るようにキスをする。
「はぁ、好き、大好き……。いつもより、もっと好きぃ……」
「うん。俺もリーチェが好きだよ。リーチェはもっと素直に、今の生活を楽しんでいいんだよ」
夕飯までの間、1人1人順番に、甘さだけに満ちた濃密な時間を過ごした。
みんなとの甘く幸福に満ちたボディランゲージを済ませた後は、俺が夕食を振舞うことにした。
遠征上がりはいつもみんなに夕食を振舞っていたのに、今回はなんだかんだと忘れてしまっていたからなぁ。
完成した夕食を食べながら、いつもの雑談タイムだ。
「リーチェって、王族にもファンがいるってネプトゥコの警備隊詰め所で聞いたんだけどさ。なんかあんまりチヤホヤされたり騒がれたりしてるとこ見たことないんだよね」
俺にとってはポンコツで愛しいお姫様なリーチェだけど、建国の英雄という割にはあまり騒がれている印象がない。
リーチェの経歴については疑いようも無いけど、リーチェの一般認識についてはちょっとズレを感じるんだよな。
「一般の人から見て、リーチェってどんな感じなのかな?」
「んー、私は父さんから聞いた物語の登場人物の1人って感じだよ。凄い人だなぁって思うんだけど、あんまり現実感がないかな?」
ああ、実在してるのは知ってるけど、身近には感じないのかね?
ニーナはそもそも、自分と両親だけが世界の全てだったんだろうし。
「ドワーフにとっても、比較的ファンが多いエルフだとは思うわ」
ただし比較的にファンが多いというだけで、ドワーフ族全体としてエルフを嫌う傾向にあるのは変わらないと語るティムル。
「ただ建国史の登場人物であって、近年大きな功績を残しているわけじゃないから、やっぱり断魔の煌きとか、現役で活躍している英雄たちのほうが注目されてるんじゃないかしら?」
あー。リーチェってフラフラしてるだけで、そこまで目立った功績は無いのかぁ。
凄まじい強さではあるけど、ソロで出来る事は限られるのね。
「スペルドに限らず、特権階級層にファンが多いイメージがあるのじゃ。貴族はスペルド建国史を学ばねばならぬし、リーチェはこの美貌じゃからの。一般層よりも富裕層のほうに根強いファンが居るのじゃ」
……スペルドに限らず? まぁ今はいいや。
一般人とは住む世界が違うって奴ね。俺とも本来であれば接点が無かったはずだ。
「ぼく自身、あまり積極的に人と関わってこなかったしね。ステータスプレートの提示も可能な限りは全部断ってたしさ」
積極的に人と関わってこなかった、だと?
お前、俺との初対面の時を思い出してみやがれっての。
みんなに聞いた、リーチェの一般認識をまとめてみると……。
「ぼんやりと凄い人だなぁって認識されてるけど、あまり身近な存在だとは思われてないってことね。尊敬とかされる以前に、実在したんだ……! とか思われるレベルなのか」
大物過ぎて全く現実感が湧かない、そんなレベルの存在なわけだ。
エルフ並みに長命を誇る種族っていないわけだし、454年前の建国に関わった人と言われても、俺自身ピンと来ない部分があるからなぁ。
なんにしても、俺は建国史を知らないうちに知り合えて良かったよ。
6人の英雄の1人、翠の姫エルフが料理の話でガチ泣きするところとか見なくて済んだんだ。
ネプトゥコの警備隊の皆さんは、さぞ驚かれたことだろうねぇ。
「私はそれよりも孤児院のスポンサーの話に興味があるわねぇ」
リーチェの話題がひと段落したと判断したのか、ティムルが別の話題を振ってくる。
「ダンの鑑定と職業設定、装備製作能力をフル活用すれば成功間違いなしでしょうけど、明かすわけにもいかないでしょ?」
「うん。ティムルの言う通り、俺の能力をそこまで明かすわけにはいかないよね」
今のところ大雑把に考えているルールは2つ。
鑑定で転職のタイミングを教えること。そして貸し出す装備は基本的に俺達のお古のみにすることくらいかな。
市場を混乱させないように、武器の貸し出しは鋼鉄、防具の貸し出しは革素材までとする。
それ以上の品質を求めるなら、頑張って稼いで自分で買えばいい。
年内は免除するけど、最低品質の武器と皮防具は、1つに付き毎月銀貨10枚の貸し出し料。6部位だと6000リーフになる。
鋼鉄武器、革防具の場合は毎月金貨1枚の貸し出し料を予定している。
正直お金を取る必要は無いんだけど、甘やかしすぎるのも危険だ。
ちゃんと対価を貰ったほうが、結果的には子供達の将来に良い影響があると思ってる。
「うーん……。無償で貸し出してあげたいけど、6部位で6000リーフは破格だよね……」
教会がお金に困っている事を理由に、無償で装備を貸し与えたいと悩むニーナ。
けれど6部位6000リーフというレンタル料ですら破格である事は、ニーナ自身も良く分かっているようだ。
「皮の靴ですら2万リーフ近くするんだし、6000リーフで6部位スタートはかなり有利、かぁ」
特に俺とニーナは始めの頃、装備品を揃えられなくてめちゃくちゃ苦労したしね。レンタル料の安さはより深く理解できるわけだ。
「アクセサリーは……、金貨1枚レンタルにするのね」
ふんふんと頷きながらレンタル料金を確認してくるティムル。
アクセサリーの本来の値段を考えると金貨1枚のレンタル料でも安すぎるくらいなのだけれど、他の装備品と比べて性能がちょっと低めだからね。その辺を加味して金貨1枚に設定させてもらったんだよ。
「革製品だと靴ですら54000リーフくらいのはずだし、鎧に到っては30万リーフ近く、ちょうどバスタードソードと同じくらいの値段になるものね。金貨1枚での貸し出し料でも借りるメリットは大きいわね」
本当に装備品って高いんだよなぁ。
ティムルが言う通り、鋼鉄と革素材なんて金貨1枚でも破格のはず。
「ダンよ。装備を持ち逃げされてしまったり、売却されてしまったりする可能性もあるのではないかのぅ?」
フラッタも本気で心配しているわけじゃないだろうけど、持ち逃げに関してはあまり心配してないんだよね。
6部位売り払ったところで滞納している税金を支払うには足りないし、逃げる場所がある孤児なんてそうそういない。
そもそも孤児が魔物狩りをするのは、教会の収入を助けようとしているところが大きいらしいし。
「それに良い装備を手に入れて己を過信し、結果命を落として装備を失ってしまう、そんな事態は想定しているのかの?」
「うん。だから貸付は個人に対してじゃなくて、教会に対して行うことにする。お前が死んだり逃げたりしたら、教会の借金が増えるぞって脅すつもり」
分かりやすく言えば連帯保証人みたいなものかな?
今いる子供達が妙な事をしでかすとは思ってないけれど、今回の件が上手くいけばきっと志願者は増えていくだろうからね。
将来的に、感情に左右されないルールが必要になってくるはずだ。
「まぁ……。その教会を運営するムーリが俺の身内になるなら、あまり意味のない脅しになるかもだけど?」
「よ、よくもまぁ子供たちにそんな酷い脅しを思いつくものだよ……」
なにどん引きしてるのリーチェ? これは子供達の安全を守る上で必要な決まりごとだと思うんだけど。
「でも効果的だと思う。教会に迷惑がかかるとなれば、優しいあの子達は無茶して稼ごうとは思わなくなるだろうね」
「最終的な目標はマグエルのトライラム教会の経済的自立だからね。無茶はさせないさ。だけどせっかくスポットって稼ぎ場所が近くにあるんだもの。活用しないと勿体無いでしょ?」
職業補正が殆どなくて、装備も揃っていない最序盤が1番辛いんだ。逆に言えば、そこさえ抜ければ何とかなるはずなんだよ。
それに俺と違って始めから4人でパーティを組めるみたいだし、先行きはそこまで悪くない。
ナイトシャドウの襲撃4回で、3000リーフ相当だってフロイさんが言っていた。
俺達の魔玉発光スピードは異次元で参考にならないので、フロイさんの見立てを参考にする。
発光魔玉は5万リーフ。ナイトシャドウ4回で3000リーフ。
計算が面倒なので大雑把に計算すると、80回もナイトシャドウの襲撃を切り抜ければ余裕で5万リーフ以上稼げる計算だ。
毎日3回の襲撃を切り抜けられれば、1ヶ月でドロップアイテムの他に5万リーフが稼げる計算で、孤児たちが自分で人頭税を稼ぐ事も決して不可能ではないのだ。多分。
「希望者は4人って話だったから、旅人、戦士、商人、修道士を1人ずつ用意したいね。修道士がすぐに転職出来ないなら戦士になってもらう感じかな」
「なるほど。転職先とタイミングをこちらで指定するのね。そうすれば鑑定の力を活かせるわけかぁ。スポンサーの意見となれば、細かい説明を省いて要望を通しても、さほど怪しまれずに済むと」
どうやらティムルにも納得してもらえたかな?
孤児のパーティを支援する事で、俺のパーティとの浸透速度を比較する事も出来るはずだ。
別にそんなもの検証しなくてもいいかもしれないけれど……。機会があるなら試しておきたい。
「レンタル料から得た利益は、庭とか畑の管理費として使ってもらおう。将来的に金貨以上の利益が上がることになったら、その時はその時で新しく使い道を考えるって事で」
「あは。花壇や畑に使っちゃうの? それじゃ結局、教会のために使ってるのと変わらないじゃない」
嬉しそうにからかい口調で笑顔を見せて暮れるニーナ。
「いやいや、うちの庭の管理費なんだから、うちのために使ってるでしょ?」
花壇はニーナだって世話してるでしょっ! つまりうちの為の出費で間違いないってば!
「最終的にはうちの人頭税とかこの家の契約料まで稼いでくれたら、俺はずーっと寝室に篭ってられるんだけどねぇ?」
「始めに出資する事で、お金の動き、お金の流れを作るのね。うん。面白いと思うわ。あとは実際に参加する子を見ないとなんとも言えないわねぇ」
ティムルの言う通り、あとは参加者次第だねぇ。
出来れば年内のうち、欲を言えば次回の遠征に出発する前に、簡単な指導くらいは済ませてしまいたいんだよね。
教会の子供達16人とは全員面識があるけど、魔物狩りになりたいってのは誰なんだろ? ちょっとだけ楽しみだ。
夕食後はみんなでお風呂に入り、今日は徹夜禁止の日なので、夜はみんなで引っ付いて眠った。
これから冬に入るらしいけど、みんなでくっついて寝ればどんな冬も乗り切れそうかな。
両腕はだらんと脱力して、俺の舌の感触に柔らかいその身を震わせているようだ。
まぁ関係ないけどね。これは取り立てだから。さっきやられた分はしっかりと倍返しさせてもらうよ。
ムーリさんの頭突きを受けた時間よりも確実に長い間舌を絡ませ、ムーリさんにキスの仕方を徹底的に教え込んだ。
最後に強く舌を吸って唇を離し、両手でムーリさんの特大おっぱいを鷲掴み、もにゅもにゅと揉みこみながらムーリさんに宣言する。
「ムーリさん……、いやムーリ。お前は俺の女になると言ったんだ。もう取り消させないからね。ムーリの唇もこの特大おっぱいも、俺以外の男に触らせるのは許さない。いいね?」
「は、はいぃぃ……」
とろんとした様子でも、しっかりと返事をするムーリ。
「いいお返事だね。ご褒美をあげる」
「あ……」
特大おっぱいをぐにゅぐにゅと弄びながら、もう1度キスのレクチャーを再開する。
キスはこうやるんだよ。さっきのはほぼ頭突きだからね?
好きにしていいとも言われたんだし、多少は好きにさせてもらっちゃうよっ。これに懲りたら、男の上に簡単に跨るような事はしないようにね?
暫くムーリの体を弄んで、完全に脱力しきったムーリを応接室のソファーに横にする。
「この続きは礼拝日をちゃんと円満に乗り切ってからね? それじゃ明後日また来るから、魔物狩りの件、よろしくね」
返事をする余裕もなさそうなムーリを置いて、教会を後にした。
家に帰ると速攻で施錠して、みんなと一緒に寝室に駆け込む。
だけど皆を押し倒す前に、庭で作業していた子供達の存在が気になってしまった。
「今更の質問で申し訳ないけど、いくら2階だからって、庭仕事してる外の子たちに聞こえちゃわないの?」
「ん、そう言えばダンは知らなかったっけ」
ん? 何のことかなリーチェ。
そしてその言い分だと、俺以外の皆は知っているように聞こえるんだけど。
「安心してダン。ぼくが風に頼んで寝室の声を外に漏らさないようにしてるから。だからぼく達は何も心配せずに、ただ思いっきり楽しんで大丈夫なんだよ」
風に頼んで防音効果を展開している、だとっ……!
ちょちょちょ、ちょっと待って!? それが本当なら、リーチェがいればいつでも何処でも……!?
「こぉらダン。先のことより今は目の前の私たちに集中してっ」
リーチェの能力の有用性に慄く俺を、ニーナがやんわりと窘める。
なんでニーナって俺の考えてること分かるの? ていうか俺ってどれだけ分かりやすい顔してるんだ?
「大分見せ付けられちゃったし、今日はたっぷり相手をしてもらいたいなぁ? あ、ダンから何かしたいことある?」
たっぷりじっくりみんなの相手をするのは決定事項として……、俺がみんなにしたいことかぁ。
「そうだねぇ。1人1人正面から抱きしめながら、思いっきり好きだって伝えたい気分かなぁ? ニーナ、受け止めてくれる?」
「ふふ。もっちろんっ! さぁおいでおいでっ。ダンこそ私の気持ち、零さず全部受け取ってくれるかなぁ?」
両手を広げて俺を迎え入れてくれたニーナと抱き合って、ニーナの1番奥に好きな気持ちを流し込む。
「ふふ。また私を好きな気持ち、大きくなってるね……」
自分のおへその下を愛おしそうに撫でながら、ニーナが俺を見詰めてくる。
「……ダンは不思議なの。相手が増えれば増えるほど、1人1人ももっと好きになってくれるんだもん」
「みんながくれた分をお返ししてるだけだよ。ただ今日は、ちょっとだけいつもより多めかな? 色々あったからね」
次にティムルとも抱き合って、ただお互いに好意を伝え合うだけの甘々の時間を過ごす。
「はぁぁ……。また、また私の事を好きになってくれてるぅぅ……。これじゃ愛しても愛しても追いつかないじゃないぃ……」
「だってティムルが最高に可愛いんだもん。仕方ないじゃん?」
俺と離れたくないと、ぎゅーっと抱きしめてくれるティムルが可愛くて仕方ない。
「それに追いつくも何もないよ。お互いが好きならそれで充分だよ」
そしてフラッタと抱き合って、稽古の時のように、ただお互いのことだけに没頭する。
「ふぅぅ……。心も体も、ダンと1つになったみたいじゃぁ……。魂の底から繋がったみたいに思えるのじゃ……」
「フラッタと抱き合ってると、余計なこと考える余地もないよ。いつも愛してくれてありがとう。大好きだよ」
最後にリーチェと抱き合って、貪るようにキスをする。
「はぁ、好き、大好き……。いつもより、もっと好きぃ……」
「うん。俺もリーチェが好きだよ。リーチェはもっと素直に、今の生活を楽しんでいいんだよ」
夕飯までの間、1人1人順番に、甘さだけに満ちた濃密な時間を過ごした。
みんなとの甘く幸福に満ちたボディランゲージを済ませた後は、俺が夕食を振舞うことにした。
遠征上がりはいつもみんなに夕食を振舞っていたのに、今回はなんだかんだと忘れてしまっていたからなぁ。
完成した夕食を食べながら、いつもの雑談タイムだ。
「リーチェって、王族にもファンがいるってネプトゥコの警備隊詰め所で聞いたんだけどさ。なんかあんまりチヤホヤされたり騒がれたりしてるとこ見たことないんだよね」
俺にとってはポンコツで愛しいお姫様なリーチェだけど、建国の英雄という割にはあまり騒がれている印象がない。
リーチェの経歴については疑いようも無いけど、リーチェの一般認識についてはちょっとズレを感じるんだよな。
「一般の人から見て、リーチェってどんな感じなのかな?」
「んー、私は父さんから聞いた物語の登場人物の1人って感じだよ。凄い人だなぁって思うんだけど、あんまり現実感がないかな?」
ああ、実在してるのは知ってるけど、身近には感じないのかね?
ニーナはそもそも、自分と両親だけが世界の全てだったんだろうし。
「ドワーフにとっても、比較的ファンが多いエルフだとは思うわ」
ただし比較的にファンが多いというだけで、ドワーフ族全体としてエルフを嫌う傾向にあるのは変わらないと語るティムル。
「ただ建国史の登場人物であって、近年大きな功績を残しているわけじゃないから、やっぱり断魔の煌きとか、現役で活躍している英雄たちのほうが注目されてるんじゃないかしら?」
あー。リーチェってフラフラしてるだけで、そこまで目立った功績は無いのかぁ。
凄まじい強さではあるけど、ソロで出来る事は限られるのね。
「スペルドに限らず、特権階級層にファンが多いイメージがあるのじゃ。貴族はスペルド建国史を学ばねばならぬし、リーチェはこの美貌じゃからの。一般層よりも富裕層のほうに根強いファンが居るのじゃ」
……スペルドに限らず? まぁ今はいいや。
一般人とは住む世界が違うって奴ね。俺とも本来であれば接点が無かったはずだ。
「ぼく自身、あまり積極的に人と関わってこなかったしね。ステータスプレートの提示も可能な限りは全部断ってたしさ」
積極的に人と関わってこなかった、だと?
お前、俺との初対面の時を思い出してみやがれっての。
みんなに聞いた、リーチェの一般認識をまとめてみると……。
「ぼんやりと凄い人だなぁって認識されてるけど、あまり身近な存在だとは思われてないってことね。尊敬とかされる以前に、実在したんだ……! とか思われるレベルなのか」
大物過ぎて全く現実感が湧かない、そんなレベルの存在なわけだ。
エルフ並みに長命を誇る種族っていないわけだし、454年前の建国に関わった人と言われても、俺自身ピンと来ない部分があるからなぁ。
なんにしても、俺は建国史を知らないうちに知り合えて良かったよ。
6人の英雄の1人、翠の姫エルフが料理の話でガチ泣きするところとか見なくて済んだんだ。
ネプトゥコの警備隊の皆さんは、さぞ驚かれたことだろうねぇ。
「私はそれよりも孤児院のスポンサーの話に興味があるわねぇ」
リーチェの話題がひと段落したと判断したのか、ティムルが別の話題を振ってくる。
「ダンの鑑定と職業設定、装備製作能力をフル活用すれば成功間違いなしでしょうけど、明かすわけにもいかないでしょ?」
「うん。ティムルの言う通り、俺の能力をそこまで明かすわけにはいかないよね」
今のところ大雑把に考えているルールは2つ。
鑑定で転職のタイミングを教えること。そして貸し出す装備は基本的に俺達のお古のみにすることくらいかな。
市場を混乱させないように、武器の貸し出しは鋼鉄、防具の貸し出しは革素材までとする。
それ以上の品質を求めるなら、頑張って稼いで自分で買えばいい。
年内は免除するけど、最低品質の武器と皮防具は、1つに付き毎月銀貨10枚の貸し出し料。6部位だと6000リーフになる。
鋼鉄武器、革防具の場合は毎月金貨1枚の貸し出し料を予定している。
正直お金を取る必要は無いんだけど、甘やかしすぎるのも危険だ。
ちゃんと対価を貰ったほうが、結果的には子供達の将来に良い影響があると思ってる。
「うーん……。無償で貸し出してあげたいけど、6部位で6000リーフは破格だよね……」
教会がお金に困っている事を理由に、無償で装備を貸し与えたいと悩むニーナ。
けれど6部位6000リーフというレンタル料ですら破格である事は、ニーナ自身も良く分かっているようだ。
「皮の靴ですら2万リーフ近くするんだし、6000リーフで6部位スタートはかなり有利、かぁ」
特に俺とニーナは始めの頃、装備品を揃えられなくてめちゃくちゃ苦労したしね。レンタル料の安さはより深く理解できるわけだ。
「アクセサリーは……、金貨1枚レンタルにするのね」
ふんふんと頷きながらレンタル料金を確認してくるティムル。
アクセサリーの本来の値段を考えると金貨1枚のレンタル料でも安すぎるくらいなのだけれど、他の装備品と比べて性能がちょっと低めだからね。その辺を加味して金貨1枚に設定させてもらったんだよ。
「革製品だと靴ですら54000リーフくらいのはずだし、鎧に到っては30万リーフ近く、ちょうどバスタードソードと同じくらいの値段になるものね。金貨1枚での貸し出し料でも借りるメリットは大きいわね」
本当に装備品って高いんだよなぁ。
ティムルが言う通り、鋼鉄と革素材なんて金貨1枚でも破格のはず。
「ダンよ。装備を持ち逃げされてしまったり、売却されてしまったりする可能性もあるのではないかのぅ?」
フラッタも本気で心配しているわけじゃないだろうけど、持ち逃げに関してはあまり心配してないんだよね。
6部位売り払ったところで滞納している税金を支払うには足りないし、逃げる場所がある孤児なんてそうそういない。
そもそも孤児が魔物狩りをするのは、教会の収入を助けようとしているところが大きいらしいし。
「それに良い装備を手に入れて己を過信し、結果命を落として装備を失ってしまう、そんな事態は想定しているのかの?」
「うん。だから貸付は個人に対してじゃなくて、教会に対して行うことにする。お前が死んだり逃げたりしたら、教会の借金が増えるぞって脅すつもり」
分かりやすく言えば連帯保証人みたいなものかな?
今いる子供達が妙な事をしでかすとは思ってないけれど、今回の件が上手くいけばきっと志願者は増えていくだろうからね。
将来的に、感情に左右されないルールが必要になってくるはずだ。
「まぁ……。その教会を運営するムーリが俺の身内になるなら、あまり意味のない脅しになるかもだけど?」
「よ、よくもまぁ子供たちにそんな酷い脅しを思いつくものだよ……」
なにどん引きしてるのリーチェ? これは子供達の安全を守る上で必要な決まりごとだと思うんだけど。
「でも効果的だと思う。教会に迷惑がかかるとなれば、優しいあの子達は無茶して稼ごうとは思わなくなるだろうね」
「最終的な目標はマグエルのトライラム教会の経済的自立だからね。無茶はさせないさ。だけどせっかくスポットって稼ぎ場所が近くにあるんだもの。活用しないと勿体無いでしょ?」
職業補正が殆どなくて、装備も揃っていない最序盤が1番辛いんだ。逆に言えば、そこさえ抜ければ何とかなるはずなんだよ。
それに俺と違って始めから4人でパーティを組めるみたいだし、先行きはそこまで悪くない。
ナイトシャドウの襲撃4回で、3000リーフ相当だってフロイさんが言っていた。
俺達の魔玉発光スピードは異次元で参考にならないので、フロイさんの見立てを参考にする。
発光魔玉は5万リーフ。ナイトシャドウ4回で3000リーフ。
計算が面倒なので大雑把に計算すると、80回もナイトシャドウの襲撃を切り抜ければ余裕で5万リーフ以上稼げる計算だ。
毎日3回の襲撃を切り抜けられれば、1ヶ月でドロップアイテムの他に5万リーフが稼げる計算で、孤児たちが自分で人頭税を稼ぐ事も決して不可能ではないのだ。多分。
「希望者は4人って話だったから、旅人、戦士、商人、修道士を1人ずつ用意したいね。修道士がすぐに転職出来ないなら戦士になってもらう感じかな」
「なるほど。転職先とタイミングをこちらで指定するのね。そうすれば鑑定の力を活かせるわけかぁ。スポンサーの意見となれば、細かい説明を省いて要望を通しても、さほど怪しまれずに済むと」
どうやらティムルにも納得してもらえたかな?
孤児のパーティを支援する事で、俺のパーティとの浸透速度を比較する事も出来るはずだ。
別にそんなもの検証しなくてもいいかもしれないけれど……。機会があるなら試しておきたい。
「レンタル料から得た利益は、庭とか畑の管理費として使ってもらおう。将来的に金貨以上の利益が上がることになったら、その時はその時で新しく使い道を考えるって事で」
「あは。花壇や畑に使っちゃうの? それじゃ結局、教会のために使ってるのと変わらないじゃない」
嬉しそうにからかい口調で笑顔を見せて暮れるニーナ。
「いやいや、うちの庭の管理費なんだから、うちのために使ってるでしょ?」
花壇はニーナだって世話してるでしょっ! つまりうちの為の出費で間違いないってば!
「最終的にはうちの人頭税とかこの家の契約料まで稼いでくれたら、俺はずーっと寝室に篭ってられるんだけどねぇ?」
「始めに出資する事で、お金の動き、お金の流れを作るのね。うん。面白いと思うわ。あとは実際に参加する子を見ないとなんとも言えないわねぇ」
ティムルの言う通り、あとは参加者次第だねぇ。
出来れば年内のうち、欲を言えば次回の遠征に出発する前に、簡単な指導くらいは済ませてしまいたいんだよね。
教会の子供達16人とは全員面識があるけど、魔物狩りになりたいってのは誰なんだろ? ちょっとだけ楽しみだ。
夕食後はみんなでお風呂に入り、今日は徹夜禁止の日なので、夜はみんなで引っ付いて眠った。
これから冬に入るらしいけど、みんなでくっついて寝ればどんな冬も乗り切れそうかな。
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