異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて2 新たに2人

116 熱視の条件 (改)

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 熱視、熱視が……、発現した?

 な、なんでこのタイミングで? 戦闘、終わってたよな?


 えっと、フラッタの鑑定結果には竜化解放と表示されているから、熱視も鑑定で表示されるんだろうか?


「あーっと、ティムル。まずその魔絹のターバン装備してもらっていい? ティムルを鑑定したいんだ。装備の更新の確認と、本当に熱視が発現したのかを鑑定で確認したい」

「は、はい、畏まりましたっ」


 俺の言葉に慌てて魔絹のターバンを頭に巻くティムル。

 出会った頃のティムルが戻ってきたみたいで、なんだか感無量だなぁ。


「あっ! 済みません、お礼が遅れました。ご主人様。凄く嬉しいです。本当にありがとうございます」


 ニコッと笑ってくれるティムル。可愛いなぁ。

 魔絹のターバンは頭全体に巻きつけるというよりは、バンダナとか、大きめのヘアバンドって感じだ。


 っとと、俺からお願いしたんだから鑑定しなきゃな。



 ティムル
 女 32歳 ドワーフ族 熱視解放 武器職人LV10
 装備 鋼鉄のダガー 鋼鉄のダガー 魔絹のターバン 皮の軽鎧 皮の靴



 うん。ある。間違いなく熱視が解放されてる。

 でも……、なんでこのタイミングで?


「ティムル。鑑定にも熱視が発現してるってちゃんと書いてる。間違いなく熱視が発現してるよ」


 んー、でも何でこのタイミングで発現したのか分からないなぁ。

 戦闘が終わったタイミングだったから、獣化や竜化と違って経験値は関係ないんだろうか?


「っとそうだティムル、大丈夫? 戦うのが難しそうなら一旦最深部から出るよ」

「ああっととと、ちょっと待ってくださいね。ふむ、ふむふむ、ふむ、うん」


 何かを確認するかのように小声でブツブツと呟くティムル。なにしてるのかな?


「大丈夫ですご主人様。熱視の発動の切り替えも出来ました。移動は必要ありませんよ」


 ふむ? そんな簡単に自由に切り替えできるものなの?

 魔物はまだ来てないし、ちょっと確認してみよう。


「ティムル。俺を見ながら何度か、熱視を発動したり切ったりしてみてくれない?」

「ふふ。いいですよー。ご主人様の顔を見ながらなら、なんでも楽しいですからねっ」


 なんだこの女。可愛すぎかよ。最深部じゃなかったら押し倒してるところだよ。

 まあいい。今は余裕も無いし真面目に検証しよう。


 俺の正面に立ったティムルの瞳に注目していると、俺と同じ黒い瞳が、鮮やかな青い色に変化していく。

 ……これ、碧眼って奴か!


「凄いなティムル。熱視を使うと、ティムルの瞳が鮮やかな碧眼に変わるみたいだよ。凄く、凄く綺麗だ……」

「あはー。嬉しすぎますーっ。ありがとうございますねーっ」


 両頬に手を当てて嬉しそうに照れくさそうにくねくねするティムル。

 だから可愛すぎでしょこの人。


「そうそう。青い瞳は炎を見ても眩しさを感じにくいとも言われてるんです。ドワーフは碧眼となって、初めて一人前と認められるんですよっ」

「へぇ? じゃあ熱視が発現したティムルはやっぱり落ち零れでもなんでもないじゃん。凄く綺麗な碧眼で、いつも以上に美人に見えるよ」


 今回の遠征でティムルの躍進が著しい。戦力的にもエロ的にも。

 最近ティムル、率先してエロいことするもんなぁ。仲が悪いはずのエルフのリーチェに指導したりするし。


「みんなも見てみなよ。今のティムル、凄く綺麗な瞳をしてるからさ」


 ティムルの前を皆に譲って、ティムルの美しい青い瞳を皆にも見せてあげる。


「これは、本当に綺麗ですね……。ティムルの黒い肌に瞳の輝きが強調されるみたいで、凄く素敵です……」

「うむ。非常に美しいのじゃっ。宝石のような煌きを感じるのぅ」

「ふふ。青空みたいに透き通った瞳だね。ドワーフの瞳をこんなにマジマジと見たエルフって、きっとそんなにいないよ」


 俺の呼びかけに応じて集まってきた3人も、ティムルの瞳の美しさに魅了されている。

 青空みたいな瞳か。リーチェは詩人だね。


「はぁ……、エルフって馬鹿だねぇ。こんなに綺麗なものをどうして嫌ってるのかなぁ」

「や、やめてくださいよみんな。て、照れるじゃないですかぁっ」


 仲が悪いはずのエルフのリーチェが1番魅了されてない?


 ティムルの瞳にうっとりと見蕩れる美女3人……。

 なぜだろう。全くエロくないのになんかエロい。俺はもうダメかもしれない。


「ん……、あ、あれ? な、なんだか少し体調が……」


 そんな様子をぼんやり眺めていたら、ティムルの様子が少しおかしい。どうしたんだ?

 熱視を発動してただけで、他には何にも……、って熱視って種族特性なんだよな。


 だとすれば、竜化と同じで……!


「ティムルっ! それ多分魔力枯渇の兆候だ! 熱視切って良いよ!」


 魔絹のターバンを作った時から発動していたとするなら、既に数分間は熱視を発動してることになる。

 熱視にも魔力が必要なら、いきなり発動しすぎだっ。


「ま、魔力枯渇……? これが、ですか……」


 ティムルの瞳が、見慣れたいつもの黒い瞳に戻っていく。


「……はい。熱視は切りましたので、もう大丈夫です。確かに具合が悪くなるのは止まったみたいです。教えてもらって助かりました」

「こちらこそありがとう。とっても綺麗だったよ。もう完全に惚れ直したね。毎回言ってる気もするけど」


 もーティムルってば何回惚れ直させる気なんだよぉ。よしよしなでなで。


 そしてやっぱり熱視も魔力消費ありか。

 しかしティムルの浸透具合で数分しか持たないとは……、ってティムルには魔力補正が無いのかぁ。


「しかしなんでこのタイミングで発現したんだろうね? 戦闘中ならまだしもさぁ。ティムル、正確にはどのタイミングで発現したとか分かるかな?」

「えっと、多分ご主人様がこのターバンを作ってくれた時だと思いますよ。ずっと見てましたし」


 ふぅむ。装備作成を見るのが条件なのか?

 でも鋼鉄のダガーも目の前で作って見せたし、フラッタの防具だって作って見せた。メイスや槍だって作って見せた。

 ……っとなると、回数とか?


「以前各種族について聞いたとき、若くして熱視が発現するドワーフは鍛冶仕事をしている家に多いって言ってたんだっけ。となると、装備品の製作を目にした回数、とかかな?」

「んー、どうでしょう。鍛冶仕事をしていても、なかなか発現しない者も少なくないですよ。多くのドワーフは腕の良い職人に弟子入りしたり、親の仕事を見て熱視を発現させると言われています」


 回数、じゃないのか?

 と、なると……。


「パーティメンバーに入った状態で装備製作を見ること、か? 確か親子関係ってステータスプレートに繋がりが無いから、家族間でパーティ組んでたりするって聞いたし」

「んー、それもなんだか違う気がするんですよねぇ……」


 確証は無いみたいだけれど、俺の説にはピンと来ない様子のティムル。

 熱視が発現している本人が違うと感じるなら、この説も間違っていると思ったほうが良さそうだ。


「15歳までに熱視を発現させるドワーフは本当に稀なんです。その多くは伝統ある鍛冶職人の家の生まれで、殆どのドワーフ族は20~25歳くらいに発現させるものだと思いますよ。だから15歳までに熱視が使えると天才と持て囃されるのです」

「はぁ? じゃあ15歳で熱視が発現してなくても、ティムルは落ち零れでもなんでもないじゃん」


 ティムルの故郷のドワーフって馬鹿しかいないのかな?

 こんな美人で最高の女性を追い出したあたり馬鹿しかいないのかもしれないな。まぁいいや。


「腕の良い職人の家に生まれたってことは、当然良い装備品製作を目の当たりに……。って、そうかぁっ!」


 魔絹の装備は、ミスリル装備と同じ水準の品質、LV40解放レシピだ!

 LV50で解放されるレシピは、武器職人を参考にするならないはずだ。


 ……つまりLV40レシピは、生産職が作れる最高峰の品質の装備ってことになる!


「ぶっ……、あっはっはっは! ティムル以外のドワーフって、マジで馬鹿しかいないのな! 何が落ち零れだよ! 何が故郷が応えないだよ! そんなの何も関係ないじゃないかっ。馬鹿みてぇっ、ばっかみてぇだっ!」


 なにが天才だよ、くっだらねぇの!

 LV40レシピの装備製作を見るのが発現条件なんじゃん! 才能も何も全く関係ないじゃないか!


「ご、ご主人様? 急にどうしたんですか……?」

「いやぁごめんごめん。あんまりにもドワーフが言ってる事が的外れすぎてさぁ。くくく」


 みんなが驚いた顔をして俺を見ているけれど、どうにも笑いが止まらない。

 ティムルを無価値だと切り捨てた奴らなんかどうでもいいけど、そいつらの考えが完全に間違ってるなんて、流石に笑うしかないってば!


「ティムル。熱視の発現条件は、ミスリルや魔絹なんかの、武器職人、防具職人で作れる最高品質の装備製作を目の当たりにすることだと思うよ? 才能とか血統とか故郷への敬意とかバッカじゃねぇの!? あっははははははは!」


 そんなくだらない、的外れな考え方でティムルを絶望に落としたのか。

 そう思うとあまりの馬鹿馬鹿しさに、ついうっかりドワーフの里を滅ぼしてやろうかなんて考えてしまう。

 まぁ流石にしないけどさ。そんなことに意味ないし。


「ティムルは落ち零れでも面汚しでもなくて、俺の女で俺の恋人で俺の嫁で、だけど始めっからこの世界で最高のドワーフだったんじゃないか!」


 だけどこれはもう調子に乗っていいだろ!?

 全てのドワーフ族よりも、俺の見る目のほうが確かだったんだからさぁ!


「ばっかみてぇ! この世界で最高のドワーフの女を間違った知識で手放すなんて信じられねぇ! もう絶対返さないけどな! この最高のドワーフはもう俺のものだっ!」


 困惑したままのティムルを抱きしめる。

 ドワーフじゃなくても最高の女なのに、更にドワーフとしても何の瑕疵も無いなんて最高すぎだろっ!


「お前を落ち零れだとか面汚しだとか、そんな風に言ってた奴のことなんか忘れていいぜティムル! そいつらは自分の種族の事も理解せずに、分かった風なこと言ってただけなんだからなっ!」


 どうしてなんの問題も無かったティムルがこんなに傷つけられなきゃいけなかったんだ。

 どうしてあんなに弄ばれなきゃいけなかったんだ。


 ただドワーフ族の困窮を憂えた優しい少女が、なんでここまで虐げられなきゃいけなかったんだ……!!


「あははははっ! ティムルの評価、上書きなんて必要ないじゃん! お前は元々最高の女だったのに、評価の方が間違ってたんだよ! 俺なんかと出会わなくたって、お前は元々ドワーフとしても最高の女だったんだよぉっ!」

「元々の……、元々の評価のほうが、違って、た?」

「ダンっ! おぬし騒ぎすぎじゃっ! 魔物が集まってきてしまったではないかっ!」


 おっと、流石に馬鹿笑いしすぎたか。魔物を呼び込んでしまったらしい。


 でもまぁちょうどいい。今はちょうど暴れたい気分だ。

 ここがスポットの最深部とか関係ない。お前ら全員、皆殺しにしてやるよぉ。


 頭を優しく撫でてから、ティムルの体を離す。

 ティムルはまだ事態が飲み込めないようで、ぼーっとしてしまっているね。


「悪いみんな、ティムルのことお願いできるかな? 俺のせいで、ちょっと戦える状態じゃないと思うんだ。お客さんの相手は俺がするからさ」

「あ、ちょっと、ダンっ!?」


 リーチェの戸惑う声と、少し心配そうな目で俺を見送るニーナ。

 大丈夫だよニーナ。ちょっとだけ、暴れたい気分なだけだからさ。


 全力で魔物の群れに突っ込み、手当たり次第に魔物を斬り付ける。

 魔物の注意がこちらに集まったのを感じる。


「赤き妖炎。紅蓮の侵食。焦熱の火焔。滲み出たる煉獄の聖火。炎天より招きし猛火で、眼界総てに緋を灯せ。フレイムフィールド」


 魔物の群れの中心でフレイムフィールドを展開。

 襲ってきた魔物全てが俺に敵意を向けてくる。


 上等だよ。皆殺しにしてやるからかかってこい。


 背後に4人の存在を感じる。大切な大切な、俺の愛する女達。


 そんな大切な皆を害そうと、前方から押し寄せる魔物共の気配が不快だ。

 魔物共が向けてくる敵意が不快だ。

 1つ残らず、1匹残らず、この世から消し去ってやらないと気が済まない。


 殺しても殺しても、怒りが収まらない。だからその衝動に任せて殺し続ける。


 なんなんだよこの世界は。

 彼女たち、何も悪くないじゃないか。


 ニーナの呪いも、ティムルの半生も、フラッタの兄の凶行も、そしてリーチェの抱える何かも、なんで彼女たちにそんな物を背負わせるんだ、この世界はぁぁぁっ!!


 俺の何処にこんなに怒りが眠っていたのか、自分自身ですら分からない。

 でも怒りに呑まれるな。怒りに任せるな。俺はもう、激情のコントロールの仕方を学んだはずだ。

 この怒りを体に巡らせ、この想いを剣に乗せて、心を燃やしながらも頭だけは切り離し、みんなを苦しめてばかりのこの世界に報復しろ。


 まるで全身に目が付いたみたいだ。

 まるで俯瞰しているみたいに、自分の周囲が掌握できている。


 魔物は全て自分から俺の剣に吸い込まれているようで、魔物の攻撃は始めから別の場所を狙っているかのようで、最早作業感すら漂ってくる。


 殺してやる。

 彼女達を害するモノを1匹だって残してやるものか。


 近くにいる魔物は斬り捨て、遠くにいる魔物は斬り捨て、逃げていく魔物はフレイムランスで貫いてやる。


 てめぇ……。魔物のくせに、なに逃げてやがるんだよ。


 ちっ、と舌打ちをしながら次の獲物を探すと、周囲にはただ無数のドロップアイテムが散らばっていた。
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