異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて2 新たに2人

080 お約束 (改)

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 ヴァルハールの酒場で1人寂しく食事をしながらフラッタを待っていると、初対面の筋肉ダルマ6人に絡まれてしまった。
 いくら1人寂しくとは言っても、こんな展開望んでなかったんだが?

 まぁ異世界ファンタジーと冒険者ギルドが合わされば理不尽に絡まれる展開はテンプレですよね。だけど実際に自分が体験すると意外と頭が追いつかないもんだなぁ。

 それにしても、人間族だってバレたのはなんでだ? ステータスプレートにすら表記ないのに。


 ……まさかとは思うけど、この6人の中に鑑定持ちでも居るのかねぇ?


「ビビって声も出ねぇってか!? とっとと答えろやぁっ!」


 黙っている俺に業を煮やしたのか、筋肉ダルマの1人がぼっちテーブルを殴りつける。

 ドンッと大きな音がして、テーブルの上の食器がガチャガチャと騒ぎたてる。びっくりするなぁもう。


 割れた食器もないし、料理も別に零れてないな。良かった。


「えっと、俺は冒険者だから。ただフラッタを送ってきただけだよ。仕事さ。それだけだよ」

「フラッタ様を人間族が呼び捨てにしてんじゃねぇぞおらぁっ!?」


 仕事の関係で押し通そうと思ったら、なんかキレられてしまったな。

 そう言えばフラッタってこの街の領主の娘なんだっけ。加えてあの美貌。そりゃあファンも多くなるわけかぁ。


 ふむ。めちゃくちゃめんどくさいな。でもフラッタを娶るとこういうこと増えそうだ。

 更に言えば、リーチェを嫁に貰ったらもっとヤバいことが頻発するってことだ。今のうちに慣れておくべきかなぁ?


「失礼。フラッタ様からそう呼ぶよう申し付かっていたもんでね。決してあの人を軽んじているわけじゃないんだ」


 ……ホントかなぁ? 自分で言ってて疑問だ。

 俺ってほんとにフラッタを軽んじてないの? 自信無いわぁ。


「仕事が終わったんならとっとと消えろっ! 人間族に彷徨かれてっと目障りなんだよぉっ!」


 なんなんだこの人は。いちいち叫ばないと会話できないの?

 最近囁きボイスで責められまくったせいか、聴力には自信あるよ俺? ボリューム下げて下げて。


「気分を害して申し訳無いけど、往復の依頼なんだよ。冒険者ギルドでフラッタ様と待ち合わせてるんだ。悪いけど少しだけ許して欲しい」

「ダメだね! テメェの都合なんざ知ったことかよ! テメェはとっとと消えなっ! そして2度とフラッタ様に近付くんじゃねぇ!」


 はぁ? フラッタの為かと思ったら、フラッタの都合も無視かよ?


「俺が消えたら困るのはフラッタ様のほうなんだけど? 俺の都合じゃなくてフラッタ様の都合も知ったことじゃないってか?」


 俺が気に食わないだけなら引き下がってやっても良かったけど、フラッタの都合まで無視する馬鹿の言うことを聞く必要はないな。

 目の前の相手への対応をシフト。穏便な対応から撃退モードに移行する。


「俺が目障りならフラッタ様と直接交渉しろよ。本人に口を聞く勇気もない奥手の恥ずかしがり屋さんが威張っても滑稽なだけだぞ?」


 フラッタって美人だけど13歳だよ? 君ら全員ロリコンなの?

 その13歳のフラッタのおっぱいを好き放題何度も堪能した上に、求婚までした俺が言うなって?


 うん、返す言葉もないな。ごめん、君たちは何も悪くなかった。


「てめぇ……、言ってくれるじゃねぇか。上等だ、その喧嘩買ってやるよぉ! 表に出なぁ!」

「え? 嫌だけど? 大体喧嘩売ってるのそっちじゃん。なに勝手にすり替えてんの? ひょっとして数分前の記憶をお持ちじゃない?」


 食事中の俺に一方的に難癖つけてきたくせに寝惚けてんの?

 今のところ俺は100%被害者で、お前らが100%加害者なんだよ。すり替えんなカス。


「大体表に出ろって……。俺のこと腕っ節で負かそうとしてるんだろうけど、自分達で弱っちいって評価してる相手に喧嘩吹っ掛けるとかさぁ、くそダサくない? そこんとこどうなのよ竜人族様」

「てめええええ! 絶対許さねぇぞおらあああ!」


 テーブルの上の食器をなぎ払われる。

 勿体無い。物に八つ当たりはいけない。食べ物を粗末にするなんて、なんて酷い奴らなんだ。


 ……穏便に済ませるルートも考える事は考えた。

 けどフラッタとリーチェを娶る以上、こういうことは今後も起こりうる話だろう。というかティムルとエンダさんのケースもちょっと危うかった。

 ニーナは隔離された生活が彼女の魅力の露見を防いでいてくれたけど、今後はニーナに引き寄せられる男がいても不思議じゃない。ソースは俺。説得力は抜群だ。


 だからまぁ……。俺の愛するみんなを守る為にも、今後こういう輩を容赦なく撃退していくことに慣れるべきだと思ったんだ。


 椅子から立ち上がり、6人を無視してカウンターへ移動。食器の弁償代として銀貨20枚をカウンターに置く。

 俺が払う義理もないけど、払ったほうがかっこいいでしょ? ちなみに料理の代金は基本前払いなので払い済みだ。


 カウンターから振り返り、こちらを睨みつける6人を見る。


「相手してやるのはいいけどさぁ。お前らを殺して犯罪者になるのはごめんなんだけど? それとも無抵抗の俺を私刑に出来ればご満足いただけるんですかぁ?」

「コケにするのも大概にしろや人間族がよぉ……」


 人間族ってだけで相手を舐めてる奴が虚仮にされても仕方ないと思うけどなぁ?


「テメェが俺達に勝つことなんてありえねぇが、ちゃんと決闘扱いにしてやるさ。勝っても負けても恨みっこなし。この場限りの勝負だ。幸いここは冒険者ギルドで、証人には事欠かねぇだろぉ?」


 俺たちって。散々雑魚扱いしてる俺相手に全員で来る気満々で笑うんだけど。


 話を長引かせながら周囲の人間を片っ端から鑑定しているけど、分析官は見つからないな。目の前の6人には職業設定までして確認したけど、分析官は見つからない。

 言うまでもなく法王も見つからない。じゃあなんで俺が人間族ってバレたんだ?


 鑑定しながら周囲を確認する。

 男の言う通り冒険者ギルド内の揉め事だって言うのに、だーれも介入してくれる気はなさそうだねぇ。


 まぁ今更介入されても面倒だ。揉め事は当人同士で解決するに限るよな。


「決闘ってなに? 説明してくれるかな? 血気盛んな竜人族様と違って、弱っちい人間族はそんなもんやったことがないよ」

「ギャハハハッ! 決闘も知らずに俺らに喧嘩売ってんのかよっ!」


 売ってない。こっちは買った側なんだよなぁ。

 というか、多分普通に生きてる人の大半は知らないと思うんだよ? 対人戦の決闘なんて。


「決闘ってのは簡単に言えば契約だ。勝負の結果に納得がいかなくても後から手出しできないように、ステータスプレートに誓う勝負のことだぁ。決闘の際に誓いを立てれば、相手を殺そうが何かを奪おうが、犯罪者にはならなくて済むぜぇ?」


 ふむ。殺しても罪にならないなら、こっちのデメリットはほぼ無いかな?

 しかしステータスプレートに誓うって事は、契約と言うよりも宣誓や誓約に近い気がするな。


「決闘はパーティ単位、個人単位でどちらでも可能だ。まぁテメェにパーティ決闘をする勇気は無いだろうがなぁ」


 ぎゃはははと大笑いする6人だけど、それって大人数でお前をボコるけど、それを受けないのは臆病者って言ってるんだよね? むしろ恥ずかしくないのかコイツらは。

 しかしパーティ決闘の場合だと、フラッタを巻き込んで……、あれ? フラッタもうすぐここに着きそうだな。パーティ決闘だとフラッタ無双が見れそうだ。物理的にも精神的にも。


 だけどこいつらの相手をフラッタにさせるのは、違うよねぇ。

 ということでパーティ解散っと。


「パーティ決闘で良いよ。でもそっちこそいいの? 弱っちい人間族相手に6人がかりで負けた、クソザコパーティってレッテルが貼られちゃうと思うけど。もうヴァルハールで生きてくの無理じゃない?」


 それ以前に決闘で生き残れるかが運だけどさ。

 いくら相手が弱くても、確実に手加減できるほど俺は強くないからね。


「ここ冒険者ギルドだし証人には事欠かないよね。瞬く間に広がっちゃいそうだね。1対6で人間族に負けた、竜人族の面汚しのパーティがあるって」

「……そこまでコケにされちゃあ、こっちだってもう引き下がれねぇぞ?」


 元々引き下がる気なかったくせに、寝言吐いてんじゃねぇよ。


「時間は今すぐ。場所は冒険者ギルドの前。勝敗は相手を殺せば勝ち。この条件で決闘だ。あ~……、テメェが勝つことなんかありえねぇけどよ、なにか賭けとくか?」


 ……お前らの自信っていったいどっから来るの?

 俺って人間族だけど、少なくとも旅人の育成終わってるんだよ? 冒険者だって名乗ってるんだから。


「要らない要らない。あんたら金持ってなさそうだし。でも条件を1つ訂正させてもらおうかな」


 話しながら少しずつ覚悟を決めていくけれど、それでも出来れば死人は少ないほうがいい。

 たとえこんな風に考え無しに絡んでくる馬鹿が相手だとしても。


「あんたらの勝利条件は俺を殺すことのままで良いけど、俺の勝利条件はあんたらを殺すか、あんたらが負けを認めること、に追加してくれ。命が惜しかったらいつでも降参してくれていいからね」


 出来るだけ無駄に人を殺そうとは思わない。殺したくない。

 ……殺さなければいけないなら、誰であろうが迷わず殺すけど。


「ハッハァ! 随分自信があるようで何よりだなぁ!? その条件ならこっちはなにも変わらねぇし構わねぇぜぇ?」


 いやそれって俺のセリフなわけよ。

 これでも俺って少人数パーティでスポットに潜ってて、既に複数の職業を累積させてるんだが?


「ああ、お前も降参有りにしやすいようにあえて追加したってかぁ? いいぜいいぜぇ? 降参有りなら有りにしてやっても良いぜぇ? あんまりすぐに降参されたらつまんねぇけどさぁ!?」

「いやいやいや。他人様に無駄に絡んでくるような雑魚相手に負ける訳ないじゃん。降参なんて要らないよ。そんじゃそっちの気が変わって逃げ出さないうちに済ませちゃおっか決闘契約。やり方は教えてね」


 早くしないとフラッタが到着しちゃうから。急いで急いでっ。


「おうおうおう! お優しいこったなぁ。どうやら遠慮は要らねぇらしいぜっ!」


 何がそんなにおかしいのか、げらげらと大笑いする筋肉ダルマたち。

 遠慮が要らないのはお互い様かな。でも俺が優しいかどうかは決闘が終わるまで保留しておいたほうがいいよ?


「決闘はお互いのステータスプレートを出して決闘を誓えばいいんだよ。接触させる必要はねぇ。お互いの頭の中で誓った内容が一致すりゃあステータスプレートが光るからすぐ分かる」


 接触させずに成立する契約なんてのもあるのねぇ。ステータスプレートってマジ便利。


「決闘を申し込む! 時間は今! 場所は冒険者ギルドの前! 我が勝利は相手の死! 勝者には名誉を!」


 6人のうちの1人が、ステータスプレートを胸に抱えて宣誓みたいな事をしてるな。お互いの条件確認みたいなものか。

 えーっと、こっちの勝利は相手の降参。それ以外は全部オッケーっと。


 その瞬間、手元のステータスプレートが赤く光る。

 なるほどねぇ。これが決闘契約完了のお知らせか。



 ダン 男 25歳 冒険者
 ニーナ(所有) ティムル(所有)
 決闘(無報酬)



 ステータスプレートを確認する。

 決闘契約は無事成立したみたいだけど、相変わらずの情報量の少なさだ。今は誰ともパーティ組んでないからなぁ。


「ハッハァ! 人間族にしちゃあ潔く決闘を受け入れたじゃねぇか! そこだけは褒めてやらぁ! じゃあ早速始めるぜぇ! 表に出やがれ人間族がっ!」


 お互い名乗ってないから、人間族って呼ばれるたびに大変そうだなぁと思ってしまう。


 本当は穏便に済ますべきなんだろうけれど、どうやらフラッタやリーチェの抱える問題を解決するには、対人戦の経験を積まないとダメっぽいんだよねぇ。

 ということで悪いけど、お前らには対人戦の経験値になって貰うよ。絡んだ来たのはそっちなんだから文句は言わせない。


 鑑定した結果、6人とも戦闘職だけれど1つとしてLVMAXの職はなく、上級職も出ていないような奴らだ。油断する気はないが、恐らくは実力は低いはず。


 6人に追従する形で移動しながら覚悟を決める。

 こんな奴らに殺されてやるつもりはないし、相手の事を殺すつもりもない。でも俺の方が6人相手に加減出来るかは分からない。


 ……だからこいつらを殺す覚悟を、決める。


 冒険者ギルド前で、お互いに距離を取って対峙する。

 既に決闘は発動している。いつ攻撃されてもおかしくない。全員を視界に捉える。


「ダン! おぬしいったいなにをしておるのじゃ! これはいったい何の騒ぎなのじゃ! 誰か説明せいっ!」


 っていうのに、このタイミングで我等がフラッタの登場だ。


「おーいフラッター」


 6人から視線を外さずに、フラッタに返事をする。


「この6人、お前の事が大好きらしいんだけど、直接声をかける勇気がないみたいでさぁ。お前と一緒にいた俺の事が気に食わないらしくって、決闘を仕掛けてきたんだ」

「「「んななななっ!!??」」」


 俺の説明があまりにも的を射ていたためか、動揺を隠し切れない筋肉ダルマたち。精神攻撃は基本、だよね?


「モテない男って女に直接声かける勇気がないから、好きな人の近くにいる男を排除しようって考え方になっちゃうんだよ。そんなモテない彼らを俺まで相手してあげなかったら流石に可哀想でしょ? だから決闘を受けてあげることにしたんだよ」


 ま、俺だってモテない男だったわけだけどね。それをコイツらに伝える必要はない。

 哀れ、決闘で大注目を浴びる中、フラッタへの秘めた恋心を街中と本人に暴露された6人は、真っ赤な顔をして武器を握り締め、ワナワナと震えだしている。


「「「ぶぶぶぶぶっ殺してやらぁ!!」」」


 血管が切れてしまうんじゃないかと心配になるほどキレ散らかす筋肉ダルマたち。


 モテない君達の気持ちは痛いほど分かるよ。俺だって年齢=彼女いない歴だったし。

 ニーナと出会い、ティムルと出会い、フラッタやリーチェと出会い、今を共に過ごしている方が間違ってると思うよ。俺自身もね。
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