異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて2 新たに2人

079 浸透 (改)

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 気付くと辺りが明るい。そう、朝だ。いつの間にか眠っていたみたいだ。

 ……最近気絶するように意識を失うこと多くない? これって大丈夫なの? 俺早死にしない?


 ニーナとティムルが俺に覆い被さるようにして寝息を立てている。そんな2人の体を、俺は寝ながら抱きしめていたようだ。
 俺の両腕さん、グッジョブです。

 2人の寝顔は毎日見てても全然飽きないなぁ。
 2人を抱き締めている両手を伸ばして、2人の頭を撫でながら髪の感触を楽しむ。

 いつもありがとう2人とも。いつまでも女々しい男でごめんね。


 ……しかし、なんか妙に下半身が軽くなってるような気がするんだよなぁ。
 うーん。昨夜の記憶、曖昧で霧がかかったように思い出せないんだけどぉ。まるで夢の中にいたような……?


 2人からの愛の波状攻撃を受け続けて、俺の意識はもう完全にショートしてしまった。

 アレはもう波状攻撃どころじゃない、愛の飽和攻撃だ。俺の魂にダイレクトアタックだ。防御貫通。俺に特効効果。
 こうかはばつぐんだ! そして俺の特定部位の硬化も抜群だった!


 よく『男は下半身でものを考える』という言葉を目にしたことがあるし、俺自身そうだと思っていた。

 浮気しない人も普通にいるし、生涯たった1人だけに愛を捧げる人のことを嘘だと思っていたわけじゃないけど、少なくとも俺自身は恋人や奥さんがいても、美人に言い寄られたらきっと拒めないだろうと思う程度には下半身思考型の人間だと思っていた。


 でも飽和攻撃の最中、下半身は完全に放置状態、ノータッチだった。

 だと言うのに下半身では絶対に得られない興奮と幸福を限界以上に際限なくとめどなく叩き込まれて、いつの間にか意識を失ってしまったのだ。なんなのさあれ?

 下半身から得られる快楽も否定しないけど、というか大好きだけど、昨夜のアレはそんなの比べ物にならないほどに幸せで気持ちよくて、そして興奮した。

 下半身にノータッチだったはずなのになんで下半身が軽く感じるのかは、2人が起きてから追求する必要がありそうだけどねぇ?


 肉体的な感度という話において、個人差はあるとは言え、一般的には男性よりも女性のほうが敏感であるという認識だと思う。
 男性は特定部位からしか快楽を得られないけど、女性は全身から快楽を得られやすいとかなんとか。

 少々ロマンチックな言い方ではあるけど、『心が繋がる』なんて表現を聞いたこともある。


 つまり女性は男性と比べて、気持ち良くなることに対してずっと詳しいのではないだろうか?

 男は老いも若きも腰を振ることしか考えてないからなぁ。
 そんな男性が快楽という分野で、女性に敵うはずがないのでは?


 腰振ってりゃ満足という自分の悦び方が、酷く幼稚なものにすら思えてくる。

 体の根底、心に直接送り込まれる、幸せな快楽という名の暴力的な刺激。気を失うほどに幸せな、圧倒的な幸福の絶頂。

 体験したことないけど、あれってドライオーガズムとかいう状態だったんだろうか? 地獄のような極上の体験だった。


 ……キスと囁きだけで上り詰めさせられてしまったよくっそぅ。絶対またやってもらわなきゃっ……!


「おはようダン。ちゅー」

「おはようダン。ちゅっ」


 目覚めた2人と朝のキス。

 うーん。2人と口付けを交わしても、やっぱり下半身の動きがない。まるで中身が空っぽになってるかのような?


「ねぇ2人とも。昨日の途中から記憶が無いんだけど、あの後何かしなかった?」

「えへへー」

「あはー」


 物凄くゴキゲンな様子でニコニコしてるけれど、質問に答える気はない模様。


 2人がゴキゲンならいいか。減るものでもないし。

 ……いや減るか? 減っちゃうか?


 ニコニコ笑顔の2人があまりにも可愛かったので、もう1回ずつキスをしてから寝室を出た。


 1階で既に待っていたフラッタとリーチェの2人とも言葉で挨拶を交わし、みんな揃って朝食を済ませる。

 流石に今日の朝食の準備はニーナとティムルも手伝ってくれた。


「それじゃ昨日言った通り、ネプトゥコ領主のカザラフト家の関与だけを報告して、その後ろに広がる闇にまでは気付かない事にするよ」


 朝食後、まずはリーチェを送り出す。


「今回色々あって人の悪意は懲り懲りだし、少し休暇を取るのもいいかな。せっかく落ち着ける場所もできたことだしさ。それじゃ行ってくるよ」


 出発の挨拶を口にしながら、リーチェは笑顔でポータルに消えていった。


 休暇ねぇ。聞くまでもなく、この家でのんびりしたいってことだよなぁ。それ自体は歓迎するんだけど……。

 周りから見たら完全にハーレムだよなぁこの家。


 どうしてこうなった? 俺が片っ端から女に手を出してるから?

 それしかないよね。反省してまーす?


 おかしいなぁ。ニーナさえいれば他になにも要らないと、本気で思ったはずなんだけどなぁ。


 まぁいいや。全員責任を持って幸せになってもらえばいいんだ、うん。


 リーチェを送り出したら次はフラッタだ。

 フラッタを1人で帰すのがちょっと……だったことと、フラッタの家と我が家の往復だけでギルドのポータル代を支払うのは勿体無いという事で、俺とフラッタでパーティを組んでフラッタの家に行き、帰りは俺のポータルで戻ってくることにした。


 それにパーティ登録してれば、もしフラッタに異変があっても対応しやすい。ニーナが野盗に連れ去られた時みたいにね。

 行きは冒険者ギルドでポータルを利用するから、ニーナたちとは一旦解散しなきゃいけないのが地味に悲しいけど。


「それじゃ行ってくるよ。2人は明日からの遠征の準備をお願いね」


 冒険者ギルドまで見送りに来てくれたニーナとティムルに、俺の留守中に遠征の準備を済ませておくよう指示を出しておく。


「フラッタが参加する可能性も考えて食料は多めにね。遠慮せず、俺も荷物運びの頭数として考えるように」


 遠征への参加について、まだフラッタの意志は確認してない。

 俺の能力の事もあるし、その辺も踏まえて今夜の夕食のときにでも話す予定だ。


「ご主人様もお気をつけて。もしフラッタに何かあっても冷静に行動してくださいね」

「むしろフラッタちゃんに対して冷静でいてくださいね、ご主人様」


 確かにフラッタにキレることはありそう。


「ふははは。皆も心配しすぎなのじゃっ。荷物を持って出てくるだけなのじゃから時間もかからぬぞっ」


 ニーナとティムルの不安を笑い飛ばすのはフラッタ本人だけである。

 なぁんでお前自身はそんなにどっしり構えてるんだよぉ。これだからフラッタはっ。


「それよりも、本当に金銭の類は必要無いのかの? 尤も、妾に自由に出来る金などほぼ無いに等しいのじゃが」

「はい。着替えと生活必需品くらいで、後は好きな物を持ってきなさいフラッタ。もし荷物が多い場合はご主人様に手伝ってもらっても構いませんよ。ご主人様は行商人ですからね」


 確かに遠慮せずに荷物運びに使えとは言ったばかりだけど、奴隷が主人に手伝わせろって勧めないでよぉっ! 勿論手伝うけどさぁ。

 ゲンナリしている俺を見て、フラッタが俺が同行することについて少し不思議そうな顔をしている。


「しかしポータルの使える行商人とは珍しいのぅ。冒険者を浸透させてから行商人を始めるなど、ダンはまっこと珍しい男なのじゃ」


 浸透……ってなんだ? ひょっとして累積ボーナスのことを言ってる?

 累積ボーナスの事を表す言葉がちゃんと存在しているとしたら、商人として王国中で活動してきたティムルでさえ『受け継げる事がある』という程度の認識だった理由はなんだ?


 ……あ~、フラッタは貴族。ティムルは奴隷出身の商人。2人には出自に差があるのか。

 つまり、この世界の貴族や権力者は累積ボーナスの事を知っている。だけどその知識を一般人には知らしめていないということになる。

 その理由は勿論、累積ボーナスの恩恵を権力者で独占する為、か……。


「……ご主人様? 何をお考えですか?」


 少し不安げな表情で俺の顔を覗き込んでくるニーナ。

 ふふ、ニーナは相変わらず俺のことよく見てるなぁ。そんな彼女のおかげで、少し肩の力が抜けた気がする。


「ありがとニーナ。これも帰ってきてから話すよ。今はまず、無事にフラッタをうちに迎えよう」

「はい。お待ちしてますね」


 俺の肩の力が抜けたことも感じ取ってくれたのか、小さく息を吐いて笑顔を見せてくれるニーナ。


「フラッタ。貴方のこともちゃんと待ってますからね。ちゃんと帰ってきてくださいよ」

「くくく、帰ってこい、か。ダンもニーナも気が早すぎるのぅ?」


 ニーナの言葉に顔をにやけさせながら、少しおどけるような仕草を見せるフラッタ。


「安心せい。妾もこの家で暮らすのが今から楽しみで仕方ない。だからちゃんと、『帰ってくる』、のじゃっ」


 気が早いと言いながら、あえて帰ってくると協調するフラッタ。

 やっぱりもう家族枠だよなぁこいつ。


 ニーナとフラッタのやり取りにほっこりさせられていると、ティムルが静かに近づいてきて俺に耳打ちしてくる。


「ご主人様。フラッタちゃんの実家、ルーナ竜爵家が治めるヴァルハールは、少し竜人族優遇の空気がある場所です。ポータルを使えるご主人様を侮るものは居ないかと思いますが……、少しご注意を」


 種族差別か。人間族さん雑魚だし、竜人族さんは最強種っぽいからなぁ。


「了解。ふらふらしないで冒険者ギルドで大人しくフラッタを待つよ。忠告ありがとう」


 どういたしましてと微笑んでくれるティムルの頭を撫でてから、上機嫌のフラッタに声をかける。


「それじゃ行こうフラッタ。2人とも、いってくるね」

「行ってくるのじゃっ。帰ってきたら2人とも家族なのじゃっ」

「フラッタぁ……、その発言は……。いや、今更ですよね。いってらっしゃい2人とも」

「いってらっしゃいませ。フラッタちゃん、待ってますからねー」


 そこは3人とも家族と言って欲しかったなぁ。

 いや、もうフラッタは俺とは家族という認識なのか?


 ならば良い。それならば何も問題はない。いい傾向だ。実にいい傾向だぞフラッタよっ。


 フラッタと互いのステータスプレートを合わせてパーティ登録する。そして冒険者ギルドでポータルの利用申請して、利用料金銀貨10枚を支払う。

 ポータルの料金はパーティ単位で支払うらしく、5人までなら一律1000ポータルの模様。ちょっとだけお得?


「行き先はヴァルハール。相違ないな? 虚ろな経路。点と線。見えざる流れ。空と実。求めし彼方へ繋いで到れ。ポータル」


 ギルド員が詠唱し、目の前にポータルが開く。この先はヴァルハール。初めて訪れる場所だ。


 ニーナの呪いも解いていないくせに、俺ばかりポータルで色々な場所に行くのは少し申し訳ない気分になるね……。

 ってダメだダメだ。こんなこと考えてるとまた飽和攻撃を喰らってしまう。今の考えはここに捨てていけっ。絶対に家まで持ち帰るんじゃないぞ俺っ。

 飽和攻撃は最高なんだけど最凶なんだよっ。受けたいけど怖いんだよぉっ。


「何をバタバタと暴れておるのじゃダンよ。ヴァルハールの冒険者ギルドまでは妾が案内するのじゃ。遅れるでない」

「ごめんごめん。ちょっと身の危険を感じただけだよ。気にしないで」


 俺の返答に首を傾げながら歩き始めたフラッタに続いて、俺もポータルを潜る。

 ゾクリとした感覚は、果たしてポータルを通った酩酊感のせいだったのか。深く考えないでおこう。


 ポータルを抜けた先にあったのは巨大な城壁。

 今まで訪れた街とは違い、大きな城壁と石作りの建物が並ぶ、なんとも無骨な印象を受ける街だった。


「ようこそヴァルハールへ。歓迎するぞっ、ダンよ!」


 街に入る前に1度振り返って、ヴァルハールを訪れた俺を満面の笑みで歓迎してくれるフラッタ。

 ……こういう不意打ちをしてくるからフラッタには参っちゃうんだよなぁ。


「……とは言っても、今回はすぐにマグエルに戻ることになるのじゃがな。いつか機会があれば皆を案内してやりたいものじゃ」

「その時はお前も含めて家族全員でまた来ようか。嫁に故郷を案内してもらうのも楽しそうだ」

「ふん。申しておれば良いのじゃ。ではギルドに行くぞダンよ。妾を迎えたいと申すなら、まずは無事に家に帰らぬと始まらぬぞ?」


 流石に嫁関連の発言には慣れてしまったか。残念。慌てるフラッタも可愛いんだけどな。
 

 無骨で、戦士達の街といった印象のヴァルハール。

 なんとなく、フラッタがフラッタになったのはこの街で育ったからなんだろうなと、変に納得してしまった。


 フラッタの先導で冒険者ギルドに向かう途中、田舎者全開でキョロキョロとヴァルハールを観察する。

 道行く人の体格がなんとなく全体的に恵まれてる感じかな。竜人族ってやっぱり種族的にスペック高そう。


 ただ、街を歩いていてもフラッタ水準の美貌を持つ女性はいなかった。流石にフラッタの美貌は種族的な特徴ではなかったらしい。

 そう考えるとエルフが美形なんじゃなくて、リーチェが美形なんだろうという事も推察できる。


 というか獣人にもニーナクラスの人ってそんなに居ない。ティムルを嵌めたネフネリさんは流石に美人だったかな?

 ティムルだってドワーフって言葉のイメージとはかけ離れた美人だし、容姿と種族には関連性があまりない世界なんだと思われる。って今更かい。


 フラッタの案内で到着した冒険者ギルドも、マグエルと比べて大きくて無骨な印象だなぁ。


「さて、手早く済ませるつもりではおるが、屋敷から距離もあるのでな。少々待たせてしまうことになるのじゃ」

「構わないよ。無事帰ってきてもらえばそれで充分。気をつけていってらっしゃい。待ってるよ、俺のフラッタ」

「まだおぬしのものではないのじゃっ。行ってくるっ」


 ぷいっと顔を背けて怒りながらも、優雅な所作でフラッタは去っていった。寂しい。

 ……けど、って言ってたな。素晴らしい。素晴らしい傾向だぞフラッタっ。


 1人になった俺は目の前の冒険者ギルドに入り、併設してあった酒場で軽く料理と飲み物を頼む。


 料理はやっぱりシンプルで濃い味付けの物ばかりだった。決して不味いわけじゃない。けど物足りなく感じてしまう。
 我ながら随分と贅沢になっちゃったもんだ。


 自分だったらこれにはアレを足して、なんて妄想しながら食事していると、俺のぼっちテーブルに近付いてくる足音に気付いた。

 ティムルの時を思い出して、美人だったらいいなぁと思いつつ相手を確認する。


「おいおいおいぃ!? テメェ弱っちい人間族の分際で、フラッタ様とどういう関係だぁっ!?」


 美人どころかごりごりの筋肉ダルマが6人。女性ですらない。しかも絡まれた理由が俺ですらない。

 おのれフラッタっ! 本人不在でも俺を振り回すのかお前はぁっ!
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