異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて1 3人の日々

073 見送り (改)

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 ニーナとティムルによるめくるめく愛の波状攻撃でメロメロにされてしまったけれど、受け取った分は返さないといけない。
 因果応報、自業自得、ご恩と奉公? なんか全部違くね?

 弛緩しきった体に鞭打って、愛してくれた2人に全力で愛情を返した。


 ニーナとティムルに愛情を注がれて、もう俺の体の中は愛ではち切れそうだ。どれだけ2人に愛情を注いでも、注いだ以上の愛情で返される。

 昨日よりもっと2人のことが大好きになって、今までで1番の愛情を全力で伝えても、2人はあっさりとそれ以上の愛情で応えてくれる。


 女の人って凄いなぁ。もう存在全体が愛の塊みたいだ。きっと一生、彼女達には敵わない。


 気がつくと辺りが明るい。今までだって夜通し愛し合ったことはあったけれど、ここまで没頭したことはなかった気がする。

 昨晩は本当にずっと3人で愛を伝え合った。きっと2日間押さえ込まれた反動で、とにかく相手に好きだと伝えたかったんだよなぁ、多分みんなが。


 おかげさまで睡眠時間は足りてないけど、睡眠不足は全く感じない。体の中に気力が漲りはち切れそうなくらいだ。


 いつもより早く目覚めたニーナとキスをする。

 家では毎日交わしていたのに、今回は全然キスをする機会がなかった。だからこの3日間を取り返すように、俺からも積極的に舌を絡めた。

 いつもより大分長いおはようのキス。どれだけ続けてももっとしたくなってしまう。だけど時間は待ってはくれない。このまま永遠にキスし続けるわけにはいかないのだ。くそう。


 ニーナに続いてティムルともキスをする。

 いつもは恐る恐るのティムルも、今日に限っては凄く積極的だった。なんだかんだ言ってティムルも寂しかったのかな?

 俺も寂しかった。だからその分を少しでも取り返そう。今回はティムルにいっぱいお世話になった。ありがとう、大好きだよ。


 2人との目覚めのキスを済ませた俺は、ベッドから下りて身支度を始める。
 今日は遠征に出発する予定だ。あまりのんびりはしていられない。

 毎回キスでメロメロになるティムルは身支度に少しだけ時間がかかる。
 先に身支度を終えた俺は、ティムルとキスをしている間に身支度を整えたニーナを後ろから抱きしめながら、ティムルの支度が整うのを待った。


「ねぇダン……」

「ん? んんっ」


 抱きしめているニーナに呼ばれたので下を向くと、待ってましたと口を塞がれる。

 珍しいなぁ。普段は大人しく待ってるのに。ニーナとのキスは大歓迎だけどね?


 というか、ニーナは些細な事でもティムルより優遇されるような行為を嫌う。

 だから目覚めのキスの後はいつも大人しく待っているのに、今日は少しでも俺とキスしたいようだ。俺もずっとキスしていたい。大好きなニーナと1秒だって離れたくない。


 身支度を終えたティムルともキスを……、キリがないので少し短めのキスを交わして寝室を出る。

 いつも寝室を出るのは大変な気がするけど、今日は特に大変だった気がするなぁ。


 やっぱり今回は、2人を構い足りなかったよねぇ。遠征から帰ってきたら、丸々2日くらいは家に篭ろうかな?


「おはようみんな。……どうやら楽しめたようでなによりさ」

「混ざりたくなったらいつでも来い。歓迎するよ」


 リーチェと朝の挨拶代わりの軽口を叩き合う。


 食堂にはフラッタとリーチェが待機していた。
 先に起きてるなら食事の用意とかして欲しいんだけど、コイツらにそれを期待するのは無理だもんなぁ。

 ニーナとティムルと3人で手早く朝食を用意する。


 朝食の配膳が済んだら遠征の予定について、改めてリーチェとフラッタにも共有しておく。


「今後は12日間遠征、3日休息日の、毎月2回遠征のペースで行こうと思うんだ」


 少なくとも年内はね。今の俺達の実力ではこのくらいが限界だろう。

 来年の予定はまだちょっと分からないな。状況が変わる可能性もあるし。


「リーチェも俺達の予定に合わせてちゃんと顔出せよ? フラッタも遊びに来るなら日程確認するようにな。嫁に来るなら2人ともいつでも歓迎だ」

「うん。日程は了解したよ。嫁にはいけないけど今まで通り過ごさせてもらうと嬉しい。この家が好きなのは本当だからね」


 嫁には行けないけどこの家は好きだと語るリーチェ。

 もう昨日のように取り乱している様子はない。なんだかスッキリ感じるくらいにいつものリーチェに戻っている。


「あれだけ邪険に扱いおったくせに、ずいぶんとグイグイくるのじゃなぁ? 同衾を嫌がっていたのが嘘のようじゃぞ?」

「ああ。嫁に来たら好きなだけ同衾してやるから遠慮すんなよ。あ、でも多分嫁に来ても邪険には扱うよ?」

「なんでなのじゃ! そこは嘘でも大切にするのじゃっ!」


 落ち着いたリーチェとは対照的に、コロコロと感情を変えるフラッタ。
 いつもの毅然とした態度よりも幼さの残るこの振る舞いのほうが本当のフラッタのなのかもしれない。

 心配するなフラッタ。邪険には扱うけど大切にも扱うって。でもどれだけ大切に想っても多分邪険に扱っちゃうと思うんだ、ごめんな。


「私の時もそうでしたけど、踏み込むと決めたら遠慮しませんからねぇ。次に寝るときはもう少し余裕があるように、寝具を新しくしておきますね」

「そうですよねぇ。それまでは散々渋って踏み込まないくせに、いざとなったらもう目の前に居るんですもの。早速寝具を注文しに行きましょう」


 俺と客人2人の会話を聞いて、ニーナとティムルはベッドの買い替えを検討しているようだ。2人とも気が早いなぁ。
 確かに俺も早く2人をもらってやりたいけど、2人をもらうには俺の実力が足りてないのに。

 フラッタはシルヴァの件を片付けなきゃいけないだろうし、リーチェに至っては問題の片鱗すら分からない。

 鑑定すれば見えるかもしれないけど、見えてもどうせ解決できない。


 今の俺にはまだ、リーチェの事情を見る資格すら無いんだ。


「とりあえずシルヴァの足取りを追いながらも、マルドック商会とネプトゥコの領主とその周囲を洗い直してみるよ。依頼人のことは疑いたくないけど……、状況次第かな」

「無理はするなよ? マジで領主関与の証拠を掴んで依頼達成、でお茶を濁すのも全然ありだと思う。巨悪を暴くなんてこと、出来ればして欲しくないなぁ」

「心配しないで。僕だってこの家に帰ってこれなくなるような事態は避けたいからね。深追いはしない。約束するよ。それじゃ、いってきます」

「ああ、いってらっしゃい。気をつけてな」


 いってきます。いってらっしゃい。

 この挨拶がリーチェがこの場所を家だと思っていて、俺達の事を家族だと思ってくれている証拠、っていうのは虫が良すぎかねぇ?

 俺なんかがリーチェの心配をするのはおこがましいのかもしれないけど、家族の心配をするのは当然だ。だからまだ力にはなれないけど、心配くらいはさせてくれよな。


 リーチェを見送った後は、遠征の荷物を持って冒険者ギルドへ移動する。遠征前に冒険者ギルドに寄ったのは、ポータルで帰宅するフラッタを見送る為だ。

 フラッタを送った後は、そのままマグエルを出て遠征に出発だ。


「まったく、此度の訪問は、まっこと刺激的だったのじゃ。のう? ダンよ」

「うちに嫁げばあんなの日常だ。今から覚悟しとけ。俺以外の男にフラッタを渡すつもりはないからな」

「まだ言うかおぬしはっ! それだと逆に訪問し辛くなろうがっ! ったく。節度を持つのじゃ節度をっ! ではなっ!」


 ツンツンした態度で、フラッタがポータルの先に消えていった。


 流石にフラッタ(大破)からフラッタ(小破)くらいになってたから、家に帰るくらいは心配ないだろう。

 ……ないよな?


 フラッタを見送った俺たちは、その足でマグエルの出口に向かって歩き出す。


「いやぁ嵐のような3日間でしたねぇ。フラッタはもう陥落済みって感じですけど、リーチェは流石に大人という感じで余裕がありますね」

「フラッタちゃん、来た時はただの好意だったでしょうに、3日間で完全に落とされちゃいましたねぇ。でもフラッタちゃんの場合は自業自得感が強すぎますよね? 自分から罠に飛び込んだような」

「主人の事を罠扱いしないでくれるぅ?」


 口調だけ丁寧でも会話の内容が奴隷感ゼロなんだけど?

 もう奴隷として振舞う気あんまりないだろ2人とも。個人的には嬉しいけど。


「期待してるとこ悪いけど、あの2人を嫁に迎えるのはそう簡単じゃないよ。誰にも渡してやる気はないけど、手に入れる自信があるわけじゃないかな」


 自信がないどころじゃない。正直言えば絶望的だ。
 既に婚約者のいるフラッタは、グズグズしてると他の男の手に渡ってしまう。

 そんなの絶対に許せないけど、その為にクリアするイベントの難易度が高すぎて、頭を抱えたくなるよぉ。


 リーチェに至ってはイベントの全容すら見えてこない。間もなく配信予定、Coming Soonとだけ表示されてるような感覚だよまったく。


「ご主人様こそ何を言ってるんですか? 私の呪いを解く方法なんて未だに分かってないのに、自分がこの世界で生きていける保証もないのに、それでも私の手を取ったのは貴方ですよ?」


 あの時はどうかしてたんだって。

 ニーナをひと目見てどうかしちゃったんだよ、あの時の俺は。

 
「嫁に迎えるのは簡単じゃない、なんて笑っちゃいますよ? 全部無視してもらっちゃうくせに」

「ほんとですよ。私の時なんて、ティムルの事情を聞く気はないなんてきっぱり拒絶してた癖に。フラッタちゃんもリーチェも自分の女にすると決めた以上は、もう止まる気もないでしょうに」


 ニーナとティムルが抜群の連携を発揮して、俺の過去の言動を挙げ連ねてくる。


 あーこれか。パーティ内の男女比が女性のほうが多くなると、男性側の肩身が狭くなるって奴。

 女の敵は女とか嘘だろ。女の味方は女、の間違いじゃね?


 敵対してギスギス過ごされたいわけじゃないから、女の味方は女でいいんだけどね。俺をディスることで2人が仲良く過ごせるなら、まぁいいか?


「2人の信頼に応えられるように、全力で強くなって、さっさとあの2人を迎えることにするよ」


 ニーナとティムルの言葉は俺への信頼と愛情の証だ。

 だから2人の言葉を否定せずに、2人の信頼に裏切らないよう頑張るしかない。


「しっかしたった1人でこの世界に来て、ニーナと一緒になって、ティムルと一緒になって、フラッタとリーチェとも仲良くなって。教会のみんなもいて、なんだかあの広い家が少しずつ狭くなるみたいで楽しいよな」

「あは。そうですね。あの家広すぎましたものね」


 ニーナが最高の笑顔で同意してくれる。

 そう言えばあの家に決めたのは、ニーナの強い希望があったからだったね。


「ステイルークでご主人様のモノになると決めた時、私は生涯ご主人様と2人で生きていくのだと、それでも幸せすぎると思っていたのですけどねぇ……」


 ステイルークで過ごした日々を、マグエルに辿り着くまでの旅を思い出しているのか、遠くを見るような目をしながら語るニーナ。


「いつの間にかティムルが押しかけてきて、フラッタが押しかけてきて、リーチェが押しかけてきて、……ってあれ? ご主人様の周りって、みんな押しかけてきてないですか?」


 ニーナの指摘に心当たりしかなくて微妙な気持ちになる。

 おかしいなぁ? 確かにティムルにもフラッタにもリーチェにも、押しかけられた記憶しかない。

 
「ああ、ある意味私も押しかけたことになるのですかね? ご主人様が泊まっていた宿に後から合流して、世話役を押し付けられて、ですものね」

「あっはっは! モテモテだったんですねご主人様は。私は振り返ってみると、うん、押しかけた以外の何者でもなかったですねっ」


 おかしくて仕方が無いように声をあげて笑うティムル。

 ティムルは完全に押しかけてきたよなぁ。アッチンの宿からずっと、夕食に混ざってきやがってたもんね。


「でもあの時はご主人様を好きだったというよりは、ご主人様とニーナちゃんに混ぜてもらいたかったって感じでしたかねぇ?」


 うん。俺がモテモテなんて言われてもピンとこないけど、ニーナの影響もあると言われれば納得するかな。フラッタなんかニーナに懐きまくってるもんね。

 まぁあれはニーナが懐柔されてるだけとも言う。


 ニーナとフラッタって、どっちが懐柔されてんのか俺にも分からないんだよなぁ。


「どっかのクソジジイみたいに、嫁ばっかり何人も増やすのもどうかとは思うんだけどさ」


 複数の女性を愛することを不誠実だなんてもう思わない。

 俺はニーナとティムル、フラッタとリーチェたちと一緒に、ただ楽しく笑って生きていければそれでいい。


「ニーナと出会ってこの世界で生きていく覚悟が決まって、ティムルと出会ってマグエルでの生活が整って、教会のみんなのおかげで家の周りが賑やかになって、フラッタに出会って稽古をつけてもらって、リーチェに出会って……」


 ……あれ? アイツと出会ってからは別に何も無い?


「……まぁ、人と出会うごとに世界が広がっていく感じだよ」


 リーチェと出会ったから……、フラッタとリーチェのおっぱいを弄り倒せた?

 そう考えるとリーチェが1番影響がでかいとも言えるなっ。リーチェのおっぱいのようにっ。


 俺の言葉を聞いたニーナとティムルは、うんうんと頷きながら嬉しそうに微笑んでくれた。ああもう2人とも可愛すぎるよぉ。


「私にとってはご主人様との出会いが、まさに世界の広がりそのものでしたよ。そしてそれは今も広がり続けていると感じます。本当に私は幸せ者です」

「私にとって2人との出会いは……、憧れ、でしたかね? 商人として生きてきて、それなりに世界中を渡り歩いたつもりでいましたが、2人の姿はこの世界で初めて見るもののように映りました」


 2人の言葉がこそばゆい。
 俺なんかそんな大したもんじゃないんだけどねぇ。

 大した者じゃなくて、幸せ者だ。ニーナより絶対俺のほうが幸せ者でしょ。


 ニーナとティムルの存在が、歩み続ける力をくれる。

 フラッタとリーチェの存在が、腕を伸ばし続ける原動力になる。


 さぁもっともっと強くなる為に。今日も元気に遠征を始めますかねぇっ!
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