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2章 強さを求めて1 3人の日々
072 ※閑話 地下室の2人 (改)
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「……む? ここどこじゃ? ん? リーチェ?」
「あ、ようやく帰ってきた。ここはダンの家の地下室だよフラッタ。普段僕が寝泊りさせてもらってる場所さ」
む? ここがダンの家じゃと?
周りは土と石で出来ていて、少し寒々しい。さほど広くもない室内にはベッドだけしか置いてないようじゃ。
って、妾はいつの間にこの部屋に? しかもリーチェと2人だけ? はて?
「事情を説明するから、今度は気をやったりしないでよね?」
混乱する妾の様子を見て取ったリーチェが、妾の顔を窺うように見ながら説明してくれる。
「僕とフラッタがダンにプロポーズされたのは覚えてるかな。それでフラッタの意識が飛んじゃってね。ここに連れて来たんだよ」
「ダンに……、ダンにぷろぽーず……」
段々思い出してきたのじゃ……。
リーチェの言う通り、わ、妾はさっき、ダンに思い切り求婚されてしまったのじゃっ……!
ニーナと、それともう1人奴隷が増えて、とても奴隷には見えぬが、ともかく奴隷が増えて、ダンは妾のことなど興味はないと、いやおっぱいには興味津々のようじゃが、妾になんて興味ないと思っておったのじゃ……。
それなのにいっ、いきなりあんなことを言いおってぇ。いくらなんでも不意打ちが過ぎるわ馬鹿者がぁっ!
「だいじょうぶそうだね? それで今日はあの3人が一緒に寝るから、僕達お邪魔虫はこっちに退散したってワケさ」
やれやれといった様子で肩を竦めてみせるリーチェ。
リーチェもダンにプロポーズされたはずなのじゃが、やはり彼女は大人の女性なのか、妾のようにみっともなく取り乱したりはしていないようじゃな。
「む、むぅ。なるほどなのじゃ……。でも助かった、流石に妾も今ダンと一緒に寝るのは気まず過ぎるからのう……」
「遠征から帰ってきた3人の睦言をずっと邪魔しちゃってたからね。フラッタが今後もみんなと一緒に寝たいんだったら、ダンのお嫁さんになるしかないと思うよ?」
「む、睦言……」
そうじゃ。彼らは大人の男女。主従にはとても見えぬほど仲睦まじく、夜を共にすれば自然とそういうことも……。
そんなことごく当たり前のことだというのに、ダンめっ、先ほどから奴の言葉が頭を回って離れぬのじゃっ。
ダ、ダンのお嫁さん……? そ、そんなのっ! そんなのっ……!
って、邪魔、を? ずっと?
「ああ、ああそうじゃったのか……。妾はずっと彼らに甘え続けておったのか……」
リーチェの言葉が幼い妾の頭にもようやく理解できてきた。
妾はダンとニーナの優しさに甘えて、彼らが愛し合うのをずっと邪魔し続けてしまっておったのか……。
「彼らにはなんとも申し訳ない事をしてしまったのじゃ。まったく、妾は幼稚じゃったのぅ……」
「そうだね。僕達はみんなの邪魔をしちゃってたんだよねぇ。それにしたってあれはやりすぎだと思うんだけどさっ」
リーチェはその事実にとっくに気付いていたようなのじゃ。だけど妾が彼らに甘えるのに便乗して、自分もダンとニーナに甘えてしまったのじゃろう。
結局妾の来訪が皆に迷惑をかけてしまったということじゃろう。なんとも情けないことをしてしまったのじゃ。
「まぁそういうことで、今日は2人でこっちに避難してきたってワケさ」
「なるほどのぅ。しかしリーチェの言う通り、確かに今朝のアレは少々やりすぎなのじゃ。あんなこと毎朝されたら堪らんのじゃ……」
毎朝、あんなことを……。
自分の言葉で今朝ダンにされた事を思い返してしまう。
何度も気をやって、全身に力が入らなくて、なのに感覚だけは妙に敏感で……。
「そ、それにしてもこの部屋は静かじゃのっ? いくら地下とはいえ、何の音もせんのじゃ」
胸の疼きから気を逸らしたくて、どうでもいい事を問うてしまう。
「ああ。これは風に少しお願いして、音の出入りを制限してもらってるんだよ」
事も無げにリーチェは言うが、音の出入りを制限するじゃと? そんなことが可能なのか?
そう言えばエルフは風を操れると聞いた事があるが……。風を操れるということは音を操れるということに繋がるのかのう?
「いくら2階と地下とはいえ、エルフの僕や竜人の君には寝室の声は聞こえちゃうからねぇ。流石にそんな覗き行為みたいなこと、したくないだろう?」
「寝室の、声……」
あの3人は今、寝室で何をやっておるのか……。
そんなもの当然、男女の愛の営みであろう。
今朝、ダンが妾にしたような……。いや、それ以上の事を……、今、寝室で行っている……。
今朝以上のこと……? あれ、以上、って……?
なんだか胸の先に擦れる寝巻きの感触が、いつもより気になって仕方ないのじゃ……。
いや、いつもはこんなこと、気にしたことも……?
「なぁに? その様子だと寝室の様子が気になるのかい?」
「なななな、何を言っておるのじゃあっ! ぜんぜんっ! ぜんっぜん気になってないのじゃっ!」
「ははっ。うん。気にしないほうが良いよ」
慌てて否定する妾を軽く笑って受け流すリーチェ。
まったく誤魔化せていなかったというのに、リーチェは変に踏み込んだりはしてこなかった。
「恐らく3人は僕達が今朝された以上の事を、ひと晩中繰り返すだろうからね。僕達が2日間も邪魔しちゃったし、今夜はもう寝ないんじゃないかなぁ」
天井を、寝室のある2階の方を見ながらリーチェが零した言葉が妾の耳に刺さる。
あ、あれ以上のことを……、ひと晩中、じゃとぉ……!?
「今思えばダンも不満に思ってたのかもしれないね。それをああいう形で僕達に抗議していたのかもしれない。……それにしたってやりすぎだけどさっ」
やりすぎ……。そう、いくらなんでもあれはやりすぎなのじゃっ!
リーチェの言葉に、無抵抗の妾の胸を蹂躙し尽くしたダンの手の動きを思い返す。
ダンの指の感触を、思い出してしまう……。
なんだか胸の先が疼いてしまうのじゃぁ。おのれダンめぇ……!
「やめてって言っても、ダメって言っても、ニーナが起きるまで延々と徹底的にだよっ? ティムルも協力しちゃうしさぁ。……まぁ、気持ち良かった、けど」
リーチェの尻すぼみの言葉が耳に届き、今朝の出来事を妾も鮮明に思い出してしまう。
体がバラバラになりそうなほどの快感。
懇願しても強制的に一方的に与えられる続ける快感。
そして、それを与え続けるダンの、妾のと違ってゴツゴツとした、男の指の感触。
気持ち良かった? うん、妾も、妾も凄く……。
胸の先端に鈍い刺激を感じる。
視線を落すと、知らず知らずのうちに自分で触れてしまったようじゃ……。
だけどダメなのじゃ。こんなの全然気持ちよくない。
少し強めに押してみても、あの時みたいに気持ち良くない。
ダンの指を思い出して硬くなった先端は、これじゃない、妾の欲しいのはダンの指だと、怒って張り詰めているかのようじゃ。
思わず両胸の先端を強く摘んで引っ張ってみる。
……痛いだけじゃ。こんなのなんにも気持ちよくない。気持ちよくない、はずなのに。
今朝ダンにされた時は、意識が飛ぶほど気持ち良かったのじゃ……。
ふと正面のリーチェと目が合う。
リーチェの胸には先端を摘む両手が添えられておる。きっとリーチェの目にも、自身の胸を摘みあげる妾の姿が映っておることじゃろう。
……って!
「ち、違うのじゃ! こ、これは別に朝のダンの動きが恋しくなって自分で引っ張ってみたわけじゃないのじゃぁ!」
「ち、違うからっ! これは別に朝ダンにめちゃくちゃにされたのが気持ち良くって、自分でもちょっと試してみたとか、そういうんじゃないからねっ!」
慌てて胸から手を離すと、リーチェも同時に同じような動きをする。
な、なんで妾がこんなに動揺しなければならんのじゃ……。おのれダンっ!
「ダメだなぁ。僕、ダメだって分かってるのに。ダメだって分かってるのに、ダンのことばっかり考えちゃうよぉ……」
妾が憤慨していると、リーチェの雰囲気が変わった気がした。
どこか遠くを見るような眼差しで、独り言のように言葉を発している。まるで目の前の妾の姿を忘れてしまったかのように。
リーチェ? いったいどうしたのじゃ?
「ダンのお嫁さんになって、みんなでいっぱい気持ち良くしてもらって、みんなと一緒に美味しいご飯を食べて。ダメだって分かってるのに、ダンのばかぁ……」
リーチェが突然妾を抱きしめてくる。突然の抱擁に反応が出来ず、妾はリーチェの豊満な胸に抱きしめられてしまったのじゃ。
……ってなんじゃこの弾力はっ! い、息が出来ぬほどじゃとぉっ!?
「勝手に押しかけておいて、受け入れてもらって、なのに彼の想いには応えられないなんて。酷い、酷いよぉ。ここは、この家は幸せすぎる。僕には幸せすぎるんだよぉ」
リーチェが妾に縋って少女のように泣いておる。
昼間、あれほど圧倒的な実力を見せた、翠の姫エルフたるリーチェが、どうにもならんと泣いておる。
「ずっと忘れてたのに、ずっと諦めてたのに、なんで手に入れる事も出来ないのに僕の前に現れちゃったんだよぉ。酷いよ、こんなの酷すぎるよ。ダンがもらってやるって言ってくれたのに、それに応える事もできないなんて、こんなの酷すぎるよぅ」
己の前に現れたダンを責め、ダンの想いに応えられない自分を責め続けるリーチェ。
少しの息苦しさを我慢しながら彼女の胸から頭を抜き、妾も震えるリーチェを抱き返す。
「リーチェ。妾に出来ることなど無いかもしれぬが、今は好きなだけ泣くが良いのじゃ。だいじょうぶ。ここには妾とおぬししかおらぬ。今は素直に泣くと良いのじゃ」
「フラッタぁ……。あああ……、うわああああああああっ!!」
妾の言葉に、まるで何かが決壊したかのように泣き続けるリーチェ。
空気が震えていると錯覚するほどのこの大声も、悲鳴のようなこの泣き声も、風を操るリーチェの力で、きっと1番届けたいあの男の耳には届かぬのじゃろうな……。
彼女の抱える事情は分からぬが、力になってやりたい、そう思う。
しかし、ほんに不思議な男じゃのう。建国の英雄リーチェ・トル・エルフェリアにここまで想われる男なぞ、聞いたこともないのじゃ。
ふぅむ、英雄リーチェがここまで想う男であるならば。
わ、妾が惚れることがあったとしても……、仕方ない、のじゃ……?
「あ、ようやく帰ってきた。ここはダンの家の地下室だよフラッタ。普段僕が寝泊りさせてもらってる場所さ」
む? ここがダンの家じゃと?
周りは土と石で出来ていて、少し寒々しい。さほど広くもない室内にはベッドだけしか置いてないようじゃ。
って、妾はいつの間にこの部屋に? しかもリーチェと2人だけ? はて?
「事情を説明するから、今度は気をやったりしないでよね?」
混乱する妾の様子を見て取ったリーチェが、妾の顔を窺うように見ながら説明してくれる。
「僕とフラッタがダンにプロポーズされたのは覚えてるかな。それでフラッタの意識が飛んじゃってね。ここに連れて来たんだよ」
「ダンに……、ダンにぷろぽーず……」
段々思い出してきたのじゃ……。
リーチェの言う通り、わ、妾はさっき、ダンに思い切り求婚されてしまったのじゃっ……!
ニーナと、それともう1人奴隷が増えて、とても奴隷には見えぬが、ともかく奴隷が増えて、ダンは妾のことなど興味はないと、いやおっぱいには興味津々のようじゃが、妾になんて興味ないと思っておったのじゃ……。
それなのにいっ、いきなりあんなことを言いおってぇ。いくらなんでも不意打ちが過ぎるわ馬鹿者がぁっ!
「だいじょうぶそうだね? それで今日はあの3人が一緒に寝るから、僕達お邪魔虫はこっちに退散したってワケさ」
やれやれといった様子で肩を竦めてみせるリーチェ。
リーチェもダンにプロポーズされたはずなのじゃが、やはり彼女は大人の女性なのか、妾のようにみっともなく取り乱したりはしていないようじゃな。
「む、むぅ。なるほどなのじゃ……。でも助かった、流石に妾も今ダンと一緒に寝るのは気まず過ぎるからのう……」
「遠征から帰ってきた3人の睦言をずっと邪魔しちゃってたからね。フラッタが今後もみんなと一緒に寝たいんだったら、ダンのお嫁さんになるしかないと思うよ?」
「む、睦言……」
そうじゃ。彼らは大人の男女。主従にはとても見えぬほど仲睦まじく、夜を共にすれば自然とそういうことも……。
そんなことごく当たり前のことだというのに、ダンめっ、先ほどから奴の言葉が頭を回って離れぬのじゃっ。
ダ、ダンのお嫁さん……? そ、そんなのっ! そんなのっ……!
って、邪魔、を? ずっと?
「ああ、ああそうじゃったのか……。妾はずっと彼らに甘え続けておったのか……」
リーチェの言葉が幼い妾の頭にもようやく理解できてきた。
妾はダンとニーナの優しさに甘えて、彼らが愛し合うのをずっと邪魔し続けてしまっておったのか……。
「彼らにはなんとも申し訳ない事をしてしまったのじゃ。まったく、妾は幼稚じゃったのぅ……」
「そうだね。僕達はみんなの邪魔をしちゃってたんだよねぇ。それにしたってあれはやりすぎだと思うんだけどさっ」
リーチェはその事実にとっくに気付いていたようなのじゃ。だけど妾が彼らに甘えるのに便乗して、自分もダンとニーナに甘えてしまったのじゃろう。
結局妾の来訪が皆に迷惑をかけてしまったということじゃろう。なんとも情けないことをしてしまったのじゃ。
「まぁそういうことで、今日は2人でこっちに避難してきたってワケさ」
「なるほどのぅ。しかしリーチェの言う通り、確かに今朝のアレは少々やりすぎなのじゃ。あんなこと毎朝されたら堪らんのじゃ……」
毎朝、あんなことを……。
自分の言葉で今朝ダンにされた事を思い返してしまう。
何度も気をやって、全身に力が入らなくて、なのに感覚だけは妙に敏感で……。
「そ、それにしてもこの部屋は静かじゃのっ? いくら地下とはいえ、何の音もせんのじゃ」
胸の疼きから気を逸らしたくて、どうでもいい事を問うてしまう。
「ああ。これは風に少しお願いして、音の出入りを制限してもらってるんだよ」
事も無げにリーチェは言うが、音の出入りを制限するじゃと? そんなことが可能なのか?
そう言えばエルフは風を操れると聞いた事があるが……。風を操れるということは音を操れるということに繋がるのかのう?
「いくら2階と地下とはいえ、エルフの僕や竜人の君には寝室の声は聞こえちゃうからねぇ。流石にそんな覗き行為みたいなこと、したくないだろう?」
「寝室の、声……」
あの3人は今、寝室で何をやっておるのか……。
そんなもの当然、男女の愛の営みであろう。
今朝、ダンが妾にしたような……。いや、それ以上の事を……、今、寝室で行っている……。
今朝以上のこと……? あれ、以上、って……?
なんだか胸の先に擦れる寝巻きの感触が、いつもより気になって仕方ないのじゃ……。
いや、いつもはこんなこと、気にしたことも……?
「なぁに? その様子だと寝室の様子が気になるのかい?」
「なななな、何を言っておるのじゃあっ! ぜんぜんっ! ぜんっぜん気になってないのじゃっ!」
「ははっ。うん。気にしないほうが良いよ」
慌てて否定する妾を軽く笑って受け流すリーチェ。
まったく誤魔化せていなかったというのに、リーチェは変に踏み込んだりはしてこなかった。
「恐らく3人は僕達が今朝された以上の事を、ひと晩中繰り返すだろうからね。僕達が2日間も邪魔しちゃったし、今夜はもう寝ないんじゃないかなぁ」
天井を、寝室のある2階の方を見ながらリーチェが零した言葉が妾の耳に刺さる。
あ、あれ以上のことを……、ひと晩中、じゃとぉ……!?
「今思えばダンも不満に思ってたのかもしれないね。それをああいう形で僕達に抗議していたのかもしれない。……それにしたってやりすぎだけどさっ」
やりすぎ……。そう、いくらなんでもあれはやりすぎなのじゃっ!
リーチェの言葉に、無抵抗の妾の胸を蹂躙し尽くしたダンの手の動きを思い返す。
ダンの指の感触を、思い出してしまう……。
なんだか胸の先が疼いてしまうのじゃぁ。おのれダンめぇ……!
「やめてって言っても、ダメって言っても、ニーナが起きるまで延々と徹底的にだよっ? ティムルも協力しちゃうしさぁ。……まぁ、気持ち良かった、けど」
リーチェの尻すぼみの言葉が耳に届き、今朝の出来事を妾も鮮明に思い出してしまう。
体がバラバラになりそうなほどの快感。
懇願しても強制的に一方的に与えられる続ける快感。
そして、それを与え続けるダンの、妾のと違ってゴツゴツとした、男の指の感触。
気持ち良かった? うん、妾も、妾も凄く……。
胸の先端に鈍い刺激を感じる。
視線を落すと、知らず知らずのうちに自分で触れてしまったようじゃ……。
だけどダメなのじゃ。こんなの全然気持ちよくない。
少し強めに押してみても、あの時みたいに気持ち良くない。
ダンの指を思い出して硬くなった先端は、これじゃない、妾の欲しいのはダンの指だと、怒って張り詰めているかのようじゃ。
思わず両胸の先端を強く摘んで引っ張ってみる。
……痛いだけじゃ。こんなのなんにも気持ちよくない。気持ちよくない、はずなのに。
今朝ダンにされた時は、意識が飛ぶほど気持ち良かったのじゃ……。
ふと正面のリーチェと目が合う。
リーチェの胸には先端を摘む両手が添えられておる。きっとリーチェの目にも、自身の胸を摘みあげる妾の姿が映っておることじゃろう。
……って!
「ち、違うのじゃ! こ、これは別に朝のダンの動きが恋しくなって自分で引っ張ってみたわけじゃないのじゃぁ!」
「ち、違うからっ! これは別に朝ダンにめちゃくちゃにされたのが気持ち良くって、自分でもちょっと試してみたとか、そういうんじゃないからねっ!」
慌てて胸から手を離すと、リーチェも同時に同じような動きをする。
な、なんで妾がこんなに動揺しなければならんのじゃ……。おのれダンっ!
「ダメだなぁ。僕、ダメだって分かってるのに。ダメだって分かってるのに、ダンのことばっかり考えちゃうよぉ……」
妾が憤慨していると、リーチェの雰囲気が変わった気がした。
どこか遠くを見るような眼差しで、独り言のように言葉を発している。まるで目の前の妾の姿を忘れてしまったかのように。
リーチェ? いったいどうしたのじゃ?
「ダンのお嫁さんになって、みんなでいっぱい気持ち良くしてもらって、みんなと一緒に美味しいご飯を食べて。ダメだって分かってるのに、ダンのばかぁ……」
リーチェが突然妾を抱きしめてくる。突然の抱擁に反応が出来ず、妾はリーチェの豊満な胸に抱きしめられてしまったのじゃ。
……ってなんじゃこの弾力はっ! い、息が出来ぬほどじゃとぉっ!?
「勝手に押しかけておいて、受け入れてもらって、なのに彼の想いには応えられないなんて。酷い、酷いよぉ。ここは、この家は幸せすぎる。僕には幸せすぎるんだよぉ」
リーチェが妾に縋って少女のように泣いておる。
昼間、あれほど圧倒的な実力を見せた、翠の姫エルフたるリーチェが、どうにもならんと泣いておる。
「ずっと忘れてたのに、ずっと諦めてたのに、なんで手に入れる事も出来ないのに僕の前に現れちゃったんだよぉ。酷いよ、こんなの酷すぎるよ。ダンがもらってやるって言ってくれたのに、それに応える事もできないなんて、こんなの酷すぎるよぅ」
己の前に現れたダンを責め、ダンの想いに応えられない自分を責め続けるリーチェ。
少しの息苦しさを我慢しながら彼女の胸から頭を抜き、妾も震えるリーチェを抱き返す。
「リーチェ。妾に出来ることなど無いかもしれぬが、今は好きなだけ泣くが良いのじゃ。だいじょうぶ。ここには妾とおぬししかおらぬ。今は素直に泣くと良いのじゃ」
「フラッタぁ……。あああ……、うわああああああああっ!!」
妾の言葉に、まるで何かが決壊したかのように泣き続けるリーチェ。
空気が震えていると錯覚するほどのこの大声も、悲鳴のようなこの泣き声も、風を操るリーチェの力で、きっと1番届けたいあの男の耳には届かぬのじゃろうな……。
彼女の抱える事情は分からぬが、力になってやりたい、そう思う。
しかし、ほんに不思議な男じゃのう。建国の英雄リーチェ・トル・エルフェリアにここまで想われる男なぞ、聞いたこともないのじゃ。
ふぅむ、英雄リーチェがここまで想う男であるならば。
わ、妾が惚れることがあったとしても……、仕方ない、のじゃ……?
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