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2章 強さを求めて1 3人の日々
064 ポイントフラッタの更に先へ (改)
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ポイントフラッタを過ぎると、俺たち以外の魔物狩りと遭遇する事も増えてきた。意外な事に、遭遇する者の多くは俺達の姿を見ると気さくに声をかけてきてくれる。
「おっ、お前らこれから奥に行くのか? 水と食料に余裕があったら少し譲って貰うことって出来ねぇかな?」
どうやら親切心や好奇心だけで声をかけてくるわけじゃなく、物資や情報の交換を目的とした交流みたいだね。なんとなく納得した。
スポットから出るタイミングのパーティの中には物資が不足気味の者たちも居て、勿論少し割高にではあるけど、なるべく融通することにした。
なんたって行商人が2人もいるパーティなんでね。水と食料は持てる限界まで持ってきてるし、3人なら1ヶ月間くらい遠征できそうな勢いだ。
見る人が見たら、お前らどれだけ臆病なんだよって思われるかもなぁ。
交渉は全てティムルにお任せする。
ティムルは各野営地でも商売の経験があるため、魔物狩りや旅人との直接交渉はお手の物だ。下手に俺が口を挟むより上手いことやってくれるだろう。
ただ利益は大切だけど、困ってる人から毟り取るのは後々禍根を残しかねないので、かなり良心的なトレードを心がける。
街への帰路に就いている魔物狩りの中には、俺たちではまだ足を踏み入れられないような深部で得られる素材を譲ってくれる人も居て、また魔物の情報なども快く教えてくれる為、こっちとしても有益な交流になる事が多かった。
スポット内に馬車で乗り込んでいる魔物狩りもチラホラ見かけるようになった。
インベントリには食料や野営道具は収納できない。だから大人数の集団では、馬車を持ち込んでいる方が一般的なようだ。
ドロップアイテムを全て収納できるインベントリがあるパーティは、そんなに多くないのかもしれないなぁ。
うちのパーティは3人ともインベントリが使用可能だからね。これは魔物狩りで生計を立てる場合に、かなり有利な条件なんじゃないかな。
鑑定と職業設定があって良かったと心から思う。
ポイントフラッタ付近に到着する頃に俺の行商人も育ちきって、1度好色家のLVを上げたあとに剣士になった。
これで家に帰るのが更に楽しみになりますなぁぐへへへへ。
3日目にはティムルの旅人も育ちきり、ようやくティムルを戦士にすることが出来た。これでとりあえず1つめの山は越えたと言えるだろう。
「これでティムルは戦士になったけど、まだ成り立てだからね。被弾するのが危険なのは変わらないから、今回の遠征中は立ち回りを変えないで欲しい」
「ええ、分かってます。でも嬉しい。これで私もようやく2人の力になれそうですっ」
戦士と表記された自分のステータスプレートを抱きしめながら、弾けるような笑顔を見せてくれるティムル。動けないニーナを囮にしているのがよほど心苦しかったのかもしれない。
今回ティムルが戦士になれた事で、俺の剣士の分の火力上昇、ニーナの射手の補正、ティムルの戦士の補正と、現在は3人とも火力が上昇し続けている状態だ。
奥に進むに連れて魔物のレベルも上がっていくだろうけれど、相対的に考えれば火力不足には陥らない……、といいなぁ。
「お前さんたち3人だけか? なんなら俺らの野営と合流するかい?」
出会う人が増えて、野営に合流しないかと誘われる機会も増えた。
その度に目利きで悪意を確認するんだけど、意外とみんな単純な親切心から申し出てくれているみたいだ。
いや、親切心というよりはお互いの負担を減らす合理的な判断なのかもしれない。ティムルが加入して俺とニーナの負担が激減したように、人が増えればそれだけ負担が減らせるのだから。
それに俺たちより少人数のパーティって今のところ会ってないし、もし俺たちに襲撃されても撃退する自信があるんだろうね。
お互い長期間野営してれば疲労も溜まる。だから周囲警戒の負担を分担出来るなら儲けもの、って感じかねぇ。
ま、うちのパーティは色々と特殊すぎて、簡単に別のパーティと合流出来ないんだけどさ。
「ありがたい申し出だけど遠慮しておくよ。うちのパーティは美人揃いだろ? 魔物よりも人の方が怖かったりするわけよ」
「っかぁ~っ惚気やがってまったくよぉ! だが確かに2人ともえれぇ別嬪さんなのは認める。馬鹿なことをしでかしたくなる気持ちも分かるぜぇ?」
ほう? 君はなかなか見る目がありそうですね?
というかニーナもティムルも最高に美人だから、この男の評価は当たり前か。ということで君への評価は取り消しだなっ。
「おいあんたら! 俺の事も相手しちゃくれねぇかいっ」
「悪いけど2人とも俺のだから諦めて。水や食料なら多少譲れるけどね」
俺を飛び越えて背後の2人に声をかける男に対して、絶対零度の視線で答えるニーナとティムル。
残念だったなっ! ニーナとティムルは俺のでーす!
2人に手を出すみたいな発言にちょっとイラッとしなくもないけど、やっぱり悪意の反応も無いので普通に冗談っぽい。
魔物狩りなんて荒くれ者連中、しかもスポット内っていう非日常世界なのだから、多少のセクハラや下ネタなんかにいちいち目くじら立てるのも馬鹿らしいか。ニーナとティムルも気分を害した感じでも無いしな。
水と食料を少し譲って、だけどさっきの発言の代償にちょっとボッタくっておく。ついでに情報提供もしてもらう。
この先って魔物の強さとか種類とかどんな感じなの?
「ここくらいならまだ強力な魔物は出てこないと思うぜ。だけど同じ魔物でも奥にいくほど強くなるからな。ナイトシャドウにやられるような奴も出てきたりするから、油断しないこった」
ふむ。注意すべき特別な魔物なんかは出て来ないっぽいかな? でも確実に魔物の強さは増していくようだ。
「お前が死んだら後ろの2人は俺が貰ってやるからよ。2人には傷1つつけないように頑張ってくれよ?」
「俺が死ぬのを待つよりも、あんたが他の女探した方が早いと思うよ?」
っていうかニーナとティムルクラスの美人って、本気で探してもそうそう見つけられない気がするなぁ。ムーリさん、フラッタ、リーチェは2人に匹敵する美人だけどね。
うん、なんで俺の周りにはこんなに美人ばっかりいるんだろうな? 元々この世界の顔面偏差値って高いのかもしれない。
「さて俺たちは先に行くよ。情報感謝してる。それじゃあね」
俺達はもっと奥まで進む予定なので、男のパーティと別れて先に進む。
ひょっとしたら悪意を隠すスキルでもあって、俺達の事を油断させておいて後ろから襲撃する腹積もりじゃ……? なんて思ったけど、男は先に進み始めた俺たちにすぐに興味を失ったようだ。あれが演技ならオスカーも夢じゃないね。
警戒するくらいなら鑑定しろよって話でもあるんだけどさ。敵対もしていない相手の個人情報を抜くのはちょっと憚られるんだよなぁ。
先に進んで戦闘をしてみると、男の言っていた情報に誤りは感じられず、ポイントフラッタでも遭遇する魔物にしか出会わなかった。
だけど確かに全体的に魔物のレベルが上がっていて、LV10未満の魔物なんてほぼ出てこなくなった。
フラッタが引っ張ってきたLV17の魔物も普通に遭遇するようになってきたな。アイツ、いったいどれくらいの距離を移動してきたんだろう?
そうして魔物を狩り続けている俺たちに、1つの明るいニュースが齎された。
「きたきたきたぁっ! とりあえず今回の目標の1つは達成出来たなっ」
「予定通りですね。いや、予想よりかなり早かったかもしれません。やはり魔物が強いおかげでしょうね」
「これは悪くないペースですよご主人様っ。たった2回の遠征で、3つ魔玉が光るなんて!」
遠征5日目を迎え、前回の遠征で魔力を貯め始めた魔玉が3つとも光った。これで15万リーフは確定だ。ドロップアイテムと細々とした取引による利益を含めれば、20万リーフくらいの予算が確保できるだろう。
マグエルに無事帰還することさえできれば、次回からティムルに体装備と頭装備を用意してやれそうだ。
「マグエルまでの旅路では毎回の宿泊代を稼ぐのが精一杯でしたのに、今や装備を買えるくらいに稼げるようになったんですねぇ」
「おお、そう言われるとめちゃくちゃ感慨深いなっ。俺たちも成長したし、ティムルも加入したし、先行きは明るいぞぉっ」
「はい。私も荷物の運搬だけでなく、魔物の殲滅の助けにもなれるようになってきて嬉しいです。ご主人様の能力は本当に素晴らしいですねぇ」
ティムルが褒めてくれるのは嬉しいけど、本当に素晴らしいのは2人の方なんだよなぁ。
この世界では職業が累積する為、鑑定と職業設定の恩恵は計り知れない。けど結局俺1人では出来ることは限られてくる。
独りで出来ることなんてそんなに多くないのだ、どこの世界だって。
もしも2人がいなければ、俺はアッチンから先に進むことすら出来ていなかっただろうね。
5日目の夜も無事に越え、遠征6日目の朝を迎える。
この5日間でこの場でも問題なく戦えることは証明できたはず。後は無事に家まで帰るだけだっ。
帰る途中にまたあのナンパ男のパーティと遭遇する。というより彼らはずっと同じ場所から移動していないらしい。
「おお、無事に戻ってきたようだな。嬢ちゃんたちが無事で安心したぜ」
「そりゃどうも。こっちとしてはあんたらが同じ場所に居るのが驚いたんだけど。そういうパーティって結構多かったりするのか?」
「いやぁ、そりゃマチマチじゃねぇかな? 今回の依頼はあそこの馬車が全部いっぱいになるまでって内容だから、始めっから1ヶ月くらいはかかると踏んでたよ」
先日軽く交流をしたおかげか、俺の質問にもあっさり答えてくれるナンパ男。
しかしなるほどね。依頼で来てるのか。
「1ヶ月間もスポットで暮らすのはしんどいがよ。食費や物資は出してもらえるし魔物狩りの数も多いから、比較的安全なのに報酬も悪くねぇんだ。お前さんも女の心配ばかりしてねぇで、1度参加してみるこったな」
悪くない仕事なら、なんで他の魔物狩りを誘うような真似をするんだ?
そう思って聞いてみたところ、この仕事は馬車がいっぱいになるまでドロップアイテムを回収するのが目的なので、人数が増えればそれだけ仕事に必要な期間が短縮されるかららしい。
金銭的な報酬は魔玉で補えると。なるほどねぇ。
しかしいくら報酬が良くても、1ヶ月間スポット暮らしはなかなかキツそうだなぁ。スキルジュエルを求めるのなら、いつかは踏み込まないといけないのかもしれないけど。
雑談しているうちにティムルの取引も終わったようだ。男に別れ告げて先に進む。
帰りの道中、移動しながらティムルが補足をしてくれた。
「大きい商会が大規模にドロップアイテムの収集部隊を組むのはよくあることなんです。当然シュパイン商会でもやっていましたよ」
ナンパ男が言っていたような依頼はスポットの周辺だけというわけでもなく、この世界では一般的な仕事らしい。
「商会としてはお金さえ払えば確実な利益が見込めますし、魔物狩り達も遠征費用の負担をしてもらえて、魔物との戦闘の経験を積むことが出来る。その上で成功報酬も貰えますし、良い仕事をすれば商会とのコネクションも出来るかもしれませんからね。人気の仕事だと思います」
「んー、魔物狩り側にメリットが大きいのは分かるけど、商会側の利益が少なすぎない? 依頼の報酬、遠征費の負担、それを差っ引いた分しか利益が上がらないわけでしょ?」
「仰る通りですが、商会としてはそれで充分なんですよ。完全に放置しても確実に儲けが出るなんて、こんな夢のような話はありません。自分の手は必要無いのですから、別の事を出来ますしね」
なるほど。これをメインに稼いでるワケじゃないのか。
商会は全く別の事をしながらも、確実な利益が生みだせると。
ニュアンス的には不労所得に近いのかもしれない。もしくは投資かなぁ?
「魔物狩りの数も有限ですし、どこも楽ではないでしょうけどねぇ。下手な者に依頼して全滅でもされたら大損ですし、実績のある魔物狩り達の多くは大商会と繋がってますからね。新規参入は並大抵のことではないでしょう」
魔物狩りや商会同士で競合するようなケースは少ないらしいけど、それでも楽では無いらしい。
有力な魔物狩りは既に契約済み、新人を雇うにしても全滅するリスクを常に意識しなければいけないと。リスクとリターンのバランスが難しいな。
「新規で参入する商人などは、まだ駆け出しの戦士達に声をかけて、装備品などの援助などを持ちかけることもありますよ」
へぇ? 先行投資、いやスポンサー契約のほうが近いのかな?
この世界では魔物のドロップ品は経済そのものだから、需要が無くなる心配はまずない。
新規の商人と魔物狩り同士で手を組んで成り上がっていく、こういうドラマチックな関係に発展したら面白そうだ。
ティムルもうんうんと頷いてくれる。実際にそうやって成り上がるケースも少なくないそうだ。
「そういう人たちも実際に居ますし、逆に成功したら疎遠になるケースも少なくないみたいです。もっと良い条件を求めて商会を離れる者や、もっと強い戦士を求めて援助を打ち切ったり、と様々ですね」
お金や命が関わってくる事だから、綺麗事だけじゃやっていけないよなぁ。
だからこそ現実に負けずに築かれた信頼関係が感動を呼ぶんだろうしねぇ。
「それにしても、前回の遠征の帰りに比べて、全員結構余裕あるね? いいことだけどさ」
「言われてみればそうですね? 実際自分の足取りも軽く感じます」
前回は全員隠し切れない疲労の色が見えていたのに、今は雑談しながらリラックスしてスポット内を歩くことが出来ている。明らかに前回よりも負担を感じていないようだ。
ニーナも改めて全員の顔色を窺って、うんうんと同意してくれる。
「やはり全員の攻撃力の向上が大きいと思いますよ。ティムルの防具が揃ったら、私は弓メインで立ち回ってもいいくらいです」
「前回より奥まで進んだのに、前回よりも1回の戦闘時間が明らかに短いですからね。戦闘時間の短縮は、遠征の負担を大きく軽減してくれたんだと思います」
ティムルが戦闘時間の短縮が疲労軽減に繋がったのだと分析してくれる。
やっぱり火力の確保は大切かぁ。今回は全員の火力が上昇し続けていたからなぁ。
優先すべきはやっぱり火力か。3人のうちに最低でも1人は、常に火力を向上させ続けるべきかな?
そんな話をしながらも無事にスポットから脱出し、月明かりにマグエルの街並みが見えてくる。
マグエルの街並みにホッとする。今回も無事に帰ってくることが出来た。
帰ったら今晩はひたすら熟睡して、明日からは万全の体調で好色家LV2の効果を確認しなければなるまいよっ。いやぁ楽しみだなぁっ!
「おっ、お前らこれから奥に行くのか? 水と食料に余裕があったら少し譲って貰うことって出来ねぇかな?」
どうやら親切心や好奇心だけで声をかけてくるわけじゃなく、物資や情報の交換を目的とした交流みたいだね。なんとなく納得した。
スポットから出るタイミングのパーティの中には物資が不足気味の者たちも居て、勿論少し割高にではあるけど、なるべく融通することにした。
なんたって行商人が2人もいるパーティなんでね。水と食料は持てる限界まで持ってきてるし、3人なら1ヶ月間くらい遠征できそうな勢いだ。
見る人が見たら、お前らどれだけ臆病なんだよって思われるかもなぁ。
交渉は全てティムルにお任せする。
ティムルは各野営地でも商売の経験があるため、魔物狩りや旅人との直接交渉はお手の物だ。下手に俺が口を挟むより上手いことやってくれるだろう。
ただ利益は大切だけど、困ってる人から毟り取るのは後々禍根を残しかねないので、かなり良心的なトレードを心がける。
街への帰路に就いている魔物狩りの中には、俺たちではまだ足を踏み入れられないような深部で得られる素材を譲ってくれる人も居て、また魔物の情報なども快く教えてくれる為、こっちとしても有益な交流になる事が多かった。
スポット内に馬車で乗り込んでいる魔物狩りもチラホラ見かけるようになった。
インベントリには食料や野営道具は収納できない。だから大人数の集団では、馬車を持ち込んでいる方が一般的なようだ。
ドロップアイテムを全て収納できるインベントリがあるパーティは、そんなに多くないのかもしれないなぁ。
うちのパーティは3人ともインベントリが使用可能だからね。これは魔物狩りで生計を立てる場合に、かなり有利な条件なんじゃないかな。
鑑定と職業設定があって良かったと心から思う。
ポイントフラッタ付近に到着する頃に俺の行商人も育ちきって、1度好色家のLVを上げたあとに剣士になった。
これで家に帰るのが更に楽しみになりますなぁぐへへへへ。
3日目にはティムルの旅人も育ちきり、ようやくティムルを戦士にすることが出来た。これでとりあえず1つめの山は越えたと言えるだろう。
「これでティムルは戦士になったけど、まだ成り立てだからね。被弾するのが危険なのは変わらないから、今回の遠征中は立ち回りを変えないで欲しい」
「ええ、分かってます。でも嬉しい。これで私もようやく2人の力になれそうですっ」
戦士と表記された自分のステータスプレートを抱きしめながら、弾けるような笑顔を見せてくれるティムル。動けないニーナを囮にしているのがよほど心苦しかったのかもしれない。
今回ティムルが戦士になれた事で、俺の剣士の分の火力上昇、ニーナの射手の補正、ティムルの戦士の補正と、現在は3人とも火力が上昇し続けている状態だ。
奥に進むに連れて魔物のレベルも上がっていくだろうけれど、相対的に考えれば火力不足には陥らない……、といいなぁ。
「お前さんたち3人だけか? なんなら俺らの野営と合流するかい?」
出会う人が増えて、野営に合流しないかと誘われる機会も増えた。
その度に目利きで悪意を確認するんだけど、意外とみんな単純な親切心から申し出てくれているみたいだ。
いや、親切心というよりはお互いの負担を減らす合理的な判断なのかもしれない。ティムルが加入して俺とニーナの負担が激減したように、人が増えればそれだけ負担が減らせるのだから。
それに俺たちより少人数のパーティって今のところ会ってないし、もし俺たちに襲撃されても撃退する自信があるんだろうね。
お互い長期間野営してれば疲労も溜まる。だから周囲警戒の負担を分担出来るなら儲けもの、って感じかねぇ。
ま、うちのパーティは色々と特殊すぎて、簡単に別のパーティと合流出来ないんだけどさ。
「ありがたい申し出だけど遠慮しておくよ。うちのパーティは美人揃いだろ? 魔物よりも人の方が怖かったりするわけよ」
「っかぁ~っ惚気やがってまったくよぉ! だが確かに2人ともえれぇ別嬪さんなのは認める。馬鹿なことをしでかしたくなる気持ちも分かるぜぇ?」
ほう? 君はなかなか見る目がありそうですね?
というかニーナもティムルも最高に美人だから、この男の評価は当たり前か。ということで君への評価は取り消しだなっ。
「おいあんたら! 俺の事も相手しちゃくれねぇかいっ」
「悪いけど2人とも俺のだから諦めて。水や食料なら多少譲れるけどね」
俺を飛び越えて背後の2人に声をかける男に対して、絶対零度の視線で答えるニーナとティムル。
残念だったなっ! ニーナとティムルは俺のでーす!
2人に手を出すみたいな発言にちょっとイラッとしなくもないけど、やっぱり悪意の反応も無いので普通に冗談っぽい。
魔物狩りなんて荒くれ者連中、しかもスポット内っていう非日常世界なのだから、多少のセクハラや下ネタなんかにいちいち目くじら立てるのも馬鹿らしいか。ニーナとティムルも気分を害した感じでも無いしな。
水と食料を少し譲って、だけどさっきの発言の代償にちょっとボッタくっておく。ついでに情報提供もしてもらう。
この先って魔物の強さとか種類とかどんな感じなの?
「ここくらいならまだ強力な魔物は出てこないと思うぜ。だけど同じ魔物でも奥にいくほど強くなるからな。ナイトシャドウにやられるような奴も出てきたりするから、油断しないこった」
ふむ。注意すべき特別な魔物なんかは出て来ないっぽいかな? でも確実に魔物の強さは増していくようだ。
「お前が死んだら後ろの2人は俺が貰ってやるからよ。2人には傷1つつけないように頑張ってくれよ?」
「俺が死ぬのを待つよりも、あんたが他の女探した方が早いと思うよ?」
っていうかニーナとティムルクラスの美人って、本気で探してもそうそう見つけられない気がするなぁ。ムーリさん、フラッタ、リーチェは2人に匹敵する美人だけどね。
うん、なんで俺の周りにはこんなに美人ばっかりいるんだろうな? 元々この世界の顔面偏差値って高いのかもしれない。
「さて俺たちは先に行くよ。情報感謝してる。それじゃあね」
俺達はもっと奥まで進む予定なので、男のパーティと別れて先に進む。
ひょっとしたら悪意を隠すスキルでもあって、俺達の事を油断させておいて後ろから襲撃する腹積もりじゃ……? なんて思ったけど、男は先に進み始めた俺たちにすぐに興味を失ったようだ。あれが演技ならオスカーも夢じゃないね。
警戒するくらいなら鑑定しろよって話でもあるんだけどさ。敵対もしていない相手の個人情報を抜くのはちょっと憚られるんだよなぁ。
先に進んで戦闘をしてみると、男の言っていた情報に誤りは感じられず、ポイントフラッタでも遭遇する魔物にしか出会わなかった。
だけど確かに全体的に魔物のレベルが上がっていて、LV10未満の魔物なんてほぼ出てこなくなった。
フラッタが引っ張ってきたLV17の魔物も普通に遭遇するようになってきたな。アイツ、いったいどれくらいの距離を移動してきたんだろう?
そうして魔物を狩り続けている俺たちに、1つの明るいニュースが齎された。
「きたきたきたぁっ! とりあえず今回の目標の1つは達成出来たなっ」
「予定通りですね。いや、予想よりかなり早かったかもしれません。やはり魔物が強いおかげでしょうね」
「これは悪くないペースですよご主人様っ。たった2回の遠征で、3つ魔玉が光るなんて!」
遠征5日目を迎え、前回の遠征で魔力を貯め始めた魔玉が3つとも光った。これで15万リーフは確定だ。ドロップアイテムと細々とした取引による利益を含めれば、20万リーフくらいの予算が確保できるだろう。
マグエルに無事帰還することさえできれば、次回からティムルに体装備と頭装備を用意してやれそうだ。
「マグエルまでの旅路では毎回の宿泊代を稼ぐのが精一杯でしたのに、今や装備を買えるくらいに稼げるようになったんですねぇ」
「おお、そう言われるとめちゃくちゃ感慨深いなっ。俺たちも成長したし、ティムルも加入したし、先行きは明るいぞぉっ」
「はい。私も荷物の運搬だけでなく、魔物の殲滅の助けにもなれるようになってきて嬉しいです。ご主人様の能力は本当に素晴らしいですねぇ」
ティムルが褒めてくれるのは嬉しいけど、本当に素晴らしいのは2人の方なんだよなぁ。
この世界では職業が累積する為、鑑定と職業設定の恩恵は計り知れない。けど結局俺1人では出来ることは限られてくる。
独りで出来ることなんてそんなに多くないのだ、どこの世界だって。
もしも2人がいなければ、俺はアッチンから先に進むことすら出来ていなかっただろうね。
5日目の夜も無事に越え、遠征6日目の朝を迎える。
この5日間でこの場でも問題なく戦えることは証明できたはず。後は無事に家まで帰るだけだっ。
帰る途中にまたあのナンパ男のパーティと遭遇する。というより彼らはずっと同じ場所から移動していないらしい。
「おお、無事に戻ってきたようだな。嬢ちゃんたちが無事で安心したぜ」
「そりゃどうも。こっちとしてはあんたらが同じ場所に居るのが驚いたんだけど。そういうパーティって結構多かったりするのか?」
「いやぁ、そりゃマチマチじゃねぇかな? 今回の依頼はあそこの馬車が全部いっぱいになるまでって内容だから、始めっから1ヶ月くらいはかかると踏んでたよ」
先日軽く交流をしたおかげか、俺の質問にもあっさり答えてくれるナンパ男。
しかしなるほどね。依頼で来てるのか。
「1ヶ月間もスポットで暮らすのはしんどいがよ。食費や物資は出してもらえるし魔物狩りの数も多いから、比較的安全なのに報酬も悪くねぇんだ。お前さんも女の心配ばかりしてねぇで、1度参加してみるこったな」
悪くない仕事なら、なんで他の魔物狩りを誘うような真似をするんだ?
そう思って聞いてみたところ、この仕事は馬車がいっぱいになるまでドロップアイテムを回収するのが目的なので、人数が増えればそれだけ仕事に必要な期間が短縮されるかららしい。
金銭的な報酬は魔玉で補えると。なるほどねぇ。
しかしいくら報酬が良くても、1ヶ月間スポット暮らしはなかなかキツそうだなぁ。スキルジュエルを求めるのなら、いつかは踏み込まないといけないのかもしれないけど。
雑談しているうちにティムルの取引も終わったようだ。男に別れ告げて先に進む。
帰りの道中、移動しながらティムルが補足をしてくれた。
「大きい商会が大規模にドロップアイテムの収集部隊を組むのはよくあることなんです。当然シュパイン商会でもやっていましたよ」
ナンパ男が言っていたような依頼はスポットの周辺だけというわけでもなく、この世界では一般的な仕事らしい。
「商会としてはお金さえ払えば確実な利益が見込めますし、魔物狩り達も遠征費用の負担をしてもらえて、魔物との戦闘の経験を積むことが出来る。その上で成功報酬も貰えますし、良い仕事をすれば商会とのコネクションも出来るかもしれませんからね。人気の仕事だと思います」
「んー、魔物狩り側にメリットが大きいのは分かるけど、商会側の利益が少なすぎない? 依頼の報酬、遠征費の負担、それを差っ引いた分しか利益が上がらないわけでしょ?」
「仰る通りですが、商会としてはそれで充分なんですよ。完全に放置しても確実に儲けが出るなんて、こんな夢のような話はありません。自分の手は必要無いのですから、別の事を出来ますしね」
なるほど。これをメインに稼いでるワケじゃないのか。
商会は全く別の事をしながらも、確実な利益が生みだせると。
ニュアンス的には不労所得に近いのかもしれない。もしくは投資かなぁ?
「魔物狩りの数も有限ですし、どこも楽ではないでしょうけどねぇ。下手な者に依頼して全滅でもされたら大損ですし、実績のある魔物狩り達の多くは大商会と繋がってますからね。新規参入は並大抵のことではないでしょう」
魔物狩りや商会同士で競合するようなケースは少ないらしいけど、それでも楽では無いらしい。
有力な魔物狩りは既に契約済み、新人を雇うにしても全滅するリスクを常に意識しなければいけないと。リスクとリターンのバランスが難しいな。
「新規で参入する商人などは、まだ駆け出しの戦士達に声をかけて、装備品などの援助などを持ちかけることもありますよ」
へぇ? 先行投資、いやスポンサー契約のほうが近いのかな?
この世界では魔物のドロップ品は経済そのものだから、需要が無くなる心配はまずない。
新規の商人と魔物狩り同士で手を組んで成り上がっていく、こういうドラマチックな関係に発展したら面白そうだ。
ティムルもうんうんと頷いてくれる。実際にそうやって成り上がるケースも少なくないそうだ。
「そういう人たちも実際に居ますし、逆に成功したら疎遠になるケースも少なくないみたいです。もっと良い条件を求めて商会を離れる者や、もっと強い戦士を求めて援助を打ち切ったり、と様々ですね」
お金や命が関わってくる事だから、綺麗事だけじゃやっていけないよなぁ。
だからこそ現実に負けずに築かれた信頼関係が感動を呼ぶんだろうしねぇ。
「それにしても、前回の遠征の帰りに比べて、全員結構余裕あるね? いいことだけどさ」
「言われてみればそうですね? 実際自分の足取りも軽く感じます」
前回は全員隠し切れない疲労の色が見えていたのに、今は雑談しながらリラックスしてスポット内を歩くことが出来ている。明らかに前回よりも負担を感じていないようだ。
ニーナも改めて全員の顔色を窺って、うんうんと同意してくれる。
「やはり全員の攻撃力の向上が大きいと思いますよ。ティムルの防具が揃ったら、私は弓メインで立ち回ってもいいくらいです」
「前回より奥まで進んだのに、前回よりも1回の戦闘時間が明らかに短いですからね。戦闘時間の短縮は、遠征の負担を大きく軽減してくれたんだと思います」
ティムルが戦闘時間の短縮が疲労軽減に繋がったのだと分析してくれる。
やっぱり火力の確保は大切かぁ。今回は全員の火力が上昇し続けていたからなぁ。
優先すべきはやっぱり火力か。3人のうちに最低でも1人は、常に火力を向上させ続けるべきかな?
そんな話をしながらも無事にスポットから脱出し、月明かりにマグエルの街並みが見えてくる。
マグエルの街並みにホッとする。今回も無事に帰ってくることが出来た。
帰ったら今晩はひたすら熟睡して、明日からは万全の体調で好色家LV2の効果を確認しなければなるまいよっ。いやぁ楽しみだなぁっ!
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しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
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