63 / 878
2章 強さを求めて1 3人の日々
063 種族差 (改)
しおりを挟む
いつものようにニーナとティムルと愛し合った後、前々から気になっていた事が頭をよぎった。休憩中は暇なので、せっかくだから今尋ねてみる事にしよう。
「前から聞こうと思ってたんだけどさ。この世界の種族とその特長について、改めて教えてくれない?」
俺は人間族。ニーナは獣人族。そしてティムルはドワーフ族だ。他にはフラッタの竜人族、リーチェのエルフ族なんかがあるのは分かってる。
そう言えばムーリさんの種族は知らないなぁ。
ベッドの上でニーナとティムルのことを全身くまなく調査しても、見た目だけでなく感触や味まで確かめても、外見的な違いは個性の範囲に留まっている気がする。
俺とニーナとティムルの3人が別の種族であるのは間違いないけれど、種族的な差は感じられない。
ニーナとティムルの2人の中で最も差がある場所の感触をもみもみと確かめながら、改めて種族について教えてもらうことにする。
「人目を避けて隠れ住んでいる稀少種族がいないとは限らないから、あくまで一般に知られている範囲という前提で聞いてね?」
俺の問いにザックリとした前置きを述べてから、ティムルが説明を開始してくれる。
「人間、獣人、ドワーフ、エルフ、竜人、魔人。この世界には現在この6つの種族が一緒に暮らしているわ」
へぇ? 魔人族なんてものいるんだ。
そして魔人族以外には既に遭遇していたようだ。結構網羅してたのね俺。
「人口比は人間と獣人がほぼ同数、次いでドワーフ、エルフ、竜人の順に減っていくと言われているわ。正確な数を調査したわけじゃないみたいだけど」
ふむ。確かに人間族と獣人族は多そうだ。その辺にも普通に歩いてる感じだしな。
ドワーフであるティムルも普通に生活しているけど、竜人族とエルフ族はそれぞれフラッタとリーチェにしか会ったことがない。ティムルの説明にも素直に頷けるな。
「魔人族はかなり少ないみたいで、本人たちもなるべく外部に知られないように生活してるみたいよ。交流はあるから居るのは間違いないんでしょうけど」
ティムルでさえこの程度の知識しかないってことは、魔人族のことはほとんど知られていないみたいだ。
そしてやっぱりフラッタって稀少種族だったのか。マルドック商会の1件はそんな稀少種族だからこそ起こった事件、か。
少し後ろ向きな感情が湧いてくるのを、両手から伝わる柔らかい感触に集中することで押さえ込む。
あれぇ? なんか柔らかい感触ばかりじゃないなぁ?
「人間は年がら年中発情するし、獣人はパートナーを見つけやすい事もあって人口が多めね。ドワーフは他種族との交流も盛んで、だからこそ異種族婚が珍しくないから人口が伸び悩んでいるの」
人間さんが年がら年中発情してるのは、俺自身がこれでもかってほど証明しちゃってるな。ドワーフの異種族婚の多さも、ティムル自身が証明してしまったねぇ。もみもみ。
「エルフは他種族との交流を制限しているんだけど、その長命さからか種族的に性欲が薄い事で知られているわ。だから新しくエルフが誕生すると種族全体で祝福する風習があるそうね」
確かにリーチェも言ってたね。新しい子の誕生を種族全体で祝うって。
よくもまぁそんなエルフから、誕生記念の品を盗もうとか思えるもんだよ。
「そして竜人は他の種族と比べると少し短命で、その上子供がかなり出来にくい種族と言われているわ。短命と言っても私たちより1割程度平均寿命が短いって程度なんだけど、出産率の低さは問題になってるの」
エルフと竜人の話は分かりやすいな。エルフは寿命が長く、竜人は竜ってくらいだし種族的に高性能なんだろう。命の危険がないからこそ出産率が低くなるわけだ。
……他の種族と比べて人間族さんの評価、もう少し何とかならなかったのかなぁ。
「魔人の事情は私もあまり知らないから、話を進めさせてもらうわね」
王国中を行商したというティムルすら詳細を知らない魔人族。いつか会う事はあるんだろうか?
「各種族にはそれぞれ特技があってね。獣人族は獣化、竜人族は竜化、ドワーフは熱を目で見れるようになって、エルフは風や植物の声を聞くことが出来ると言われてるわ」
獣化と竜化は以前耳にした覚えがあるけど、ドワーフは温度を可視化できるのね。サーモグラフィ的な?
そしてエルフは植物や風の声を聞けるのか。
そこだけ聞けば確かに調査向きの能力だけど……。リーチェのせいでエルフに変なイメージついてしまってるんだよなぁ。ポンコツ的な?
「魔人族は人によって特技の現れ方が違うみたいで、獣人や竜人のように魔獣化、魔竜化した例もあるらしいし、一時的に自身の魔力を爆発的に高めるなんてこともあるらしいわね」
魔獣化とか魔竜化とかロマンみ溢れるぅ。そこまで色々な話が伝わっているということは、ティムルが言った通り生存している事は間違いないんだろうな、魔人族って。
……ってかティムル。人間族の特技は?
「人間族のダンにこんなことを言うのも気が引けるんだけど……、人間族の特技って分かってないのよね。諸説あるけど、根拠が示されてるものって1つも無くて」
はぁ~……。これだから人間族さんはさぁ。もっと真面目に異世界やってよ。何か無いの? 超必殺技的な何かさぁ?
くっそー。獣人や竜人みたいに先祖返りしてもサルになるだけか? 何か無いのか人間族さん。お前は年がら年中発情してるだけなのか?
くそう、このやり場のない怒りを、手の中で大分固くなってきた場所にぶつけてやる。うりゃうりゃうりゃー。
……って、やっぱり発情してるだけじゃないかっ! 俺自身でこれ以上ないほどに証明しちゃってるよ!
「んっ……。ダン、私から1つ補足するね」
悩ましい吐息を零しながら、ニーナが会話に参加してくる。
「獣人族は獣化に成功するまで、自分がなんの獣人なのかわからないの。だから私もまだ自分がなんの獣人なのか分かってないんだ。んんっ……! ちょっとダン、そんなに引っ張らないでぇ……」
思わぬところで1つの謎が解けた。
ニーナは自分でも何の獣人かわかってなかったのかぁ。くいくいっ。
「自分がなんの獣人か紹介してくる人は、んんっ、既に獣化に成功したって証なの。そしてそれは獣人としてとっても誇らしいことなんだって教わったの。あんっ! もう、引っ張らなきゃいいってわけじゃないってばぁ……!」
人間族さんの種族特性の年中発情に従って、両手の動きを早めていく。
でも好色家は2人もなれるんだから、人間族さんの特性が発情するだけだとは信じたくないところだ。
「んっ、ニーナちゃんもまだ獣化できないみたいだけど、私もこの年で未だに熱視が発現してなくてね。ドワーフの熱視は早い人だと10歳の頃には発現したりもするから、そういう意味でも私は落ち零れ扱いだったの」
ティムルが落ち零れだなんてふざけてるよな。いくら落ちて零れても、その都度俺が掴んで引っ張り上げてやるからなっ。こんな風にっ。くいくいっ。
「お前が故郷の地に敬意を払わないから、故郷もお前に応えないんだって。あっ、んんっ……!」
故郷の評価なんか気にするな。ティムルの想いには俺が全力で応えてやるから。
むしろ過剰なくらい応えてやるから。もう充分って言われてもやめないから。
「人間族が本当にどうしようもない事は分かったけど、獣化や熱視? の発現条件とかは詳しく分かってないの?」
「こらぁ。引っかいちゃダメなのぉ。んんっ」
ええ? だってニーナが引っ張っちゃダメって言ったんじゃん。かりかり。
次第に乱れる呼吸を必死に押さえ込みながら、頑張って俺の質問に答えてくれるニーナ。
「ふ、うぅ……! 獣化は歴戦の強者にのみ許される能力だって、父さんが言ってたよ。父さんも母さんも獣化できてたから、んあぁっ! 2人とも本当に優秀な戦士だったんだと思う。はぁんっ……!」
歴戦の強者にのみ許された能力。つまりは一定以上の経験値獲得で発現するのか?
そう考えるとフラッタヤバいな。短命ってことだから見た目通りの年齢だろうに、もう竜化できるようになってるとは。いったいどれ程の魔物を狩ったんだろう?
「ああん、もうっ。玩具じゃないったらぁ。グリグリだめなのぉ……」
甘い吐息を零しながらくすぐったそうに身を捩るティムル。
ダメと言いながら一切抵抗しないんだから、玩具にされても仕方ないよねっ。
「ド、ドワーフの熱視は本当に人それぞれで、はぁんっ! はぁ……。比較的、鍛冶仕事を手伝う機会が多い子が早く目覚めているかも知れないわねっ、んんんんっ……! なんでぇ……。玩具にされるの嫌だったのにぃ……。なんでもっとして欲しくなっちゃうのぉ……?」
もっとして欲しいというティムルに応えて指の動きを早めながら、彼女の説明してくれたことを考える。
鍛冶仕事を手伝う機会が多い子供? 鍛冶屋なんかの子供が発現しやすいのなら、つまり熱視は遺伝する能力ってことか?
……いや、それとも単純に火と向き合う機会の多さ?
焚き火や料理なんかじゃダメで、鍛冶仕事じゃないといけないって事は、火を使ってなにか工芸品を作る必要がある?
ティムルが熱視とやらを習得できたらどうなるか。
潜伏している魔物の体温などを可視化する事が出来れば、野外で奇襲される可能性がぐんと低くなるんじゃないかな。
魔物にはもしかしたら例外もいるかも知れないけど、野生動物や人間は体温を隠すことは出来ないはずだ。仕事に使う能力だとすれば消耗もそれほど多くないはず。
熱視を発現したら、サーモセンサー的な役割を試す価値は充分にあるね。
「んああっ。もう、考え事するなら手を止めっ、やぁんっ。ダメ、このままじゃダメっ、だめぇっ……!」
考え事をする俺の耳に、甘く官能的なニーナの声が届けられる。最高のBGMだな、もっと聞きたい。もっと聴かせてニーナ。くりくりっ。
「はぁんっ! ティ、ティムル、反撃するよっ。ぁんっ!」
「ふうううっ。ダンが、ダンがその気なら、あああっ、こっちだって受けて立とうじゃっ……。あっあっあんっ、受けて立とうじゃ、んんんっ、ないのっ……!」
ん? あれ、2人ともそんな怖い顔してどうしたの? いや笑顔なのは分かってるけど、なんか怖いんだよ?
明日から遠征だから今晩は疲れを残さないようにっ……て、え、関係ない? 関係ないことなくない?
悪いのは俺? え? 種族の話を教えてもらっただけじゃ? どうしてそんな素敵な笑顔で俺に覆い被さってくるのかな?
お仕置き? え、ご褒美の間違いでは? 大好きな2人が積極的になってくれるなんて嬉しすぎるんだけど?
2人がその気なら拒む理由は何もない。受けて立とうじゃありませんか。かかってきなさい2人とも。俺の本気をお見せしようではないかっ。
明日からの遠征? 知らん知らんそんなもの。今この瞬間以上に大切なことなど何もないわぁっ!
2人からのキスで延長戦がスタートする。2人共、今夜は寝れると思うなよぉ? わぁい、2人とも大好きー!
戦意に満ち溢れた2人に応えながら考える。
本当に最高の2人で極楽のような毎日なんだけど、流石に好色家の育成を急ぐべきかもしれないな。なんて。
翌朝、ニーナとティムルに出発前の最後の目覚めのキスをする。
遠征に行ってしまうと気持ちを緩める余裕は無いから、出発前の最後のタイミングで、これでもかってほど身も心も弛緩させる。
寝室を1歩出たら遠征モードだから、寝室では全力の甘々めろめろ甘やかしモードを堪能した。
「それじゃ僕も行ってくるね。お互い無事で帰ってこれるよう気をつけようじゃないか」
「おういってらっしゃい。そんでいってくる。10日後の夕食でまた会おう。今度は風呂の話を進めようぜ」
リーチェを送り出し再会を誓う。
フラグっぽい? いえ、こんなのただの日常会話ですから。
リーチェが転移したら後ろを振り返り、奴隷らしく後ろで控えていた2人に声をかける。
「それじゃ俺たちも出発しようか。準備は出来てるよね?」
俺の質問に力強く頷きを返してくれる2人。
最高に可愛いだけじゃなくて本当に頼りになる2人だよ。頼もしいなぁ。
「今回の遠征中にティムルは戦士になれるし、帰ってきたら少しは装備品を揃えることも出来ると思う。だからこそ今回無事に帰ってこれるように気をつけよう」
「はい。今回は私の矢も大量に用意してもらえましたし、いつも以上にご主人様のお役に立てるよう頑張ります。私はお風呂って体験したことがないので、知らないままで死ぬわけにはいきませんよ」
「私も戦士になれればニーナちゃんの負担も少しは減らせると思います。今はまだ2人の負担にしかなれていませんけど、今回の旅を終えられれば私のできる事も増えそうです。がんばりますねご主人様、ニーナちゃん」
出発前にお互いの状態を確認しあう。
今回の遠征に対しては、みんないつもより少し士気が高い。先に進むというのはいつだってワクワクするもんだよねぇ。
それに今回の遠征をやり遂げられれば変化する事はかなり多い。今回の遠征こそが1つの山場なのだ。否が応でも気合が入る。
好色家を見た後からは、俺の士気は常に最高潮を維持しておりますがね?
マグエルを出て、いつも通り徒歩でスポットへ。
1度ポータルの便利さを体験してしまうと、移動阻害の影響の大きさが身に染みてしまうな。ニーナを放置してスポットに入るなんて選択肢はないけどね。
いつも通り、2日間は休憩を取りながらも進み続ける。最早道中で苦戦する事もないけど、油断せずに進んでいく。
ティムルの旅人さえ上がりきってくれれば、少しは安心感も増すんだけどねぇ。
2日間の行軍を経て、いつも通りポイントフラッタに到着する。
今更だけどポイントフラッタってなんだよ。でも俺とニーナにとってこの場所の印象ってフラッタなんだよなぁ。
「それじゃ今回はここからも更に進んでいくよ。ただし休憩は多めに取るし、戦闘がきつくなってきたら進軍は中止ね。辛いと思ったらちゃんと言うように」
入り口から2日間移動しただけでも、魔物のレベルは確実に上がっているからね。野営しながらとは言え、3日間分奥に進んだ影響がどうなるか。気を引き締めないとな。
力強く頷き合った俺達3人は覚悟を決めて、まだ見ぬスポットの奥へと足を進めるのだった。
「前から聞こうと思ってたんだけどさ。この世界の種族とその特長について、改めて教えてくれない?」
俺は人間族。ニーナは獣人族。そしてティムルはドワーフ族だ。他にはフラッタの竜人族、リーチェのエルフ族なんかがあるのは分かってる。
そう言えばムーリさんの種族は知らないなぁ。
ベッドの上でニーナとティムルのことを全身くまなく調査しても、見た目だけでなく感触や味まで確かめても、外見的な違いは個性の範囲に留まっている気がする。
俺とニーナとティムルの3人が別の種族であるのは間違いないけれど、種族的な差は感じられない。
ニーナとティムルの2人の中で最も差がある場所の感触をもみもみと確かめながら、改めて種族について教えてもらうことにする。
「人目を避けて隠れ住んでいる稀少種族がいないとは限らないから、あくまで一般に知られている範囲という前提で聞いてね?」
俺の問いにザックリとした前置きを述べてから、ティムルが説明を開始してくれる。
「人間、獣人、ドワーフ、エルフ、竜人、魔人。この世界には現在この6つの種族が一緒に暮らしているわ」
へぇ? 魔人族なんてものいるんだ。
そして魔人族以外には既に遭遇していたようだ。結構網羅してたのね俺。
「人口比は人間と獣人がほぼ同数、次いでドワーフ、エルフ、竜人の順に減っていくと言われているわ。正確な数を調査したわけじゃないみたいだけど」
ふむ。確かに人間族と獣人族は多そうだ。その辺にも普通に歩いてる感じだしな。
ドワーフであるティムルも普通に生活しているけど、竜人族とエルフ族はそれぞれフラッタとリーチェにしか会ったことがない。ティムルの説明にも素直に頷けるな。
「魔人族はかなり少ないみたいで、本人たちもなるべく外部に知られないように生活してるみたいよ。交流はあるから居るのは間違いないんでしょうけど」
ティムルでさえこの程度の知識しかないってことは、魔人族のことはほとんど知られていないみたいだ。
そしてやっぱりフラッタって稀少種族だったのか。マルドック商会の1件はそんな稀少種族だからこそ起こった事件、か。
少し後ろ向きな感情が湧いてくるのを、両手から伝わる柔らかい感触に集中することで押さえ込む。
あれぇ? なんか柔らかい感触ばかりじゃないなぁ?
「人間は年がら年中発情するし、獣人はパートナーを見つけやすい事もあって人口が多めね。ドワーフは他種族との交流も盛んで、だからこそ異種族婚が珍しくないから人口が伸び悩んでいるの」
人間さんが年がら年中発情してるのは、俺自身がこれでもかってほど証明しちゃってるな。ドワーフの異種族婚の多さも、ティムル自身が証明してしまったねぇ。もみもみ。
「エルフは他種族との交流を制限しているんだけど、その長命さからか種族的に性欲が薄い事で知られているわ。だから新しくエルフが誕生すると種族全体で祝福する風習があるそうね」
確かにリーチェも言ってたね。新しい子の誕生を種族全体で祝うって。
よくもまぁそんなエルフから、誕生記念の品を盗もうとか思えるもんだよ。
「そして竜人は他の種族と比べると少し短命で、その上子供がかなり出来にくい種族と言われているわ。短命と言っても私たちより1割程度平均寿命が短いって程度なんだけど、出産率の低さは問題になってるの」
エルフと竜人の話は分かりやすいな。エルフは寿命が長く、竜人は竜ってくらいだし種族的に高性能なんだろう。命の危険がないからこそ出産率が低くなるわけだ。
……他の種族と比べて人間族さんの評価、もう少し何とかならなかったのかなぁ。
「魔人の事情は私もあまり知らないから、話を進めさせてもらうわね」
王国中を行商したというティムルすら詳細を知らない魔人族。いつか会う事はあるんだろうか?
「各種族にはそれぞれ特技があってね。獣人族は獣化、竜人族は竜化、ドワーフは熱を目で見れるようになって、エルフは風や植物の声を聞くことが出来ると言われてるわ」
獣化と竜化は以前耳にした覚えがあるけど、ドワーフは温度を可視化できるのね。サーモグラフィ的な?
そしてエルフは植物や風の声を聞けるのか。
そこだけ聞けば確かに調査向きの能力だけど……。リーチェのせいでエルフに変なイメージついてしまってるんだよなぁ。ポンコツ的な?
「魔人族は人によって特技の現れ方が違うみたいで、獣人や竜人のように魔獣化、魔竜化した例もあるらしいし、一時的に自身の魔力を爆発的に高めるなんてこともあるらしいわね」
魔獣化とか魔竜化とかロマンみ溢れるぅ。そこまで色々な話が伝わっているということは、ティムルが言った通り生存している事は間違いないんだろうな、魔人族って。
……ってかティムル。人間族の特技は?
「人間族のダンにこんなことを言うのも気が引けるんだけど……、人間族の特技って分かってないのよね。諸説あるけど、根拠が示されてるものって1つも無くて」
はぁ~……。これだから人間族さんはさぁ。もっと真面目に異世界やってよ。何か無いの? 超必殺技的な何かさぁ?
くっそー。獣人や竜人みたいに先祖返りしてもサルになるだけか? 何か無いのか人間族さん。お前は年がら年中発情してるだけなのか?
くそう、このやり場のない怒りを、手の中で大分固くなってきた場所にぶつけてやる。うりゃうりゃうりゃー。
……って、やっぱり発情してるだけじゃないかっ! 俺自身でこれ以上ないほどに証明しちゃってるよ!
「んっ……。ダン、私から1つ補足するね」
悩ましい吐息を零しながら、ニーナが会話に参加してくる。
「獣人族は獣化に成功するまで、自分がなんの獣人なのかわからないの。だから私もまだ自分がなんの獣人なのか分かってないんだ。んんっ……! ちょっとダン、そんなに引っ張らないでぇ……」
思わぬところで1つの謎が解けた。
ニーナは自分でも何の獣人かわかってなかったのかぁ。くいくいっ。
「自分がなんの獣人か紹介してくる人は、んんっ、既に獣化に成功したって証なの。そしてそれは獣人としてとっても誇らしいことなんだって教わったの。あんっ! もう、引っ張らなきゃいいってわけじゃないってばぁ……!」
人間族さんの種族特性の年中発情に従って、両手の動きを早めていく。
でも好色家は2人もなれるんだから、人間族さんの特性が発情するだけだとは信じたくないところだ。
「んっ、ニーナちゃんもまだ獣化できないみたいだけど、私もこの年で未だに熱視が発現してなくてね。ドワーフの熱視は早い人だと10歳の頃には発現したりもするから、そういう意味でも私は落ち零れ扱いだったの」
ティムルが落ち零れだなんてふざけてるよな。いくら落ちて零れても、その都度俺が掴んで引っ張り上げてやるからなっ。こんな風にっ。くいくいっ。
「お前が故郷の地に敬意を払わないから、故郷もお前に応えないんだって。あっ、んんっ……!」
故郷の評価なんか気にするな。ティムルの想いには俺が全力で応えてやるから。
むしろ過剰なくらい応えてやるから。もう充分って言われてもやめないから。
「人間族が本当にどうしようもない事は分かったけど、獣化や熱視? の発現条件とかは詳しく分かってないの?」
「こらぁ。引っかいちゃダメなのぉ。んんっ」
ええ? だってニーナが引っ張っちゃダメって言ったんじゃん。かりかり。
次第に乱れる呼吸を必死に押さえ込みながら、頑張って俺の質問に答えてくれるニーナ。
「ふ、うぅ……! 獣化は歴戦の強者にのみ許される能力だって、父さんが言ってたよ。父さんも母さんも獣化できてたから、んあぁっ! 2人とも本当に優秀な戦士だったんだと思う。はぁんっ……!」
歴戦の強者にのみ許された能力。つまりは一定以上の経験値獲得で発現するのか?
そう考えるとフラッタヤバいな。短命ってことだから見た目通りの年齢だろうに、もう竜化できるようになってるとは。いったいどれ程の魔物を狩ったんだろう?
「ああん、もうっ。玩具じゃないったらぁ。グリグリだめなのぉ……」
甘い吐息を零しながらくすぐったそうに身を捩るティムル。
ダメと言いながら一切抵抗しないんだから、玩具にされても仕方ないよねっ。
「ド、ドワーフの熱視は本当に人それぞれで、はぁんっ! はぁ……。比較的、鍛冶仕事を手伝う機会が多い子が早く目覚めているかも知れないわねっ、んんんんっ……! なんでぇ……。玩具にされるの嫌だったのにぃ……。なんでもっとして欲しくなっちゃうのぉ……?」
もっとして欲しいというティムルに応えて指の動きを早めながら、彼女の説明してくれたことを考える。
鍛冶仕事を手伝う機会が多い子供? 鍛冶屋なんかの子供が発現しやすいのなら、つまり熱視は遺伝する能力ってことか?
……いや、それとも単純に火と向き合う機会の多さ?
焚き火や料理なんかじゃダメで、鍛冶仕事じゃないといけないって事は、火を使ってなにか工芸品を作る必要がある?
ティムルが熱視とやらを習得できたらどうなるか。
潜伏している魔物の体温などを可視化する事が出来れば、野外で奇襲される可能性がぐんと低くなるんじゃないかな。
魔物にはもしかしたら例外もいるかも知れないけど、野生動物や人間は体温を隠すことは出来ないはずだ。仕事に使う能力だとすれば消耗もそれほど多くないはず。
熱視を発現したら、サーモセンサー的な役割を試す価値は充分にあるね。
「んああっ。もう、考え事するなら手を止めっ、やぁんっ。ダメ、このままじゃダメっ、だめぇっ……!」
考え事をする俺の耳に、甘く官能的なニーナの声が届けられる。最高のBGMだな、もっと聞きたい。もっと聴かせてニーナ。くりくりっ。
「はぁんっ! ティ、ティムル、反撃するよっ。ぁんっ!」
「ふうううっ。ダンが、ダンがその気なら、あああっ、こっちだって受けて立とうじゃっ……。あっあっあんっ、受けて立とうじゃ、んんんっ、ないのっ……!」
ん? あれ、2人ともそんな怖い顔してどうしたの? いや笑顔なのは分かってるけど、なんか怖いんだよ?
明日から遠征だから今晩は疲れを残さないようにっ……て、え、関係ない? 関係ないことなくない?
悪いのは俺? え? 種族の話を教えてもらっただけじゃ? どうしてそんな素敵な笑顔で俺に覆い被さってくるのかな?
お仕置き? え、ご褒美の間違いでは? 大好きな2人が積極的になってくれるなんて嬉しすぎるんだけど?
2人がその気なら拒む理由は何もない。受けて立とうじゃありませんか。かかってきなさい2人とも。俺の本気をお見せしようではないかっ。
明日からの遠征? 知らん知らんそんなもの。今この瞬間以上に大切なことなど何もないわぁっ!
2人からのキスで延長戦がスタートする。2人共、今夜は寝れると思うなよぉ? わぁい、2人とも大好きー!
戦意に満ち溢れた2人に応えながら考える。
本当に最高の2人で極楽のような毎日なんだけど、流石に好色家の育成を急ぐべきかもしれないな。なんて。
翌朝、ニーナとティムルに出発前の最後の目覚めのキスをする。
遠征に行ってしまうと気持ちを緩める余裕は無いから、出発前の最後のタイミングで、これでもかってほど身も心も弛緩させる。
寝室を1歩出たら遠征モードだから、寝室では全力の甘々めろめろ甘やかしモードを堪能した。
「それじゃ僕も行ってくるね。お互い無事で帰ってこれるよう気をつけようじゃないか」
「おういってらっしゃい。そんでいってくる。10日後の夕食でまた会おう。今度は風呂の話を進めようぜ」
リーチェを送り出し再会を誓う。
フラグっぽい? いえ、こんなのただの日常会話ですから。
リーチェが転移したら後ろを振り返り、奴隷らしく後ろで控えていた2人に声をかける。
「それじゃ俺たちも出発しようか。準備は出来てるよね?」
俺の質問に力強く頷きを返してくれる2人。
最高に可愛いだけじゃなくて本当に頼りになる2人だよ。頼もしいなぁ。
「今回の遠征中にティムルは戦士になれるし、帰ってきたら少しは装備品を揃えることも出来ると思う。だからこそ今回無事に帰ってこれるように気をつけよう」
「はい。今回は私の矢も大量に用意してもらえましたし、いつも以上にご主人様のお役に立てるよう頑張ります。私はお風呂って体験したことがないので、知らないままで死ぬわけにはいきませんよ」
「私も戦士になれればニーナちゃんの負担も少しは減らせると思います。今はまだ2人の負担にしかなれていませんけど、今回の旅を終えられれば私のできる事も増えそうです。がんばりますねご主人様、ニーナちゃん」
出発前にお互いの状態を確認しあう。
今回の遠征に対しては、みんないつもより少し士気が高い。先に進むというのはいつだってワクワクするもんだよねぇ。
それに今回の遠征をやり遂げられれば変化する事はかなり多い。今回の遠征こそが1つの山場なのだ。否が応でも気合が入る。
好色家を見た後からは、俺の士気は常に最高潮を維持しておりますがね?
マグエルを出て、いつも通り徒歩でスポットへ。
1度ポータルの便利さを体験してしまうと、移動阻害の影響の大きさが身に染みてしまうな。ニーナを放置してスポットに入るなんて選択肢はないけどね。
いつも通り、2日間は休憩を取りながらも進み続ける。最早道中で苦戦する事もないけど、油断せずに進んでいく。
ティムルの旅人さえ上がりきってくれれば、少しは安心感も増すんだけどねぇ。
2日間の行軍を経て、いつも通りポイントフラッタに到着する。
今更だけどポイントフラッタってなんだよ。でも俺とニーナにとってこの場所の印象ってフラッタなんだよなぁ。
「それじゃ今回はここからも更に進んでいくよ。ただし休憩は多めに取るし、戦闘がきつくなってきたら進軍は中止ね。辛いと思ったらちゃんと言うように」
入り口から2日間移動しただけでも、魔物のレベルは確実に上がっているからね。野営しながらとは言え、3日間分奥に進んだ影響がどうなるか。気を引き締めないとな。
力強く頷き合った俺達3人は覚悟を決めて、まだ見ぬスポットの奥へと足を進めるのだった。
11
お気に入りに追加
1,820
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編

男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にいますが会社員してます
neru
ファンタジー
30を過ぎた松田 茂人(まつだ しげひと )は男女比が1対100だったり貞操概念が逆転した世界にひょんなことから転移してしまう。
松本は新しい世界で会社員となり働くこととなる。
ちなみに、新しい世界の女性は全員高身長、美形だ。
PS.2月27日から4月まで投稿頻度が減ることを許して下さい。

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる