異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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2章 強さを求めて1 3人の日々

058 好色家の天啓 (改)

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 爽やかな朝日を浴びて目を覚まし、眠い目を擦りながらニーナとティムルの寝顔を見た瞬間、まるで電流が走ったような閃きが舞い降りた。


 な、なんということだ……。お、俺はなんということに気づいてしまったんだ……!

 自分の才能が恐ろしい。俺はまさに天才……。いや、これは神をも恐れぬ悪魔の所業……!


 ニーナとティムル。2人と幸せに暮らしていく為に思いついた、その悪魔的な発想とはっ……!


『好色家、マグエルにいる間に上げれば良くね?』


 というものだった。


 この世界の職業LVを上げる方法は、基本的に魔物を倒して経験値を得る必要がある。なので育成したい職業があれば、意識して魔物と闘う必要があるわけだ。
 そしてそれは職業設定を持つ俺でも変わらない。

 しかしここで1つの例外が存在する。

 そう! 村人の経験値自動獲得-の存在だ。


 経験値自動取得。つまりは何もしなくても職業の育成が進むという夢のような効果である。

 問題点としては好色家に戦闘補正が無い事だけど、街の中に入ってしまえば魔物に襲われる心配はない。
 仮にその辺のチンピラに襲われることがあっても、職業補正は対人戦にはあまり影響しない。つまり常時好色家でも何も問題はない。証明終了だ。


 1つ懸念があるとすれば、経験値自動獲得-の効果が低いことだ。

 この世界では15歳になるまで奴隷取引が禁止されている。それは恐らく、買った奴隷が確実に村人以外の職業に転職出来るように、という配慮なんだと思う。

 以前開拓村の生存者の、あの子確か10歳だったっけ? まぁそのくらいの男の子が村人LV7だったと記憶している。生まれた瞬間から村人だったと仮定するなら、1年に1レベルも上がっていないことになる。
 村人のレベルが上がれば補正効果も上がるのかもしれないけれど、年単位でレベルが上がらない程度の気休めみたいなパッシブ効果だといえる。


 ……だがしかし、その効果は決してゼロではない。決してゼロではないのだぁっ!

 どうせもう2人の事は生涯手放す事はないのだし、年単位、生涯単位で育成計画を進めてもなんら問題はないのだよっ。


 ティムルを迎えた事は決して後悔していないけど、多少不安に思ってることはあった。寝室方面での体力だ。
 現状ニーナ1人にすら劣勢を強いられているというのに、そこにティムルという新戦力が投入されてしまったのだ。不安に慄くのも当然だろう。

 ニーナとの触れ合いを減らすことは出来ない。けれどもティムルとももっと触れ合いたい。

 現実はいつだって残酷で、あちらを立てればこちらが立たず。もう少しで自分の不甲斐なさに枕を濡らす日々を送らなければいけたいところだったのだ。


 そんな時、相手勢力だけではなく自分側にも好色家という新兵器が齎されてしまったのだ。激化する闘争。人は何故、力を求め争うのか。


 そんなの決まってる。2人の事が大好きだからだ。


 大好きな2人と愛し合うためならどんな力だって求めるのは当然だ。もう全て投げ出してずっとベッドの上で過ごしたいくらいだ。
 まだ眠ったままのニーナとティムル。かわいい。なでなで。ぎゅー。


 俺はこの2人を生涯愛すると決めたんだ。だから2人が俺の物になったからはい終わり、ってわけにはいかない。

 2人とも責任を持って全力で幸せにしなければ。求められたら応えなければ。求められなくても多分応えちゃうと思うけど?

 彼女達の愛情と俺の欲情に応える力が必要なんだ。だから好色家を育てるのは必要な事で仕方のないことなんだ。

 うん。完璧な理論武装だ。


 要は2人といっぱいイチャイチャしたいから、戦闘能力や資金稼ぎよりも、エロの為に好色家を優先したいと言っているだけの話なんだけど。

 ニーナとティムルに求められる事を、辛いとは思いたくないからね。


 主にエロ方面の決意を新たに、意を決してベッドを出る。
 このままずっと2人が目を覚ますまで一緒にいるのいいけれど、遠征の疲れの残る2人のために朝食の用意くらいしておくのが、男の甲斐性ってものでしょ。

 2人を起こさないように気をつけながら、静かに寝室を出る。そして忘れずに職業を好色家に設定しつつ炊事場に向かう。

 そして1階の食堂に座っていたリーチェを発見。やっぱ戻ってきてたか。


「おはようリーチェ。ただいまって言うべきかおかえりって言うべきか迷うところだけど、今から朝食を準備するよ。食ってく時間は大丈夫?」

「おはようダン。10日間家を空けていた君たちに、僕からはおかえりなさいと言わせてもらいたいね」


 時間も問題ないと朝食の準備をお願いされた。今日は4人揃って食べられるみたいだな。


 食事の支度に炊事場に向かうと、後ろからリーチェも付いてきた。ニーナもティムルもまだ寝てるし食堂で1人待ってても退屈か。

 調理技能は壊滅的だと自己申告を受けているので、手伝いはさせずにただの話し相手要員になってもらおう。


「あ、そう言えばリーチェ。世界樹の護りを盗まれた時って入浴中だったって言ってたよね?」

「へ? うん。それがどうしたのかな?」


 昨日寝る直前にお風呂が恋しくなったことを思い出す。

 リーチェは入浴の経験があるみたいだから、この世界のお風呂事情について聞いてみよう。


「俺まだお風呂って見たことないんだけどさ。やっぱり金持ちじゃないと体験できなかったりするの?」

「そうだねぇ。確かに贅沢品だと思うよ。僕だって自腹を切ってまで入浴施設のある宿は取りたくないな」


 やはりこの世界で入浴するのは敷居が高そうだ。アッチンで泊まった高級宿でも入浴施設はなかったからなぁ。


 しっかし、リーチェでも自腹を切りたくないレベルのお値段なのかよぉ……。

 って、今更だけどリーチェの稼ぎとか全然知らなかったな?


「今回盗難に遭ったネプトゥコの宿は、恐らく金貨数枚くらいは必要なんじゃないかな?」

「うわぁ……。そりゃあ見たことないワケだよ。俺が高級宿だと思ってたところは1泊500リーフ弱。銀貨5枚未満だもんなぁ……」


 アッチンの宿より最低でも20倍以上、下手したら100倍近い料金の宿なんていったいどんな宿なのよ? 本当に超一流の最高級宿って感じなんだろうな。

 ステイルークでは宿代はかからなかったし、ステイーダで泊まった宿は2人で1泊120リーフだった。それでも個室つきの宿だったので、この世界にはもっと安い宿泊施設はいくらでもある。

 だから1泊450リーフの宿はかなり高級だと思ったし、実際宿のサービスは満足がいくものだった。


 450リーフの宿でも不満は無かったのに、ただ入浴したいってだけで金貨を支払うのは流石に……、ねぇ?


「んー……、そんな高級宿じゃないと用意できないんじゃ、うちに風呂を設置するっていうのは難しそうだなぁ」

「えっ!? お風呂っ!? この家にお風呂を作る気があるのかいっ!?」

「どわぁっ!?」


 一瞬で俺の目の前に居たリーチェ。

 目で追えなかったとか、反応できなかったなんてレベルじゃない。本当に気付いたら目の前に立っていて滅茶苦茶びっくりした。


 こいつ……、中身フラッタなんて言ってしまったけど、あのフラッタと比べても圧倒的な実力者なんだな、やっぱり。

 飯とか風呂とか反応するワードのせいで、どんどんポンコツ度も増している気はするけどさ。


「近い。離れろ。落ち着け。あったらいいなって思っただけだよ」


 詰め寄るリーチェに対して、俺は下がって距離を空ける。

 俺自身は10日間の遠征で疲労以外の物もめちゃくちゃ溜まってるのっ! お前クラスの美人に至近距離に寄られると色々まずいんだよっ!


「今回の遠征でみんな疲れが溜まってるからさ。お風呂に浸かって疲れを癒せればなぁって思ったんだ。でもリーチェの話を聞くと、かなりお金がかかりそうだよね」

「そ、それなら僕が出すよ! 僕がお風呂の設置費用を負担する! だからっ……!」


 食い下がるようにまたしても距離を詰めてくるリーチェ。

 だから近いってばっ! 初対面でもお前には見蕩れるくらいだったんだよっ! 今の俺の状態で近づいてきちゃダメだってばぁっ!


「却下。リーチェもここの住人だと思ってるしその気持ちはありがたいけど、流石にそこまではさせられないよ。俺とニーナの2人の手に余るようなことには手を出すワケにはいかないんだ。悪いね」

「う、う~……! でも、いや、う~……!」


 居候である立場を理解しながらも、それでも諦めきれないと唸るリーチェ。

 飯と風呂の話題で涙目になるのやめろよ英雄殿。姫エルフの名が泣いてるぞ。


 そんなリーチェを励まそうと、いつもニーナにしているようにぽんぽんと頭を撫でてやる。


「あっ……」

「そんな顔するなって。別にお前に意地悪してるわけじゃないんだからさ」


 リーチェは本当にお風呂が好きみたいだし、俺もお風呂の設置には前向きではいるけれどさ。友人であるお前にそんな大金を工面させるわけにはいかないっての。


「ここは俺とニーナの生活の拠点だからさ。今まで2人で1から整備してきた場所なんだ。だからもらって終わり、なんてつまんないことしたくないんだよ。でもありがとな」


 始めは俺とニーナの2人だけだったこの家に教会の人たちが加わって、今度ティムルが増えて、なぜかリーチェも同居することになった。

 みんなが増えた事でこの家がどう変わっていくのかが楽しみすぎて、出来ればゆっくり整備していきたいんだよなぁ。
 

 俺の言葉に後ずさり、ぽんぽんなでなでから脱出するリーチェ。


「こ、これでも僕は君よりずっと年上なんだぞっ!? き、気安く頭を撫でたりしないでほしいなっ!?」


 古き良き時代のツンデレみたいなセリフを真っ赤な顔で言わないでくれないかなぁ?

 そんな風に顔を真っ赤にして距離を取ってるあたり、全然年上感無いんですよリーチェさんってば。


「年上だったら年上らしいところ見せてくれますぅ? メシのためにうちに押しかけてきたり、風呂の為に俺に詰め寄ってきたりする年長者ってどう思いますかぁ?」

「完全に意地悪してるじゃないかっ! ダンは本当にイジワルだーっ!」


 こらこら叫ぶんじゃないよ。まだニーナもティムルも寝てるんだから。

 リーチェのことを中身フラッタとか言っちゃったけど、フラッタはむしろ何にも動じないところがあるんだよな。俺におっぱい触られた時も動じなかったし。

 そんなフラッタに対して、リーチェは何事にも動じすぎじゃない?


 ふーっ! ふ-っ! と警戒心の強い猫のようなリーチェを宥めるために、お風呂の話題に話を戻す。


「リーチェにお金出して大工に頼んで終わりー、じゃつまんないだろ。みんなで協力してみんなでお風呂を用意したほうが絶対面白いって。だからお金よりもなんかアイディア出してくれよ」

「みんなで協力して用意する、かぁ。うーん、面白そうだとは思うんだけど、僕にはそういった事がなにも分からないよ。そんなんじゃお風呂の完成がいつになるか……」

「いいじゃん。別にいつになったって。お前は長命な種族だし、俺たちはこの家を手放す気もない。だから気長に構えりゃいいだろ」


 あー、うちに風呂を用意するならに、庭にでも教会の子供たちが入れるような入浴施設も作るべきかなぁ。衛生的にはあったほうがいい気がする。

 ……でも、なんか風紀が乱れそうな気がして仕方ないな。覗きとか。事案が勃発しかねない。やめておくべきか。


「長命だから気長にかぁ。そういう考え、久しく忘れてたよ。ダンは短命種の割にエルフっぽい考え方するね?」

「そりゃ自分の寿命が短命だとは思ってないからね。エルフを羨んで寿命が延びるわけでもないし、自分の寿命なんて気にしても仕方ないでしょ」

「おはようございまーす。ダンさん、ニーナさん、お戻りになってるんですかー?」


 リーチェと話していると、玄関からムーリさんの声が響いてきた。どうやら我が家の窓を開けに来てくれたようだ。


「帰ってるよー。もうすぐ朝食だから良かったら一緒にどうぞー」


 玄関口の方から、はーいありがとうございまーすという元気な声が返ってくる。

 あ、ムーリさんを中に招くのは良いんだけど、ニーナとティムルが寝ている間に朝食を取るわけにはいかないよな。でももうムーリさんを中に入れちゃったから……。


「悪いリーチェ。ニーナとティムルを起こしてきてくれる? 寝室の場所は分かるよね?」

「……それは構わないけど、まさか情事の後じゃないだろうね? 同性でもあまり見るべき姿じゃないと思うんだけど?」

「昨日はそのまま寝たからみんな服着てるよ。じゃあ頼むな」


 ならいいけど、と炊事場を出ていくリーチェ。入れ替わりにムーリさんが顔を覗かせる。


「おはようございますダンさん。そしておかえりなさい。ご無事で何よりです」

「おはよう。そしてただいまムーリさん。家の掃除も助かったよ。いつもありがとね」

「いえいえ。正式に依頼されたお仕事ですから。ご満足いただけてなによりです」


 お金を払った正式な依頼の為か、毎回家の中はピカピカに保たれている。多分俺が自分で掃除するよりよほど綺麗に維持されていると思う。


「あ、依頼と言えば家庭菜園の件ですよっ。子供たちには以前にもお話してあったそうですね?」


 そう言えば子供達にはチラッと話したことあったんだっけ。すっかり忘れてたわ。


「今回子供達に話をしたら、みんなとっくに色々考えていてくれたみたいで、すっごく張り切ってるんですよっ。なのでその話も早いうちに打ち合わせできたらありがたいんですがっ」

「了解。マグエルにいる間に1度教会に顔出すよ」


 嬉しそうに声とおっぱいを弾ませるムーリさんに、全力で平静を装って返答する。

 子供達は張り切ってるのか。実際に作業する人員の士気が高いのはありがたいね。俺達の家の庭だけど、恐らく俺達は手伝い程度しか関われないだろうからなぁ。


「俺たちはどうしても魔物狩りメインで家を空けがちになると思うから、教会の子供たちが中心となって作業してもらうことになると思う。よろしくね」

「はーい! 頑張っちゃいますよぉ!」


 両腕を畳んで肩の辺りで拳を握るムーリさん。
 両肘に圧迫された胸が圧縮されて、ぎゅうっ! と。うん。ぎゅうっ! ってなったね。

 ティムルという新戦力投入に隠れて、こんなところに伏兵だとぉ……! 目が、目が吸い込まれてしまうぅ……!


 ……うん。ほら俺の今の職業って好色家だからさ? エロいことで頭がいっぱいなのは職業病に違いないよ。多分?
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