異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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1章 巡り会い2 囚われの行商人

046 報告会 (改)

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 ティムルと口付けを交わしてから警備隊の詰め所を後にする。ティムルの購入の流れも決まったし、あとは目的に向かって行動するだけだ。


 ネプトゥコの街で適当に食べ歩きをしながら、屋台の主人やギルドで出会った人たちに話を聞いて回る。どうやらあまり窃盗の件は広まっていないようだ。

 というかマルドック商会壊滅の影響が大きすぎて、街全体が未だにショックから立ち直れていないみたいだなぁ。

 ひと目見ても普通の街並みなんだけれど、その住人の多くは不安を感じている。近場で大虐殺が起こり、大量殺人犯が野放しになっているのだから、そりゃあ不安だろうなぁ。


 その一方で、商売人たちには少しギラついたものを感じる。

 領主すら抱きこみ、長年この街を牛耳っていた大商人のマルドック商会が、文字通り皆殺しにされたのだ。突如齎された沢山の空席に我先にと飛びついてしまうのは商人の性と言ったところかね。


 散策したところ、どうやらネプトゥコにもシュパイン商会の店舗があるようだ。

 この場所も調べてみないといけないかもしれないので、一応場所を覚えておく。


 ネプトゥコの街をひと回りしたところで日没近い時間になった。タイムアップだね。今日のところは帰ろっと。

 職業設定を起動し冒険者に転職する。
 移動魔法を使うたびにいちいち冒険者に設定しないといけないのは少々面倒だなぁ。贅沢な話なのは分かってるけど。


 ポータルで家の前まで一気に転移すると、家の前でニーナが草むしりしていた。すぐに帰宅した俺に気付いて姿勢を正してくれる。


「おかえりなさいませご主人様。ご無事でなによりです」

「ただいまニーナ。ニーナも無事で安心したよ。こっちの方は大きな問題もなさそうだよ。夕食の時にでも詳しく話すね」


 それから日が落ちるまで、2人で仲良く草むしりを続けた。

 今日1日離れ離れでいたせいか、何気ない草むしりの時間でも、ニーナと一緒に過ごしているというだけでなんだか愛おしく感じられるのだった。


 
 家中の戸締りを確認し、夕食の準備も整った。

 2人で夕食を食べながら、改めてお互いの活動を報告しあう。


「私のほうは本当に問題なかったかな。魔物の強さも数も、ちょっと生温く感じたくらい?」


 やはり日帰りできる程度の浅い場所なら、今のニーナが危険な目に遭う心配は無さそうだ。

 ソロで魔物狩りをしていたはずのニーナなのに、商人LV26のままでレベルアップはしていない。やはり浅い場所ではレベリング効率が悪そうだなぁ。1人で無理させるわけにはいかないから仕方ないんだけどぉ。


 ニーナの報告の後は、俺の活動報告を済ませる。
 ティムルへの先払いの1件は黙っていたかったけど、後からバレる方が怖そうなので素直に申告しておいた。

 申告したけど、ニーナからのお咎めは無い模様。


「ティムルをうちに迎える流れに問題はなさそうなんだね。でも、購入金額が結構辛いね。50万リーフとか、流石に手が届かないよぅ」

「50万は素人の見立てだけどね。でもティムルが安く買えるって事はないでしょ? 見た目的にも能力的にもさ」


 ったく大商人の癖に、自分の能力と美貌を無視して売値を算出するなよなぁ。

 謙遜でも自虐でもなく、一般的な32歳の女奴隷と同列に語りやがってぇ。お前のような一般女性がいるか。


「だよねぇ~。ティムルくらいの美人なんてそうそう……。あれ? なんだかダンの周りにはいっぱいいるんじゃないかなぁ?」

「その美人の中にちゃんとニーナも含めてよね」


 からかうように詰め寄ってくるニーナをカウンターで迎撃。ちょっぴり照れてるニーナがめちゃくちゃ可愛いんですけど?


「まぁそういうわけで、お金はいくらあっても足りない状況なんだよ。ニーナには申し訳ないけど、このまま魔物狩りを続けて欲しいんだ」


 日帰りのソロ狩りで稼げる金額なんかたかが知れてるけど、それでもインベントリ持ちで戦士LVがカンストしてるニーナの稼ぎは、他の人よりも断然多いはず。


「狩りを続けるのは大丈夫だけど、どのくらいかかる予定か分かる? ティムルの購入資金でお金が無くなっちゃうと、納税や家賃の話も変わってきちゃうよ?」

「だねぇ。なるべく早めにケリをつけるよ」


 お金の心配以上にニーナと別行動を強いられるのが耐えられない。こんなに可愛いニーナと一緒にいられないなんて辛すぎるんだよぉ!


「ティムルの拘留が長引いてるのは、盗難被害にあったエルフが、ティムルを犯罪者として罰したがってるからなんだってさ。つまり相手のエルフに賠償請求だけで納得させることが出来れば、ティムルを即日買い取ることも可能だと思う。明日会ってみないと分からないけどね」


 今回の件で鍵を握るのは、世界樹の護りという盗難品だ。これさえ返却できれば、エルフ側と交渉するのは簡単だと思うんだよね。


「なるべく早く終わらせてね。1人で狩りをするのは問題ないけど、やっぱり寂しいから」

「分かってる。俺だってニーナを1人にしておきたくないからね。全力で急ぐよ」


 思わす夕食を取る手を止めて、ニーナの体を抱きしめる。

 俺だって寂しいよニーナ。だけどお互いもうちょっとだけ頑張ろう。


「……まぁ終わったら終わったで、賑やかになりそうなんだけどさぁ」

「ふふ。いいよ。寂しいよりはずっといい。ちゃーんとティムルの部屋も用意しておくから、早く一緒に帰ってきてね」


 ……ティムルの部屋って本当に必要なのかなぁ?


 報告会も終わり、夕食を片付けて寝室へ。

 遠征を含めて1週間、昨日もなにもできなかったので、その分とても盛り上がった。


 特に先払いの話をしたのがまずかったのか……、いや良かったのか? ニーナがいつも以上に情熱的にキスをねだる。ソロ狩りの疲れなんて一切なさそうですね?

 こんなに愛してくれるニーナが居るのに、これからティムルを新たに引き取ろうなんてさ。俺ってだいぶクズ男じゃね?





 翌朝少し早起きして、警備隊とティムルへの差し入れを用意する。

 1人で準備するつもりだったけど、ニーナがずっと引っ付いてきたので、せっかくなので手伝ってもらった。


 俺は別に料理好きなわけじゃないんだけど、ニーナとイチャイチャしながら料理するのめちゃくちゃ楽しいから困る。

 楽しすぎて、予定より時間がかかっちゃうのが普通に困った。


 2人で作ったおかげで予定よりだいぶ大量になってしまった。

 うん。これだけあれば充分でしょ。別に詰め所の人全員に配ると約束したわけでもないし。
 
 作った料理はインベントリに収納できないので、リュックにギュウギュウと詰め込んだ。


 予定より少し遅くなってしまったけど、冒険者ギルドに寄らずに済むので問題ない。あっちの詰め所近くに直接出ても、仲間に冒険者がいれば別に普通だから、俺が行商人でも矛盾しない。


 さて出発しようと家を出ようとしたときに、ニーナに後ろから強く引っ張られて体勢を崩してしまう。

 へ? と思って振り返ると、頭を抱えられて口を塞がれてしまった。


 口の中をニーナに蹂躙されるのを感じながら、無理な体勢のために首と腰が普通に痛い。抗議したくても口は塞がれ、頭はニーナに両腕でがっちり抱え込まれている。

 こ、腰がぁ……! 腰が痛いのぉ……!


 どのくらいの間、その状態だったか分からない。

 天国と地獄を同時に味わいながら、まさに天国の方は味わいましたが、ニーナが俺を解放してくれた時は腰が痛くて変な汗をかいてしまった。


「っぷはぁ。はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ~……」


 キスだけで吐息を乱しているニーナが最高にエロい。それだけで痛みを忘れてニーナに見蕩れてしまいそうに……、いややっぱ痛いわ。


「……ねぇダン。貴方昨日の夜、またつまんないこと考えたでしょう?」


 え、つまんないことってなに? ごめんニーナ。腰と首が痛くてそれどころじゃ……。


「ティムルをここに迎えるのは、貴方じゃなくて私達の望んだこと、なんだからね。つまんないことで悩まないで、早く2人で帰ってきて。分かった?」

「う、うん。それは分かってるよ? 大丈夫、大丈夫だから、次は不意打ちは止めてくれるかなぁ……?」


 不意打ち自体は歓迎っていうか、嬉しいっていうか、最高だったんだけどね? でもちょっとだけ体勢を考えて欲しかったなぁってね?

 ……って俺、マジで何を考えてたっけ? 首と腰の痛みとニーナの感触しか覚えてないんですけど。


「マジで今ので全部忘れちゃったよ。覚えてないけど心配かけてごめんね」

「ううん。大丈夫。ティムルもダンも一緒に帰ってきて欲しいだけだから。早くティムルを助けてあげようね」


 出発前に、今度は俺からニーナにキスをする。
 さっきまでの激しさが嘘のように、まるで俺の事をあやすような舌の動きを堪能してから、改めてネプトゥコに転移した。


 詰め所に入って、ティムルとの面会、エルフとの面会、その両方について問い合わせる。


「ああ、先方も会ってくれるそうだ。なんでも盗難品は大切なものらしくてな、探してくれる人手が増えるのは歓迎らしい」


 牢屋に向かいながら説明を受ける。どうやら会えそうで何よりだ。


 ティムルの牢屋の扉を開けてもらい、早速ティムルに差し入れを渡す。たぁんとお食べっ。

 勿論警備隊の人にも手渡す。賄賂の大切さは昨日学習済みだからね。


「お、美味しいっ! なにこれ! めちゃくちゃおいしいじゃないっ!」

「う、うまぁっ!? なんじゃこれ!? うますぎねぇか!?」

「2人とも大袈裟だなぁ。ただ具材をパンに挟んだだけの料理でしょ? その辺の屋台にも売ってるじゃん」


 料理チートじゃあるまいし、俺に常軌を逸した美食なんて作れないってば。多少採算は度外視したくらいで、こんなのただのハンバーガーモドキでしょ。

 違いがあるとすれば、さっき作ってきたばかりの出来立てって事くらいでさ。


 この世界の料理はあまり何種類も調理料を使用しないものが多くて、しょっぱいものはしょっぱい、甘いものは甘い、とはっきりしている。

 ということで、単純に俺が好きな甘じょっぱい味付けで炒めた肉を挟みこんだだけだ。パンもちょっとお高めの、柔らかいものを使用したけど。このくらいなら常識の範囲内でしょ?


 日本にいた頃はほとんど自炊なんてしてこなかったけど、そんな俺ですら日本の調味料の万能さを思い知る日々だ。

 日本の食品メーカーさんにはもっと感謝すべきだったなぁ。ってなんの話だっての。


「ティムルにはお茶も持ってきたから、ほれ。いつも夕食で飲んでたやつな。流石に冷めてるけど」

「あ、ありがとう……?」


 なんだか少し惚けた感じで俺の差し出したお茶を受け取るティムル。

 食欲も普通にあるみたいだし、変に消耗している様子はなさそうだ。


「私今、拘留されてるのよね……。なんなのこの扱いは……」


 気にしない気にしない。差し入れ許可はしっかり貰ったからな。これはルールの範囲内だ。


 しかしティムルと話していると、この場に立ち会っている警備隊の人が大声で他の隊員を呼び、大量の差し入れを献上することになってしまった。

 元々詰め所の皆さんに配るつもりで持ってきたんだから不満もない、けど集まりすぎなんだよなぁ?


 不満はなかったけど影響はあった。ハンバーガーモドキを配った後は、詰め所のみんながめっちゃフレンドリーになってしまった。

 変に敵意を持たれても困るんだけど、こんな男臭い場所でモテたくだってないよぉ。


「確かに彼女さんは美人だからなぁ。お前さんが世話を焼く気持ちも分かるぜぇ。でもよぉ、流石に年が行き過ぎてるとは思わねぇのか?」

「ばっかお前、女房なんてのは年上のほうが上手くいくもんなんだよ! 男なんて馬鹿だからよぉ。姉さん女房にしっかり手綱を握ってもらった方が上手くいくってもんだぜ」

「いやぁ俺は年齢よりも種族のほうが気になっちまうぜ。2人がどれだけ好き合っても子供が産めないってのは、後々大きくなってくるもんなんだ」


 なんだかんだとティムルと面会中の俺の回りに、沢山の警備隊員が集まってきてしまった。

 いやいやあんたら仕事しろよ。なにハンバーガー食いながら話に花を咲かせてるわけぇ? 仮にも最近大量虐殺があったばかりの場所だろっ。


 差し入れが好評だったおかげか面会時間は無制限に延長され、俺はずっとティムルと一緒にいることが出来た。そもそもエルフ待ちなんだから、差し入れがなくてもずっと面会できたのかもしれないけど?

 夫婦とか恋人扱いされる度に、ティムルが頬に両手を当ててくねくねしていた。可愛いなこいつ。



 鉄柵越しに手を繋いだティムルと共に警備隊員に弄られること数時間。ようやくエルフ到着の一報が届けられた。


「被害者側のエルフが見えたぜ。待たせると心証を損なうだろうしさっさと来な」


 ようやくお出ましかぁ。こっちが早めに来たとはいえ、結構待たされたなぁ。

 おかげで数時間ティムルと一緒に入れたのは良いんだけど、ここにいる人たちが仕事をサボっていた時間でもある。怒られてしまえー。


 ティムルとまた触れる程度のキスを交わしてから、相手の待つ部屋に案内してもらう。

 牢屋とは全く作りが違う扉の前まで案内されて、入室する前に警備隊員が釘を刺してくる。


「相手は被害者なんだから、自分の思い通りに話が進まなくても感情的になるんじゃないぞ」

「分かってるよ。被害者の人とやり合う気なんてないってば」

「その言葉を忘れるなよ? ダンを連れて来た! 入るぞ!」


 返事を待たずに扉を開けて入室する案内の人。俺も続けて入室する。

 部屋の中には警備隊の人と思われる男が3人ほど立っている。


 それと中央のテーブルに、フラッタと同じくらい美しい妙齢の女性が1人、足を組んで座っていた。
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