異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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1章 巡り会い1 スポットでの出会い

040 礼拝日 (改)

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「せいっ!」


 白刃一閃。

 正面から突進してきたブルーフィッシュを、真っ向からロングソードで叩き斬る。

 そのまま両断したブルーフィッシュには目もくれずに地面を蹴る。


 もうこの付近のほぼ全ての魔物の耐久力は把握出来てる。1撃で倒せる魔物なんて残心する必要もない。


 近付いてくる魔物の群れに自ら突っ込み剣を振るう。
 こんな行動以前の俺なら自殺行為も甚だしいが、今の俺なら余裕で対応できる。

 炎を放つ大型の蛾フレアモスを両断。悪いが魔法は撃たせないよ。


 木々の間から石を投擲してくる、黄色いテナガザルのイエローモンキーは、俺に石を投げようと木から身を乗り出すたびにニーナの放つ矢に貫かれている。

 戦士のスキルは弓矢にも乗る。おかげさまでニーナの弓は中々の威力だ。


「イエローモンキーは排除完了! 遠隔攻撃持ちは全滅させました! 私も接近します!」


 ニーナが武器を持ち替えながら、こちらに向かってゆっくりと走ってくる。

 さぁて、ニーナが近付く前にどれだけ片付けられるかねぇ?


 一定の調子で跳ね続ける大岩、トーンストーンを斬り付ける。

 現実なら岩なんか切れっこないけど、この世界の武器はこの程度で折れる事はない。岩を切った硬い感触が伝わり、手が少し痺れるけどね。痛いなぁもう。


「ガァッ」


 俺が攻撃した隙を突いて、死角からナイトウルフが飛びかかってる。

 ……なんでお前らって黙って奇襲できないのかな? 必ず鳴き声をあげてしまうのも予備動作の1つなの?


 ナイトウルフの飛び付きを確実に回避しながら、無防備なその胴体を切りつける。力は要らない。速度重視の斬撃だ。


 ナイトウルフの相手を終えた俺の視界に、マーダーグリズリーの姿が飛び込んでくる。

 マーダーグリズリーは厄介な相手だけど、コイツはどうやらレベル8。今さら恐れる相手じゃないね。


 マーダーグリズリーを視界の端で捉えながら、突進してきた魔物全てを軽く切りつけ、お前の相手は俺なんだよと魔物たちに思い知らせる。

 ニーナはもう俺に守られるだけのか弱い存在なんかじゃないけど、それでも守りたいのが男の子ってもんでしょ。だからここは通してやらないよ。


 耐久力の低いナイトシャドウを、回避動作のついでみたいに切り捨てる。

 正直言えば、この世界の対魔物戦の歪な仕様にはやはり未だに違和感はある。でもそれを正しく理解し、上手く利用してこそ有利に立ち回れるのだ。


「っやぁ」


 可愛い掛け声と共に、ニーナがナイトウルフを背後から切りつけた。お姫様の到着だ。

 かっこつけておきながら、ニーナの到着までに魔物を大して減らせなかったなぁ。


 移動に制限のかかるニーナだけど、既に戦士LV30なので攻撃力は申し分ない。
 しかし得物がダガーなので、硬い相手を斬り付けると手に返ってくる衝撃の負担が俺よりも大きい。

 だから遠距離でも近距離でも、ニーナの担当は基本的に耐久力の低い魔物だ。俺が引き付けた魔物を、1体ずつ引っ張って確実に処理するのがニーナの戦い方だ。


 もうなんの心配要らないと分かっていても、どうしてもニーナが気になってしまう。

 だけどそれは彼女への冒涜だ。ニーナはもう立派に戦えるのだから。


 それに対魔物戦ではHPのおかげで、即死事故は絶対にないのだ。だから俺も、過保護は程々にしないとねっ。


 複数の魔物に囲まれながらも、確実に魔物の数を減らしていく。

 魔物に囲まれると硬いトーンストーンが鬱陶しく感じられる。だけどコイツは見た目通りに耐久力が高くて、即効で倒すのは今の俺には難しい。

 だから俺はあえてトーンストーンを引き連れたまま、マーダーグリズリーに斬りかかった。

 トーンストーンの跳ねるリズムを頭の片隅で意識しながら、マーダーグリズリーとの戦闘に集中していく。


 突進。ひっかき。噛み付き。

 そのどれも驚異的な威力だけど、予備動作がとても大きい。今ならその攻撃全てにカウンターを合わせる事もできるようなった。


 スポットで戦い続けて気付いた事がある。

 同種類の魔物の場合、レベルの違いで動きが変わる事は今のところはないようだ。その代わりに高レベルの魔物ほど攻撃力が高く、HPも多い。

 つまりは魔物のレベルは、俺たちで言うところの職業補正に近いもののようだ。あくまで今のところはという話だが、レベルで行動パターンが変わるような魔物には遭遇したことはない。


 マーダーグリズリーの引っ掻き攻撃をあえて盾で受け止めたせいで衝撃が走るが、そのダメージに動きを止めることなく反撃の一閃。マーダーグリズリーの首が飛んだ。

 傍で跳ねているトーンストーンを滅多切りにしてから周囲を見回すと、ちょうどニーナが最後のナイトウルフに止めを刺したところだった。


 素早く周囲を確認。残敵無し。俺達の勝利だ。


「お疲れ様ですご主人様。周囲に魔物の姿なし。アイテムを回収します」

「うん、ニーナもお疲れ様。俺は遠くのから集めるね」


 ニーナも周りを見回した後、流れるようにドロップアイテムの回収に移行した。


 今の戦闘を頭の中で反芻しながら俺もアイテムを回収する。

 それにしても、この世界の対魔物戦の仕様は本当に変わっていると思う。
 この変な仕様のせいで、魔物戦に慣れ始めた中級者が対人戦でコロっとやられてしまう、なんて話にも納得出来てしまう。


 対魔物戦では魔物の何処をどの強さで切り付けても攻撃は攻撃、決まったダメージ以上の効果を発揮することは出来ない。だからその仕様を逆手にとって、全力で斬り付けるよりもあえて脱力するという戦い方もある。

 攻撃動作を軽くするほど隙がなくなるのだから、これはとても有効な戦法だ。


 しかしその戦い方に慣れ過ぎてしまうと、本質的な意味での強さから遠のいてしまうのじゃ、とフラッタは言っていた。
 職業補正を上手く利用しながらもそれに頼りきらないように、常に心がけなければならないと。


 そうそうフラッタと言えば、結局俺たちは彼女と出会った付近で狩りを行うことにしたのだ。

 スポットで戦う以上、常に事故のリスクはある。考え無しに踏み込むのは愚か者だけど、リスクを負えないのはただの臆病者でしかない。

 事故が置きにくい場所で戦うよりも、事故が起きても対応できる強さを目指すべきなんだ。


「あ、ご主人様。また熊肉がありましたよ。最近多いですねっ」


 レアドロップを見つけたニーナが弾んだ声で報告してくれる。


 2人とも商人になってからはレアドロップの量が目に見えて増えてきている。幸運上昇はやはり金策に有利な補正みたいだ。

 魔玉がドロップする機会も増えて、あえて空の魔玉を仕入れる必要もなくなったのも嬉しい。


 1つ気になっているのが、ニーナが戦士LV30になる頃に、俺は商人LV13まで上がってしまったことだ。

 明らかに俺の方がレベルアップのペースが早いよなぁ。なんでなんだろ?


 今回の遠征では2日かけてスポットを進み、2日間で到達した場所で更に3日間ほど滞在する。そしてまた2日間かけて帰還と、ちょうど1週間の狩りを予定している。

 毎日休まず日帰りで魔物を狩るより、なるべく深い場所で集中して活動し、そして適度に休む方が報酬的にも大きくなる模様。


 遠征が順調に進む中、意外な事に商人LV15で新たに2つの職業が出現した。



 職人LV1
 補正 身体操作性上昇-
 スキル 五感上昇-

 
 行商人LV1
 補正 持久力上昇-
 スキル 所持アイテム重量軽減-



 1つは行商人。ティムルが現在就いている職業だ。

 インベントリに入るアイテムは限られているので、行商人のスキルを得られれば旅が格段に楽になりそうだ。補正がちょっと低いのが気になるけど。


 そしてもう1つが職人だ。実はこれもティムルの職業設定で見たことがあった。

 身体操作性上昇っていうのは、簡単に言えば細かい動作が可能になるってことかな? 器用さ上昇って感じ? 五感上昇はそのままの意味でしょきっと。

 スキルも補正も生産に有利になりそうではあるけど、戦闘にも活きてきそうな内容だけに少し気になるところ。


 まずは商人の育成を終わらせて、その次はその時考えよう。

 今後マグエルの外を旅する時や、スポットの長期遠征が有利になる行商人が今のところ第1候補かな?


 え? 魔法使い? 上げたいのは山々なんだけどね。今回の遠征では育成を見送る事にしたのだ。


 貴族に多いという魔法使い。だからギルドを利用していない俺が魔法を使えるようになるのは、目立ちそうでちょっと怖いのよね。
 マグエルにいる間に育成するのは難しいかもしれない。出来れば旅先で偶然条件を満たした、という事にしたいところだ。

 考えすぎかもしれないけど、俺のほかに鑑定が使える人はいない、と決まったわけでもないのだから。


 しかし、新たな職業を獲得したのは俺だけではない。
 ニーナが戦士LV30になったときに、俺にもまだ現れていない新しい職業が出現した。



 射手LV1
 補正 身体操作性上昇- 持久力上昇-
 スキル 射撃時攻撃力上昇-



 ニーナは弓使ってるからなっ。


 でも剣士や短剣使いみたいに戦士LV15ではなく、LV30の時に出てきたのはなぜなんだろ? 弓はそれだけ強力な武器っていう認識なんだろうか?
 遠距離からガンガン魔物を狩るニーナの姿を思えば、実際強力なんだと思うけどさ。

 ニーナは商人を上げ切ったら、弓の威力向上を狙って射手に転職、でいい気がするね。





 1週間の遠征を終えて、無事にマグエルに帰還する。
 日帰りでも苦労していた俺達も、今や長期遠征してもへっちゃらだ。最初に比べて俺たちも本当に強くなったと思う。

 俺は商人LV28、ニーナは商人LV12まで上がっている。次の遠征で2人とも商人は上げきりたいね。


 明日から3日間、マグエルで休暇を過ごしてから次の遠征に出発する予定だ。

 ティムルが帰ってくる前に行商人になって、アイツのアイデンティティを奪ってやるぜ、けけけっ。


 冒険者ギルドで換金を済ませ、家に帰宅。

 どうやらムーリさんたち教会メンバーがちゃんと換気や掃除をしてくれていたらしく、今回は埃や汚れが気になることはなかった。むしろ出かける前より綺麗なのでは?


 休んでしまう前に装備品の手入れをしていると、夕方頃になって家の窓を閉めにムーリさんがやってきた。


「お帰りなさい。お2人ともご無事で何よりです。家の様子は問題ありませんでしたか?」

「うん。掃除までしてもらったみたいで助かったよ。ありがとう」

「ムーリさんどうぞおかけに。今お茶を淹れます」


 1週間振りに再会したムーリさんと3人でお喋りする。


 俺達の留守中に何か問題はなかったか、なにか事件だったり野盗だったりの報告はなかったか、などを確認できるのはありがたい。
 フラッタの話を聞いたせいで、この世界が物騒に思えて仕方なくなってしまったからなぁ。

 ムーリさんによると、この1週間は特に目立った騒動は起こっていないらしい。


 雑談が途切れたタイミングで、話は変わりますが……と、こちらの様子を窺うようにして話題を変えるムーリさん。


「お2人は明日は街にいるんですよね? もし宜しければ、明日少し教会の方のお手伝いをお願いできませんか?」

「明日はマグエルにいる予定だけど、教会の手伝いって?」

「はい。実は明日は月に1度の礼拝日で、マグエル中の人が礼拝の為に教会を訪れるのです。ですが子供達だけだとどうしても人手が足りなくて……」


 礼拝日かぁ。この世界の宗教について少し触れてみるのもいいかもしれないなぁ。

 ムーリさんと教会の子供達にはお世話になっているし、手伝ってみるのもいいかもしれない。


「お手伝いいただいても、大したお礼もできないので大変心苦しいのですが……。お2人が来てくれたら子供たちも喜ぶと思うんです。虫の良い言い分だとは分かってますが……」


 どうかお願いできませんでしょうかと、頭を下げるムーリさん。


 ま、家にいても寝室でくっついてるだけだしね。

 ニーナも是非参加してみたいということなので、引き受けることにした。


「ありがとうございますっ。本当に助かりますっ。このお礼はいずれ必ず致しますっ!」


 俺とニーナに何度も勢い良く頭を下げるムーリさん。

 ムーリさんさぁ。貴女は巨大なモノをお持ちなんだから、そんなに激しく動いたらぶるんぶるんと大変けしからん事にですねぇ……?


「なんなら私のことを好きにしてい「ムーリさん。ではこの話はなかったことに」いえなんでもありません。明日の朝、水汲みついでに子供たちに迎えに来させますね」


 一瞬ニーナから鋭い殺気が放たれたりもしたけれど、明日は礼拝日の手伝いに参加することで決定した。

 明日の予定を軽く聞いて、よろしくお願いしますと言い残してムーリさんは帰っていった。


 彼女のぶるんぶるんと弾けるおっぱいを思い出し、ムーリさんが差し出しかけた報酬がちょっと惜しかったなんて思ったり?


 なんだか最近はニーナがとても元気になってくれたおかげなのか、フラッタの時や今みたいな時に、ニーナ以外の人に目が向くようになってしまってる気がする。俺って浮気性だったのかなぁ?

 異世界に来て急に訪れたっぽいモテ期に精神が追いついてない。そんな感じ。好意を向けられたらその全てに応えたくなってしまうのだ。

 体力的にも実力的にも、ニーナ1人でさえ持て余し気味だっていうのになぁ。


 寝る前に、フラッタやムーリさん……、つまりニーナ以外の女性に興味を持ってしまい始めてる事を、ニーナ本人にもきちんと伝えておく。

 浮ついた事をしないように、ニーナにしっかり捕まえておいてもらえばいいんだ。我ながら他力本願すぎる。


 でも俺の話を聞いたニーナは、何も言わずに優しく微笑んで俺の頭を抱きしめてくれるだけだった。


 ニーナが抱きしめてくれたおかげで、ニーナの匂いに満たされて俺の心が落ち着いていくのが分かる。

 遠征の疲れもあったのか、ニーナの胸に抱かれながらゆっくり意識が落ちていった。




 翌朝、迎えに来た子供と共にトライラム教会へ足を運ぶ。

 何気に、俺達のほうが教会に足を運ぶのって初めてだなぁ。


 初めて見た教会は石造りの頑丈そうな建物で、思ったよりも広くて立派な印象だ。

 でも細かい部分に目を向けると破損箇所などがあり、かなり老朽化が進んでいるっぽい。


 ……仕方ないか。子供達の税金を捻出するのが優先で、教会の修繕費などに回すお金はないのだろうから。



 トライラム教会のシンボルは、○の中に×が描かれ、更にその×の中心に小さな○があるというシンプルなデザインだった。

 手渡された修道服は、地球で見たのと似たような黒い貫頭衣といった衣装だ。長さは足首を隠すくらいで、被り物は特にないらしい。
 ちょうど心臓の辺りに、教会のシンボルマークが刺繍されていた。

 普通に服の上からすっぽりと着こんで良いらしく、ムーリさんも修道服の下には普通に服を着ているそうだ。


「あはは。流石にこんな衣装だけで動き回れません」


 なるほど。色々目に悪そうだもんねぇ。というかムーリさんはもう2サイズくらい大きい修道服に着替えた方がいいと思うんだよ?


 月に1度の礼拝日の今日は、まず広い礼拝堂に人が集まって、教会責任者からの説法を聞くことから始まる。

 驚いたことに、説法をしたのはムーリさんだった。後で知ったことだけど、予算の関係上、教会の運営は1人で行っている場所が珍しくないらしい。

 大変だなぁ。そりゃ人手も足りないよ。


 説法が終わると、礼拝堂の奥にある巨大なシンボルに向かって数分間の祈祷を行う。

 それが終わればあとは自由。もっと祈りを捧げてもいいし帰ってもいい。キリスト教のミサみたいなものをイメージしていたんだけど、それよりもずっと緩くて簡易的な印象だね。


 個人で追加の祈りを捧げる人は殆ど居なくて、月に1度しか会わない人と交友を深める人が多いみたいだ。
 ただし、おしゃべりをするなら教会の外で、とのこと。


 そして人手が必要なのはここからだった。
 毎月の礼拝日にはトライラム教会の主催で、街の人々に無料で炊き出しが振舞われるのだ。

 炊き出しの費用は教会本部から専用の予算が下りており、どこの教会でも普通に行われているはずだとのこと。

 普段は子供達とムーリさんだけでこなしているそうだけど、ムーリさんは訪れた人たちへの対応で忙しく、子供たちも年齢がバラバラで、充分に動ける子はあまり多くない。

 ということで、手伝いのはずの俺とニーナは思ったよりもこき使われることになってしまった。


 仕事の内容が配膳や調理、片付けなどがメインで正直助かったよ。やってる事は飲食店でのバイトと変わらないもんね。

 トライラム教の布教の手伝いとか言われても無理っす。



 炊き出しの食材が尽き、礼拝に訪れる人がまばらになったのは日没に近い時間だった。

 炊き出しに使った食器を洗い礼拝堂の片付けを済ませてから、せっかくなのでと俺とニーナも祈祷していくことにした。


 ムーリさんに祈りの作法を聞いてみたけど、敬う心こそが大切で、形式などは気にする必要はないのだそうだ。珍しい宗教だなぁ?

 ほぼ無人になった礼拝堂でニーナと2人で祈りを捧げ、そのまま教会で夕食をご馳走してもらい、家に帰ってきたのはもう休む時間に近かった。


 なかなか新鮮な体験だったと思う。遠征明けの適度な運動にもなったかな?


「私も礼拝なんてしたことなかったけど、街の人は結構熱心に祈ってる人も多かったね」

「うんうん。俺もこの世界の宗教に触れられて意外と面白かったよ」


 ニーナと2人きり、いつもの寝室での語らいでも、今日の手伝いのことを話題にする。


「でもムーリさんも子供たちも大変そうだったし、なるべく手伝ってあげたいの。今日手伝ったような作業なら負担もないしさ」

「ニーナがそう言うなら、なるべく予定を合わせよっか。月に1度くらいならどうとでもなるでしょ」


 ありがとー! と抱きついてくるニーナ。何この人、超可愛いんですけど?

 ニーナは多分、誰かの役に立てるのが嬉しくて堪らないんだろうなぁ。


 そして、実は密かにちょっとだけ心配していたニーナの呪いも、教会で弾かれたりしなくてホッとした。


 トライラム教会と呪いに敵対関係はないらしい。

 だってその証拠に、俺もニーナも新しい職業を得ることが出来てたから。



 修道士LV1
 補正 魔力上昇- 幸運上昇-
 スキル 回復魔法



 回復魔法って凄いありがたい存在のはずなんだけど、正直あまりテンションが上がらない。


 この世界の回復魔法って『HPを回復する魔法』であって、『肉体を治療する魔法』ではないからね。対人戦には役に立たないし、怪我を治す事もできない。バトルシステム上の効果しかない代物なのだ。

 魔物との戦いにおいては絶大な効果を発揮するんだけど、う~ん……。


 ちゃんと有用ではあるんだけど、痒いところに手が届かない、そんなイメージかな?

 なんかこの世界、そういうスキルが多くないっすかねぇ?
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