異世界イチャラブ冒険譚

りっち

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1章 巡り会い1 スポットでの出会い

033 スポットの奥へ (改)

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「明日から憂鬱よー! 今からでも遅くないから護衛してよー!」


 すっかり我が家に馴染んでしまったティムルが、今日も夕食の席で騒ぎ立てている。


「お前ほんとに32歳かよ!? 我が侭ばっか言ってんじゃないっての!」

「あれ? 私32って言ったっけ? あー、身の上話をした時かしら?」


 年齢を指摘した俺に、ティムルはキョトンとして静かになってくれた。


 やばいやばい。ティムルの幼児退行についツッコんでしまった。幸いティムル本人は不自然に思わなかったようだけど。

 ウチで毎晩愚痴を吐き出してるからな。もう何言ったか覚えてないだろ。


 俺が他人に対してあまり鑑定をしたくない理由はまさにこれだ。鑑定でしか得られない情報を今みたいにポロッと零しちゃうと、どんなトラブルが起きても不思議じゃないからな。
 本当は職業とか色々調べてみたいんだけど、鑑定を発動しないと職業設定は使えないから仕方ない。

 知っている事を知らないように振舞うのは難しい。少なくとも俺は自信がない。なので出来るだけ鑑定を控えて、余計な情報を見ないようにしているのだ。

 黙って個人情報を覗くことに罪悪感を覚える、ってのもなくはないけどさ。


 一瞬落ち着いたけどまた暴れ出したティムルに、ニーナも堪らず声を張り上げる。


「もー。ティムルが嫌いで断ってるわけじゃないんですから聞き分けてくださいっ。今回は私達の条件が合わなかったんですから仕方ないんですっ」


 ティムルを友人だと思っているニーナは、本当はティムルに協力したいと思っているのだ。


 ティムルはこれからマグエルから見てスポットを挟んだ反対側にある、ネプトゥコという街に用事ができたらしい。
 そこで俺達に護衛をして欲しいと言ってきたんだけど、移動魔法を利用できないニーナにはティムルについていくことが出来ないのだ。


 ってかお前、ニーナの呪いのこと知ってんだろうが、まったく……。


「まぁ気をつけてくれよ。そんな遠くで助けを求められても流石に聞こえないからさ」

「無事に帰ってきてくださいね。夕食に張り合いがなくなってしまいますから」


 俺とニーナがティムルの身を案じる言葉を投げかけると、流石にティムルはぐぬぬと言いながら諦めてくれたみたいだ。


 以前ティムルに聞かされた商隊壊滅事件はネプトゥコ付近で起きた事なので、ネプトゥコに向かうティムルが少し心配ではある。
 だけど俺達の実力でスポットを真っ直ぐ突っ切るのはどう頑張っても無理だろう。もしティムルに何かあっても、今の俺達にはすぐに駆けつけることも出来ないのだ。


「んもーっ! 今回は諦めるけど、次は絶対に一緒に行くわよ!」


 次は一緒に、そう語るティムルの言葉にニーナが思わず頬を綻ばせている。

 ずっと呪いのせいで拒絶されてきたニーナを当然のように連れ回そうとするティムルは、迷惑だけどありがたい存在だ。


「じゃあ帰るから送ってって2人とも!」


 ぷんぷんと頬を膨らませながら乱暴に立ち上がるティムル。

 帰るから送ってってとかどんなお願いだよ、ったく。そりゃ勿論送ってくけどさぁ。


 どう見ても大商会の会長夫人には見えない駄々っ子を無事に家まで送り届け、ニーナと一緒にベッドに潜る。


「明日から夕食は2人きりだね。ダンと2人なのは嬉しいはずなんだけど、やっぱり少し寂しい、かな」

「それだけニーナとティムルが仲良くなったってことだね。1ヶ月もかからずに戻ってくるって言ってたし、すぐ騒がしい夕食に戻るでしょ」


 って俺とニーナの家のはずなのに、居るのが普通になりやがって、あの女……。

 でも悔しいけど、もうティムルはニーナの友人ってだけじゃなくて、俺の友人でもあるんだよなぁ。


「なんだかなぁ。ティムルと3人で暮らすのも悪くないと思っちゃう。なんか悔しいなぁ、もうっ」


 やっぱりニーナも悔しいらしい。悔しいけど、すっかり俺とニーナの日常の一部になりやがったよあの女。

 まったく、しょうがない奴だよなぁ。





 翌日シュパイン商会まで出向いた俺達は、ギリギリまで駄々をこねるシュパイン商会会長夫人を無理矢理送り出してからスポットに向かった。


 今回は持っていく荷物が多いので、いつも以上に慎重に魔物の相手をしていく。

 なぜ荷物が多いかと言えば、今回はスポット内でひと晩過ごしてみる予定だからだ。
 徒歩でしか移動できない俺たちにとって、より深くまで探索していくためには、スポット内で夜を越すのは避けて通れない。今回はその為の本番兼予行練習といった感じかな。


 最近は日帰りで行ける範囲の魔物が弱く感じられてきていた。だから泊り込みで魔物狩りをする話は前々からしていたんだけど、なんだかんだ夕食のために日帰りしてしまった。

 ……大体ティムルのせいだな、うん。


「いつもはここくらいで引き返しますけど……。今日は先に進むんですよね?」


 半日程度進んだところでニーナが俺に問いかけてくる。

 そんなニーナに俺は力強く頷きを返す。


「ああ。この先は初めて遭遇する魔物も増えると思う。無理だと感じたらすぐに撤退しよう」


 いつもは引き返す場所。今日はこの先に足を踏み入れるのだ。

 俺たちだって強くなっているはず。ビビるな。

 ニーナと2人、意を決して新たなエリアへと歩を進めた。



 何度も魔物の襲撃を撃退しながら先に進む。今のところは危なげなく撃退できているかな。


 スポットでの戦闘は、複数種類の魔物に同時に襲われることが多い。魔物の種類も総数も多く、戦闘の殆どが乱戦になる。

 俺は最初この乱戦からニーナを守らなければと、ニーナの前で魔物の襲撃を待ち構えていた。でも実はこれが間違いであったと後に気付いた。

 スポットでの戦闘でなにが1番厄介なのかは、言うまでもなく魔物の数だ。

 なら最優先すべきは、魔物の数を減らすことに他ならない。耐久力や機動力の差を考慮し、積極的に打って出て魔物の数を減らすべきだったんだよね。

 待ち構えて敵の総攻撃を許すなんて、今考えれば自殺行為に等しい愚行だったよ。


「ニーナ! レッドスプライト2とナイトシャドウ3、頼んだ!」

「任せてください!」


 飛び出しながらニーナに指示を出す。

 移動阻害のデバフのあるニーナだけど、コンポジットボウがあるから先手が取りやすい。HPが低い魔物を優先的に弓で落としてもらい、本格的にぶつかる前に魔物の数を少しでも減らす。


「お前らのぉ! 相手はぁ! こっち! だぁぁぁ!」


 ニーナの弓の射線に入らないよう気をつけながらタフな魔物を斬り付けて注意を引き、だけど止まらず動き回る。


 魔物から守る為にとニーナの近くにいたら、ニーナに魔物を近づけるのと変わらない。あえてニーナと距離を取ることで、魔物がニーナに向かうのを防ぐ。

 この1ヶ月戦い続けた中で、そういう守り方もあるのだと知った。


「落としました! これより持ち替えて突撃します!」

「りょーかいっ!」


 弓で落せる魔物が居なくなったら、ニーナもブルーメタルダガーに持ち替えて乱戦に参加する。
 この段階になったら、それまでニーナから遠ざかるように誘導していた魔物をニーナの居る場所に牽引していく。

 ニーナが早く動けないなら、魔物を連れてくればいいじゃない作戦だ。


 ニーナが射撃を終えるまでに何度も攻撃を加えてHPを削ってあるし、魔物の移動速度は種類によって結構な差がある。
 始めはニーナから引き離し、そしてまたニーナに近付くというように引っ掻き回された魔物の群れは大きく広がってしまい、順番に処理しやすくなるのだ。


「ふぎゅ……!」


 ナイトウルフの噛み付きを、正面から盾で受け止めるニーナ。

 何度聞いても防御の時の声が可愛すぎるんだが?


「っはぁ!」


 魔物の動きが止まったその隙を逃さず、ブルーメタルダガーによるカウンターの一閃。ブルーメタルダガーは品質の良い武器なのか、ナイトウルフの喉笛を1撃で切り裂いた。

 ニーナも盾の扱いに慣れ、近接戦闘も安心して見ていられるな。移動阻害のハンデなんて感じさせないニーナが頼もしい。


 ニーナは動けないのだから魔物を近づけさせるわけにはいかない。
 この考え方はニーナの装備が揃った時点で間違いだったのだ。

 逃げるという手段が取れないニーナだからこそ、積極的に近接戦闘を経験させて魔物の対処に慣れてもらわなければかえって危険なのだ。


 そうは言っても心配は心配なので、ニーナの方に注意を向けながら真っ黒羊のナイトゴートに止めを刺した。


「敵の姿確認できません。アイテムの回収を始めます」


 キョロキョロと周囲を見回した後、直ぐにドロップアイテムを拾い始めるニーナ。この1ヶ月で大分魔物狩りらしく動けるようになってくれた。


「うん。お疲れ様ニーナ。矢の消費ペースは問題ないよね?」

「はい。このペースでしたら50本は残せるかと」


 今回は、最も安い1本80リーフの矢を200本ほど持ち込んでいる。矢は武器扱いなので、問題なくインベントリに収納可能だ。

 いやぁインベントリ様々だわ。始めに微妙とか言ってごめんね?


 2人合わせれば、最大サイズのインベントリが5個あるような状態。矢の大量輸送はお手の物ってね。

 そのおかげでドロップアイテムも恐らくは全て持ち帰れるはず。インベントリが無かったら金策に支障が出まくりだっただろうなぁ。


「たった2人で、こんなに沢山魔物を狩れるなんて。まるで自分がお伽噺の登場人物になった気分ですよ」

「はは。俺にとってはお伽噺に迷い込んだのと変わらないんだけどね」


 普段より深い場所でも戦えている為か、少し興奮気味のニーナ。


「ここでも問題なく戦えているし、休憩を挟みながら夜通し戦うよ。辛くなったら無理せず申告すること」

「はい、分かってます。絶対に無理はしませんからご安心を」


 自分が無理をすれば俺も無理をするだろう。ニーナはそれが分かっているから、絶対に無理はしないと約束してくれる。


「それにしてもスポットって不思議ですよね。夜でも視界が閉ざされないから、実力さえ伴えば外よりも稼ぎやすい場所になりそうです」

「ほんとだよなぁ。どうなってるんだろうね?」


 スポット内の視界ってのは昼も夜もあまり変わらない。昼でも薄暗い代わりに、夜も薄明るいままだ。
 そのおかげで、魔物に負けない実力さえあれば一昼夜戦い続けることだって出来る。そりゃ魔物狩りが盛んなわけだよ。


 魔物の襲撃を撃退し続けて、足を止めずに進み続ける。

 1戦するごとに軽く休憩し、自分達が万全であるかを常に確認する。


 夜通し歩き続け、夜が明けても歩き続け、2日目の夜になる。ここで1泊野営をしてマグエルに帰還する予定なのだ。計算上では4日間の行程だね。

 自分を鑑定すると旅人も既にLV24まで上がっていた。このペースなら街に戻る頃にはカンストしてるかもね。

 つくづく鑑定と職業選択の有難みを痛感するねぇ。


「さて、2日目の夜ですし、夜営の準備をしま……。ご主人様。どうやら向こうで戦闘が起きているようです」


 荷物を下ろしかけたニーナが、鋭い声で報告してくる。

 へぇ? 珍しいな。俺達くらい浅い場所で活動している魔物狩りって、あまりいないみたいなのに。


「ん、じゃあ一応様子を見に行こうか。ここまで来れる人が劣勢って事はないと思うけど」


 2人パーティの俺達が来れる場所だ。そんな場所にフルパーティで来れば何の危険も無いだろう。逆に1人だったらくるのが難しい場所だと思う。


 それにしても、やっぱり獣人族って人間よりも五感が鋭いのかな? 俺には何も見えないし、なにも聞こえないんだけどねぇ。

 向かう場所が俺には分からないので、ニーナに先導してもらって先を急ぐ。


「……っ! ……!」


 ニーナと共にお馴染みのジョギング移動で1分くらい移動すると、ようやく俺にも剣戟と人の声が聞こえてきた。

 ニーナってこの距離で気付いたの? 凄くない?


 まだ距離があるため暢気に構えていた俺に、ニーナが余裕の無い声で指示を飛ばしてきた。


「っ! ご主人様、先行を! どうやら劣勢のようです!」


 なっ!? 余計なこと言ってフラグ立てちゃった!?

 俺だけ先行しろって、ニーナに合わせて移動してたら間に合わないほどの状況なのかよっ!?


「了解っ! ニーナは射程に入ったら弓で援護してくれ!」

「急いでください! かなり危険な状況です!」


 ニーナに指示を出しつつ駆け出したけど、背中に届いたニーナの声に余裕がない。

 ここまで来て間に合いませんでしたは洒落にならない。全速力で救援に向かう。


「く、っそぉ……! 万全で、あれば、貴様らなんぞに……!」


 悔しそうな声が耳に届くまで近づくと、全身を鎧に包んだ誰かが無数の魔物に囲まれて追い詰められていた……!

 最早一刻の猶予も無い状況、後先考えるのは後だ! 突っ込めええええええ!


「うおおおおおお!!」


 手当たり次第に魔物を斬り付けながら、群れの中心に突っ込む。


「ガアァッ」


 俺に気付かなかった魔物達の無防備な背中を、片っ端から斬りつけていく。

 おかげで囲まれている人物のところまで苦もなく到達することが出来た。


「大丈夫か!? 助太刀するっ!」

「なっ……!? い、要らぬっ……! 人間族の手など、借りんのじゃ……!」


 決死の覚悟で飛び込んだのに、まさかの返答に血が沸騰する。

 そういうことは俺が突っ込む前に言え、このバーカっ!


「あぁ!? じゃあ勝手に腹でも切って死んでろ! 邪魔だ!」

「んなぁ!? なんじゃとぉっ!?」


 どうやら護衛する必要はなさそうなので、誰かさんは完全に無視して魔物の殲滅に集中する。

 ったく、完全に貧乏くじ引かされちまったぜ……!


 群れの数はかなり多い。なので細かいことを考えずに近場の魔物に片っ端から切りかかっていく。

 しかし切りつけると1撃で死ぬ魔物も多いようだ。魔物のHPが無くなっている?
 恐らくこの誰かさんはかなりの距離を戦いながら移動して、沢山の魔物を呼び込んでしまったんだろうと推測する。


 ま、今はどうでもいいけどねぇそんなことはっ!


 あまり意識を割く余裕はないが、どうやら襲われてた奴も口だけではなくそれなりに戦えるみたいだ。俺たちが介入した事で魔物が分散し、対応が追いついている。

 小型で耐久力の低い魔物なら任せても良さそうだ。


 ……ゴクリと唾を飲み込み覚悟を決める。


 じゃあこの1番でかい熊の魔物は、俺が引き受けるとするかぁっ!


「この熊は引き受けた! でかい口叩くなら死ぬんじゃねぇぞ!」

「舐めるでないわぁっ! 妾が魔物などに遅れを取るかぁっ!」


 最低限の意思の疎通をして、今まで見たこともない熊の魔物の前に立ち塞がった。



 マーダーグリズリーLV17



 鑑定なんかしなきゃ良かった! まったく嫌になるね! 熊の魔物もLV10オーバーの魔物も、どっちも初遭遇だってのにさぁ!


 相手は2mを優に超える巨大熊。
 そんなのに立ち向かうなんて現実だったら自殺行為も甚だしいけど、HP制を信じてやってやるよ、くっそぉ!


 ロングソードを上段に構えて切りかかる俺の目の前で、突如熊がよつんばいになる。

 と思ったら突然の突進! 予備動作に気付かず反応が遅れたっ……!


「ぐうぅ……!」


 咄嗟に盾で受けたが、それでも全身にダメージが流れる

 ダメージに一瞬意識を取られている俺の前で、熊の魔物は立ち上がってその右手を大きく振り上げた。


 景色がゆっくりと流れている。

 目の前に立ち塞がった巨大な熊は、その右手を俺に目掛けて、今まさに振り下ろ……。


 や……ば……。

 これ……、死……んだ……?


「グマァッ」


 しかし目の前の熊の頭に矢が突き刺さる。

 仰け反った熊の反応に思わず後ろを振り返ると、弓を構えたニーナの姿が目に入った。


「助かったよ! ナイスニーナ!」


 この機を逃す手はない! 仰け反る熊にロングソードで追撃、ダメージを重ねる。


 堪らず後ろに下がって、俺から距離を取るマーダーグリズリー。


「サンキューニーナ! もう大丈夫! 周囲に残ってるやつらを処理してくれ!」


 今度は振り返らずに、熊を見据えたままでニーナに感謝の声を張り上げる。

 さっきの1撃で肩の力が抜けた。体は動く。足も軽い。これならイケるっ!


 頭に矢が刺さっても死なない熊。体を袈裟切りにされても傷1つない熊。

 ちゃんとHP制だ。


 ならこんな奴、ただの敵モンスターでしかないっ!


 熊がよつんばいになって再度突進してくる。
 でも突進してくる魔物は多い。2度と喰らうかよっ。

 突進に合わせて熊の顔面を斬り付ける。

 左手の1撃を下がって躱し、右手の攻撃を盾で受け止める。


「くぅっ……!」

 
 盾で受けても少なくない衝撃。防御してもダメージを受けてしまうようだ。

 でも耐えられる……。俺でも戦えるっ!


「グァッ」


 ヨダレを垂らしながら噛み付こうと飛び掛ってくるマーダーグリズリー。

 でも噛み付きも、してくる魔物は多いんだよぉっ。

 開いた口を目掛けて、横薙ぎの一閃。
 ダメージが入ったのか、痛がりながら下がる熊野郎。

 くっそ、ダメージは確実に入っているけど、全然死なねぇなコイツ! キューブスライム以来の耐久力だ。


 マーダーグリズリーの攻撃は、噛み付き、突進、左右のフックだけで、慣れてしまえばモーションも大きく見切りやすい。
 敵の攻撃を確実に回避し、着実にダメージを重ねていく。


「っせぇ!」


 噛み付きに対して、突き出した頭にカウンターの袈裟切り。
 それがトドメとなって熊の顔が両断。魔物は煙のように消えていった。


 ようやく倒せたか……、ってそうじゃない! 残りの魔物は!?


「安心せい。そやつで最後なのじゃ……」


 背後から疲れ切った声がして、反射的に振り返る。


「人間族風情が……、勝手な、こと、を……し……」


 しかし相手の顔を確認する前に、声の主は大地に崩れ落ちてしまったのだった。
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