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大きな依頼
23 ソイル① (改)
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まるでに新月の夜に川の底に沈んでしまった様に、視界は暗く音は遠く、体は浮いた様で足に地面を感じられない。
そんな状態の俺に、突如頭上から冷水がかけられた。
「ぶわぁっ!? つめてぇっ!?」
生命の危機を感じた体が、反射的に力を取り戻す。
動く体で周囲を確認すると、そこにはバケツを持ったパメラの姿があった。
「頭は冷えたかソイル」
「パ、パメラ!? いきなりなにをっ……!?」
「取り乱すなどお前らしくもない。まずはゆっくり呼吸を整えて、心を落ち着けろ」
頭どころか体の芯まで冷えちまったよっ!? いきなりなにしやがるんだよ!?
「ちょちょちょパメラ!? いきなりなにしちゃってるのよ!?」
「ミシェル様。これでも私は聖騎士として厳しい訓練を積んできました。そして同じく聖騎士を目指し、挫折していった者を沢山見てきたんですよ」
「ざ、挫折って……」
「先ほどのソイルは少し危険に感じました。あのまま放っておいたらもう立ち直れなくなるんじゃないかと思い、少し強引な方法を取らせてもらったんです」
慌てたミシェルと、それに真剣な様子で返答するパメラの様子が視界に入る。
確かにパメラが言ってる通り、さっきと違ってパメラの声もミシェルの声も理解できるし、2人の姿もちゃんと認識できる。
思考に飲まれそうになっていた俺の頭を、文字通り冷やしたってワケか。流石は聖騎士、潜った修羅場は伊達じゃねぇってか。
……まぁ思考力が戻ってきたからといって、なにが変わる話でもねぇけどな。
「どうやら助けられちまったみてぇだがよ。だから何だって話じゃねぇか? 結局俺が落ち零れって事にはなんの変わりもねぇのによ」
「はっ! 変わりならあるだろうソイル。今までは知らなかったようだが、今のお前は魔力操作という技術の存在を知ったのだ。ならば今から習得すれば良いだけの話だろうに」
当然だろうと吐き捨てるようなパメラの言葉に、俺の心は動かない。
今から習得するだって……? この年になってから息の仕方から習えってのかよ……?
そんなことに何の意味がある? 俺はもうすぐ30だ。もう間もなく体も動かなくなる。戦えなくなるんだよ……。
「今から新しい技術を習得する? 他の奴等が瞬きするのと同じくらいに自然にやっている事を、この年で改めて習得しろってのか? それに何の意味があるか理解できねぇなぁ……」
「何を今さら……。その年になって私やスティーブに1から戦いの手解きを受けていたのがソイルだろう。それとなにが違うと言うのだ」
何が違うだって? 何もかも違う、違いすぎるんだよ……。
「くだらないことで悩んでいる暇があるなら、1秒でも早く鍛錬を始めるのがソイルという男だろう?」
鍛錬なんて、これはそんな次元の話じゃねえんだよパメラ。そもそも下地のあった剣術や戦闘技術とは訳が違うんだ。
それにどこまで鍛えても、魔力量が圧倒的に少ない俺じゃあ天井も低い。
パメラやスティーブに教えを乞うのは、低いなりにも限界が見えなかったからだ。こんな俺でも訓練さえすれば上達できるんだと、確かに成長を感じられたからだ。
でも誰よりも魔力の少ない俺にとって、魔力の操作はそもそもの到達点が低すぎる。それだってのに基礎も出来てない。
今から習得しろだって? そんなに簡単に言われたって、はいそうですかと出来るもんじゃねぇんだよ……。
「お前に俺のなにが分かんだって話だぜ……」
「……なんだと?」
「30なんてよ、冒険者としちゃあ棺桶に片足突っ込んでるようなトシになって、改めて息の吸い方からやり直せってか? だったらもう今世は諦めて、来世に期待したほうがマシってもんだ」
「ミシェル様には偉そうに手解きをしていたくせに、自分に出来ないことがあったら逃げ出すのか? お前はそんなに卑怯者なのかソイル!?」
まっすぐだ。パメラはどこまでも真っ直ぐだ。
真っ直ぐに正論をぶつけるコイツの言葉はいつも正しい。
……だけど今の俺にはパメラの正しさを受け止める気力なんて、残っちゃいなかった。
「ああ、俺は卑怯者で無能者だよ。だからお前らには悪いけど俺は降りるわ」
「えっ!? ちょ、ちょっと……!」
「報酬も要らねぇ。経費も要らねぇ。俺はイコンに帰らせてもらうぜ」
イコンに帰っても仕方ねぇ。だけどここにいる意味はもうない。
水の底を進むような重い足取りで、なんとか出口に向かって歩き出す。
「待ってよソイル! どうして突然帰るなんて言い出すの!? 」
しかしそんな俺の前に、ミシェルが立ちはだかった。
……なんだかいつも俺の前には誰かが立ち塞がってる気がするな。まるでこのクソッタレな現実みてぇに。
「ここまで来てソイルを外せるわけないでしょ! 私が軽はずみに言ってしまったことで、ソイルを傷つけてしまったなら謝るからっ!」
「違うよミシェル。ミシェルは何も悪くない。悪いのは俺なんだよ。悪いのは全部俺だったんだ……」
パメラのおかげで頭は冷えてくれたみたいだが、それがかえって自分の不甲斐なさを突きつけてくる。
目の前のミシェルとの差を……、大天才でありながら素直に人に教えを請う実直さを持った相手と、捻くれて人の言うことに耳を貸さず、努力の方向性さえ間違えていた愚鈍な俺との差を突きつけてくるようだ。
「今までは知らなかったからやってこれた。でも知ってしまったらもうダメだ。ダメなんだよ……。もう戦うことも、冒険者を続けることも出来ないよ。もう旅についていくことなんか出来ないよ……」
コイツはどう頑張ってもCクラスだろうな。
冒険者になった日に聞いた、馬鹿にした誰かの声が頭に響く。
いつか見返してやる。魔力量なんか覆してやるって。それだけが俺の原動力だったんだ。
そんな俺が、当たり前のことさえ出来ていなかったんなら……、もう無理なんだよ。
「旅についていくのは無理だ。元々無理だったんだ……。依頼については申し訳ないけど俺には無理だから……。悪いけど他を当たってくれ……」
「それこそ違うでしょう!? ソイルのなにが悪いって言うの!?」
必死に俺に詰め寄るミシェルの姿を見ても、俺の心は凪いだままだ。
「全部ってなによ! ダメってなによ! どうして私のひと言でソイルが冒険者をやめなきゃいけないのよっ!?」
分からないんだよ。お前に絶対には理解できないんだ。
誰よりも才能に溢れていて、なのに誰よりも正しい努力を重ねたミシェル・ダインだけには、俺の気持ちは絶対に理解できないんだよ。
「勝手に1人で納得しないで話してよ! このままソイルを放って旅なんて続けられるわけないでしょ!? ソイルを追い詰めた私がこのまま旅を続けられるわけないじゃないっ……!」
違うよミシェル。お前はただ教えてくれただけだ。
俺の今までの人生が全て無意味なものだったと、俺のこれからの人生に意味なんてないんだと、お前はただなんでもないことのように平然と突きつけてくれただけなんだ。
……悪いのは、現実からずっと目を逸らし続けてきた俺自身なんだよ。
「……ソイルさん。悪いんですけど同行だけでもお願いできませんか? この旅は私たちの一存で勝手に止めるわけにはいかないんです」
「グリッジ、いたのか……」
「貴方が我々に協力できないというなら無理強いはしません。ですがお嬢様の旅を中断させるわけにはいかないんです。ついてくるだけで構いません。帰るのは少々お待ちいただけませんか……!」
どこからか現れたグリッジが捲し立ててくるが、なんの感情も湧かなかった。
まるで俺の中にあった感情が、全部無くなってしまったみたいだ。
「興味無いよ……。お前らのことも俺のこともどうでもいい。もう全部……どうでも良いんだ」
「どうでもいいなら私に付いて来て! 私がソイルに魔力操作を教えるから!」
「……はっ」
ミシェルの必死な姿に、俺は虚しさを通り越して馬鹿らしくなってきた。
どこまで他人様に迷惑をかければ気が済むんだ俺は。ミシェルみたいな正しく偉大な人間に、俺みたいな落ち零れ風情がどれだけ迷惑をかけるつもりなんだ。
俺の存在に意味なんて無いのに、ミシェルみたいな英雄足りえる人間の足を引っ張るとか、何様なんだよ……。
落ち零れで無価値で無意味であっても、せめて人に迷惑をかけるのはやめろよ、このクソ野郎……。
「ソイルは何も悪くないんだって証明してみせるから! 私に1度だけチャンスをちょうだい! ソイル!」
「……済まない。これ以上迷惑をかけるわけにはいかないよな」
これ以上ミシェルに迷惑をかけたくないから立ち去りたいのに、俺が去ったらミシェルに迷惑がかかるらしい。
もう、自分じゃどうするのが正解なのか全然分かんねぇよ……。
「うん。分かった。ついてくよ。どこまでも迷惑かけてごめん。でも付いていかないのも迷惑……なんだよな。迷惑ばっかりかけて……本当何してんだって話だよな……。本当にごめん……」
「謝らないで……! お願いだから謝るの止めてよ……!」
モンスターに囲まれていたときよりも、死の森の渦の破壊に失敗したときよりも悲痛な顔で、ミシェルは泣きながら俺に訴え続ける。
だけど俺は、ミシェルの言葉よりも表情ばかりが気になってしまう。
「ソイルは何も悪くないんだからっ……! 絶対に私が証明してみせるからっ……! だから私に謝るの止めてよぉソイルぅ……!」
俺が悪くないなら、なんでお前はそんな顔をしてるんだ……。
ミシェルにそんな顔をさせている俺が悪くないわけ……ないじゃないかよ……。
そんな状態の俺に、突如頭上から冷水がかけられた。
「ぶわぁっ!? つめてぇっ!?」
生命の危機を感じた体が、反射的に力を取り戻す。
動く体で周囲を確認すると、そこにはバケツを持ったパメラの姿があった。
「頭は冷えたかソイル」
「パ、パメラ!? いきなりなにをっ……!?」
「取り乱すなどお前らしくもない。まずはゆっくり呼吸を整えて、心を落ち着けろ」
頭どころか体の芯まで冷えちまったよっ!? いきなりなにしやがるんだよ!?
「ちょちょちょパメラ!? いきなりなにしちゃってるのよ!?」
「ミシェル様。これでも私は聖騎士として厳しい訓練を積んできました。そして同じく聖騎士を目指し、挫折していった者を沢山見てきたんですよ」
「ざ、挫折って……」
「先ほどのソイルは少し危険に感じました。あのまま放っておいたらもう立ち直れなくなるんじゃないかと思い、少し強引な方法を取らせてもらったんです」
慌てたミシェルと、それに真剣な様子で返答するパメラの様子が視界に入る。
確かにパメラが言ってる通り、さっきと違ってパメラの声もミシェルの声も理解できるし、2人の姿もちゃんと認識できる。
思考に飲まれそうになっていた俺の頭を、文字通り冷やしたってワケか。流石は聖騎士、潜った修羅場は伊達じゃねぇってか。
……まぁ思考力が戻ってきたからといって、なにが変わる話でもねぇけどな。
「どうやら助けられちまったみてぇだがよ。だから何だって話じゃねぇか? 結局俺が落ち零れって事にはなんの変わりもねぇのによ」
「はっ! 変わりならあるだろうソイル。今までは知らなかったようだが、今のお前は魔力操作という技術の存在を知ったのだ。ならば今から習得すれば良いだけの話だろうに」
当然だろうと吐き捨てるようなパメラの言葉に、俺の心は動かない。
今から習得するだって……? この年になってから息の仕方から習えってのかよ……?
そんなことに何の意味がある? 俺はもうすぐ30だ。もう間もなく体も動かなくなる。戦えなくなるんだよ……。
「今から新しい技術を習得する? 他の奴等が瞬きするのと同じくらいに自然にやっている事を、この年で改めて習得しろってのか? それに何の意味があるか理解できねぇなぁ……」
「何を今さら……。その年になって私やスティーブに1から戦いの手解きを受けていたのがソイルだろう。それとなにが違うと言うのだ」
何が違うだって? 何もかも違う、違いすぎるんだよ……。
「くだらないことで悩んでいる暇があるなら、1秒でも早く鍛錬を始めるのがソイルという男だろう?」
鍛錬なんて、これはそんな次元の話じゃねえんだよパメラ。そもそも下地のあった剣術や戦闘技術とは訳が違うんだ。
それにどこまで鍛えても、魔力量が圧倒的に少ない俺じゃあ天井も低い。
パメラやスティーブに教えを乞うのは、低いなりにも限界が見えなかったからだ。こんな俺でも訓練さえすれば上達できるんだと、確かに成長を感じられたからだ。
でも誰よりも魔力の少ない俺にとって、魔力の操作はそもそもの到達点が低すぎる。それだってのに基礎も出来てない。
今から習得しろだって? そんなに簡単に言われたって、はいそうですかと出来るもんじゃねぇんだよ……。
「お前に俺のなにが分かんだって話だぜ……」
「……なんだと?」
「30なんてよ、冒険者としちゃあ棺桶に片足突っ込んでるようなトシになって、改めて息の吸い方からやり直せってか? だったらもう今世は諦めて、来世に期待したほうがマシってもんだ」
「ミシェル様には偉そうに手解きをしていたくせに、自分に出来ないことがあったら逃げ出すのか? お前はそんなに卑怯者なのかソイル!?」
まっすぐだ。パメラはどこまでも真っ直ぐだ。
真っ直ぐに正論をぶつけるコイツの言葉はいつも正しい。
……だけど今の俺にはパメラの正しさを受け止める気力なんて、残っちゃいなかった。
「ああ、俺は卑怯者で無能者だよ。だからお前らには悪いけど俺は降りるわ」
「えっ!? ちょ、ちょっと……!」
「報酬も要らねぇ。経費も要らねぇ。俺はイコンに帰らせてもらうぜ」
イコンに帰っても仕方ねぇ。だけどここにいる意味はもうない。
水の底を進むような重い足取りで、なんとか出口に向かって歩き出す。
「待ってよソイル! どうして突然帰るなんて言い出すの!? 」
しかしそんな俺の前に、ミシェルが立ちはだかった。
……なんだかいつも俺の前には誰かが立ち塞がってる気がするな。まるでこのクソッタレな現実みてぇに。
「ここまで来てソイルを外せるわけないでしょ! 私が軽はずみに言ってしまったことで、ソイルを傷つけてしまったなら謝るからっ!」
「違うよミシェル。ミシェルは何も悪くない。悪いのは俺なんだよ。悪いのは全部俺だったんだ……」
パメラのおかげで頭は冷えてくれたみたいだが、それがかえって自分の不甲斐なさを突きつけてくる。
目の前のミシェルとの差を……、大天才でありながら素直に人に教えを請う実直さを持った相手と、捻くれて人の言うことに耳を貸さず、努力の方向性さえ間違えていた愚鈍な俺との差を突きつけてくるようだ。
「今までは知らなかったからやってこれた。でも知ってしまったらもうダメだ。ダメなんだよ……。もう戦うことも、冒険者を続けることも出来ないよ。もう旅についていくことなんか出来ないよ……」
コイツはどう頑張ってもCクラスだろうな。
冒険者になった日に聞いた、馬鹿にした誰かの声が頭に響く。
いつか見返してやる。魔力量なんか覆してやるって。それだけが俺の原動力だったんだ。
そんな俺が、当たり前のことさえ出来ていなかったんなら……、もう無理なんだよ。
「旅についていくのは無理だ。元々無理だったんだ……。依頼については申し訳ないけど俺には無理だから……。悪いけど他を当たってくれ……」
「それこそ違うでしょう!? ソイルのなにが悪いって言うの!?」
必死に俺に詰め寄るミシェルの姿を見ても、俺の心は凪いだままだ。
「全部ってなによ! ダメってなによ! どうして私のひと言でソイルが冒険者をやめなきゃいけないのよっ!?」
分からないんだよ。お前に絶対には理解できないんだ。
誰よりも才能に溢れていて、なのに誰よりも正しい努力を重ねたミシェル・ダインだけには、俺の気持ちは絶対に理解できないんだよ。
「勝手に1人で納得しないで話してよ! このままソイルを放って旅なんて続けられるわけないでしょ!? ソイルを追い詰めた私がこのまま旅を続けられるわけないじゃないっ……!」
違うよミシェル。お前はただ教えてくれただけだ。
俺の今までの人生が全て無意味なものだったと、俺のこれからの人生に意味なんてないんだと、お前はただなんでもないことのように平然と突きつけてくれただけなんだ。
……悪いのは、現実からずっと目を逸らし続けてきた俺自身なんだよ。
「……ソイルさん。悪いんですけど同行だけでもお願いできませんか? この旅は私たちの一存で勝手に止めるわけにはいかないんです」
「グリッジ、いたのか……」
「貴方が我々に協力できないというなら無理強いはしません。ですがお嬢様の旅を中断させるわけにはいかないんです。ついてくるだけで構いません。帰るのは少々お待ちいただけませんか……!」
どこからか現れたグリッジが捲し立ててくるが、なんの感情も湧かなかった。
まるで俺の中にあった感情が、全部無くなってしまったみたいだ。
「興味無いよ……。お前らのことも俺のこともどうでもいい。もう全部……どうでも良いんだ」
「どうでもいいなら私に付いて来て! 私がソイルに魔力操作を教えるから!」
「……はっ」
ミシェルの必死な姿に、俺は虚しさを通り越して馬鹿らしくなってきた。
どこまで他人様に迷惑をかければ気が済むんだ俺は。ミシェルみたいな正しく偉大な人間に、俺みたいな落ち零れ風情がどれだけ迷惑をかけるつもりなんだ。
俺の存在に意味なんて無いのに、ミシェルみたいな英雄足りえる人間の足を引っ張るとか、何様なんだよ……。
落ち零れで無価値で無意味であっても、せめて人に迷惑をかけるのはやめろよ、このクソ野郎……。
「ソイルは何も悪くないんだって証明してみせるから! 私に1度だけチャンスをちょうだい! ソイル!」
「……済まない。これ以上迷惑をかけるわけにはいかないよな」
これ以上ミシェルに迷惑をかけたくないから立ち去りたいのに、俺が去ったらミシェルに迷惑がかかるらしい。
もう、自分じゃどうするのが正解なのか全然分かんねぇよ……。
「うん。分かった。ついてくよ。どこまでも迷惑かけてごめん。でも付いていかないのも迷惑……なんだよな。迷惑ばっかりかけて……本当何してんだって話だよな……。本当にごめん……」
「謝らないで……! お願いだから謝るの止めてよ……!」
モンスターに囲まれていたときよりも、死の森の渦の破壊に失敗したときよりも悲痛な顔で、ミシェルは泣きながら俺に訴え続ける。
だけど俺は、ミシェルの言葉よりも表情ばかりが気になってしまう。
「ソイルは何も悪くないんだからっ……! 絶対に私が証明してみせるからっ……! だから私に謝るの止めてよぉソイルぅ……!」
俺が悪くないなら、なんでお前はそんな顔をしてるんだ……。
ミシェルにそんな顔をさせている俺が悪くないわけ……ないじゃないかよ……。
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