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一流との差
05 ミシェル (改)
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死の森で大量のモンスターに襲われていた若い女が、俺に食って掛かってくる。
人の話を聞かない相手に関わりたくはないんだが、このまま騒がれると面倒だ。無視するのも不味いか。
「……とりあえず大声出すのは控えてくれるか。その声でまたモンスターが集まっちまうかもしれねぇ」
「あっ……! ご、ごめんなさいっ……!」
咄嗟に両手で口を押さえ、そして騒いだことを謝罪する女。
へぇ。落ち着いてりゃちゃんと話を聞く耳は持ってるのか。こんなオッサンにも謝れるたぁ、思ったよりも素直な嬢ちゃんだな。
素直な相手に邪険に接するのは大人気ない、か。
「あー……。こっちもほっといて悪かった。このままにしておくと、それはそれでモンスターが集まってきちまうかもしれねぇと思ったからよ」
悪かったと軽く頭を下げて、後始末を再開する。
って、この量を俺1人で片付けるとか勘弁してくれ……。お前もつっ立ってないで手伝えっつうの。原因はお前なんだからよぉ。
「……とりあえず落ち着いたんなら、お前さんも後処理を手伝ってくれないか?」
「え、あ、あの……。あ、後処理って、なにすれば良いのかしら……?」
先ほど立ちふさがった時の威勢が嘘の様に、しどろもどろになる女。
死の森であんだけモンスター殺しまくっておいて、後処理を知らないってのはどういう奴なんだ? もしかして冒険者じゃない……?
いや、詮索は後だ。コイツが何者であろうと、まずはこの場の後始末を済ませてしまわねぇと。
「後処理したこと無いのか?」
「……無いわよ。悪い……?」
「いや、それなら俺が集めて解体すっからよ。最後に死体を燃やしてもらえるか?」
「え……? 燃やっ、燃やす……?」
「お前さっき火属性の攻撃魔法使ってたよな? それ使ってくれれば良いからよ。頼めるか?」
「え、ええ、最後に燃やせばいいのね……。分かったわ」
自分の役割がハッキリした為か、幾分か落ち着きを取り戻してくれたみたいだ。
コイツが駆け出し冒険者ならもうちょっとこき使ってやりたいところだが、ここはまだ安全じゃねぇし俺がちゃっちゃと動くべきだな。
「じゃあ悪いけどちょっと待っててくれや。パパッと準備しちまうからよ」
嬢ちゃんを待たせて、この猟奇的な現場の片付けを始める。
流石に吹き飛んだ肉片までは集めねぇが、結構な数の死体で集めるのに手間取っちまった。魔法で吹っ飛ばされて損壊が激しい死体のほうが軽くて運びやすいとか、なんの皮肉だよ、ったく。
しかし、俺が弓で仕留めたのは7匹。魔法で吹っ飛ばされてんのは少なく見積もっても30近くは居そうだ。これだけのモンスターを魔法で殺しておいてケロッとしてやがるたぁ、この嬢ちゃんは将来有望らしいや。
「あ、あの! た、助けてくれて、ありがと……」
「ん? あー気にすんな。通りかかったついでだ」
黙々と解体作業をしていると、嬢ちゃんが話しかけてきた。
俺は解体の手を止めずに、適当に生返事を返す。
「わっ、私1人でも余裕で切り抜けられたけどねっ!? か、加勢してもらったのは事実だし!?」
解体作業が終わるまで暇だったのかねぇ?
ま、素直に礼を言える相手を邪険に扱う必要もねぇ。解体作業中暇なのは俺も同じだからな。嬢ちゃんと会話でもして気を紛らわすか。
「ああ、確かに嬢ちゃんの魔法は凄かったな。実際、俺がいなくても大丈夫だったかもしれねぇ。勝手に首突っ込んで悪かったな」
「べ、別に謝って欲しい訳じゃないんだけど……」
解体しながらなので、嬢ちゃんのほうを見ずに会話を続ける。
しっかし消費した矢は痛かったが、後始末に聖油を使わずに済むなら普通に黒字だよな。あのまま放置しなかった俺は偉いっ!
「それにしても後処理って大変なのね。私、後処理って初めて見たけど、こんなに手間がかかるものなんだ……」
「ああ、ついいつもの癖で丁寧にやっちまってたな……。失敗したぜ」
そうだよ。今日は攻撃魔法が使える嬢ちゃんが居るんだよ。なんでいつもと同じように解体してんだ俺は。
「嬢ちゃんは火属性の魔法が使えるみたいだから、俺のやり方は参考にしなくて良いぜ? 俺は魔法が使えないから、聖油を節約するためにここまでやってるだけだからな」
「あら? 貴方、魔法が使えないの? それでよく死の森に1人で入ってこれるわね?」
「俺は魔力が少ないって言われたからな。攻撃魔法なんて夢のまた夢って奴よ」
俺の言葉にキョトンとした表情を見せる嬢ちゃん。この反応的に、嬢ちゃんは魔法が使えて当たり前ってくらいにゃ才能があるんだろうな。
世の中には魔法が使えない奴だっているんだよ。……なんてこの嬢ちゃんに悪態ついても仕方ねぇがな。
内臓の処理をやめて、金になる部位の確保だけする。
聖油を使わなくて良いならここまで丁寧にやる必要なかったわ。嬢ちゃんは攻撃魔法に自信があるみたいだし、充分な火力が出せるだろ。
「俺にも譲ちゃんくれぇの魔力があったらなぁと思わねぇ日はねぇが、それで魔力が増えるわけでもねぇ。だから仕方なく弓なんか使ってんのさ」
剣の方も、さほど才能がねぇんだよな俺。マジで弓のほうがまだマシってのが泣けてくるぜ。
「っていうか嬢ちゃんって呼ばないでくれる? 私はミシェル。ミシェル・ダインよ」
「なんだぁ? 苗字持ちってことは、嬢ちゃん貴族様かなんかかよ?」
「だから嬢ちゃんじゃなくてミシェルって言ってるでしょ! って言うかこっちが名乗ったんだから、貴方も名乗りなさいったら!」
うえぇ、お貴族様かい……。不興を買ってもいいことねぇし、あまり深入りするのは危険か……?
嬢ちゃんとの距離感を思案しながら、金になる部位の剥ぎ取りを終える。
「あー……、まぁいいか。俺はCクラス冒険者のソイル。普段は別の街で活動してんだわ」
「ソイルね。Cクラス冒険者のソイル。覚えたわ」
いや覚えなくて良いから。貴族様との接点なんて無えっての。むしろ忘れてくれ。
「それじゃ作業は終わったから、最後の締めを頼む。爆発音とか閃光が上がる奴は極力控えてくれよ? またモンスター共を呼んじまうからな」
「ふん! そのくらい分かってるわよっ!」
のっしのっしと、俺がまとめたモンスターの死体の山の前にやってくる嬢ちゃん。貴族令嬢の割には淑やかさの欠片も無えな?
「これでも魔法の扱いには自信があるの。不必要に派手な威力なんて出さないわよ」
「へいへい。何でも良いからさっさとやってくれ」
「ふんっ。ソイルはもう少し離れてなさいっ。そして私の実力をよく見ておくのねっ」
いやまぁ改めて見なくても、魔法の実力は疑ってねぇよ。
嬢ちゃん……、ミシェルは直ぐに持っていた杖に魔力を込め始めた。魔力が注がれた杖が眩く発光し、その光をどんどん強めていく。
魔法使いの杖ってのは、魔力を注ぎ込むほど眩く光るもんなのか?
すげぇなぁ。この魔法を使うためには俺の魔力何人分あればいいんだか。見当も付かねぇぜ。
「フレイムサークル!」
死体を集めた場所の地面に魔法陣が出現し、そこから一気に火柱が上がって死体の山を燃やしてく。火柱が消える頃には、モンスターの死体は骨も残っていなかった。すんげぇ火力だこと。
火柱は上がったけど、範囲も限定してたし音も出てなかった。魔法の実力も凄ぇが、俺の言った事に素直に従うのも驚くわ。こんな格下相手になぁ。
「どう!? これが私の実力よ! ソイルが来なくても切り抜けられたわよね!?」
そんで骨すら焼き尽くす火力を出しておきながら、なんともないような顔をしてるのも凄い。
はぁ……。これが将来活躍する英雄の卵って奴? 底辺の俺にゃ眩しすぎるわ。
「ああ、嬢ちゃんの実力はマジですげぇと思うよ。そんじゃ俺は帰るわ。焼却してくれてありがとな」
後処理の仕上げを担当したミシェルに礼を言って、森の出口に向かって歩き始める。
ちっ、結局いつもの時間になっちまったか。採取依頼とモンスターの討伐報酬を合わせれば悪い稼ぎじゃなかったがよ。出来ればゆっくり休みたかったぜ。明日こそ本番だってのに、ったく。
「ままま待ってよ! 普通置いてくっ!? この状況でっ!」
歩き出した俺に凄い勢いで追い縋ってくるミシェル。
「ソイルが帰るなら私も帰るわよっ! 一緒に連れていきなさいよっ!」
えぇ……。なんでついてくんのこいつ……。
相手するのも面倒だけど貴族を敵に回したくもないし……。仕方ない、ネクスまでは一緒に行くかぁ。
戦闘力だけを見れば、俺よりミシェルの方が圧倒的に高いのによ。なーんでそんな相手の面倒を見なきゃいけないのかねぇ。
人の話を聞かない相手に関わりたくはないんだが、このまま騒がれると面倒だ。無視するのも不味いか。
「……とりあえず大声出すのは控えてくれるか。その声でまたモンスターが集まっちまうかもしれねぇ」
「あっ……! ご、ごめんなさいっ……!」
咄嗟に両手で口を押さえ、そして騒いだことを謝罪する女。
へぇ。落ち着いてりゃちゃんと話を聞く耳は持ってるのか。こんなオッサンにも謝れるたぁ、思ったよりも素直な嬢ちゃんだな。
素直な相手に邪険に接するのは大人気ない、か。
「あー……。こっちもほっといて悪かった。このままにしておくと、それはそれでモンスターが集まってきちまうかもしれねぇと思ったからよ」
悪かったと軽く頭を下げて、後始末を再開する。
って、この量を俺1人で片付けるとか勘弁してくれ……。お前もつっ立ってないで手伝えっつうの。原因はお前なんだからよぉ。
「……とりあえず落ち着いたんなら、お前さんも後処理を手伝ってくれないか?」
「え、あ、あの……。あ、後処理って、なにすれば良いのかしら……?」
先ほど立ちふさがった時の威勢が嘘の様に、しどろもどろになる女。
死の森であんだけモンスター殺しまくっておいて、後処理を知らないってのはどういう奴なんだ? もしかして冒険者じゃない……?
いや、詮索は後だ。コイツが何者であろうと、まずはこの場の後始末を済ませてしまわねぇと。
「後処理したこと無いのか?」
「……無いわよ。悪い……?」
「いや、それなら俺が集めて解体すっからよ。最後に死体を燃やしてもらえるか?」
「え……? 燃やっ、燃やす……?」
「お前さっき火属性の攻撃魔法使ってたよな? それ使ってくれれば良いからよ。頼めるか?」
「え、ええ、最後に燃やせばいいのね……。分かったわ」
自分の役割がハッキリした為か、幾分か落ち着きを取り戻してくれたみたいだ。
コイツが駆け出し冒険者ならもうちょっとこき使ってやりたいところだが、ここはまだ安全じゃねぇし俺がちゃっちゃと動くべきだな。
「じゃあ悪いけどちょっと待っててくれや。パパッと準備しちまうからよ」
嬢ちゃんを待たせて、この猟奇的な現場の片付けを始める。
流石に吹き飛んだ肉片までは集めねぇが、結構な数の死体で集めるのに手間取っちまった。魔法で吹っ飛ばされて損壊が激しい死体のほうが軽くて運びやすいとか、なんの皮肉だよ、ったく。
しかし、俺が弓で仕留めたのは7匹。魔法で吹っ飛ばされてんのは少なく見積もっても30近くは居そうだ。これだけのモンスターを魔法で殺しておいてケロッとしてやがるたぁ、この嬢ちゃんは将来有望らしいや。
「あ、あの! た、助けてくれて、ありがと……」
「ん? あー気にすんな。通りかかったついでだ」
黙々と解体作業をしていると、嬢ちゃんが話しかけてきた。
俺は解体の手を止めずに、適当に生返事を返す。
「わっ、私1人でも余裕で切り抜けられたけどねっ!? か、加勢してもらったのは事実だし!?」
解体作業が終わるまで暇だったのかねぇ?
ま、素直に礼を言える相手を邪険に扱う必要もねぇ。解体作業中暇なのは俺も同じだからな。嬢ちゃんと会話でもして気を紛らわすか。
「ああ、確かに嬢ちゃんの魔法は凄かったな。実際、俺がいなくても大丈夫だったかもしれねぇ。勝手に首突っ込んで悪かったな」
「べ、別に謝って欲しい訳じゃないんだけど……」
解体しながらなので、嬢ちゃんのほうを見ずに会話を続ける。
しっかし消費した矢は痛かったが、後始末に聖油を使わずに済むなら普通に黒字だよな。あのまま放置しなかった俺は偉いっ!
「それにしても後処理って大変なのね。私、後処理って初めて見たけど、こんなに手間がかかるものなんだ……」
「ああ、ついいつもの癖で丁寧にやっちまってたな……。失敗したぜ」
そうだよ。今日は攻撃魔法が使える嬢ちゃんが居るんだよ。なんでいつもと同じように解体してんだ俺は。
「嬢ちゃんは火属性の魔法が使えるみたいだから、俺のやり方は参考にしなくて良いぜ? 俺は魔法が使えないから、聖油を節約するためにここまでやってるだけだからな」
「あら? 貴方、魔法が使えないの? それでよく死の森に1人で入ってこれるわね?」
「俺は魔力が少ないって言われたからな。攻撃魔法なんて夢のまた夢って奴よ」
俺の言葉にキョトンとした表情を見せる嬢ちゃん。この反応的に、嬢ちゃんは魔法が使えて当たり前ってくらいにゃ才能があるんだろうな。
世の中には魔法が使えない奴だっているんだよ。……なんてこの嬢ちゃんに悪態ついても仕方ねぇがな。
内臓の処理をやめて、金になる部位の確保だけする。
聖油を使わなくて良いならここまで丁寧にやる必要なかったわ。嬢ちゃんは攻撃魔法に自信があるみたいだし、充分な火力が出せるだろ。
「俺にも譲ちゃんくれぇの魔力があったらなぁと思わねぇ日はねぇが、それで魔力が増えるわけでもねぇ。だから仕方なく弓なんか使ってんのさ」
剣の方も、さほど才能がねぇんだよな俺。マジで弓のほうがまだマシってのが泣けてくるぜ。
「っていうか嬢ちゃんって呼ばないでくれる? 私はミシェル。ミシェル・ダインよ」
「なんだぁ? 苗字持ちってことは、嬢ちゃん貴族様かなんかかよ?」
「だから嬢ちゃんじゃなくてミシェルって言ってるでしょ! って言うかこっちが名乗ったんだから、貴方も名乗りなさいったら!」
うえぇ、お貴族様かい……。不興を買ってもいいことねぇし、あまり深入りするのは危険か……?
嬢ちゃんとの距離感を思案しながら、金になる部位の剥ぎ取りを終える。
「あー……、まぁいいか。俺はCクラス冒険者のソイル。普段は別の街で活動してんだわ」
「ソイルね。Cクラス冒険者のソイル。覚えたわ」
いや覚えなくて良いから。貴族様との接点なんて無えっての。むしろ忘れてくれ。
「それじゃ作業は終わったから、最後の締めを頼む。爆発音とか閃光が上がる奴は極力控えてくれよ? またモンスター共を呼んじまうからな」
「ふん! そのくらい分かってるわよっ!」
のっしのっしと、俺がまとめたモンスターの死体の山の前にやってくる嬢ちゃん。貴族令嬢の割には淑やかさの欠片も無えな?
「これでも魔法の扱いには自信があるの。不必要に派手な威力なんて出さないわよ」
「へいへい。何でも良いからさっさとやってくれ」
「ふんっ。ソイルはもう少し離れてなさいっ。そして私の実力をよく見ておくのねっ」
いやまぁ改めて見なくても、魔法の実力は疑ってねぇよ。
嬢ちゃん……、ミシェルは直ぐに持っていた杖に魔力を込め始めた。魔力が注がれた杖が眩く発光し、その光をどんどん強めていく。
魔法使いの杖ってのは、魔力を注ぎ込むほど眩く光るもんなのか?
すげぇなぁ。この魔法を使うためには俺の魔力何人分あればいいんだか。見当も付かねぇぜ。
「フレイムサークル!」
死体を集めた場所の地面に魔法陣が出現し、そこから一気に火柱が上がって死体の山を燃やしてく。火柱が消える頃には、モンスターの死体は骨も残っていなかった。すんげぇ火力だこと。
火柱は上がったけど、範囲も限定してたし音も出てなかった。魔法の実力も凄ぇが、俺の言った事に素直に従うのも驚くわ。こんな格下相手になぁ。
「どう!? これが私の実力よ! ソイルが来なくても切り抜けられたわよね!?」
そんで骨すら焼き尽くす火力を出しておきながら、なんともないような顔をしてるのも凄い。
はぁ……。これが将来活躍する英雄の卵って奴? 底辺の俺にゃ眩しすぎるわ。
「ああ、嬢ちゃんの実力はマジですげぇと思うよ。そんじゃ俺は帰るわ。焼却してくれてありがとな」
後処理の仕上げを担当したミシェルに礼を言って、森の出口に向かって歩き始める。
ちっ、結局いつもの時間になっちまったか。採取依頼とモンスターの討伐報酬を合わせれば悪い稼ぎじゃなかったがよ。出来ればゆっくり休みたかったぜ。明日こそ本番だってのに、ったく。
「ままま待ってよ! 普通置いてくっ!? この状況でっ!」
歩き出した俺に凄い勢いで追い縋ってくるミシェル。
「ソイルが帰るなら私も帰るわよっ! 一緒に連れていきなさいよっ!」
えぇ……。なんでついてくんのこいつ……。
相手するのも面倒だけど貴族を敵に回したくもないし……。仕方ない、ネクスまでは一緒に行くかぁ。
戦闘力だけを見れば、俺よりミシェルの方が圧倒的に高いのによ。なーんでそんな相手の面倒を見なきゃいけないのかねぇ。
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