上 下
551 / 580
12章 俺が望んだ異世界生活

506 家族ぐるみ

しおりを挟む
「これが水の魔導具でな。ここに触れると自動的に魔力を吸い取って、水を発生させてくれるんだよ」

「ク、クワァッ!?」


 驚いてるなぁ。そりゃ魔導具なんて見たことないだろうしな。
 それでもやはり好奇心旺盛なようで、すぐにみんなで試して遊んでいる。


「魔力が減りすぎると具合が悪くなったりするから、調子が悪くなったら触るの止めとけよ?
 それじゃ俺は下に居るから。夜になったらみんなこっち来いよ。一緒に夕食食おうぜ」

「クァ」


 水の魔導具の設置と魔力切れの説明、夕食のお誘いまで済ませたので、連絡通路を通って我が家のスペースに戻る。


「おうトーマ。トイレの設置と、ここの強度や構造の点検はしておいたぜ。気になるところはなかったから問題ないぜ。
 もうお前大工としても食っていけんじゃねぇのか?」

「流石に本職には敵わないと思うけど、リモデリングの使用にもいい加減慣れてきたからな。
 後は寝室用に個室の仕切りをつけるくらいでいいんじゃね?」


 ここで本格的に暮らすわけじゃないしな。
 トイレと寝室だけ仕切って、あとは仕切り無しの大部屋でいい気がする。
 グリフォンたちと遊ぶ為の家だし。


「きゅきゅい」

「うーあー!」


 ちびグリと子供達がめっちゃ仲良く遊んでいる。
 子供同士仲が良いのはいいしこっちも楽なのでありがたいんだけど、子供の世話を動物に押し付けてるみたいにならないように気をつけないとな。
 ただでさえ家を空けがちなんだし、家に居る時はなるべく相手しよう。でも赤ちゃんってすぐ寝ちゃうんだよなぁ。そしてすぐ起きるっていう。

 この世界の育児ですら大変なのに、魔法無しの育児って、それ自体が魔法みたいな作業だなぁ。子供が出来て初めて分かる親の苦労ってか。


 流石に岩山の内部だけあって床が固い。住居スペースは敷物を3重にしてみたけど、これで子供たちも快適に過ごせてるといいんだが。
 赤ちゃんは体重も軽いし、床の固さまで気にならないかねぇ。

 
 明るいうちに殺戮現場に戻って、魔物素材を自宅に運搬する作業を始める。
 グリフォンハウスにターミナルが出来た今、日没まで作業をを続けても問題なくなった。

 しっかしこの山みたいな亀の素材を全部持っていくのって現実的じゃないよなぁ。
 やっぱインベントリの魔導具の開発が必要だな。

 もしくはキャリーかけてグリフォンたちに運んで……、いやこれは止めておこう。俺が仕留めた魔物で彼らに迷惑かけたくない。


 暗くなるまで自宅に素材を運搬して、暗くなったので自宅を経由してグリフォンハウスに向かう。
 既に夕食の準備は殆ど終わっている状態だった。


「あ、トーマお疲れ様。この子たちってグリフォンでいいんだっけ? ハルに話は聞いてたけど、凄く好奇心が強い生き物みたいだね」

「お、シンも来てたのか。
 そそ。こいつらすげえ好奇心強ぇんだよ。いきなり俺に引っ付いてゲート潜っちまったくらいなんだぜ?」

「聞いた聞いた! 凄いよね。そんな動物今まで居なかった気がするんだけどねぇ。
 あ、でもペルやスナネコたちもゲートを潜るの躊躇しなかったんだっけ。危険なものなのかどうか判断できるのかもしれないよ」

「うん。2人とも話はそこまでにして、まずは夕食を食べましょう?
 家族もお客さんも待たせちゃってるよ?」

「おっと悪い。話は食事をしながらにしよう。
 グリフォンたちも遠慮なく食ってくれよな」


 岩山の中でグリフォン一家と俺達一家の懇親会が始まった。

 どうやら好奇心が強いのは子供だけではないようで、大きなグリフォンたちもふわわとつららに指導を受けながら子供達と遊んでくれた。
 大人グリフォンは体格差を気にしたのか、主に尻尾を使って子供達をあやしてくれている。

 う~ん……。なんかこいつらって、救貧院と相性良いような気がするなぁ……。


「最近王国の方では目立った動きはないみたい。
 ただ少しルイナスリームに人が集まりすぎているって印象があるね。
 ウィルスレイアとヴェルトーガは王からの課題があるから人も集まってるけど、ボールクローグとミルズレンダは悲惨みたいだね。
 まだそこまでは足を運んでないけど」

「へぇ~。旅をしながら色々見て回ってんだな。
 それとアートンに言われたけど、シンの姿を見てフィールダーの価値に気付いた奴等がギルドに情報を求めに来てるらしいぜ?」

「ああ、フィールダーに関しては旅先でも結構聞かれるから、基本的には包み隠さず話をしてるよ。
 話を聞いてくる人は基本的に商人が多い印象かな? 狩人はアサルトドラゴンに不満を持ってる人は少ないみたいで、あまり興味がないみたい。フィールダーは戦闘力も未知数だし」

「それに今は冒険者は迷宮で充分稼げてるからな。あまり街の外に目が向いてないってのもあるかもしれないな。
 それに関しちゃ少し考えないとダメかもしれない」


 どっちにしても今は土地に対して人口が全然足りてない状態だから、殆どの人が街の外に意識を向ける必要がないんだよな。
 恐らく10年後くらいに、新人冒険者が爆発的に増える。
 そうなった時に迷宮が飽和しないように、今いる冒険者たちには次の活躍の場が必要になってくるだろう。


「エリアキーパーの打倒には数年かかるかもしれないから、エリアキーパーを迂回して別のエリアにいく方法は試しておきたいよな。
 エリアキーパーを倒さなくても別エリアにいけるんであれば、狩人たちの活躍の場は一気に広がるだろうし」


 もう王国解放軍みたいなくだらない騒動は起こしたくないからな。
 道を整備するにしても、慎重にやっていかないと。

 俺の子供達が物心ついた時に、この世界に生まれて良かった! って思えるような世界にしてやりたいもんだ。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです

飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。 だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。 勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し! そんなお話です。

母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)

いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。 全く親父の奴!勝手に消えやがって! 親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。 俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。 母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。 なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな? なら、出ていくよ! 俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ! これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。 カクヨム様にて先行掲載中です。 不定期更新です。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。

狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。 街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。 彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

処理中です...