異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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10章 壁外世界

421 情報開示はするべき?

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「皆の者、本日はよく集まってくれた。本日の議題は事前に通達した通り、エリアキーパーの情報の開示を行うか否か。
 皆からの忌憚の無い意見を期待しておるぞ」


 王様の挨拶から始まる首脳会議。
 出席者は王様を始めとした国の重鎮達、各精霊家の当主、そして俺。俺の場違い感が半端ない。

 王様の挨拶が終わり、議長なのか進行役の男が話を進めていく。


「先日、異風の旋律の手によって、東のエリアキーパーユリバファルゴアと、西のエリアキーパーザルトワシルドアの討伐が達成されました。
 更にはスキップオーブの開発、普及によって、冒険者達が飛躍的に成長できるようになりました。
 この現在の状況を踏まえて、異風の旋律から1つの提案が持ち込まれました。それが今回の議題である、エリアキーパーの存在を一般人へ開示すべきだという意見です。
 この件について、何か意見のある方はいらっしゃいますか?」


 この流れだったら俺要らないだろ。なんで呼び出したんだ。

 会議って嫌いなんだよなぁ~。日本に居た頃から好きじゃなかったし、ヴェルトーガで缶詰食らったこともあるし、いい思い出が一切ない。

 ここでブルガーゾが手を挙げて、発言の許可を求める。


「我は開示しても良いと思うがな。むしろ何故開示せんのだ?
 今冒険者達はスキップオーブの登場によって、急成長を遂げておる。各都市の迷宮を踏破する者たちも遠からず増えてくるであろう。
 迷宮の次に冒険者が向かうべきは国境壁の外、エリアキーパーの打倒であろう? むしろこのままでは、迷宮を乗り越えた冒険者達の次の活動の場がないではないか」


 ブルガーゾの発言をきっかけに、会議は白熱していく。

 次はメーデクェイタ家の当主が発言する。


「あ、あの。僕も情報を開示すべきだと思いますっ……!
 ミルズレンダは狩人の活動が盛んな街です。スキップオーブで成長した冒険者達は、どんどん活動の場を広げていくでしょう。エリアキーパーの存在を知らないのは、大変危険な状況であると言えますよっ!」


 まだリーンと変わらないくらい小さい子供なのに、ゼルポーナスより当主してて笑うんだけど。
 あのジジイの存在意義ってなんだったんだ。


「私は少し慎重になるべきだと思うんですよ。エリアキーパーの存在は開示しても良いと思ってますが、その能力全てまで開示してしまうというのは、未だ時期尚早だと思っております」


 迷宮研究院の院長さんは慎重論らしい。


「僕も限定開示のほうが良いと思っている」

「私も、情報を全て開示するのは早いと思っておりますわ」


 おお? ファーガロン様とディオーヌ様も慎重派なのは意外だな。
 ヴェルトーガもウィルスレイアもエリアキーパーは討伐済みだから、ガンガンいこうぜ派だと思ったんだけど。


「ふむ。意見が割れておるな。ではこの提案を持ち込んだトーマ殿の意見を聞かせてもらえるか?
 お主は必要だと思ったからこの提案をしたのであろう? 理由を聞かせて欲しいのだ」


 おっと。流石に王様に話を振られたらスルーは出来ないな。
 出来れば口出ししないで静観しておきたかったんだけど。


「はい。じゃあご説明させて頂きます。と言っても、既に皆さんが言われていた内容の繰り返しになりますが。
 スキップオーブの登場によって、冒険者達は飛躍的な成長を遂げましたし、今後時間経過と共にどんどん強くなっていくことでしょう。
 既にスキップオーブを利用している冒険者達は、1年、もしかしたら半年もしないうちに続々と迷宮を踏破してしまうでしょう。
 そうなった時、冒険者が次に目を向けるのは国境壁外での活動だと思います。ここまではカルネジア家の方も仰ってましたよね」


 ふんっ! と鼻を鳴らすブルガーゾ。肯定されたのが嬉しかったのか?


「それでメーデクェイタ家の当主殿がお話した通り、強くなった狩人は国境壁外でも、かなり順調に活動できてしまうと思うんですよね。だから知らず知らずのうちに、エリアキーパーの縄張りに侵入してしまうと思うんですよ。
 だから警告として、エリアキーパーの存在は開示しておかないと危険だと思った次第です。
 開示の範囲については、王国の方にお任せ致します。開示範囲の差で、どのような違いが出るのか、正直ピンと来ていませんし」

「はぁ~……。そりゃあ討伐に成功してるトーマさんは興味ない部分だろうねぇ。
 トーマさん。エリアキーパーの強さを、他の魔物と比較しながら説明してくれるかい? 大雑把でいいよ」


 ファーガロン様に変な注文をつけられる。
 他の魔物と比較しながら、ねぇ?


「えーと。とりあえず、エリアキーパーの前に戦った1番強い相手はグリーンドラゴンですね。グリーンドラゴンは、シルバーライト製の剣で魔装術を纏っても、傷1つ付けられないくらいの相手でした。
 次に現れた心核魔獣ランドビカミウリですが、硬い以前に全く触れられませんでしたね。5人で同時攻撃したんですけど、あのでかい図体で俺達よりも敏捷性が高くて悪夢みたいでしたよ。
 4属性の範囲攻撃魔法を無制限に連発してくるし、やってられなかったですね。強度もグリーンドラゴンより上でしたし。
 そしてユリバファルゴアは、空の向こうまで続くほどの巨体で、戦ってて嫌になりましたね。素材がまだ腐るほど砂漠にあるんで、あの巨大さは1度見てみる価値はあると思いますよ。
 ザルトワシルドアもマジやってられなかったですね。ランドビカミウリ以上の機動性を誇るくせに、搦め手まで使ってきやがって。
 しかもユリバファルゴアもザルトワシルドアも、真っ二つにした程度じゃ死なないんですよねぇ。あれを耐久力って言っていいものか迷うんですけど、とにかくアホみたいな耐久力してるんですよね。殺し方に気付けないと、無駄な攻撃を強いられるんですよ。それに気付いても、実行できるかどうかはまた別の……、ってどうしました?」


 気付くと場が静まり返っている。
 まぁエリアキーパーの話だもんな。そりゃ静まり返るか。


「トーマさん、分かってませんわね? シルバーライト製の武器で傷1つ付けられない、この時点で王国の冒険者には絶対に殺せない相手なんですの。
 たまにカラードラゴンの素材が流通することもありますが、特級冒険者を含めた大狩猟団を編成して、多くの犠牲を払ってようやく殺している相手なんですよ? 支援魔法を使いながらね。
 本来グリーンドラゴンを単独で殺してくることすら有り得ないことなんです。それなのにもっと強い相手、と言われましてもね。冒険者の心が折れるのではないかと心配しているのですよ」


 ディオーヌ様に言われて気づいたけど、この世界の冒険者って、恐らく精神安定の取得条件を知らないんだよな?
 あれの有無は俺にとっての大きなアドバンテージだったけど、あれがないとカラードラゴン以上の魔物を超えていくことは出来ないか。

 なら仕方ないな。
 王国民にエリアキーパーの討伐を託すのなら、情報を公開するしかないだろう。
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