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10章 壁外世界
408 vsザルトワシルドア③ 水鏡
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真っ二つに両断した上に爆破して吹っ飛ばしてやってもダメージなし、と。
こっちは魔力消費に加えて、水蒸気爆発の衝撃波まで食らったってのによぉ。やってらんないね。
何よりも異常なのが、浮上し続ける俺達に対して、復活したザルトワシルドアの距離が全く縮まっていないことだ。これはもう超スピードとかそういう問題じゃない。なんらかの能力によって引き起こされている現象に違いない。
とりあえず、今のところ攻撃するのは魔力の無駄遣いに他ならない。回避に必要な場合を除いて、攻撃は一旦止めておこう。グリーンリーパーも飛ばなくなった事を見るに、シンも同じ考えに到ったようだ。
飛んでくる無数の水圧弾を躱し続ける。
不可視の銃弾は途切れることなく降り注ぐ。
細かく姿勢を調節し、スクリューと生活魔法を駆使して、最小限の動きで回避する。
今のままでは勝ち目がない。考えるのにも情報が足りてない。
情報を集めろ。能力を見極めろ。魔力の無駄遣いを控えろ。
まずは近付いてみないと始まらない。
奴がこちらと一定の距離を保ち続けているのは、近付かれると不都合があるからだと判断する。
追いかけろ。追い詰めろ。
もし水底に向かってザルトワシルドアを追いかけていたとしたら、終わりがあるかどうかわからなかった。
でも浮上し続ければ確実に終わりがある。水面という名の海の終わりが。
まずはこのまま、ザルトワシルドアを海の上まで追い立てろ!
降り注ぐ攻撃は勢いを増していく。
こちらからの反撃がないと判断したのか、全ての触手をこちらに向けて、隙間がないほどの飽和射撃。
スクリューと水・風魔法、更には撃鉄まで駆使して、相手の攻撃を回避していく。
水の中では踏ん張りが利かない。掠っただけでも大きく体勢を崩してしまう。
この程度の攻撃を躱し切れないのは、集中力が足りない証拠だ。
集中しろ。全ての意識をザルトワシルドアだけに向けろ。この一戦に全てを賭けろ。
もういい加減、小細工無しでも戦えるようにならないとなぁっ!!
その時視界の端が変化を捉える。
ずっと続いていた崖の壁が途切れる。
俺たちが飛び込んだ深遠への谷をようやく抜けた。
海面はもうすぐだ。ここで失敗してはいられないぜっ。
追い詰めろぉぉぉっ!!
水面が近付いてくる。
それに連れて、今まで全く縮まらなかったザルトワシルドアとの距離が急激に縮まっていく。
罠なのかそうじゃないのかは分からない。だが近付かないと始まらない。
このまま突っ込んで、ガントレットの一撃を食らわせてやれ!
弾幕と言うに相応しい数の水圧弾が襲い掛かる。
戦闘開始直後ならなす術はなかったかもしれないが、今は水中の精密動作にも慣れた。
こんな攻撃、掻い潜るのは造作もない!
スクリュー全開! 右腕に魔力を込めて、全力の右ストレートッ!!
「――――なにっ!?」
ザルトワシルドアを殴るはずだった拳は空を切る。そう、空を切ったのだ。
気付くと俺は勢い良く海上に飛び出し、空中に投げ出された状態になっていた。
空中で風魔法を駆使して姿勢制御、急いで背後を振り返る。
水面にはザルトワシルドアが、巨大な瞳で俺を見つめていた。
たった今、通り抜けたはずなのに!!
コイツ……!! もしかして実体じゃないのかっ!?
「ふっがけやがってえええええ!!!」
水面に落下する直前、右腕に魔力を込めて海面を殴りつける!
海面が爆発し、水面に映っていたザルトワシルドアが霧散する。なんの手応えもなく、だ。
間違いない。これは幻影か何かだ!
くっそ! これが邪眼の能力ってワケか!?
恐らく俺たちの位置を中心として、この幻影は生み出されていた。
そしてこの幻影は、水中にしか投影できない。
だから海面以上には距離を取れずに、俺との接触を許してしまったってことか……。
くそ……! これまで本体でもなんでもない奴と消耗戦を続けていたのかよ!
道理でザルトワシルドアにはなんの焦りもねぇわけだ!
この投影能力こそが、本体のでかい目の能力なのかもしれないな。
そりゃあ魔法による遠隔攻撃に終始するわけだ。実体がないんじゃ物理攻撃を仕掛けることは出来ないからな。
ぶった切った時に生じる揺らぎは、単純に投影しなおしてるだけのことだったのか……!
くそぉ……。完全に知恵比べで負けた気分だ……!
思えばあんな巨大な異形が横を通ったのに、姿を確認できなかったのはおかしい話だった……!
あの時俺達を追い越したのは、底から放たれた魔力の固まりか何かだったのか……!?
そう考えると、奴の本体の居る場所は……!
「ぷはぁっ! トーマ! どうなってるの!?」
少し離れた場所からシンも顔を出した。
それと同時に水面にまたザルトワシルドアの姿が映し出されていく。
「シン! もう1回水面殴るから衝撃注意なっ!」
シンの返事を待たずに水面を爆発させ、ザルトワシルドアの投影を霧散させていく。
「くっ! マーサの装備がなかったな内臓が潰れそうだね……!
それでトーマ。今何が起こってる? なんでザルトワシルドアの姿が吹き飛ばされて、何で何度も元に戻るの?
何か掴んだんでしょ?」
「ああ、今説明するけどその前に……」
ストレージに仕舞ってあったウォーハンマーをシンに渡す。
「今まで見てたザルトワシルドアの姿は、水中に映し出された幻影だと思う。どうやってそいつに魔法を使わせてるのかは分からないけど、少なくともあいつをいくら攻撃しても無意味っぽいことだけは分かった。
シン! また奴の姿が投影されてきたぞ! ウォーハンマーで水を爆散させろっ!」
「なるほど、そういうこと、かぁっ!」
シンがウォーハンマーを海面に叩きつける!
ガントレットのような心核武器ではないが、重量と遠心力が加わったウォーハンマーの威力だって馬鹿にならない。
水面が激しく吹き飛び、ザルトワシルドアの投影体が消えていく。
「とりあえず交互に海面を吹き飛ばしつつ魔力回復に努めよう。魔力が全開したら、本体を叩きに行くしかねぇな」
「了解。スキルとジェネレイトのおかげで、回復量のほうが多いもんね。
本体の居場所は、まぁあそこしかないよね」
俺とシンは海中を見る。
視線の先には、たった今脱出したばかりの奈落への大穴が映っていた。
こっちは魔力消費に加えて、水蒸気爆発の衝撃波まで食らったってのによぉ。やってらんないね。
何よりも異常なのが、浮上し続ける俺達に対して、復活したザルトワシルドアの距離が全く縮まっていないことだ。これはもう超スピードとかそういう問題じゃない。なんらかの能力によって引き起こされている現象に違いない。
とりあえず、今のところ攻撃するのは魔力の無駄遣いに他ならない。回避に必要な場合を除いて、攻撃は一旦止めておこう。グリーンリーパーも飛ばなくなった事を見るに、シンも同じ考えに到ったようだ。
飛んでくる無数の水圧弾を躱し続ける。
不可視の銃弾は途切れることなく降り注ぐ。
細かく姿勢を調節し、スクリューと生活魔法を駆使して、最小限の動きで回避する。
今のままでは勝ち目がない。考えるのにも情報が足りてない。
情報を集めろ。能力を見極めろ。魔力の無駄遣いを控えろ。
まずは近付いてみないと始まらない。
奴がこちらと一定の距離を保ち続けているのは、近付かれると不都合があるからだと判断する。
追いかけろ。追い詰めろ。
もし水底に向かってザルトワシルドアを追いかけていたとしたら、終わりがあるかどうかわからなかった。
でも浮上し続ければ確実に終わりがある。水面という名の海の終わりが。
まずはこのまま、ザルトワシルドアを海の上まで追い立てろ!
降り注ぐ攻撃は勢いを増していく。
こちらからの反撃がないと判断したのか、全ての触手をこちらに向けて、隙間がないほどの飽和射撃。
スクリューと水・風魔法、更には撃鉄まで駆使して、相手の攻撃を回避していく。
水の中では踏ん張りが利かない。掠っただけでも大きく体勢を崩してしまう。
この程度の攻撃を躱し切れないのは、集中力が足りない証拠だ。
集中しろ。全ての意識をザルトワシルドアだけに向けろ。この一戦に全てを賭けろ。
もういい加減、小細工無しでも戦えるようにならないとなぁっ!!
その時視界の端が変化を捉える。
ずっと続いていた崖の壁が途切れる。
俺たちが飛び込んだ深遠への谷をようやく抜けた。
海面はもうすぐだ。ここで失敗してはいられないぜっ。
追い詰めろぉぉぉっ!!
水面が近付いてくる。
それに連れて、今まで全く縮まらなかったザルトワシルドアとの距離が急激に縮まっていく。
罠なのかそうじゃないのかは分からない。だが近付かないと始まらない。
このまま突っ込んで、ガントレットの一撃を食らわせてやれ!
弾幕と言うに相応しい数の水圧弾が襲い掛かる。
戦闘開始直後ならなす術はなかったかもしれないが、今は水中の精密動作にも慣れた。
こんな攻撃、掻い潜るのは造作もない!
スクリュー全開! 右腕に魔力を込めて、全力の右ストレートッ!!
「――――なにっ!?」
ザルトワシルドアを殴るはずだった拳は空を切る。そう、空を切ったのだ。
気付くと俺は勢い良く海上に飛び出し、空中に投げ出された状態になっていた。
空中で風魔法を駆使して姿勢制御、急いで背後を振り返る。
水面にはザルトワシルドアが、巨大な瞳で俺を見つめていた。
たった今、通り抜けたはずなのに!!
コイツ……!! もしかして実体じゃないのかっ!?
「ふっがけやがってえええええ!!!」
水面に落下する直前、右腕に魔力を込めて海面を殴りつける!
海面が爆発し、水面に映っていたザルトワシルドアが霧散する。なんの手応えもなく、だ。
間違いない。これは幻影か何かだ!
くっそ! これが邪眼の能力ってワケか!?
恐らく俺たちの位置を中心として、この幻影は生み出されていた。
そしてこの幻影は、水中にしか投影できない。
だから海面以上には距離を取れずに、俺との接触を許してしまったってことか……。
くそ……! これまで本体でもなんでもない奴と消耗戦を続けていたのかよ!
道理でザルトワシルドアにはなんの焦りもねぇわけだ!
この投影能力こそが、本体のでかい目の能力なのかもしれないな。
そりゃあ魔法による遠隔攻撃に終始するわけだ。実体がないんじゃ物理攻撃を仕掛けることは出来ないからな。
ぶった切った時に生じる揺らぎは、単純に投影しなおしてるだけのことだったのか……!
くそぉ……。完全に知恵比べで負けた気分だ……!
思えばあんな巨大な異形が横を通ったのに、姿を確認できなかったのはおかしい話だった……!
あの時俺達を追い越したのは、底から放たれた魔力の固まりか何かだったのか……!?
そう考えると、奴の本体の居る場所は……!
「ぷはぁっ! トーマ! どうなってるの!?」
少し離れた場所からシンも顔を出した。
それと同時に水面にまたザルトワシルドアの姿が映し出されていく。
「シン! もう1回水面殴るから衝撃注意なっ!」
シンの返事を待たずに水面を爆発させ、ザルトワシルドアの投影を霧散させていく。
「くっ! マーサの装備がなかったな内臓が潰れそうだね……!
それでトーマ。今何が起こってる? なんでザルトワシルドアの姿が吹き飛ばされて、何で何度も元に戻るの?
何か掴んだんでしょ?」
「ああ、今説明するけどその前に……」
ストレージに仕舞ってあったウォーハンマーをシンに渡す。
「今まで見てたザルトワシルドアの姿は、水中に映し出された幻影だと思う。どうやってそいつに魔法を使わせてるのかは分からないけど、少なくともあいつをいくら攻撃しても無意味っぽいことだけは分かった。
シン! また奴の姿が投影されてきたぞ! ウォーハンマーで水を爆散させろっ!」
「なるほど、そういうこと、かぁっ!」
シンがウォーハンマーを海面に叩きつける!
ガントレットのような心核武器ではないが、重量と遠心力が加わったウォーハンマーの威力だって馬鹿にならない。
水面が激しく吹き飛び、ザルトワシルドアの投影体が消えていく。
「とりあえず交互に海面を吹き飛ばしつつ魔力回復に努めよう。魔力が全開したら、本体を叩きに行くしかねぇな」
「了解。スキルとジェネレイトのおかげで、回復量のほうが多いもんね。
本体の居場所は、まぁあそこしかないよね」
俺とシンは海中を見る。
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