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10章 壁外世界
406 vsザルトワシルドア① 邪眼
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浮上しながら鈴音を抜く。ここからはいつ攻撃を受けてもおかしくない。油断するな。
シンも隣りで心緑の流刃を構えている。覚悟は決まった。ここで倒す。
全力で浮上してるが、未だに水面もザルトワシルドアも確認できない。いったいどれくらいの深さまで落ちたんだかな。
このまま何事もなく水面に出られたら言う事ないんだが、残念ながら見られている不快感は拭えていない。間違いなく未だに補足されている。
その時『遠目』で、ザルトワシルドアだと思われる姿が目に入る。
その姿は一見ウニのようだ。
だが体表のそれはトゲではなく、全てが柔らかく揺らいでいる。
これはウニというよりもイソギンチャクに近いか……?
全身は黒。だからウニだと思ったのかもな。
大きさは『遠目』だと測りきれないが、少なくともユリバファルゴアのように、地平線の先まで続くほどの巨体というわけではなく、ちゃんと視界に収まっている。でかいことはでかいようだが、恐らく1キロメートルはなさそうだ。
っていうか、コイツのどこに目があるんだ?
深遠の邪眼とか言われてて、海中に引きずり込むって話から、俺はイカ系の生物なのかなって思ってたんだが。
イカどころか目そのものが見当たらない。俺達に向けていない方に目があるのか?
そんな疑問を持つ俺に応えるかのように、ザルトワシルドアの表面の黒い触手が上下に移動していく。
黒い触手に覆われた体表の下から現れたのは、目だ。
体表が開き切って、ザルトワシルドアの目が開く。
まるでそれは眼球そのもの。
眼球の周りを黒い触手でびっしり覆われている、そんな姿の化け物だ。
ザルトワシルドアは正しく深遠の邪眼だった。
何かの巨大生物の目が水面を覗いていたわけじゃない。
奈落の底から水面を監視する邪眼の化け物、それがザルトワシルドアの正体か……!
その時一斉に、黒い触手がこちらに向けられる。
何をしてくる……!?
――――!?
その光景を見たとき、全身が凍りついたのを感じた。
しかしその感覚は一瞬で、気付くと普段の思考に戻っていた。
今のは久しぶりに、『精神安定』が仕事をしてくれたんだろう。
それくらい衝撃的な光景だった。
隣りのシンの姿を見るが、どうやらシンも平静を保っているようだ。
俺達に向けられた無数の触手の先にも、全て眼球が存在している。
中央の本体と共に、その数百も数千もあるかもしれない全ての触手が俺達を見ている。
正気を失いこそしなかったものの、見続けるだけで心が磨り減っていきそうだ……!
その時1本の触手の目が光る。
俺とシンは反射的に別方向に別れて距離を取る。
一瞬遅れて、俺たちがいた場所付近の壁が大きく陥没した。
なんだ? 今奴は何をしてきた?
魔法攻撃だったのは間違いない。だが何も見えなかったのはなぜだ?
黒い触手の先が何度も光る。
その度に蛇行して攻撃を躱す。
目を凝らすと水が揺らいでいるのが分かる。
何をしているのか分からないが、直線的で視認しにくい魔法攻撃だということは分かった。
光る目の数が増えていく。
まさに雨のような攻撃が続く。
攻撃の予備動作が分かりやすい上に直線的だから躱すのはそこまで難しくないが、無数に放たれるといつまで避けきれるものか……!
(がっ!?)
左腕に強い衝撃を受ける。
幸い左腕は繋がったままだが、大きく体勢を崩してしまった。
スクリューで適当に高速移動しながら、水魔法で体勢を戻す。
痛みはあるが、動かすのには問題ないか。マーサの装備じゃなかったら、多分左腕が吹っ飛んでたな。
痛い出費だったが、発動しっぱなしにしてある水魔法のおかげで攻撃の正体が分かった。
こいつ、水魔法で海水を圧縮して、それを砲弾みたいに飛ばしてきてやがるんだ……!
道理で視認しにくいはずだよ! 光も届かない深海で、水中で水弾を飛ばしてきてやがるとはな……!
しかも俺とシンもずっと浮上し続けているのに、いまだザルトワシルドアとの距離が一定から変化していない。
俺とシンの浮上速度に合わせて移動してやがるんだ。このままだとまったく距離が縮まらない!
(閃空!)
左腕のお返しに、ザルトワシルドアを真っ二つに両断する。
両断されたザルトワシルドアは、2つに別れたその瞳で、未だこちらを睨み続けている。
その時緑の閃光が走り、ザルトワシルドアを更に両断する。
深遠の邪眼は、4つに別れたままで俺達を見続けている。
あ~やだやだ。これだからエリアキーパーは嫌なんだよ。
普通の魔物だったら両断された時点で死ぬのにさぁ。こいつらいったいなんなんだよ。
ザルトワシルドアの全身が一瞬揺らめいたと思うと、その瞳は何事もなかったように1つに戻っていた。
魔力還元が起こらなかった時点で死んでないのは分かってたけどな。
それにしたって、浮上している俺たちとの距離さえ縮まってないとか、嫌になるぜまったくよぉ!
水弾の雨が再開される。
もう1度閃空とグリーンリーパーで両断する。
数秒後に全身が揺らいで、両断した全身が元に戻る。
これはいったいどういうことなんだろうな。
両断した後、瞳が元に戻るまでは、攻撃が一旦停止する。
これを考えると、何らかの能力で体を元に戻しているのだと思えるんだけど、攻撃に意味があるのかないのかが不透明だ。
エリアキーパー戦では閃空とグリーンリーパーで開幕するのは定番になりつつあるな。
そして効果がないのも定番になるとか嫌になるぜ。
刃紋を試そうにも距離が縮められないし、さてどうやって倒したもんかねぇ?
シンも隣りで心緑の流刃を構えている。覚悟は決まった。ここで倒す。
全力で浮上してるが、未だに水面もザルトワシルドアも確認できない。いったいどれくらいの深さまで落ちたんだかな。
このまま何事もなく水面に出られたら言う事ないんだが、残念ながら見られている不快感は拭えていない。間違いなく未だに補足されている。
その時『遠目』で、ザルトワシルドアだと思われる姿が目に入る。
その姿は一見ウニのようだ。
だが体表のそれはトゲではなく、全てが柔らかく揺らいでいる。
これはウニというよりもイソギンチャクに近いか……?
全身は黒。だからウニだと思ったのかもな。
大きさは『遠目』だと測りきれないが、少なくともユリバファルゴアのように、地平線の先まで続くほどの巨体というわけではなく、ちゃんと視界に収まっている。でかいことはでかいようだが、恐らく1キロメートルはなさそうだ。
っていうか、コイツのどこに目があるんだ?
深遠の邪眼とか言われてて、海中に引きずり込むって話から、俺はイカ系の生物なのかなって思ってたんだが。
イカどころか目そのものが見当たらない。俺達に向けていない方に目があるのか?
そんな疑問を持つ俺に応えるかのように、ザルトワシルドアの表面の黒い触手が上下に移動していく。
黒い触手に覆われた体表の下から現れたのは、目だ。
体表が開き切って、ザルトワシルドアの目が開く。
まるでそれは眼球そのもの。
眼球の周りを黒い触手でびっしり覆われている、そんな姿の化け物だ。
ザルトワシルドアは正しく深遠の邪眼だった。
何かの巨大生物の目が水面を覗いていたわけじゃない。
奈落の底から水面を監視する邪眼の化け物、それがザルトワシルドアの正体か……!
その時一斉に、黒い触手がこちらに向けられる。
何をしてくる……!?
――――!?
その光景を見たとき、全身が凍りついたのを感じた。
しかしその感覚は一瞬で、気付くと普段の思考に戻っていた。
今のは久しぶりに、『精神安定』が仕事をしてくれたんだろう。
それくらい衝撃的な光景だった。
隣りのシンの姿を見るが、どうやらシンも平静を保っているようだ。
俺達に向けられた無数の触手の先にも、全て眼球が存在している。
中央の本体と共に、その数百も数千もあるかもしれない全ての触手が俺達を見ている。
正気を失いこそしなかったものの、見続けるだけで心が磨り減っていきそうだ……!
その時1本の触手の目が光る。
俺とシンは反射的に別方向に別れて距離を取る。
一瞬遅れて、俺たちがいた場所付近の壁が大きく陥没した。
なんだ? 今奴は何をしてきた?
魔法攻撃だったのは間違いない。だが何も見えなかったのはなぜだ?
黒い触手の先が何度も光る。
その度に蛇行して攻撃を躱す。
目を凝らすと水が揺らいでいるのが分かる。
何をしているのか分からないが、直線的で視認しにくい魔法攻撃だということは分かった。
光る目の数が増えていく。
まさに雨のような攻撃が続く。
攻撃の予備動作が分かりやすい上に直線的だから躱すのはそこまで難しくないが、無数に放たれるといつまで避けきれるものか……!
(がっ!?)
左腕に強い衝撃を受ける。
幸い左腕は繋がったままだが、大きく体勢を崩してしまった。
スクリューで適当に高速移動しながら、水魔法で体勢を戻す。
痛みはあるが、動かすのには問題ないか。マーサの装備じゃなかったら、多分左腕が吹っ飛んでたな。
痛い出費だったが、発動しっぱなしにしてある水魔法のおかげで攻撃の正体が分かった。
こいつ、水魔法で海水を圧縮して、それを砲弾みたいに飛ばしてきてやがるんだ……!
道理で視認しにくいはずだよ! 光も届かない深海で、水中で水弾を飛ばしてきてやがるとはな……!
しかも俺とシンもずっと浮上し続けているのに、いまだザルトワシルドアとの距離が一定から変化していない。
俺とシンの浮上速度に合わせて移動してやがるんだ。このままだとまったく距離が縮まらない!
(閃空!)
左腕のお返しに、ザルトワシルドアを真っ二つに両断する。
両断されたザルトワシルドアは、2つに別れたその瞳で、未だこちらを睨み続けている。
その時緑の閃光が走り、ザルトワシルドアを更に両断する。
深遠の邪眼は、4つに別れたままで俺達を見続けている。
あ~やだやだ。これだからエリアキーパーは嫌なんだよ。
普通の魔物だったら両断された時点で死ぬのにさぁ。こいつらいったいなんなんだよ。
ザルトワシルドアの全身が一瞬揺らめいたと思うと、その瞳は何事もなかったように1つに戻っていた。
魔力還元が起こらなかった時点で死んでないのは分かってたけどな。
それにしたって、浮上している俺たちとの距離さえ縮まってないとか、嫌になるぜまったくよぉ!
水弾の雨が再開される。
もう1度閃空とグリーンリーパーで両断する。
数秒後に全身が揺らいで、両断した全身が元に戻る。
これはいったいどういうことなんだろうな。
両断した後、瞳が元に戻るまでは、攻撃が一旦停止する。
これを考えると、何らかの能力で体を元に戻しているのだと思えるんだけど、攻撃に意味があるのかないのかが不透明だ。
エリアキーパー戦では閃空とグリーンリーパーで開幕するのは定番になりつつあるな。
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