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10章 壁外世界

401 家族ぐるみのお付き合い

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 断崖を少し刳り貫く形でターミナル広場を作り、ターミナルの形を何度も確認しながら台座を製作。ウミガメさんが来ることはあっても魔物が来る心配はないだろうから、ターミナルを保護する施設は多分必要ないよな?

 儀式魔法を使用してターミナルの有効化完了。触れたらちゃんと登録できた。これで準備万端だな。
 
 みんなを連れてくる前に、ウミガメさんたちにも断りを入れておくか。
 そう思って海岸に出ると、シンの周りにみんな集まって、おいしそうに木の実を食べているみたいだった。


「あ、トーマ終わった? おつかれさま。
 どうやらウミガメたちは果物を気に入ってくれたみたい。大きい子も小さい子も、みんなおいしそうに果実を食べてくれてるよ」

「へぇ~果物好きなんだな。気に入ってもらえてよかった。
 それじゃウミガメさん。これから俺たちの家族を連れてくるよ。すぐに戻ってくるから、シンと一緒に待っててくれ」


 ウミガメさんの短い了承の声を受けて、ベイクへのゲートを開いた。
 ゲートを通ってベイクのターミナル広場に出ると、ふわわとつららを含めた異風の旋律メンバーが既に終結していてちょっとビビった。


「あ、トーマおかえりー! 兄さんが一緒じゃないって事は、私達を迎えに来たってことでいいんでよねっ!?」

「おうただいま。ターミナルの有効化には無事成功したよ。みんなもウミガメさんたちの迷惑にならないように気をつけてくれな」


 1度ゲートを打ち切り、ベイクから再度ゲートを使用する。
 
 流石にゲートはめんどくさい制限が多くて、発生したゲートには入り口側からしか侵入することが出来ないのだ。
 1度入り口側から通過すれば、出口側からも通り抜けすることが出来るようになるため、ゲートを消さない限りは往復することが可能になる。通過するたびに魔力が消費されるけどね。
 恐らくは入り口側に通行許可登録か何かの判定があって、それが行われない限りは出入り出来ないんだろうと思う。
 なので俺が島から開いたゲートに皆がそのまま侵入することは出来ないのだ。ズルは許されない。本当に面倒くさい。

 
 島行きのゲートが開いてみんなが飛び込んでいく。
 そのまま走っていくかと思えば、冷静に島のターミナルを指輪に登録していてちょっと笑った。ターミナルポイントの登録は大切ですね。


「うわぁ……! 凄いねここ……。こんな場所が自然に存在するなんて信じられないよっ……!」

「確かにリーネの言う通り、信じられないほど美しい場所ですね……。と、景色に見蕩れるのは後にしましょう。まずは先住の皆様に挨拶に伺わないと」

「うん。あそこでシンが一緒に遊んでる子達だよね? 大きい子から小さい子まで沢山居るねー。
 私そんなに爬虫類好きじゃなかったんだけどなぁ。普通に可愛く感じちゃうよ」

「だ、大丈夫っすかね!? こんな大勢でいきなり近付いて、怖がらせちゃったりしないっすか!?」

「う~ん。兄さんと一緒に居る時点で問題ないと思うけどなー。
 よっしふわわ! つらら! いっしょにいくぞー!」


 流石リーンセンパイ。ふわわとつららを伴って一目散に駆け出していった。
 突然のリーンの突撃にもウミガメさん達は特に反応しない。ただ興味深げに視線を向ける程度だ。


「へぇ~本当に大人しい子たちみたいね。ウミガメってダイバーに近寄って来たりもするんだっけ? 元々人懐っこい生き物なのかもねぇ」

「お、おお、すげぇな。ふわわとつららも普通に遊んでるし、私たちが近付いても問題ねぇんじゃねぇか?
 むしろこうやって遠巻きに眺めるほうが悪いだろ。さっさと挨拶に行こうぜ」

「あ、彼らの……、鳴き声なのかな? 音魔法を起動してれば知覚できるぞ。
 単純な感情くらいしか分からないと思うけど、最低限の交流は出来ると思う。あっちは多分俺たちの会話、理解してると思うし」

「うん。了解だよ。ふふ、音魔法って本当に便利な魔法だよね。トーマが音魔法の扱いに不満を持ってるのが、最近私にも分かって気がするかな?」


 音魔法は魔物釣りにも使えるし、原生生物とのコミュニケーションにも使えるし、戦闘での使い勝手も悪くないし、何よりも低コストでガンガン使っていけるのがいい。
 みんなが俺と同じ使い方は出来なかったとしても、その程度では揺るがないほどに音魔法先生は偉大だと思う。


「ウミガメさんただいま。もうみんな突撃しちゃってるけど、これが俺たちの家族だよ。
 紹介はそれぞれにしてもらってくれ。俺に紹介されるより、自己紹介したくてうずうずしてるみたいだし」


 既にウミガメと女性陣がもみくちゃになっている。お互い楽しそうにしてるので多分問題ないだろう。多分。

 ここでもなぜかふわわとつららが崇められているようで、2匹を背中に乗せたウミガメさんを子ウミガメたちが泳いで付いていく姿は面白すぎた。あぁ、撮影用魔導具めっちゃ欲しい……!

 女性陣の中で特に興奮しているのがアサヒとリーネの2人で。アサヒは1番小さな子ウミガメをお腹に乗せてラッコ泳ぎしているし、リーネは速く泳ぎたいと、ハルとカンナの指導で泳ぎを練習していた。


「ウミガメたちと仲良くなれたし、中継地点を確保できたのも大きいね。
 とはいえウミガメたちをザルトワシルドアとの戦いに協力させるわけにはいかないかな?」

「だな。スナネコと違って機動力も戦闘力もそんなに高くない。戦いに巻き込むのは無しだ。
 そうだなぁ。もし協力してもらえるんなら、戦闘終了後に迎えに来てもらうくらいかな? ユリバファルゴア戦の後みたいに、動けなくなりそうだし」


 ザルトワシルドアさえ居なくなれば、船の運航の案内人とかになってくれそうではあるけどな。
 エリアキーパーとの戦いに連れていくのはダメだ。性格からして戦闘向きじゃないし。

 人にも向き不向きがあるように、生き物にだって向き不向きはある。
 戦いに向かない生き物が居たっていいじゃないか。
 
 代わりに俺たちが矢面に立てば済む事なんだから。
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