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10章 壁外世界
389 水中戦闘
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「さて、ルイナスリームに城壁も出来たことだし、そろそろディオーヌ様からの依頼の達成も考えないといけないよな」
「そうですね。ルイナスリームの方は女性陣だけでも事足りると思いますし、シンとトーマはザルトワシルドアに集中しても良いですよ」
「あ、そんじゃついでに頼んで悪いんだけど、鱗1枚分、俺のストレージに入る大きさに小分けにしておいて欲しい。俺が知ってる一番頑丈な素材がユリバファルゴアの鱗だからさ。船が必要になるだろうからヴェルトーガに持ち込みたいんだよね」
「りょーかいだよー! ホワイトテイルでバラバラにしておくねー!」
リーンセンパイの発言がちょっと怖かった。
ルイナスリームの街作りは女性陣に丸投げして、俺とシンはヴェルトーガに向かう。
冒険者ギルドでピリカトさんに、タイデリア家への面会希望を言付けて、俺とシンは海に向かった。
環境適応スキルが海でどんな影響を及ぼすのか確認しないといけない。
水中で戦闘することを前提とするのだから、呼吸とか水圧とか視界とか、考えなければならないことが多い。
砂の中も怖かったけど、深海とかも普通に怖ぇよ。戦いたくねぇ~……。
ヴェルトーガ西端の海まで到着する。
「それじゃとりあえず水中で戦闘できるか確認しないとな。
水中にも魔物は居るはずだから気をつけよう。」
「了解だよ。僕はトーマほど水魔法を上手く扱えないしね。トーマ以上に注意しないと」
よし、とりあえず試してみないと始まらないな。
シンと2人で海に飛び込む。
ごぼっ!
ヴェルトーガの地面が結構高いので、高所からの飛び込みになってしまったわ!
つうか環境適応スキルがあまり働いてくれてない。
裸眼じゃ水中の中はちゃんと見えないし、呼吸も出来ないらしい。
リンカーズで眼鏡って見たことないけど、水中眼鏡は作らないと話にならないな。
「ぷはっ!」
1度水面に上がる。
日本ではさほど泳いだことはなかったけれど、身体能力が人外レベルにまで強化された今なら、水泳なんて問題なくこなせる。まぁ技術は全くないんだけど。
「あれ? シーン!」
周囲を見渡したけどシンがいない。
あ、やべ。もしかしなくても、シンって水の中に入るの初めてか? って考えるとグズグズしてられない!
まずは水を生成して両目を覆う。
それから海面に顔をつけて、水操作で目との間に若干の層を作る。
即席の水中ゴーグルだ。何もしないよりは水中が良く見える。
そこでシンが飛び降りた付近を捜すと……、いた!
どうやら上下が分からなくてパニックを起こしてるっぽいな。
音魔法を使用しシンに呼びかける。
(シン! まずは落ち着け! 暴れなくていい!)
確か水中でも声は聞こえるはず……、だよな!?
直接の声じゃなく魔法で生成した音だから、シンに届いているのは間違いなく探知できているけど……!
と、シンの動きが止まった。恐らく声が届いたらしい。
風と水魔法も併用してシンの元へ急ぐ。
(シン。今から捕まえて水面まで引っ張るから、そのままじっとしててくれ)
シンは結構深いところまで沈んでしまっていたが、強化された身体能力と生活魔法のおかげで、難なく掴むことが出来た。
(このまま水面まで上がるから、少しだけ我慢してくれ)
そう発信しながら、空いている手でシンの口と鼻周りの水を操作し、更にその内側に空気を生成する。魔法じゃなきゃ絶対に出来ない、即席の空気ボンベだ。ひと呼吸するのが関の山かもしれないけどな。
浮く分には潜るより早い。海水は浮力も強いしな。
シンを掴んだままで一気に水面まで上昇する。
「ぷはぁ!」
「ぷはぁ! げほっ! げっほ!」
シンは激しく咳き込みはしているが、俺の言いつけを守って不必要に暴れてはいない。
おかげで生活魔法で支えてやるのは難しくない。
……シンを支えるのは難しくないんだけど、音魔法を連発した上に、現在進行形で水の中で魔法を使っているためか、水中から魔物が集まってきている気配を感じる。
シンを掴んだまま戦うのは面倒だけど、攻撃範囲拡張があるから問題ない。
それに呼吸こそ出来なかったけど、水の抵抗をあまり気にせず動けたように思う。
水をかく手足には水の抵抗をちゃんと感じるのにな。スキルって不思議。
「シン。呼吸が落ち着いたら、まずはじっとして水に浮くことから試してみてくれ。それまで絶対に魔物は近づけないからさ」
シンの手を握ったままで、ダガーの攻撃範囲を拡張して水中の魔物を殺していく。
その死体に引き寄せられて魔物がドンドン集まってくるが、せっかくなので練習台になってもらおう。
「浮けるようになったな? それじゃ手を離すぞ。
浮けるようになったなら、今度は水魔法と風魔法で姿勢制御を試してみてくれ。
もし姿勢制御に失敗しても、今みたいにしてれば自然に浮くから慌てなくていい。
俺はちょっと水中戦の練習してくるから、シンはゆっくり水に慣れてくれ」
「う、うん。ごめんね。ちょっとの間任せるよ……。
トーマは水の中に入ったことあったの?」
「異邦人は全員泳ぎを教わったことがあるはずだ。ハルもアサヒもカンナも、技術に差はあるだろうが泳げると思う。
じゃちょっと行ってくるわ」
両手が自由になったので、今度は鈴音を振るってみる。
呼吸こそ出来ないけれど、やっぱり水の抵抗は殆ど感じないで動ける。
ただ魔法無しでの視界確保と呼吸に関しては、何らかの対策が絶対に必要だ。
水が魔物の血で真っ赤に染まって、なんとも猟奇的な雰囲気を醸し出している。
死体も所々に浮かんでて、なんというか罪悪感と嫌悪感がヤバい。
一応何体かストレージに収めてはみたけど、使い道があるかどうかは微妙だな。
さて、ザルトワシルドアと戦うには、まずシンに泳ぎを教える必要がありそうだ。
陸に上がって乾燥を使い、ベタつく肌に洗浄も施してから、冒険者ギルドに引き返した。
「そうですね。ルイナスリームの方は女性陣だけでも事足りると思いますし、シンとトーマはザルトワシルドアに集中しても良いですよ」
「あ、そんじゃついでに頼んで悪いんだけど、鱗1枚分、俺のストレージに入る大きさに小分けにしておいて欲しい。俺が知ってる一番頑丈な素材がユリバファルゴアの鱗だからさ。船が必要になるだろうからヴェルトーガに持ち込みたいんだよね」
「りょーかいだよー! ホワイトテイルでバラバラにしておくねー!」
リーンセンパイの発言がちょっと怖かった。
ルイナスリームの街作りは女性陣に丸投げして、俺とシンはヴェルトーガに向かう。
冒険者ギルドでピリカトさんに、タイデリア家への面会希望を言付けて、俺とシンは海に向かった。
環境適応スキルが海でどんな影響を及ぼすのか確認しないといけない。
水中で戦闘することを前提とするのだから、呼吸とか水圧とか視界とか、考えなければならないことが多い。
砂の中も怖かったけど、深海とかも普通に怖ぇよ。戦いたくねぇ~……。
ヴェルトーガ西端の海まで到着する。
「それじゃとりあえず水中で戦闘できるか確認しないとな。
水中にも魔物は居るはずだから気をつけよう。」
「了解だよ。僕はトーマほど水魔法を上手く扱えないしね。トーマ以上に注意しないと」
よし、とりあえず試してみないと始まらないな。
シンと2人で海に飛び込む。
ごぼっ!
ヴェルトーガの地面が結構高いので、高所からの飛び込みになってしまったわ!
つうか環境適応スキルがあまり働いてくれてない。
裸眼じゃ水中の中はちゃんと見えないし、呼吸も出来ないらしい。
リンカーズで眼鏡って見たことないけど、水中眼鏡は作らないと話にならないな。
「ぷはっ!」
1度水面に上がる。
日本ではさほど泳いだことはなかったけれど、身体能力が人外レベルにまで強化された今なら、水泳なんて問題なくこなせる。まぁ技術は全くないんだけど。
「あれ? シーン!」
周囲を見渡したけどシンがいない。
あ、やべ。もしかしなくても、シンって水の中に入るの初めてか? って考えるとグズグズしてられない!
まずは水を生成して両目を覆う。
それから海面に顔をつけて、水操作で目との間に若干の層を作る。
即席の水中ゴーグルだ。何もしないよりは水中が良く見える。
そこでシンが飛び降りた付近を捜すと……、いた!
どうやら上下が分からなくてパニックを起こしてるっぽいな。
音魔法を使用しシンに呼びかける。
(シン! まずは落ち着け! 暴れなくていい!)
確か水中でも声は聞こえるはず……、だよな!?
直接の声じゃなく魔法で生成した音だから、シンに届いているのは間違いなく探知できているけど……!
と、シンの動きが止まった。恐らく声が届いたらしい。
風と水魔法も併用してシンの元へ急ぐ。
(シン。今から捕まえて水面まで引っ張るから、そのままじっとしててくれ)
シンは結構深いところまで沈んでしまっていたが、強化された身体能力と生活魔法のおかげで、難なく掴むことが出来た。
(このまま水面まで上がるから、少しだけ我慢してくれ)
そう発信しながら、空いている手でシンの口と鼻周りの水を操作し、更にその内側に空気を生成する。魔法じゃなきゃ絶対に出来ない、即席の空気ボンベだ。ひと呼吸するのが関の山かもしれないけどな。
浮く分には潜るより早い。海水は浮力も強いしな。
シンを掴んだままで一気に水面まで上昇する。
「ぷはぁ!」
「ぷはぁ! げほっ! げっほ!」
シンは激しく咳き込みはしているが、俺の言いつけを守って不必要に暴れてはいない。
おかげで生活魔法で支えてやるのは難しくない。
……シンを支えるのは難しくないんだけど、音魔法を連発した上に、現在進行形で水の中で魔法を使っているためか、水中から魔物が集まってきている気配を感じる。
シンを掴んだまま戦うのは面倒だけど、攻撃範囲拡張があるから問題ない。
それに呼吸こそ出来なかったけど、水の抵抗をあまり気にせず動けたように思う。
水をかく手足には水の抵抗をちゃんと感じるのにな。スキルって不思議。
「シン。呼吸が落ち着いたら、まずはじっとして水に浮くことから試してみてくれ。それまで絶対に魔物は近づけないからさ」
シンの手を握ったままで、ダガーの攻撃範囲を拡張して水中の魔物を殺していく。
その死体に引き寄せられて魔物がドンドン集まってくるが、せっかくなので練習台になってもらおう。
「浮けるようになったな? それじゃ手を離すぞ。
浮けるようになったなら、今度は水魔法と風魔法で姿勢制御を試してみてくれ。
もし姿勢制御に失敗しても、今みたいにしてれば自然に浮くから慌てなくていい。
俺はちょっと水中戦の練習してくるから、シンはゆっくり水に慣れてくれ」
「う、うん。ごめんね。ちょっとの間任せるよ……。
トーマは水の中に入ったことあったの?」
「異邦人は全員泳ぎを教わったことがあるはずだ。ハルもアサヒもカンナも、技術に差はあるだろうが泳げると思う。
じゃちょっと行ってくるわ」
両手が自由になったので、今度は鈴音を振るってみる。
呼吸こそ出来ないけれど、やっぱり水の抵抗は殆ど感じないで動ける。
ただ魔法無しでの視界確保と呼吸に関しては、何らかの対策が絶対に必要だ。
水が魔物の血で真っ赤に染まって、なんとも猟奇的な雰囲気を醸し出している。
死体も所々に浮かんでて、なんというか罪悪感と嫌悪感がヤバい。
一応何体かストレージに収めてはみたけど、使い道があるかどうかは微妙だな。
さて、ザルトワシルドアと戦うには、まずシンに泳ぎを教える必要がありそうだ。
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