異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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10章 壁外世界

380 vsユリバファルゴア⑨ 殺意の音色

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「トーマ! 大丈夫!? あそこから落ちてきて、なんで生きてるの!?」

「そこは疑問じゃなくて喜んでくれよ。
 ……全身めちゃくちゃ痛いけど、多分重症ではないと思う。
 しかし、アイツまだ尻尾とくっついてないのな」

「出てきたところをグリーンリーパーで斬ったんだけどね。あんまりにも高速すぎて、結構胴体を残しちゃった感じだよ」


 ああ、俺が居た部分はシンによってパージされてたのか。
 グリーンリーパーで切り離されたけど、慣性だけであんな高く打ち上げられたのかよ。


「トーマも地中でかなりの胴体部分を切り離したみたいだね。
 恐らく今は結合待ちの時間かな?
 僕たちを見逃すことも、逃げ出すことも出来ないのなら、体勢が整ったら襲ってくるかな」

「そうだな。こっちもあっちも、ほとんど手の内は見せ尽くしたし、あとは最終決戦って奴だ。
 引き続き同じ担当で行こうか」


 ストレージから取り出した水を飲んで、少しだけ喉を潤す。
 その時砂煙を打ち上げながら、地中から尻尾部分が飛び出してきて、頭部に向かって飛んでいった。
 あれ、どういう原理で飛んでるんだろうな?

 しかし、大分短くなったもんだ。あれじゃもう蛇神は名乗れないな。良くてイモムシだ。



 ギュラアアアアア!!

 俺のイモムシ評価を悟ったわけではないだろうが、大変ご立腹の様子。まぁ無理もない。それはお互い様だしな。
 かなりの高度から、一直線に俺達に向かってくる。殺意しかない。これもお互い様か。
  
 シンと目でコンタクトを取る。これで意思の疎通ができれば苦労はないけど、それでも通じていると信じて鈴音を握る。


「グリーンリーパアアア!!」 「閃空ううううう!!」


 初撃のやり直し。胴体の短くなった今ならば、もしかしたら致命傷になりうるかもしれない。

 ギュオオオアアアアア!!

 十字に切り裂かれた巨大な頭部は、やはり切断面からにょろにょろが出てきて結合を始める。


「「ジャンプ!」」


 俺とシンの声が重なる。流石はシン。ちゃんと俺の意図を汲み取ってくれる。

 頭部を再生中の身動きが取れない瞬間、俺とシンはジャンプの限界距離まで移動し、ユリバファルゴアの下まで可能な限り近付く。


「グリーンリーパーーーッ!!」 「閃空ーーーっ!!」

 
 再び重なる声と斬撃。
 
 緑の閃光がユリバファルゴアの喉元を両断し、白い閃光が尾の先の部分から切断する。


 ギュラララララララ!!?


 これで胴体は全部切り離した。あとは頭部と尻尾の先しか残っていない。ここからどうなる?

 尻尾の先が飛んできて、頭部とくっついた。
 牛の尾の先のふさふさが、まるで髪の毛のように頭部に被さっている。
 なんでこの局面でカツラ仕様なんだよぉっ!?

 なんて思ったのも束の間、ふさふさ部分が俺達に向かって高速で放たれる。
 それはまるで槍の様で、ふさふさ1本1本が全て槍の攻撃と同じ。まるで槍が降ってきているみたいだ!

 回避、回避、回避の合間に、閃空とグリーンリーパーで頭部を両断しているのだが、胴体がなくなっても、頭部の再生は止まってくれない。
 なんなんだコイツ!? どうやったら死ぬんだよ……!?


 その時、微かな鈴の音が鳴る。
 それはまるで自分の存在を知らせるように、小さいけれど力強い音。


 ――――そうか。 

 任せろってことか。

 そう言えばまだ、あっちは見せていなかったな。
 問題はどうやってシンに伝えるか。

 はっ! 今さらシンを疑ってどうする?
 シンなら気付く。シンなら分かる。信じろ。リンカーズに来てずっと一緒に戦ってきた相棒の事を。


「シン! 今からコイツをぶっ倒すから、俺と同じタイミングで、俺と同じ場所に転移してくれっ!」


 我ながら、めちゃくちゃ言ってる自覚はある。
 俺がシンの立場だったら、絶対に俺の考えは読み取れないだろう。

 それでもシンなら、完璧に合わせてくれると信じる!


 槍の雨を避けながら、鈴音に魔力を込めていく。
 いつもならもう充分な魔力のはずだが、まだ足りないと言わんばかりに魔力を奪われ続ける。

 最後にジャンプが使えれば充分だ。余剰分は全部持ってけ!


 綺麗な鈴の音色が響く。
 その瞬間にジャンプを発動。ユリバファルゴアの真正面の接触ギリギリの位置に転移する。

 俺の隣りには当然のようにシンの姿。


「刃紋っ!!」


 まるで時が止まったかのように、全てがゆっくりに感じられる。
 鈴音を中心に、世界に波紋が広がるように、魔力の刃が広がっていく。

 その攻撃範囲は、円ではなく球。
 砂の一粒、空気さえも斬り殺さんと、世界の全てを殺す殺意の波が、鈴音を中心に広がっていく。

 それは鈴の音のように美しい、世界を殺す殺意の斬撃。

 鈴の音が鳴った後の世界には、俺とシンだけが立っていた。


 ユリバファルゴアはどこ行った……?

 そう疑問が浮かんだ瞬間、目の前から巨大な光の奔流が、空に向かって放たれた。


「これは……、迷宮討伐した時のあれ、か……?」

「そうだね……。ランドビカミウリを倒した時に見たあれ、だね……」


 心核は出てないけど、魔力還元が発生したっていうことは……!


「「勝ったああああああっ!!」」


 俺とシンは、仰け反るほどの勢いで勝ち鬨をあげ、その勢いのまま砂の上に、大の字になって倒れ込むのだった。
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