416 / 580
10章 壁外世界
377 vsユリバファルゴア⑥ 流砂
しおりを挟む
「シン。地面全体が、動いてないか……?」
「砂漠が、一定の方向に、流れている……?」
なんだ……、これ?
魔力探知をONにして驚いた。
見渡す範囲の砂漠全体に、魔力操作が行われているらしい。
「シン。怪我と魔力はどんな感じ?」
「魔力は全快とまではいかないけどかなり回復できた。怪我の方はもうほぼ痛みもないよ。骨を痛めたといっても、恐らくヒビが入ったくらいで済んでたんだと思う」
「ってことは、戦闘には影響がないってこったな。
どうやらここから戦闘再開らしいぞ。『魔力探知』を使った結果、見える範囲以上に広い範囲の砂が、魔力で操作されているみたいだ。間違いなくユリバファルゴアの攻撃だろう」
だが何をされているのか、何が狙いなのかが分からない。
砂の動きもさほど早いわけではないし、ユリバファルゴア本体の気配も全然しない……。
「ねぇトーマ。僕たちが1番困るのは、相手に攻撃する手段を見つけられない状態で、一方的に攻撃されることだよね。これって、その為の布石なんじゃ……?」
シンの言葉を聞いたとき、地面に潜っていったユリバファルゴアの、塔の様な状態がフラッシュバックする。
今思えば、なんであんな状態だったんだ……? あんなの、両断してくれと言ってるようなもんだ。実際に閃空を放った時も一切抵抗することなく、無防備なままで閃空を受けていた。
大量の胴体部分を失ってでも、他に優先すべきことが、あった……?
魔力操作で流れる砂。砂漠。砂。一方的な攻撃方法……?
「――――。
あ……、の、野郎……!
これってもしかして、アリジゴクの真似事か!?」
「トーマ。アリジゴクって……?」
「獲物を砂の中の巣穴に引き摺り落として食べる、俺たちの世界に居た虫の幼虫だよ。
普通にそんなもん作ったって、俺たちが嵌る訳がないが、砂漠全体の砂を操作されたら何が起こるかわからねぇ……!」
さっきから1方向に流れ続けている砂。
もしユリバファルゴアの巨体でアリジゴクの真似事をされたら、いったいどれだけの範囲が影響されるんだ……?
まさかとは思うけど、ウィルスレイアの街が砂漠に沈むなんて事は……、ない、よな……?
「シン! まさかとは思うけど、もし砂漠エリア全体が影響下にあるとしたら、モタモタしてらんねぇぞ!
下手するとウィルスレイアまで、効果範囲内に入ってるかもしれない!」
「――――っ!!
ウィルスレイアには、今みんなが……! トーマ、どうする!?」
「……奴の思惑に乗るのは避けたいが、まずは状況を確認しない事には始まらないか!
シン! 砂の流れている先に行ってみよう!」
シンと2人で全力で駆け出した。
「なん……、だこれ……?」
「あの野郎……! くっだらねぇ真似しやがって……!」
そこにあったのは砂の渦。
まるで砂時計の中に閉じ込められたかのように、中心に向かって砂が流れている。
そして砂の流れは、中心に行くほど速いようだ。
「……でもこれ、あの中心に奴がいるって事だよね? だったら僕たちならここからでも両断できるんじゃ?」
「いや、恐らく難しいんじゃねぇかな……。あの野郎、砂に潜る時、無防備な姿を晒してでも直立してたんだよ。
実際のところはわからねぇけど、あえて無防備を晒して、砂の中に潜った部分を守ったんじゃねぇかな。
恐らく俺たちの攻撃は、最大限に警戒してる。俺がユリバファルゴアだったら、思い切り深いところまで潜って、更には体を立てておくと思う。斬撃が届くか分からない上に、切り離すのはかなり困難になるからな……!」
ユリバファルゴアは、先が見えないほどの全長だった。でも仮に万里の長城くらいの長さがあったとしても、地球の半径って確かその3倍くらいはあったはず。リンカーズの構造がどうなってるのかなんて知ったこっちゃないが、あいつの体が全部収納できる長さがあっても、なんら不思議じゃない。
「くっそ! 全然魔法を使ってこないから、魔力的な攻撃は苦手なのかと思ってみれば、とんでもねぇ力技を使ってきやがって!」
「しかもこれ、魔法操作で行われてるって事は、あの渦の下にユリバファルゴアが確実にいるかは分からないのか……。
恐らくは魔法的な行動は苦手なんだろうけれど、その巨体に有り余っている魔力で、精密な操作の必要がない、極大範囲攻撃を実現してきたわけだ。
これが、エリアキーパーの本領って所かな。
攻撃するにしても引きずり出すにしても、まずは奴の居場所を正確に把握出来ないと始まらない、ね……」
確かにシンの言う通り。まずは奴の居場所を正確に探り当てないと……!
魔法制御が苦手だからこそのこの行動なのだとしたら、やはり渦の直下に居る可能性は高いと思うけど、どれくらいの深さの砂中に潜っているかなんて、見当もつかない。
当てずっぽうで閃空を連発しても、仕留められなければ更に深くに潜られるだけだ……!
……これは、覚悟を決めるしかないか……!
ここで手を拱いていては、ウィルスレイアが砂に沈んでしまう可能性が上がり続けるだけだ……!
ユリバファルゴア、厄介すぎるだろ!
素の能力だけでも最強レベルの癖しやがって、小細工みたいなことまでしてきやがって……!
「砂漠が、一定の方向に、流れている……?」
なんだ……、これ?
魔力探知をONにして驚いた。
見渡す範囲の砂漠全体に、魔力操作が行われているらしい。
「シン。怪我と魔力はどんな感じ?」
「魔力は全快とまではいかないけどかなり回復できた。怪我の方はもうほぼ痛みもないよ。骨を痛めたといっても、恐らくヒビが入ったくらいで済んでたんだと思う」
「ってことは、戦闘には影響がないってこったな。
どうやらここから戦闘再開らしいぞ。『魔力探知』を使った結果、見える範囲以上に広い範囲の砂が、魔力で操作されているみたいだ。間違いなくユリバファルゴアの攻撃だろう」
だが何をされているのか、何が狙いなのかが分からない。
砂の動きもさほど早いわけではないし、ユリバファルゴア本体の気配も全然しない……。
「ねぇトーマ。僕たちが1番困るのは、相手に攻撃する手段を見つけられない状態で、一方的に攻撃されることだよね。これって、その為の布石なんじゃ……?」
シンの言葉を聞いたとき、地面に潜っていったユリバファルゴアの、塔の様な状態がフラッシュバックする。
今思えば、なんであんな状態だったんだ……? あんなの、両断してくれと言ってるようなもんだ。実際に閃空を放った時も一切抵抗することなく、無防備なままで閃空を受けていた。
大量の胴体部分を失ってでも、他に優先すべきことが、あった……?
魔力操作で流れる砂。砂漠。砂。一方的な攻撃方法……?
「――――。
あ……、の、野郎……!
これってもしかして、アリジゴクの真似事か!?」
「トーマ。アリジゴクって……?」
「獲物を砂の中の巣穴に引き摺り落として食べる、俺たちの世界に居た虫の幼虫だよ。
普通にそんなもん作ったって、俺たちが嵌る訳がないが、砂漠全体の砂を操作されたら何が起こるかわからねぇ……!」
さっきから1方向に流れ続けている砂。
もしユリバファルゴアの巨体でアリジゴクの真似事をされたら、いったいどれだけの範囲が影響されるんだ……?
まさかとは思うけど、ウィルスレイアの街が砂漠に沈むなんて事は……、ない、よな……?
「シン! まさかとは思うけど、もし砂漠エリア全体が影響下にあるとしたら、モタモタしてらんねぇぞ!
下手するとウィルスレイアまで、効果範囲内に入ってるかもしれない!」
「――――っ!!
ウィルスレイアには、今みんなが……! トーマ、どうする!?」
「……奴の思惑に乗るのは避けたいが、まずは状況を確認しない事には始まらないか!
シン! 砂の流れている先に行ってみよう!」
シンと2人で全力で駆け出した。
「なん……、だこれ……?」
「あの野郎……! くっだらねぇ真似しやがって……!」
そこにあったのは砂の渦。
まるで砂時計の中に閉じ込められたかのように、中心に向かって砂が流れている。
そして砂の流れは、中心に行くほど速いようだ。
「……でもこれ、あの中心に奴がいるって事だよね? だったら僕たちならここからでも両断できるんじゃ?」
「いや、恐らく難しいんじゃねぇかな……。あの野郎、砂に潜る時、無防備な姿を晒してでも直立してたんだよ。
実際のところはわからねぇけど、あえて無防備を晒して、砂の中に潜った部分を守ったんじゃねぇかな。
恐らく俺たちの攻撃は、最大限に警戒してる。俺がユリバファルゴアだったら、思い切り深いところまで潜って、更には体を立てておくと思う。斬撃が届くか分からない上に、切り離すのはかなり困難になるからな……!」
ユリバファルゴアは、先が見えないほどの全長だった。でも仮に万里の長城くらいの長さがあったとしても、地球の半径って確かその3倍くらいはあったはず。リンカーズの構造がどうなってるのかなんて知ったこっちゃないが、あいつの体が全部収納できる長さがあっても、なんら不思議じゃない。
「くっそ! 全然魔法を使ってこないから、魔力的な攻撃は苦手なのかと思ってみれば、とんでもねぇ力技を使ってきやがって!」
「しかもこれ、魔法操作で行われてるって事は、あの渦の下にユリバファルゴアが確実にいるかは分からないのか……。
恐らくは魔法的な行動は苦手なんだろうけれど、その巨体に有り余っている魔力で、精密な操作の必要がない、極大範囲攻撃を実現してきたわけだ。
これが、エリアキーパーの本領って所かな。
攻撃するにしても引きずり出すにしても、まずは奴の居場所を正確に把握出来ないと始まらない、ね……」
確かにシンの言う通り。まずは奴の居場所を正確に探り当てないと……!
魔法制御が苦手だからこそのこの行動なのだとしたら、やはり渦の直下に居る可能性は高いと思うけど、どれくらいの深さの砂中に潜っているかなんて、見当もつかない。
当てずっぽうで閃空を連発しても、仕留められなければ更に深くに潜られるだけだ……!
……これは、覚悟を決めるしかないか……!
ここで手を拱いていては、ウィルスレイアが砂に沈んでしまう可能性が上がり続けるだけだ……!
ユリバファルゴア、厄介すぎるだろ!
素の能力だけでも最強レベルの癖しやがって、小細工みたいなことまでしてきやがって……!
0
お気に入りに追加
394
あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移
みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公
神洞 優斗。
彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった!
元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……?
この時の優斗は気付いていなかったのだ。
己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。
この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。


Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる