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10章 壁外世界
367 ディオーヌ様との交渉
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目が覚める。一緒に寝ているみんなの左手の薬指を見て、改めてにやけてしまう。
今までだってずっと嫁のつもりだったけど、こうして目に見える形になっていると実感が違うもんだなぁ。
それと改めて俺の口からプロポーズ出来て良かった。出来レースも良いところだけれど、俺の口からみんなに想いを告げられたのは嬉しくて仕方がない。
シンと2人で迷宮に向かう。
シンの指輪にはスキップが付加されていて、ゲートとスキップの魔法効果は昨晩検証済みだが、88階層に行くのは初めてなのだ。今回は俺がスキップを使用する。
「トーマ。ありがとう。この指輪、凄く良いと思うよ。
ハルと一緒の指輪をつけてるって思ったら、嬉しくて堪らないんだ」
「わかるわー。俺も今朝起きたらニヤニヤしっぱなしでさ。ああ、俺たち夫婦なんだなって思ったよ。
因みに純粋な好奇心で聞くけど、シンはハル以外の女性を嫁に迎える気ってないのか?」
「あー、可能であれば複数の女性を囲いたいって男は多いけど、僕はあまりそういうこと考えたことがないんだ。
ずっとリーンを幸せにしようって思って生きてきてさ、周りを見る余裕がなかったんだよね。
僕はきっと1人の女性しか目に入れられない性分なんだと思うよ」
「なるほどね。じゃあお互い頑張ってエリアキーパーぶっ倒して、昨日の話とおりに結婚式を挙げようぜ。
ま、俺もあんま詳しくないけど、異邦人組の3人が張り切って考えてくれると思うからさ」
なんか死亡フラグっぽいこと言っちゃったけど、フラグなんて実力でへし折ってやれば良いだけだ。
リーネが1人でウィルスレイアとベイクを行き来出来る様になったので、俺が送り迎えをする必要がなくなった。凄く負担が軽減されるんだけど、ちょっとだけ寂しいと思うのは我侭かな。
「ホムロー。依頼したいんだけど大丈夫?
物は持ってきたから、任意吸引型でリピートの術式付与を頼みたいんだ。数は70。納期は決めないけど、30個は早めに欲しい。1日何個できる?」
「テメェ久しぶりに顔出したと思ったら、めちゃくちゃ言うじゃねぇか。
1日貰えば30個は約束してやる。70個納品には3日もらいてぇかな」
「それで頼んだよ。報酬は白金貨7枚くらいでいい?」
「テメェ馬鹿じゃねぇのか? 相場なら……、金板9枚くらいだと思うぜ。いくらなんでも払いすぎだろ」
「それがさぁ。付加するのがちょっとヤバいシロモノでさ。ホムロも覚悟しとけよ? 多分冒険者達、一気にシルバーライトまで買えるようになっちゃうから」
「あー……。笑い飛ばしてやりてぇところだが、トーマの言う事だからなぁ……。分かった、覚悟しといてやらぁ。
テメェんところのカンパニーのおかげで、めちゃくちゃ儲けさせてもらってっからな。これ以上の儲け話があるってんなら乗らねぇ手はねぇってもんよ」
ストレージから水晶じゃない水晶玉を70個を取り出して、報酬も前払いする。今さら後払いするような仲でもない。
ヴェルトーガに向かい、冒険者ギルドでピリカトさんに、タイデリア家への連絡をお願いする。
1回探索行ってくるので、戻ってきたら対応してほしいと。
18階層なんて誰もいないので、音魔法で釣りまくって虐殺する。迷宮内ならスナネコみたいな生物も居ないし、本当に誰にも迷惑はかからないはずだ。
開放型迷宮はめちゃくちゃ広いので、魔物が枯渇する心配もあまりない。
探索から戻ってくるとスカーさんが待っていて、ディオーヌ様の屋敷に直行する。
今回はディオーヌ様のご機嫌取りにシンにも同行してもらった。
「トーマさん。また何か大きい案件を持ってきたと聞きましたけど?
複数術式付与と空間魔法付加だけでは足りなかったのですか?
シンくん相変わらず素敵ですね。とても良い眼の保養になりますわ」
「シンが素敵なのは同意しますよ。それで、まさに空間魔法付加の延長線上の話なんです。
実は、ゲートとスキップの魔導具が作れました。それで」
「――――なんですってっ!? 今の言葉、もう1度言ってみなさい!」
ディオーヌ様が声を荒げるなんて、アリスの事象復元の時以来じゃないかな。それほどまでに、空間魔法の魔導具の存在は、ヴェルトーガへの影響が大きいのだろう。
「はい。ゲートとスキップの魔導具の製作に成功しました。が、まだどこにも伝えていません。
まずはヴェルトーガの領主である、ディオーヌ様に報告するのが筋だと思いましたので」
「本当、なのですね……。
はぁ……。トーマさんと知り合ってから、本当に気が休まる暇もありませんわ……。
それでも、まずは私に報告してくれたことには感謝致します」
「はい。空間魔法の出やすいというヴェルトーガでは、空間魔法の魔導具の影響は1番大きいかと思いましたので。
ですが、どうかスキップの魔導具の普及を認めていただきたいと思いまして、今日は訪問させていただきました」
「ええ。そこまで理解した状態で、なお普及を求める理由を述べなさい」
「単純な話なんですけど、スキップのあるなしで、冒険者の成長速度が違いすぎるんですよ。俺たちがその良い例です。
ベイクの迷宮では20階層に行くまででも、相当な移動時間が必要でした。ディオーヌ様にスキップを頂いていなかったら、俺たちはまだ50階層にも到達出来ていなかったかも知れません。
これからの冒険者の育成に、スキップの魔導具は必要不可欠だと思うんです。現状、俺しか作れませんから、量の調整は簡単ですし」
「量の調整、ですか? トーマさんのことですから、また安価でばら撒くものかと思っていましたけど」
「それは将来、新しい職人たちが育った時に行えばいいんですよ。
俺が想定しているのは、ギルドか領主が魔導具を管理し、迷宮入り口で冒険者を送るか、ギルドで魔導具を貸し出す形にするかですね。
ディオーヌ様もご存知とは思いますが、空間魔法の消費魔力はかなりの量です。安易にばら撒くと、魔力切れを起こした冒険者が危険に晒されますから。
冒険者ギルドで管理すれば、身分証と紐付けて管理しやすいかなと」
「現在想定している流通量は?」
「はい。ヴェルトーガに30。ボールクローグとウィルスレイアとネヴァルドとベイクに10個を予定しています」
「……その10倍用意しなさい。そうね、全部で1000個用意すること。たった70個では、冒険者の育成には全く足りません。納期は決めませんから、スキップの魔導具は1000個用意すること。それともう1つ」
すげぇなマジで。ヴェルトーガのアドバンテージを1つ失う覚悟で、冒険者全体の育成を優先するか。
もう1つの条件くらい喜んで引き受けるべきだろうな。
「トーマさんはユリバファルゴアの討伐を目指しておりますよね? ユリバファルゴアの討伐が終わった後で構いません。このヴェルトーガの西に巣食うエリアキーパー、深遠の邪眼ザルトワシルドア。どうか討伐していただけませんか? 魔導具の流通は先んじてもらって構いませんので」
前言撤回。核爆弾級の依頼を持ってきやがった……!
ユリバファルゴアを倒せれば理論上は倒せるんだろうけど、戦場が海ってのが厄介すぎる。
でも断れないよなぁ。
この世界でディオーヌ様よりお世話になってる人って、多分居ないし……。
今までだってずっと嫁のつもりだったけど、こうして目に見える形になっていると実感が違うもんだなぁ。
それと改めて俺の口からプロポーズ出来て良かった。出来レースも良いところだけれど、俺の口からみんなに想いを告げられたのは嬉しくて仕方がない。
シンと2人で迷宮に向かう。
シンの指輪にはスキップが付加されていて、ゲートとスキップの魔法効果は昨晩検証済みだが、88階層に行くのは初めてなのだ。今回は俺がスキップを使用する。
「トーマ。ありがとう。この指輪、凄く良いと思うよ。
ハルと一緒の指輪をつけてるって思ったら、嬉しくて堪らないんだ」
「わかるわー。俺も今朝起きたらニヤニヤしっぱなしでさ。ああ、俺たち夫婦なんだなって思ったよ。
因みに純粋な好奇心で聞くけど、シンはハル以外の女性を嫁に迎える気ってないのか?」
「あー、可能であれば複数の女性を囲いたいって男は多いけど、僕はあまりそういうこと考えたことがないんだ。
ずっとリーンを幸せにしようって思って生きてきてさ、周りを見る余裕がなかったんだよね。
僕はきっと1人の女性しか目に入れられない性分なんだと思うよ」
「なるほどね。じゃあお互い頑張ってエリアキーパーぶっ倒して、昨日の話とおりに結婚式を挙げようぜ。
ま、俺もあんま詳しくないけど、異邦人組の3人が張り切って考えてくれると思うからさ」
なんか死亡フラグっぽいこと言っちゃったけど、フラグなんて実力でへし折ってやれば良いだけだ。
リーネが1人でウィルスレイアとベイクを行き来出来る様になったので、俺が送り迎えをする必要がなくなった。凄く負担が軽減されるんだけど、ちょっとだけ寂しいと思うのは我侭かな。
「ホムロー。依頼したいんだけど大丈夫?
物は持ってきたから、任意吸引型でリピートの術式付与を頼みたいんだ。数は70。納期は決めないけど、30個は早めに欲しい。1日何個できる?」
「テメェ久しぶりに顔出したと思ったら、めちゃくちゃ言うじゃねぇか。
1日貰えば30個は約束してやる。70個納品には3日もらいてぇかな」
「それで頼んだよ。報酬は白金貨7枚くらいでいい?」
「テメェ馬鹿じゃねぇのか? 相場なら……、金板9枚くらいだと思うぜ。いくらなんでも払いすぎだろ」
「それがさぁ。付加するのがちょっとヤバいシロモノでさ。ホムロも覚悟しとけよ? 多分冒険者達、一気にシルバーライトまで買えるようになっちゃうから」
「あー……。笑い飛ばしてやりてぇところだが、トーマの言う事だからなぁ……。分かった、覚悟しといてやらぁ。
テメェんところのカンパニーのおかげで、めちゃくちゃ儲けさせてもらってっからな。これ以上の儲け話があるってんなら乗らねぇ手はねぇってもんよ」
ストレージから水晶じゃない水晶玉を70個を取り出して、報酬も前払いする。今さら後払いするような仲でもない。
ヴェルトーガに向かい、冒険者ギルドでピリカトさんに、タイデリア家への連絡をお願いする。
1回探索行ってくるので、戻ってきたら対応してほしいと。
18階層なんて誰もいないので、音魔法で釣りまくって虐殺する。迷宮内ならスナネコみたいな生物も居ないし、本当に誰にも迷惑はかからないはずだ。
開放型迷宮はめちゃくちゃ広いので、魔物が枯渇する心配もあまりない。
探索から戻ってくるとスカーさんが待っていて、ディオーヌ様の屋敷に直行する。
今回はディオーヌ様のご機嫌取りにシンにも同行してもらった。
「トーマさん。また何か大きい案件を持ってきたと聞きましたけど?
複数術式付与と空間魔法付加だけでは足りなかったのですか?
シンくん相変わらず素敵ですね。とても良い眼の保養になりますわ」
「シンが素敵なのは同意しますよ。それで、まさに空間魔法付加の延長線上の話なんです。
実は、ゲートとスキップの魔導具が作れました。それで」
「――――なんですってっ!? 今の言葉、もう1度言ってみなさい!」
ディオーヌ様が声を荒げるなんて、アリスの事象復元の時以来じゃないかな。それほどまでに、空間魔法の魔導具の存在は、ヴェルトーガへの影響が大きいのだろう。
「はい。ゲートとスキップの魔導具の製作に成功しました。が、まだどこにも伝えていません。
まずはヴェルトーガの領主である、ディオーヌ様に報告するのが筋だと思いましたので」
「本当、なのですね……。
はぁ……。トーマさんと知り合ってから、本当に気が休まる暇もありませんわ……。
それでも、まずは私に報告してくれたことには感謝致します」
「はい。空間魔法の出やすいというヴェルトーガでは、空間魔法の魔導具の影響は1番大きいかと思いましたので。
ですが、どうかスキップの魔導具の普及を認めていただきたいと思いまして、今日は訪問させていただきました」
「ええ。そこまで理解した状態で、なお普及を求める理由を述べなさい」
「単純な話なんですけど、スキップのあるなしで、冒険者の成長速度が違いすぎるんですよ。俺たちがその良い例です。
ベイクの迷宮では20階層に行くまででも、相当な移動時間が必要でした。ディオーヌ様にスキップを頂いていなかったら、俺たちはまだ50階層にも到達出来ていなかったかも知れません。
これからの冒険者の育成に、スキップの魔導具は必要不可欠だと思うんです。現状、俺しか作れませんから、量の調整は簡単ですし」
「量の調整、ですか? トーマさんのことですから、また安価でばら撒くものかと思っていましたけど」
「それは将来、新しい職人たちが育った時に行えばいいんですよ。
俺が想定しているのは、ギルドか領主が魔導具を管理し、迷宮入り口で冒険者を送るか、ギルドで魔導具を貸し出す形にするかですね。
ディオーヌ様もご存知とは思いますが、空間魔法の消費魔力はかなりの量です。安易にばら撒くと、魔力切れを起こした冒険者が危険に晒されますから。
冒険者ギルドで管理すれば、身分証と紐付けて管理しやすいかなと」
「現在想定している流通量は?」
「はい。ヴェルトーガに30。ボールクローグとウィルスレイアとネヴァルドとベイクに10個を予定しています」
「……その10倍用意しなさい。そうね、全部で1000個用意すること。たった70個では、冒険者の育成には全く足りません。納期は決めませんから、スキップの魔導具は1000個用意すること。それともう1つ」
すげぇなマジで。ヴェルトーガのアドバンテージを1つ失う覚悟で、冒険者全体の育成を優先するか。
もう1つの条件くらい喜んで引き受けるべきだろうな。
「トーマさんはユリバファルゴアの討伐を目指しておりますよね? ユリバファルゴアの討伐が終わった後で構いません。このヴェルトーガの西に巣食うエリアキーパー、深遠の邪眼ザルトワシルドア。どうか討伐していただけませんか? 魔導具の流通は先んじてもらって構いませんので」
前言撤回。核爆弾級の依頼を持ってきやがった……!
ユリバファルゴアを倒せれば理論上は倒せるんだろうけど、戦場が海ってのが厄介すぎる。
でも断れないよなぁ。
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