異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
387 / 580
9章 異邦人が生きるために

348 吸引力の変わらないトーマ

しおりを挟む
「なるほど。トーマは極大範囲の音魔法で魔物をおびき寄せるわけか。
 それとユリバファルゴアと戦うために、僕とトーマの迷宮探索回数は増やすべきだよね」

「だなー。悪いけど夕食後にも何度か探索時間を取ろう。ランドビカミウリよりも強い可能性が出てきたからな。万全を期すべきだ。
 出来ればマーサの装備品が全部完成してから挑戦すべきだと思うし、それまでに砂漠地域の調査とスキル取得には、ある程度目処を立てたいな」


 強くなってもユリバファルゴアの居るところまで行けなかったら意味がないし、ユリバファルゴアの場所が分かっても倒せなかったら意味がない。
 やっぱ色々と時間足りないなぁ。異邦人が思ったよりも数少なかったのは救いだった。


 翌日、日課を済ませて砂の瞬きと合流。
 今日は魔物の襲撃が頻繁にあるかも知れない事を伝えて、いざ壁外へ。

 馬車の窓から外の景色を見る。
 どこまでも広がる砂の海。乾いた風。照りつける太陽。
 環境適応スキルのおかげで不快感もない。


 音魔法を発動する。
 なんとなく爽やかな曲がいいな。ハウスミュージックでもかけようか。

 あ~やっぱこの曲好きだなぁ。
 どことなくトロピカルな感じもしながら、空を飛んでいるような爽やかな浮遊感。
 ピアノの主旋律も美しくて耳が幸せだ。

 砂漠全てに曲を届けるつもりで音魔法を拡散する。
 どうだ魔物たちよ。この曲いいだろー? もっと聞きたければ近くに来るがいいさっ。


 気持ちよく音に浸っていると馬車が止まる。どうやら魔物が大量に現れたらしい。狙い通りだ。
 ただ、音に釣られたのか魔力に釣られたのかは分からないな。俺が気にすべき部分でもないけど。

 さて、騎乗用に使えそうな魔物はいるかなぁ?


「さて、トーマがちょっと音魔法に夢中になっちゃってるから、ここは僕が指揮を代行するよ。
 基本的に魔物は全部迎撃してもいいけど、騎乗に使えそうな魔物が居たら適当に弱らせてね。
 砂の瞬きの皆さんは魔物の回収と解体をよろしくです」

「了解した。砂漠で大量の魔物に襲われる経験などないからな。貴方たちの戦闘力をアテにさせていただこう」


 う~ん。複合レーダーでも砂の中の魔物までは感知出来ないなぁ。
 砂漠地帯って魔物に有利で人には不利に出来てるんだなぁ。

 鈴音を抜くほどの相手でもないので、ダガーで延々と魔物を刈り取っていく。

 ああいいな。BGMつき戦闘。まさにゲーム戦闘そのものだよ。


 砂の上から下からひっきりなしに魔物が襲い掛かってくる。
 俺の周囲には誰もいないので、ただ襲ってくる魔物だけに意識を向ける。

 砂の上ってのは足を取られて動きにくい。
 デューンサラマンダーに倣って、足先から土魔法を発動し足場の硬度を上げる。
 水魔法で砂を固めても、その部分ごと沈んで終わりそうだ。

 アサルトドラゴンが突っ込んでくる。お前ほんとにどこにでも出るな。

 山のようにでかいサソリが襲い掛かってくる。コイツがシザーマウンテンか。騎乗魔物には向いてない気がする。

 砂の中からサメが飛び出してくる。ある種定番だな。

 派手な柄をした巨大な蛇が襲い掛かってくる。蛇って馬車引けないよなぁ。

 ゴツゴツした鱗を持った巨大なトカゲが現れる。なんだっけ? こんなトカゲ、地球にも居たような。

 砂漠色の肌を持ったカエルが飛び掛ってくる。カエルは微妙に毒持ち多いから怖いんだよな。

 グランドタートルさん。足が遅いから重役出勤ご苦労様です。

 グランドドラゴンも出始めた。そういやコイツ地竜だもんな。砂漠地帯には強そうだ。


 次々に現れる魔物の群れを、片っ端から殲滅していく。
 今の候補はグランドドラゴンか、巨大トカゲさんかな?
 グランドタートルは足が遅すぎるし、シザーマウンテンはでか過ぎて管理が難しそうだ。

 音魔法を展開したまま、なるべく前へ前へと進んでいく。
 死体の回収もしやすいだろうし、解体の邪魔もしたくない。
 前に進めば、いまだ魔力が届いていない魔物にも音魔法が届くかも知れないわけだし。


「あートーマったら完全に楽しくなっちゃってるねー。私達の事を忘れたわけじゃないんだろうけど、優先度は下がっちゃってる気がするなー」

「うん。トーマって音楽かけると意識が明らかに変わるよね。あの状態のトーマに近寄るのはちょっと怖いかな?」

「トーマの集中力は普段も凄いと思いますけどね。音楽が入ると、更に集中が深まるとこありますね」

「流石にあの状態のトーマと手合わせはしたくないかな。
 トーマって訓練でも手を抜いてるわけじゃないんだろうけど、実戦の時の半分も集中力発揮できてないんだよね」


 その時小さく鈴音が鳴った。
 ん? 鈴音も戦いたいのか? でもたいした魔物じゃないぞ? それでもいい?
 なら仕方ない。ダガーを仕舞って鈴音を抜く。
 真っ白な刀身は相変わらずの美人さんだ。

 鈴音に思い切り魔力を注ぐ。鈴の音が聞こえる。そうか、これは喜んでるのか。

 限界まで鈴音に注いだ魔力が溢れ出す。

 戦場に鳴り響く、美しい鈴の音色。まるで他の音が消え去ったかのよう。

 一瞬置いて、周囲に居た魔物が全て両断されていた。


 おお? 鈴音を振ってすらいないというのに。

 なにが起きたか分からないが、感覚的には理解できる。
 今鈴音は俺の魔力を使って鈴の音を発生し、そこに斬撃を乗せたのだ。

 こんなの俺も出来ませんが? 鈴音さん凄すぎじゃない?

 見渡す限りの魔物が両断され、砂漠が魔物の血で染まってしまった。


「トーマ。1回音を止めてくれる? 僕たちも砂の瞬きの作業を手伝おう。
 凄く集中してたのは分かるけど、他の人の作業もあるんだから、張り切りすぎちゃダメだよ」


 いやいや、最後のは故意じゃないんだけど……。
 ま、鈴音が嬉しそうにしてるからいいか。

 皆殺しにしたって事は、騎乗に向いてるような魔物は居なかったのかな?
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

処理中です...