異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
上 下
386 / 580
9章 異邦人が生きるために

347 魔物の生態

しおりを挟む
「興奮して済まない。年甲斐もなくはしゃいでしまったよ。失礼した」


 院長は咳払いをして格好を正した。


「確かにトーマさんの言うとおり、アサルトドラゴンでもデューンサラマンダーでも、エリアキーパーの居る場所まで行くのは難しいだろうな。
 迷宮研究院で研究しているのは、その名の通り迷宮で出現する魔物が殆どだからね。迷宮と外では魔物の生態も変わることがあるから、下手な事を言うわけにもいかん。
 現地の狩猟ギルド員ですら心当たりがないのだとしたら、自分で見つけて捕らえるしかない。しかし砂漠地帯の魔物は待ち伏せ型が多くて調査も捗らない、か。
 改めて整理してみると、中々の難題を持ち込んでくれたようだ」


 難題か。ここでも難しいなら、後は手探りでやるしかない。
 それにしても、迷宮と外では同じ魔物でも行動パターンが変化するんだな。

 マッドスライム先生も、外で出るならもうちょっと強い魔物なんだろうか?


「魔物に心当たりがないなら、調査や捕獲を効率的に行う方法は何かないですかね?
 ボールクローグの大森林地帯では、魔物は山にように襲ってきたんですけどね。砂漠地帯の魔物は遭遇するところから難しくて、魔物の捜索をするのから時間がかかって効率が悪いんです」

「ふむ。確かに砂漠の魔物はかなり特殊だとは思う。魔物というのは何故だか人に対して、絶対的な敵愾心を持っているからね。憎悪と言っても良いくらいだ。
 だから魔物は人を積極的に襲うし、国境壁付近は普通激戦区になるのだがね。砂漠地帯の魔物は積極的に行動せんのだよなぁ」

「そもそも魔物って、人と魔物をどうやって区別してるんですかね?
 ボールクローグでの迷宮の氾濫の時も思ったんですけど、最も近くに人が多く集まっている場所を目指して、一直線に向かってきたんですよ。
 五感で捉えているにしてはボールクローグと氾濫迷宮には距離があったのに、全く分散せずにボールクローグに来たんです。魔物たちはどうやって人間を感知しているんでしょう?」


 四方に拡散して、目に付いた人間を襲うのなら分かるけど、ボールクローグに一直線でやってきたからな。そのおかげで被害が出なかったのだから文句はないんだけど、よくよく考えるとおかしい話ではあるんだよ。

 誘導するように仕向けた部分もあるけれど、それでも被害無しって事は一切拡散しなかったってことだろう。氾濫を知っていた奴等も、魔物の動きに疑問を持っていなかったし。


「魔物がなぜ人を憎んでいるのかは分かっていないが、どうやって人を感知しているかにはいくつか説がある。
 個人的に私が有力だと思っているのは、魔物は人の魔力を感知して追ってくるというものだ。
 そしてこの能力は、迷宮の外の魔物ほど強くなっていると考えられているね」

「人の魔力、ですか。正直言うとピンと来ません。魔力感知で魔力を捉えても、人と魔物の魔力に違いがあるようには思えなかったです」

「だがねトーマさん。『探知サーチ』と呼ばれる支援魔法で、個人を捜索することが可能だろう? それを踏まえると、魔力には個人間で差があるはずなのだよ。
 恐らく魔物の魔力感知能力は我々人よりも優れていて、私達よりも広範囲を高い精度で感知できるのではないかと考えられているのだ」


 ん~どうなんだろう? ちょっとこじつけ臭い気はするが……。


「つまりその理論が正しいと仮定するんであれば、広範囲に魔力を放てば、魔物の方から襲ってきてくれるということですよね。
 その説は検証されているんでしょうか?」

「検証に使用しているのは迷宮の魔物ではあるが、検証自体は何度も行われている。魔物のスキルを見れたら手っ取り早いのだが、そうもいかないから検証するしかない。
 検証の結果は、魔力感知説がやや優勢といったところだな。五感を全て封じて検証しているわけではないからね」


 検証がどこまで信用できるかは微妙だけど、魔力を感知して襲ってくるなら、音魔法先生に頑張ってもらえば、効率的に魔物を狩ることができそうではあるな。

 音魔法の効果範囲がアホみたいに広くなってるのは、迷宮の氾濫の時に実証済みだし。


「魔物とは魔力から生まれ、魔力を求めて生きる生物だからね。彼らにとって魔力とは、私達にとっての呼吸や食事に等しいと言える。だから魔力を感知する器官が我々よりも優れていても、全く不思議ではないだろう? 魔物にとっては文字通り、死活問題なのだから」

「なるほど。魔物の起源と生存に関わる部分が魔力なのだから、それに特化した能力を持っていても、不思議ではないような気がしてきますね。
 これは試してみようと思います。広範囲に魔力を巡らせる方法は、少し心当たりがありますし」


 良かった。完全に無駄足にはならなかった。
 魔物の認識が魔力による感知に頼っていると仮定するなら、アイソレーションの価値が爆上がりするな。五感は騙せなくても、感知は騙せそうだ。
 通常戦闘ぐらいでは使う必要はないだろうが、エリアキーパークラスの魔物と戦う際には、常にアイソレーションを使用しておくのは大切かも知れない。


「力になれたようなら何よりだよ。
 それで、君の方の用件は済んだかな? 出来ればランドビカミウリについて、詳しく聞きたいのだが……」


 有益な情報が得られたお礼も兼ねて了承したのはいいが、ランドビカミウリとの戦闘を根掘り葉掘り問い詰められて、流石に疲れ切ってしまった。
 ただ院長的には、ボールクローグに出現した魔物がランドビカミウリであるという結論に至ったらしく、鼻歌まで歌いだすほどご機嫌だった。

 心核魔獣として出現する可能性があるのなら、ランドビカミウリの戦闘データを後世に伝えるのは非常に重要なことなんだと言われてしまうと、断るのもおかしくなるし。

 でも院長。絶対趣味で聞いてるよな?
 後世に伝える情報を聞き取りしている割には、目が輝き過ぎなんだよ全く。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!

仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。 しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。 そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。 一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった! これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜

霞杏檎
ファンタジー
祝【コミカライズ決定】!! 「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」 回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。 フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。 しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを…… 途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。 フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。 フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった…… これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である! (160話で完結予定) 元タイトル 「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...