異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

346 成長の可能性

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 女性職員は完全に興奮し切っていて、謝れだの取り消せだの煩かったのだが、女性研究員からひと通り話を聞いた年配の男は、彼女に別の仕事を指示して退室させてしまった。
 どうやらこの男は会話が出来そうだ。


「さて、彼女の言い分は聞かせてもらった。今度は君の言い分を聞かせてもらおうか。
 ああそうだ。私はここの院長をしている。君の話が歪曲して伝わる心配は無い」

「突然訪問した事はこちらに非がありますけどね。こっちだって用事があって来てるというのに、真面目に対応してもらえなくて困ってたんですよ。
 探求都市ウィルスレイアでここを紹介してもらったので、出来れば無駄足にはしたくないんですけどね?」

「……あまり彼女を悪く思わないでやって欲しい。
 今ここでは非常に重要な検証が行われていてね。研究員一同、満足な休息も取れない状態なのだ。
 彼女の態度に問題があったとすれば、それは彼女に負担を強いた私の責任だろう」


 おお、ちゃんと部下の失態の責任を被る上司らしい。良い人だ。


「真面目に話をしてくれればそれで充分ですよ。院長さんに用件をお伝えしても?」

「聞かせてもらおう。だが先ほども言ったように私達は今非常に忙しい。出来るだけ手短に頼む」

「了解です。俺たちはウィルスレイアの東の砂漠地帯を進むために、砂漠の移動に適した魔物を従魔にしたいと思っています。ですが現地の狩人に確認したところ、アサルトドラゴンやデューンサラマンダー以上の魔物の情報は得られなかったんです。
 ですので、魔物について専門に研究しているというこちらに足を運ばせていただきました」

「……なるほどな。彼女が怒った理由が理解できたよ。
 君が何をするつもりなのかは知らないが、砂漠で狩人の真似事をするなら、その2種類の魔物で充分すぎるのだよ。それ以上の魔物など、管理や従属の手間を考えても無駄でしかないからね」

「この2種類の魔物で砂漠の果てまでいけるっていうなら参考にしますよ。
 俺の目的はユリバファルゴアの討伐です。アサルトドラゴンやデューンサラマンダーで、エリアキーパーが居るところまで行けますか?」


 専門家にOKが貰えるなら、それはそれで構わない。
 素直にそいつら従属させればいいだけだしな。


「――――君はいったい誰だ? どうしてユリバファルゴアの名を……、エリアキーパーの存在を知っている……!?
 それに、ユリバファルゴアの討伐だって……!? 相手はこの世界が生まれた時から存在していると思われる、神の如き存在だぞっ……!?」


 創世の時から生き長らえている存在、か。
 魔物って成長とかするんだろうか? それとも能力は固定?

 俺たちが討伐したランドビカミウリは、言ってしまえば生まれたての状態だった。
 もしも魔物に成長要素があるのだとすれば、ユリバファルゴアの戦闘力は、ボールクローグで戦ったランドビカミウリを大きく上回る可能性が出てきたなぁ……。


「ファーガロン様から聞いてますよ。ランドビカミウリがリヴァーブ王国付近のエリアキーパーだったって可能性があるって話もね。
 ランドビカミウリだって殺せたんだし、ユリバファルゴアだって殺せない道理はない。だからそこに辿り着くための騎乗魔物を探してるんですよ」

「ファーガロン……、シルグリイド・ファーガロン様かっ!?
 君は本当に何者なのだっ!? ランドビカミウリを殺せたって、どうい、う意味……。
 ――――済まない。君の名前を教えてくれるか……」

「あれ? 受付の人から伝わってなかったんですか。異風の旋律のトーマです」

「異風の旋律……。
 もし間違っていたら……、大変申し訳ないのだが、ボールクローグにて出現した、ランドビカミウリを討伐した冒険者パーティというのは、ひょっとして、君のことかね……?」

「俺たちのパーティですね。勿論メンバー全員で協力して、なんとか勝てたって話ですけど」


 ランドビカミウリには、正攻法では触れることすら出来なかった。
 もしもユリバファルゴアの方が強いというなら、最低限の準備として、『身体能力強化:大』と『魔力量増加:大』、そして『常時発動スキル強化』の3つは取得しないと危険かも知れない。


「信じられん……、信じられんが。君がエリアキーパーの存在と、ユリバファルゴアの名を知っていることが、君の話を裏付ける、何よりの証拠と言えるのだろうな……。
 は、はは、信じられん……。本当にただの冒険者にしか見えない君に、ランドビカミウリが討伐できたなんて、信じられんが……。本当に冒険者の手で、エリアキーパーを殺すことが出来るなんて、これは夢ではないのか……?」

「今までは魔物が強すぎたんじゃなくて、冒険者が弱すぎただけですよ。
 流石に誰でも出来るって話じゃないでしょうけど、これから冒険者の強さは劇的に変わっていきますよ。それこそエリアキーパーに対抗できるくらいにね?」


 というかこの世界ってまだ1%も開発されてないらしいからな。
 異邦人がいないとエリアキーパーが倒せない、なんてことになったら世界の開発が止まっちゃうわ。

 冒険者の質の向上は必須なんだよね。


「変わっていく……。これから色んなものが変わっていくのだな……!
 この時代に生まれた事に感謝しよう! どうやら私も、世界の変化を見届けることくらいは出来そうだからな!」


 院長さんは泣いているような笑っているような、不思議な表情をしながら天を仰いでいる。
 この世界の寿命は知らないけど、60代なら余裕で見届けられるでしょ。

 きっと1年も経たないうちに、色んなことが変わっていくのだろうから。
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