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9章 異邦人が生きるために
337 技術革命
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しかし、本格的に時間が足りないな。
魔導具開発局から借りてきた資料も読み終わってないし、朝のペア探索もサボるわけにはいかない。
その後陽天の報せまでパーティ探索して、ウィルスレイアで座学だろ? そこで日没になるから訓練の時間が取れないし、今後は異邦人の対応もしなくちゃいけないのか。
後回しに出来るものがないんだよなー。ウィルスレイアでの活動が落ち着いたら余裕が出てくるんだろうか。
「だからってここに来て資料を読むのは違うんじゃない? 俺いる意味ないじゃん!」
「いやいや、メンタムだって自分の仕事あるんじゃないの? せっかく俺が資料読んでるんだから、本来の仕事してくれて構わないって」
「本来の仕事って、ここどこだと思ってんのさ? 魔導具開発局だよ? か、い、は、つ、きょ、く!
トーマの複合魔法を活用した方が、断然面白い魔導具作れるでしょ!」
「具体的にどんな魔導具を開発したいんだよ? 目的がなければとっ散らかるだけだろ」
「ふ~む? なにを目的とした魔導具、かー」
メンタムが静かになったので、資料に目を通す。
魔導具製作で重要なのは、特定の魔法の効果を道具に刻む『術式付与』と呼ばれる行程らしい。
必要な術式を魔導具に組み込み、そこに魔力付与を使用することで術式は魔導具に定着し、魔導具として完成するそうだ。
この術式は、魔法付加があれば無視してしまえる行程でもあるらしいが、魔法よりも細かい調整が可能らしい。これどっかで聞いたな。魔法薬も同じようなこと言ってたんだっけ。魔法より自由度が高い、みたいな。
迷宮の安らぎ亭でも見たような照明の魔導具や、異世界のほうが優れていると言えるトイレでの洗浄魔導具のように繰り返し使えるようにするためには、『復唱』と呼ばれる術式を組み込み必要があるらしい。
カズラさんに初めて会った日に説明された、繰り返し使える暗視の魔導具って、リピートの術式に魔法付加でヴィジョンを付加して製作されていたわけだな。
つまり、現状の技術だと術式の重複が出来ないと言う事で、リピートを組み込むためには魔法付加が必須ということだ。
これだと複合効果のある魔導具って、俺の死後には作れなくなるんじゃないか?
流石に自分の死後のことまで面倒見切れないけど。
「あ、そういえばストレージは上手くいかなかったけど、ジャンプの魔法付加は上手くいったんだよな。
それを踏まえると、リピートの術式を付与してゲートを魔法付加すれば、ゲートの魔導具って作れたりしない?」
「――――トーマ、いまなんつった? ジャンプの魔法付加、空間魔法の魔法付加に成功したってのか……?
どうやって、どうやって空間魔法を付加するんだ!? 空間魔法の魔法付加は、今まで成功した前例はないはずだぞ!?」
あ、やべ。これはやっちゃったわ。
でも俺は普通にスキル使ったら成功したけどな……? ってそうか。『任意発動スキル強化』か……。
この世界では最高峰という評価のブルガーゾクラスの冒険者ですら、『攻撃範囲拡張:中』くらいまでしか持ってないんだよな。
あれって確か必要SP2万だったか。スキル強化は5万SPなので、リヴァーブ王国民で取得している人は殆どいないわけだ。下手すりゃゼロ人の可能性すら……。
1等級冒険者ですら持ってるかどうかってレベルのスキルを、職人連中で持ってる奴なんかいるわけないんだよなぁ。
可能性があるとしたら、以前聞いた迷宮殺し専門の冒険団か、特級と呼ばれる奴等くらいなんだろう。
あー完全にやらかしたなー、これは。
……あれ? そうなると任意発動型の『魔力付与』も強化対象なのか?
「――――メンタム。それに答える前に1つ試したいことがあるんだけどいいかな?
術式付与って日没までに終わる? ちょっと魔力付与だけ俺にやらせる形で術式付与してみてくれないかな?
同じ魔導具に2つ付与した物と、3つ付与した物を用意して欲しい」
「いや、流石に日没までには間に合わねぇけど、多分開発中か失敗作の中に、複数術式付与魔導具は残ってるはずだ……。ちょっと探してくる!」
メンタムがダッシュで部屋を出て行った。
……あれー? これ考えれば考えるほどヤバくないか?
だって空間魔法を繰り返し使える魔導具が作れるなら、同じ稀少度の治療魔法も魔法付加できると考えるべきだろう。ってか俺ならちょちょいっと検証出来ちゃうし……。
史上最高峰の職人と謳われたマーサが、俺の魔力成型の速度に驚いていた事を考えると、マーサですらこの事実に気付いていないって話になるのか。
やっべぇな。これまでの常識が全部変わってくるんじゃないか?
魔法薬で欠損が治せる様になったりするかも知れないし、装備の水準が一気に上がるかも知れない……。
というか『錬金術』で更なる高位素材が作れるようになる可能性も……?
思い返せば変だと思うことは多かったんだよな。
魔物の戦闘力に対して、王国民の戦力が低すぎるように感じることが多かった。
今思えば納得してしまう。
例えるなら、LV100でクリアすべき世界を、LV20くらいの水準で生きてたってことになるんだから。
これはヤバイな。ちょっと俺1人で抱えるには重過ぎる問題だぞぉ?
これはディオーヌ様に報告すべき案件だけど、ディオーヌ様にすら漏らしていい情報なのか判断できない。
その後メンタムが持ってきた、失敗作の複数術式付与魔導具は、俺が魔力付与を行うことで、初の成功例となるのだった。
魔導具開発局から借りてきた資料も読み終わってないし、朝のペア探索もサボるわけにはいかない。
その後陽天の報せまでパーティ探索して、ウィルスレイアで座学だろ? そこで日没になるから訓練の時間が取れないし、今後は異邦人の対応もしなくちゃいけないのか。
後回しに出来るものがないんだよなー。ウィルスレイアでの活動が落ち着いたら余裕が出てくるんだろうか。
「だからってここに来て資料を読むのは違うんじゃない? 俺いる意味ないじゃん!」
「いやいや、メンタムだって自分の仕事あるんじゃないの? せっかく俺が資料読んでるんだから、本来の仕事してくれて構わないって」
「本来の仕事って、ここどこだと思ってんのさ? 魔導具開発局だよ? か、い、は、つ、きょ、く!
トーマの複合魔法を活用した方が、断然面白い魔導具作れるでしょ!」
「具体的にどんな魔導具を開発したいんだよ? 目的がなければとっ散らかるだけだろ」
「ふ~む? なにを目的とした魔導具、かー」
メンタムが静かになったので、資料に目を通す。
魔導具製作で重要なのは、特定の魔法の効果を道具に刻む『術式付与』と呼ばれる行程らしい。
必要な術式を魔導具に組み込み、そこに魔力付与を使用することで術式は魔導具に定着し、魔導具として完成するそうだ。
この術式は、魔法付加があれば無視してしまえる行程でもあるらしいが、魔法よりも細かい調整が可能らしい。これどっかで聞いたな。魔法薬も同じようなこと言ってたんだっけ。魔法より自由度が高い、みたいな。
迷宮の安らぎ亭でも見たような照明の魔導具や、異世界のほうが優れていると言えるトイレでの洗浄魔導具のように繰り返し使えるようにするためには、『復唱』と呼ばれる術式を組み込み必要があるらしい。
カズラさんに初めて会った日に説明された、繰り返し使える暗視の魔導具って、リピートの術式に魔法付加でヴィジョンを付加して製作されていたわけだな。
つまり、現状の技術だと術式の重複が出来ないと言う事で、リピートを組み込むためには魔法付加が必須ということだ。
これだと複合効果のある魔導具って、俺の死後には作れなくなるんじゃないか?
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「あ、そういえばストレージは上手くいかなかったけど、ジャンプの魔法付加は上手くいったんだよな。
それを踏まえると、リピートの術式を付与してゲートを魔法付加すれば、ゲートの魔導具って作れたりしない?」
「――――トーマ、いまなんつった? ジャンプの魔法付加、空間魔法の魔法付加に成功したってのか……?
どうやって、どうやって空間魔法を付加するんだ!? 空間魔法の魔法付加は、今まで成功した前例はないはずだぞ!?」
あ、やべ。これはやっちゃったわ。
でも俺は普通にスキル使ったら成功したけどな……? ってそうか。『任意発動スキル強化』か……。
この世界では最高峰という評価のブルガーゾクラスの冒険者ですら、『攻撃範囲拡張:中』くらいまでしか持ってないんだよな。
あれって確か必要SP2万だったか。スキル強化は5万SPなので、リヴァーブ王国民で取得している人は殆どいないわけだ。下手すりゃゼロ人の可能性すら……。
1等級冒険者ですら持ってるかどうかってレベルのスキルを、職人連中で持ってる奴なんかいるわけないんだよなぁ。
可能性があるとしたら、以前聞いた迷宮殺し専門の冒険団か、特級と呼ばれる奴等くらいなんだろう。
あー完全にやらかしたなー、これは。
……あれ? そうなると任意発動型の『魔力付与』も強化対象なのか?
「――――メンタム。それに答える前に1つ試したいことがあるんだけどいいかな?
術式付与って日没までに終わる? ちょっと魔力付与だけ俺にやらせる形で術式付与してみてくれないかな?
同じ魔導具に2つ付与した物と、3つ付与した物を用意して欲しい」
「いや、流石に日没までには間に合わねぇけど、多分開発中か失敗作の中に、複数術式付与魔導具は残ってるはずだ……。ちょっと探してくる!」
メンタムがダッシュで部屋を出て行った。
……あれー? これ考えれば考えるほどヤバくないか?
だって空間魔法を繰り返し使える魔導具が作れるなら、同じ稀少度の治療魔法も魔法付加できると考えるべきだろう。ってか俺ならちょちょいっと検証出来ちゃうし……。
史上最高峰の職人と謳われたマーサが、俺の魔力成型の速度に驚いていた事を考えると、マーサですらこの事実に気付いていないって話になるのか。
やっべぇな。これまでの常識が全部変わってくるんじゃないか?
魔法薬で欠損が治せる様になったりするかも知れないし、装備の水準が一気に上がるかも知れない……。
というか『錬金術』で更なる高位素材が作れるようになる可能性も……?
思い返せば変だと思うことは多かったんだよな。
魔物の戦闘力に対して、王国民の戦力が低すぎるように感じることが多かった。
今思えば納得してしまう。
例えるなら、LV100でクリアすべき世界を、LV20くらいの水準で生きてたってことになるんだから。
これはヤバイな。ちょっと俺1人で抱えるには重過ぎる問題だぞぉ?
これはディオーヌ様に報告すべき案件だけど、ディオーヌ様にすら漏らしていい情報なのか判断できない。
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