異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

326 予約手続き

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「これが私からの紹介状だよ。こちらはシルグリイド家用で、こちらは農場見学についてだ。
 この紹介状を持って商工ギルドに行けば、中央農地に入れてもらえるはずさ」


 ファーガロン様から2通の紹介状を受け取る。


「都市建設計画は失敗するわけにはいかないからね。多少時間をかけても構わないから、十全に準備を整えて欲しい。君たちがエリアキーパーを倒せなければ、領土拡張の可能性は潰えるものと心得ること」

「えええ~……。ユリバファルゴアの討伐は視野に入れますけど、他のエリアキーパーは王国で頑張ってくださいよ。
 ともあれ、紹介状ありがとうございました。突然の訪問でしたが、対応してもらって助かりました」

「いやいや気にしないでくれ。君だからあえて言うけど、僕にも王国にも充分な利益を見込んでの対応なんだからさ。
 異風の旋律と敵対するなんて馬鹿げているし、君たちが今までどれほど王国のために尽力してくれたのかも聞いている。むしろ僕たちのほうが世話になりっぱなしだからね。少しでも君たちの力になれたのなら嬉しい。
 単純に僕が、君たちの歩む道の先を見てみたいってのもある。応援してるよ」


 最後に激励の言葉を残してファーガロン様は去っていった。
 ふむ。王国貴族は若手のほうが有能な人材が多い気がするなぁ。
 単純に、変化に対して柔軟なだけなのかも知れないが。

 さて商工ギルドに向かおう、としたところで王様から伝言を貰う。
 各地への日本語案内板の設置と各種ギルドへの対応の徹底は、遅くても3日以内に完了させるとのことだ。
 
 つまりは、3日後にはもう異邦人がベイクに集まり始める可能性があるわけだな。
 住環境の整備を急がないとね。


「お、戻ってきたか。目的は果たせたのか?」

「はい、お蔭様で。丁寧に対応してもらってありがとうございました」

「気にする事はない。俺たちの仕事は王都の治安維持だからな。
 問題を起こさない限り、お前だって守るべき住民の1人だってだけだ」


 おお、自分の仕事に誇りを持ってる人ってかっこいいなぁ。
 確かにネヴァルドの治安は悪くなさそうだ。治安維持に従事してる人たちがとても頑張ってるんだろう。

 商工ギルドに戻って、ファーガロン様から預かった紹介状を見せる。


「ほほほ、本物のシルグリイド家の紹介状じゃねぇかよ……!?
 アンタいったい何者なんだ……!? 1日でシルグリイド家の紹介を取り付けてくるなんて……」

「たまたまご縁があって知り合えただけだよ。
 それで、中央農地への見学許可はもらえそうかな?」

「あ、ああそうだったな。多分大丈夫だと思う。
 今上に話をしてくるから、このまま待っててくれるか」


 ギルド員は紹介状を持って上の階に消えていった。

 しかしこういう時はやっぱり権力の大切さを思い知るな。
 権力を傘にきるのは間違ってるけど、社会的信用があると話がスムーズに運ぶんだよね。
 等級を上げる気も変に権力を持つ気もないけれど、権力者と仲良くなっておく事は大切だわ。
 これが行き過ぎると忖度とか癒着とかに繋がっていくんだから、バランスが難しい。


「おう。問題なく許可が出たぜ。ただし見学の際は必ず案内人に従ってもらうぞ。
 見学日時はいつでも良いそうだが、お宅の希望を教えてくれるかい?」

「そうだな。明日の陽天の報せからお願いしたい。明日ここに来ればいいのかな?
 あっと、見学には他の人も同行させていいの? それとも俺しか許可されてない?」

「あ、そこは紹介状に含まれてあった。アンタと一緒なら、あまり大人数でなければ大丈夫だ。
 ――――そうだなぁ。常識的な範囲ってことで、15人以下にして欲しい。
 明日は見学希望者と一緒に、陽天の報せより早めにここに来てくれればいい。ここからゲートで移動するからな。
 あ、当然だけどゲート使用料はお宅持ちだぜ? 同行者の分も含めて、往復分の料金を忘れずにな」

「了解した。対応ありがとう。明日はよろしくね」


 よし、中央農地への見学予約はこれで完了と。
 正直な話、農業素人の俺たちが農地を見学しても、得られるものはさほど多くないかも知れない。
 それでもリンカーズで栽培されている野菜の種類や、大規模な農園での魔物出現対策なんかは興味深いんだよね。
 農園の規模と野菜の生産量、王国での流通状況とかも聞きたいな。仮に壁外で農場を作っても、需要がなければ流通させることが出来ないわけだし。


 まだ日没までには時間があったので、ついでにウィルスレイアに行って、シルグリイド家への約束も取り付けてもらう。
 詳しい話は後日として、2日後の陽天の報せに話をしたいと、冒険者ギルドを通して連絡する。
 こちらからの一方的な連絡ではあるけど。事前連絡する分だけ今日のアポなし登城よりはマシだろう。

 今日の用事はこれで全部済んだかな? それじゃベイクに帰るとしようか。




「農地見学は楽しみだけど、エリアキーパーか。
 ランドビカミウリ級の魔物とまた戦わなきゃいけないなんて、頭が痛いね」

「それと今回は、出来れば女性陣は連れて行きたくない。
 砂漠地帯の調査や魔物の殲滅まではいいとしても、エリアキーパー戦には参加させたくないんだよ」

「う~~! 悔しいけど、子供の事を考えると反論も出来ない~!」

「んー。都市建設の時期を、私達の出産後に設定することは可能なんじゃないですか?」

「うん。それは可能だと思うけど、私達の都合で建設時期を遅らせるのもどうかと思うな。
 それにトーマとシンが異風の旋律の最大戦力だからね。出産を通して実戦から一定期間離れなきゃいけない私達だと、かえって足手纏いになりかねないかな?」

「うん。トーマとシンは、異風の旋律の中でも頭1つ抜けてるよね……。
 全員の復帰を待つよりも、2人の補助に徹した方が良いかもしれないね……」

「うちらは流石にお力になれそうもないっすからね。悔しいところっすけど」

「私たちもリンカーズの冒険者と比べれば、悪くないペースで強くなってるみたいなんだけどね。
 異風の旋律の人たちの強くなるペースが速すぎるのよ」

「――――そんなことになってるたぁなぁ。こりゃあ私も職人として、腹を括らなきゃあいけねぇらしい」


 マーサが突然立ち上がり、決意に燃えた瞳で俺を射抜いてきた。


「トーマ! 嫌じゃなけりゃあよ、私の事を抱いてやってくれねぇか!」


 ……は?

 マーサの言葉を聞いて、場の空気が凍り付いてしまった。
 こいつちょいちょい、言動が理解できなくなることがあるよな。
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