異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

325 知るべきこと

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「僕に会いに来てくれたそうだね? なんの用事だったかな?」


 いきなりファーガロン様とお目通りが叶ってしまった。
 ちょっと面食らってしまったけど、普通にありがたい展開だ。


「都市建設について調べようと思ってまして、ウィルスレイアでそういうの調べられるとこありませんか?
 もしくは都市建設に詳しい人とか、リヴァーブ王国の歴史に詳しい人でも良いですけど」

「――――ふむ。つまりトーマさんは壁外都市建設計画を進めるために、都市建設について改めて学びたいと思っているわけだね。
 確かここ何十年かは、大規模な都市が新しく作られた記録はないはず。実際に都市建設に関わった人は、ほとんど残ってないかも知れないね」


 ん、都市建設について誰も知らなかったのは、やはり近年新しい都市が作られていなかったからなんだな。
 よくよく思い返してみると、今ある都市ですら持て余し気味だったもんな。
 新しい都市なんて作る必要性はなかったんだろう。


「勿論僕自身も都市建設なんて携わった事はないけれど、一応これでも王国の東方を任されている身だから、助言くらいはさせてもらおうかな。
 まず都市を建設するなら絶対に優先しなければならないのは、当然だけど安全性だ。壁外領域は王国内とは危険度が段違いだから、まずは建設予定地の安全をどうやって確保するかが重要になる。都市を作るのだから、堅牢な城壁は必須と言えるだろうね」

「そうですね。城壁がないと人が住めない。ましてや壁外地域なのでなおさらです」 

「次に重要なのは資源の問題だね。迷宮資源がないと、この世界で生きていくのは難しいだろう。
 都合の良い迷宮が見つかるかどうか。これは一種の賭けになるだろう」


 迷宮についてはあまり心配していない。
 タケルに協力してもらえば、それだけで済む話だからな。
 そう考えるとタケルの能力って、この世界における最強の生産チートのような気がしてくる。


「それと砂漠地域に出現する魔物の調査も必要だ。硬い地面と違って、砂漠地帯には砂に潜る魔物も少なくないからね。
 せっかく都市を築いても、地面が割られたりしたら意味が無い。
 出現する魔物を正確に把握することは、絶対に必要だよ」

「魔物の調査ですか。厄介ですね。単純に殲滅すれば良いというものではありませんか……」

「殲滅するのは大前提だけどね。それと魔物は人間が多い場所には発生しなくなるから、人が集まってくればある程度は出現を抑えられるようになると思うよ。
 だからこそ、砂漠地帯のように地面の下を移動できる魔物が居る地域では、都市の建設が困難になるんだけれど」


 なるほどなぁ。
 ウィルスレイアの領土拡張が上手く行っていないのは、砂に潜る魔物の存在も大きいわけだ。


「それと、これは少し優先度が低くなるんだけど、出来れば異邦人の誰かに魔導具の勉強をしてもらったほうが良いと思う。
 例えば森林地帯のボールクローグと、砂漠地帯のウィルスレイアでは、必要とされる魔導具が全く違ってくるからね。
 それに新設する都市は異邦人向けの都市になる予定だろう? リヴァーブ王国の職人では、必要な魔導具が理解できない可能性も高いだろう」

「あー……。それは失念してましたが、多いに有り得る話ですね。
 魔導具製作についての勉強は、場所さえ教えてもらえれば私が学ばせてもらうとしますかねぇ」


 魔導具製作は生活魔法と相性が良さそうだし、魔法付加を持っている俺なら、他の異邦人よりも製作に向いているだろう。
 っていうか俺とハル以外の異邦人は魔力感知すらまだ持ってないからな。今後職人希望の異邦人が現れるのを持っていては、建設計画に支障が出る。


「へぇ? トーマさん自身が勉強するの? 魔導具製作に興味あったりする?」

「あまり勉強は得意じゃないですけどね。魔導具作りには少し興味があります。
 今後は都市に必要な特殊魔導具、ターミナルや陽天の報せなんかも用意しなきゃいけませんし、1から学んでみるのもいいかなって」

「うんいいね。学ぶ姿勢を忘れない事は大切だよ。
 あとで紹介状を用意してあげるから、ウィルスレイアに行ったらウチの屋敷を尋ねてほしい。案内人を用意させるよ。
 都市建設はウィルスレイアにとっても重要な事業になるからね。決して遠慮なんてしないように頼むよ」

「ありがとうございます。こちらには土地勘もツテもないもので、正直どうすればいいのかも分かってませんでしたから」


 ファーガロン様やディオーヌ様みたいに、善意じゃなくてちゃんと打算を織り込んでくる相手とは話がしやすくていい。
 善意ってのはどこで反転するか分かったもんじゃないからな。
 そこに打算があるなら、メリットが提供できるうちは信用できる。


「ま、こんなことは実際はさほど重要なことではないんだけどね。
 ――――トーマさん。国境壁外に進出するするためにはどうしても、非常に強力な魔物を倒さなければいけないんだ。
 そう、今回異風の旋律が討伐した、白の竜王ランドビカミウリと同等以上の魔物ををね」

「……は? ランドビカミウリって神話に語られる、神々と同程度の力を持った最強の魔物の一角って聞きましたよ?
 そんな強力な魔物がそこらにいるっていうんですか?」

「そう。ランドビカミウリは最強の魔物のでしかないんだよ。
 リヴァーブ王国の四方には、エリアキーパーと呼ばれる、ランドビカミウリと同等の評価を受ける魔物たちが1体ずつ確認されているんだ。
 そして今回の騒動で、神話に語られるランドビカミウリは、リヴァーブ王国周辺地域を縄張りとしたエリアキーパーである可能性が出てきたんだよ。
 つまりランドビカミウリと同等の存在をを倒せない限り、領土拡張は有り得ないんだよね」


 はぁ……? 嘘だろおい……。
 ランドビカミウリだって、正攻法で倒せたわけじゃないっつうのに。
 
 しかも女性陣の妊娠が確定した今、みんなをそんな魔物と戦わせるわけにはいかないよなぁ……。


「ウィルスレイアから東に広がる砂漠地帯を守護するのは、砂の海と空の海を自由自在に泳ぎ回る、巨大な蛇神ユリバファルゴアという魔物さ。
 その巨体は空に浮かぶ雲の如き大きさだと言われていて、砂に潜れることと空を飛べること以外の情報は一切無い。
 ランドビカミウリと比較して、どちらが強力なのかもわからないんだ」


 エリアキーパーに、巨大な蛇神のユリバファルゴアね……。
 壁外都市建設は、王国に許可さえ取れればあとは大きな問題はないと思っていたけど、エリアキーパーかぁ……。

 なんで神様はこんなに過酷な世界を創ったんだ?
 人類を繁栄させたいのか、繁栄を阻みたいのか、神様の考えがよく分からない。

 ランドビカミウリを倒したのに、まだ強くならないといけないなんて。
 本当に果てしない世界だわ、リンカーズ。
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