異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

320 墓穴

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 全く動揺を見せない俺の姿に余計苛立ったのか、ゼルポーナスはここがどこかも忘れて、怒りを隠そうともしない。


「よくもヌケヌケとそんなことをぉ! マーサルの移住も引退も私は認めておらん!
 100名を超える狩人達の行方も、貴様が殺して隠したのであろうが!」

「マーサは正規の手続きをもって引退手続きを行いましたよ? 貴方が認めるか認めないかなんて、私もマーサも知ったことじゃありませんね。
 それと、隠したってどこにです? 俺たちが襲われたのは迷宮じゃありませんよ? 死体も装備も全てその場に残るはずですが?」

「貴様は先ほどゲートを使えると言ったであろう! ゲートを使って別の場所に運搬したに決まっておるわ!
 ゲートを使われては、貴様の足跡を辿るのも困難であり、証拠品が見つからなかったことにも説明がつく!」


 その時一瞬場がざわつく。気付いた奴は気付いたっぽいな。


「貴方こそ言いましたよね? 襲撃者は100名を越えていると。ゲートは運搬には使えませんよ。100名を超える死体を1度に運び出すなんて不可能です。
 しかも出口はターミナル広場しか設定できません。ターミナル広場に100を越える死体なんて運び込んだら大騒ぎになりますし、襲撃現場にゲートで戻ることも不可能なんですから、ゲートを使って証拠隠滅を図るのは難しいと思いますよ?
 探す場所、間違えてませんか?」

「間違えてなどおらん! 間違いなく貴様らが襲撃を受けた現場を捜索した!
 だがそこには何も見つからなかったのだ! つまり貴様が何かした以外に有り得んのだ!
 いい加減に観念したらどうだ! 貴様はこれから殺人者として、犯罪奴隷に堕ちるのだぁ!」


 ぜぇぜぇと息を切らしながら、血走った目で俺を睨みつけるゼルポーナス。
 お疲れさん。自白してくれて助かったよ。


「ということです。ミルズレンダでなにが起きたかは、今ので証明できましたか?」

「うむ。これから調査隊を派遣し、ミルズレンダを厳しく調査しよう。
 ゼルポーナスには監視の下、ミルズレンダでの襲撃事件への関与を追及する事を約束する。
 ゼルポーナスよ。次第によってはお家潰しも有り得ると心得よ」

「な!? なぜそうなるのです!? 王よ! 犯罪者はこの男です! ミルズレンダを破滅に導いたのは……」

「ゼルポーナスよ。どうして彼らがゲートを使って死体を運んだと思ったのであったか?」

「……はぁっ!? で、ですから申し上げたばかりでしょう! 襲撃現場に何も残されていなかったために……」

「それだゼルポーナスよ。なぜ国境壁外で起こった襲撃の場所を、なんの証拠もないのに把握できるのだ?
 何も見つからなかったのなら、そこで襲撃があったこともわからないはずだろう?
 襲撃を指示したのが、お前でなければな……!」

「そ、それは……! それは、その、違う、違うんです! そうじゃない、そうじゃなくて……!」


 ようやく自分の失言に気付いたゼルポーナスが、オロオロと言い訳を始めている。
 ゼルポーナスも根は職人だったのかも知れないな。嘘をつくのが下手すぎる。

 その根が腐っていなかったら、誰も不幸にならなかっただろうに。


「異邦人の危険性、か。勿論それは無視できない話ではあるだろう。
 しかしゼルポーナスの行いや、今回のボールクローグでの騒動も、元を正せばリヴァーブ王国の住人が引き金となって起こされたことだ。
 異邦人を食い物にしたリヴァーブ王国民がいた事から目を背けてはならぬ。
 異邦人を危険だと断ずるならば、王国民の振る舞いも見直さねばならぬ。我が娘を筆頭に、異邦人に対して下らぬ諍いを起こした者もいるのだしな」


 勿論異邦人が全面的に被害者というわけでもないんだよな。
 ヴェルトーガでは自主的に犯罪に手を染めたわけだし、レンジのように進んで犯罪者に加担する者もいる。城での粗相もアリスが主導したところが大きい。
 異邦人でも王国民でも、良い人もいれば悪い人もいる。それだけの話だ。


「私は異邦人の教育を、異風の旋律に任せても良いと考える。
 王国の者では異邦人に心から寄り添うのは難しかろう。異邦人にしか理解できない常識などもあるだろうからな。
 細かい決まり事はこれから検討していかねばなるまいが、これからも増え続ける異邦人と共存していくためには、異邦人を保護、教育できる場所が必要だ。
 異論のある者はいるか? 咎めはせぬ。正直な意見を聞かせて欲しい」


 王は周囲のものに意見を確認するが、特に異論を挟む者は出てこなかった。
 未だ唸っているゼルポーナスがちょっと煩くて目立っている。


「異論も反論も出ないようだし、この場での話を先に進めさせてもらおう。
 ゼルポーナスは連れて行け。厳重な監視を配備し、城から絶対に出すな。メーデクェイタ家の関係者も全員拘束、1人たりとも王都から逃がしてはならぬ」

「お、お待ちください! 王よ! 違う、これは違うのです! 何かの間違いなんだああああああ!!」


 セルポーナスが喚きながら連れ出されていった。
 これでミルズレンダも少しは風通しが良くなるといいな。


「それでは異風の旋律の諸君。話の続きを聞かせてくれ。
 壁外都市建設計画のことや、異邦人の集め方など、なるべく具体的に頼む」

 
 以前ディオーヌ様にも語った事を、少し丁寧にして説明する。

 まずは異邦人のほとんどは日本人であり、転移直後はリヴァーブ王国の文字を読み書きできない事を説明し、各都市の入り口と各種ギルドに日本語の案内版の設置協力を要請する。
 それに加えて、実際に現れた異邦人を、ゲートを使って速やかにベイクに送ってもらい、俺たちに対応を任せてもらうことをお願いする。

 壁外都市計画については、ターミナルの設置と、各種ギルドの儀式魔法陣の設置の許可をお願いする。必要な心核は手持ち分で充分足りるだろうから、許可さえあれば問題ない。

 将来的には壁外都市もリヴァーブ王国の国境壁に収められるように、壁外都市という名前は変更を求められた。
 そこは特に拘りもないので了承する。


「うむ。リヴァーブ王国は都市建設計画に全面的に協力する事を約束しよう。
 また本日提案された異邦人対応案も、直ぐに王国中に通達し、対応する事を約束する。
 異邦人をただ恐れるのでもなく、利用するのでもなく、親しい隣人として手を取り合っていけるよう、我々王国民も尽力する事をここに誓おう」


 ふう。途中色々あってどうなるかと思ったけれど、お互いに衝突を避けたいという想いがあったおかげで、なんとか丸く収まった。
 戦争なんて真っ平御免だ。

 あとは壁外都市建設に向けて、俺も勉強する必要がありそうだなぁ。
 実は未だに王国の面積も把握してないからね……。
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