異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

314 出発まで

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 王都ネヴァルドに向かうまでの間に、出来る事はなるべく進めることにした。
 王都での話がどういう流れになるかは読めないけど、当分ベイクに戻ってこれなくなる可能性もあるからな。


 まずはベイク。
 相変わらず陽天の報せまではみんなで探索はしている。SPはまだまだ必要だから。

 旋律の運び手のメンバーは続々と8階層に到達する者が増えてきて、カンパニーへの入金額が増えてきた。
 本来喜ばしいことのはずなのだが、ジーンさんは頭を抱えている。
 
 都市間移動馬車計画も順調に進んでいて、街の入り口の外側すぐのところに、大きめの停留所を建設。馬房も兼ねており、最大で10台の大型馬車を管理できる。
 まだまだ試験段階ではあるが、周辺住民には概ね好評の模様だ。
 まぁ当分無料で回す予定だしな。

 そしてやはりベイクに人口集中の気配があるらしい。
 しかし現在馬車を無料で提供しているおかげで、ベイクで稼いだ者が地元に食料や生活雑貨を持ち帰っているらしく、周辺地域の困窮は少し改善しつつあるそうだ。
 その一方で、行商で生計を立てていた者達は、変化を迫られているらしい。

 カンパニーの事業が広がりすぎて本格的に手の足りなくなったジーンさんは、職を失いかけている行商人達に声をかけ、積極的にカンパニーの事業スタッフに雇用しているらしい。
 今後は運行地域を拡大して行き、中継駅なども建てながら、王国全土の物流を変えようと意気込んでいる。


「私が思っていた行商の形ではなかったけど、またこうして商売に携われると思うと感無量だよ。
 それに、王国のみんなのために仕事してるって思うと、私も頑張らないとなって思うんだ。やり甲斐があるよ」


 ジーンさん達は忙しそうにしながらも、毎日活き活きと働いている。



 ヴェルトーガではディオーヌ様が上手くやっているので、カンパニー活動はあまりやることがない。
 なので水運でカバーしきれない場所を馬車でカバーし、ただでさえ流通に優れていたヴェルトーガの流通を強化した。
 近郊の住人がヴェルトーガに来やすくなったことで、迷宮資源の産出量は更に上がり、ヴェルトーガ名物の巨大救貧院の運営もかなり楽になったらしい。


「今までは増え続ける生活保障費に頭を痛める毎日でしたが、今は先行きがとても明るいものになりましたね。
 まだまだヴェルトーガにも発展の余地が残っていたようです。それに気付かせてくれたことは感謝致しておりますわ」


 しかし不幸な少年が減ったことで、ディオーヌ様の趣味に問題が出ているらしい。
 いっそ正々堂々と少年を募集したほうがいいんじゃ? と冗談半分で提案してみたところ、割と本気で検討しているらしい。
 この人のことだから、妙なことになったとしても、人の迷惑にはならないだろうきっと。


 ボールクローグ、シャンダリア、ウィルスレイアの3都市でもカンパニーの活動を進め始めている。

 その中でもボールクローグはスキル取得者が爆発的に増えていることで、ベイクと同等以上の発展を見せている。
 カルネジア家が興味を示さない生活困窮者への支援を続けながら、復興を早めるための運行馬車計画も進めている。
 カルネジア家は俺たちのやる事に口を出す気はないようだし、各種ギルドも非常に協力的でやりやすい。

 シャンダリアも宿舎に集めた人間全員を冒険者にして、少しずつ町全体の景気が好転しているらしい。というか今までが酷すぎただけなんだがな。
 シャンダリアでも馬車計画を進めていて、近隣住民が流入してくれば、シャンダリアの状況は一気に良くなるはずだ。
 この世界では、とりあえず迷宮資源の産出量さえ増えれば景気は良くなっていくからな。

 ウィルスレイアでも基本的にやる事は同じなんだけど、現時点では砂漠地帯に進出していきたいと思っているので、壁外都市計画が始まった場合、ウィルスレイアは中継基地になるはずだ。
 そのためちょっと大袈裟な程度に物件を買い漁っている。ハコがないと人を呼び辛いだろうから。

 ウィルスレイアは探求都市と呼ばれるだけあって、王国中から沢山の人が知識を求めてやってくる。
 その中には苦学生も少なくないので、現状余っている物件はそういう人たちに貸し出している。
 商工ギルドを通して、宿屋を経営している人たちに怒られないか確認してみたけれど、苦学生は宿代も払えないものが多いので、恐らくあまり影響はないだろうとのこと。
 リンカーズの生活困窮者って、救貧院のおかげで最低限の食事が保障されていて、免疫力と環境適応を持っているせいで、路上生活を選択する人が少なくない印象だな。
 リーネもお金が稼げなくて、路上で生活する日々だったと言ってたし。


 カンパニーの活動をする都市が増えてきたので、管理が中々大変になってきた。
 各種都市への運営金は商工ギルドから振り込めるので、毎回わざわざ現地に赴く必要はないのだが、カンパニーの参加者が1000人近くになってしまって、流石にちょっと持て余し気味だ。

 ジーンさんは自宅のほかにカンパニーの事務所を用意し、そこで各都市のカンパニー活動の管理をチーム分けし、定期的に担当都市もチーム分けもシャッフルして、不正の防止と、管理スタッフの育成を狙っているらしい。

 急増したスタッフの分の食事を用意するために、ご近所さんなども沢山雇って対応しているそうだ。
 ふわわを譲ってくれた家の奥さんなんかも、調理の手伝いに雇われていた。

 いやぁ大所帯になったもんだ。
 迷宮の安らぎ亭での1人部屋で生活していた日々が嘘のようだ。


「ここまでやってもカンパニー資金の底が全然見えない……。
 トーマさん、もう少しお手柔らかに頼むよ」


 いや知らんってば。
 というかうちのカンパニーって、始めこそお金ばら撒いてるけど、それが終わったら回収に入るわけだから、人が増えれば増えるほど入金額も増え続けていくはずなんだよな。

 ……なんて言ったら怒られそうなので黙っとくけど。
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