異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

307 循環の重要性

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「おおいトーマ! おっせぇじゃねぇかよぉ! 待ちくたびれちまったぜ!」

「流石に量が多すぎるから、ゲート使いに依頼して、少しずつ運搬は始めてたよ……。
 ゲートの利用料金を白金貨5枚でお願いしてあるから、トーマ、払ってもらっていかな……?」


 狩人ギルドに行くと、テンションアゲアゲのマーサとリーネに合流する。

 ターミナル広場に足を運び、地面に座り込んでしまっているゲート使いに料金を支払い、俺も運搬に参加する。


「ホントは全部持って帰りてぇところなんだけどよぉ。こんな大量の素材、異風の旋律だけで扱いきれるわけねぇからな。
 稀少な素材と装備品の製作に使えそうな素材は多めに、後は全部位を満遍なくって感じで選ばせてもらったぜ。
 くぅ~~~!! 早くこの素材扱ってみてぇ~~~っ!!」


 山のような素材がターミナル広場に準備されている。
 けど、全体の量としては、グリーンドラゴン狩った時と同じくらいかな?
 異風の旋律は現在5人しか居ないわけだし、30メートル級のドラゴンの素材なんて、全部持ち帰っても持て余すだけだよなぁ……。


「因みに、持ち帰れない分は全て狩人ギルドに売却したからよ! 私の身分証を使って、カンパニー口座に振り込んで貰ったからな!
 額は聞いてねぇけど、まぁかなりの大金になったんじゃねぇのか? あっはっはっは!」


 あー……。グリーンドラゴンの余った素材でさえ白金板いったらしいのになぁ……。
 カンパニー資金がいくらになったのか確認するのが怖いわ。
 というかジーンさん卒倒しなきゃいいんだが。

 ゲートを開いてベイク側に素材を運ぶと、異風の旋律のみんなが運搬を手伝ってくれていた。


「ありゃ。みんな手伝ってくれてたのか。休みにしたのに悪いな」

「いやいや、僕たちはゆっくりしてたよ。
 ただ素材の運搬は分かってたからね。トーマたちも休んでないし、このくらいはさせてよ」

「あ、あと父さんが、カンパニー資金への超高額の振込みについて、トーマに思いっきり文句があるって言ってたよー?」


 えええ、それ俺のせいになるの……?


「異風の旋律で討伐したわけだし、文句を言われたら、各メンバーの口座に5等分するしかないな」

「いやぁ必要ないですねぇ……。
 ここまで私達にお金が集中してしまうのは、やっぱり問題がある気がしてしまいますね」

「うん。それでもまぁ、貯め込まずに使ってるつもりではあるんだけどね。
 今後、トーマの目標を実現していくにはお金がいくらあっても良いと思うし、世界中で貨幣の流通量が不足しているわけじゃないなら、まだ問題にはなってないと思うかな」

「ああ、ハルの話で思い出したけど、近いうちに王族に謁見する事になりそうだからな。
 その際に、壁外都市の話もある程度説明することになるから、まぁ金は一気に使いまくることになるかも知れないな」

「謁見はめんどくさいけど、王都に行くのは楽しみだなー。
 王都ネヴァルドは位置的にも経済的にも、まさにリヴァーブ王国の中心だからねー」

「それに、大農園地帯にも近いですからね。もし時間があるのならば、農園も見学してみたいです」

「あ、いつか言ってた中央農園地帯ってやつだね。
 うん。観光的な意味では楽しみになってきたかな」


 農園かー。生活魔法を使えば、山岳地帯でも砂漠地帯でも、どこでも農業が出来そうな気がする。
 実際この世界って野菜足りてないしなー。壁外都市の特産に出来たら良さそうだ。

 素材の運搬を済ませ、マーサとリーネを伴ってベイクに帰還する。




「トーマさん。せっかくマーサさんが工房建設で沢山お金を使ってくれたっていうのに、今回の入金はいったいなんなんだい?
 危うく商工ギルドで倒れるところだったよ?」

「いやいやいや。別に俺の責任じゃないでしょあれ。
 それに今後は金遣いが荒くなってくると思うから、そんなに心配しなくてもいいと思うよ」

「あら? お金の使い道が見つかったのかしら?」

「まぁね。今回もシャンダリアに白金板3枚くらいばら撒いてきたし、今後の流れによっては、お金がいくらあっても足らなくなるかも知れないよ。
 一応全員の給金分まで使い込むわけにはいかないから、もし資金が危なくなったらちゃんと教えてね?」

「どうしてその白金板3枚分をカンパニー資金から出してくれなかったんだい……。
 まぁ使う予定があるなら、今日はこの辺にしておくよ。
 実際カンパニー資金からの引き出しも多いのは分かってるんだけどねぇ。それでも貯まるほうが早いのが問題なのであって」


 ホントお金が貯まりすぎるんだよなぁ。
 でもさっきハルが言っていた通り、貨幣の流通に問題が起きてるような話は聞いてないし、少なくともタイデリア家やカルネジア家の総資産は俺たちよりも大きいはずなので、人口に対する貨幣の流通量が足りてないって可能性は高い。

 ただ、急激に貨幣の流通量が増えると、貨幣価値が下がって物価が上がってしまう可能性もあるから、あくまでも仕事の報酬としてバラまく必要があるんだよなぁ。


「そういえば今回シャンダリアに行ったんだけど、困窮してる人間の数がベイクの3倍以上居たんだよな。
 四大精霊家の直轄都市以外の場所って、やっぱり困窮者が多いもんなの?」


 元行商人のジーンさんたちなら知ってるかな?


「どうだろうね? そこはもう都市と統治者によるとしか言えないんじゃないかな。
 ただ行商していた時の印象で言うなら、ベイク近郊の村なんかは、かなり生活が厳しい場所もあると思うよ。
 王国の領内は比較的魔物の出現は少なめだけど、全く出ないわけではなから、戦えない者は外に出るのも厳しいんだよ。
 迷宮の無い場所に生まれた者なんて、スキルを得ようにも比較的安全に戦える場所もなく、迷宮都市に移動しようにもスキルがないからお金が稼げず、みたいな悪循環はあると思うよ」

「そうね。私たちはまだ獣人、亜人だったから上にベイクの生まれだからこそ、行商人としてもやっていけたところはあるわよね。
 リーネちゃんは体質的に迷宮に入れなかったけれど、場所によっては経済的、状況的な問題で迷宮に入れない人も少なくないと思うわ」


 みんなに確認してみたところ、この世界には街と街を繋ぐ乗合馬車のようなサービスは存在しないらしい。
 移動は基本的に個人で行うしかないらしく、お金も戦闘力も持たない小さな村出身の人間などは、生涯スキル取得の機会を得ることもなく死んでいく事もあるそうだ。


「――――ねぇジーンさん、リンシアさん。その部分に投資するとかどうかな?
 ベイクの生活困窮者を支援しただけで、ベイクの景気って爆発的に良くなったんでしょ?
 なら、迷宮都市の外で困っている人たちを支援できれば、王国全体の活性化に繋がるんじゃない?」


 イメージとしては駅かな。
 誰でも無料、将来的には安価かな? で利用できる、都市間移動手段。
 ある程度の戦闘力も必要だし、適任なのは狩人か。

 人の流れが起こることで、過疎なんかの問題が出てくる可能性もあるけど、今のところ過疎が起きなくても生活が厳しそうだからな。
 特に若い人たちには、上を目指す機会を用意してあげたい。
 
 村に生まれただけでスキルも取得できないなんて、悲しすぎるだろ。
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