異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

301 運命

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 別に問答無用で捕縛してもいいのかもしれない。
 でも、コイツがやっている事を、真っ向から否定してやりたい気持ちを抑えられない。


「お前さっきから言い訳ばっかりだな。こっちはトルネと直接向き合わなかった理由を聞いてるんだよ。
 カルネジア家との交渉を優先した理由とか、俺もトルネもどうでもいいんだよ。
 時間も機会もありながら、トルネと直接向き合わなかったのはなぜだ?
 お前がさっきから語ってるのは、お前とカルネジア家の問題であって、そこにトルネ本人は一切関係してないんだが?
 お前さぁ。俺の事を部外者とか言っておきながら、お前自身がやってることは、蚊帳の外から騒ぎ立ててるだけじゃねぇかよ。
 俺もトルネも、お前こそ部外者にしか感じねぇんだよ。3年も前からトルネを愛していたとか言いながら、どうしてトルネ本人と向き合わなかったんだと聞いてんだよ」

「貴様は! 貴様はカルネジア家のことを、ネリーが奪われた事を知らんからそんなことが言えるのだ!
 当時13歳だった私は、何も出来ない無力な子供だった……!
 ネリーと2人で、互いの両親を何度も何度も説得した! ネリーをカルネジア家なんぞに渡さないでくれとな!
 だが両親は私達の願いなんぞ聞き入れてはくれなかった!
 ……ネリーはカルネジア家に売られ、その縁で私達の家はカルネジア家の後ろ盾を得て、大きく発展していった。
 しかしそんなもの私は望んでいなかった! 私が望んでいたのは、ネリーと2人で歩む人生だけだったのだ!
 だからもう誰にも余計な邪魔をさせない為に、カルネジア・ブルガーゾに真っ向から話をつけたのだ!」

「だからさぁ。さっきから言ってるそれ。トルネには全く関係のない事情だろって話をしてるんだよ。
 なぁ。何でお前はネリレイジュの時に、カルネジア家に直接話をしに行かなかったんだ?
 ネリレイジュと2人で歩む人生しか望んでいなかったのなら、どうして2人で逃げ出さなかったんだ?
 両親を説得しただぁ? お前が説得すべきは、カルネジア・ブルガーゾ本人だろうがよ?
 お前はネリレイジュを奪われたのに、戦うこともなく逃げ出した臆病者だ。自分の無力を言い訳に、自分の両親達のせいにして、ブルガーゾと向き合う事を避け続けた敗北者だ。
 お前はトルネを愛してなんかいない。お前はかつてブルガーゾに奪われたネリレイジュを、ブルガーゾから奪い返したいだけだろうが」


 そこにはトルネへの愛すらない。
 ただ己の過去に対する復讐心しか感じない。


「私たちは当時貴族の子女でしかなかったのだ! 当主どころか、何の力も無い子供だったのだ!
 獅子の獣人であり、四大精霊家に数えられるカルネジア家の当主に真っ向から立ち向かうなど、出来る筈がなかろうがぁっ!」

「言い訳ばかり達者だよなぁロンメノ。
 だがよぉ。貴族の子供ですらない、ただの冒険者の俺は、カルネジア家と真っ向から戦って、嫁を守り抜いたんたぞ?
 お前がブルガーゾと裏でコソコソと交渉してる間に、トルネには俺が手を差し伸べたんだぞ?
 目を逸らすなよロンメノ。お前はカルネジア・ブルガーゾが怖くて、正面から戦うことを投げ出して、外野からちょっかい出してくるだけの卑怯者でしかないんだよ」


 ここが地球であったなら、生まれた瞬間に決まる優劣を、生涯覆せなくても不思議ではないかもしれない。
 でもリンカーズではスキルも魔法も存在しているんだ。
 30年もあれば、ただの人種が獅子の獣人を上回ることだって、全然難しい話じゃない。


「お前はさっき、トルネとの出会いが運命だとか抜かしていたな。ならこうしてまた、トルネを他の男に奪われるのもお前の運命なんだよ。
 ネリレイジュの時も、トルネとのことも、今回の迷宮氾濫騒動も、お前自身は安全な場所で、戦うのはいつも人任せだ。だからお前は誰のことも守れないし、トルネと歩むことも出来ないんだよ。
 コソコソと隠れまわってる奴と歩む人生ってなんだよ? 私と一緒に隠れてくださいってか?
 偉そうな口を叩く前に、1度でも戦いの場に上がるべきだったな卑怯者」

「黙れええええええ!! 黙れ黙れ、黙れええええ!!
 貴様に、貴様に何が分かる!! 私がどれだけネリーを愛していたか、私がどれだけ苦しんでいたか、お前になにが分かるというのだああああああああ!!!」

「お前が言ってることは全部的外れなんだよ。
 トルネと一緒になりたいなら、ブルガーゾとの交渉をしながらでも、トルネ本人と向き合わなきゃいけなかったんだよ。
 ネリレイジュを守りたかったなら、両親になんて任せずに、お前自身が戦わなきゃいけなかったんだよ。
 お前はさっきから自分の気持ちをトルネに押し付けているだけで、トルネのことなんか全く見てないじゃねぇかよ。
 お前がトルネに抱いているのは愛じゃない。妄執って言うんだよ」

「違う違う違ああああああああああう!! 私はトルネを愛している!! トルネを幸せにできるのは私だけなのだ!!
 ネリーの魂が! 娘の幸せを願って! 私を導いてくれたのだああああああああ!!!
 私とトルネは、絶対に結ばれる運命にあるのだあああああああああ!!!」


 思い込み激しいなぁ。
 そしてこれだけ激昂しているくせに、かかってくる気配もない。
 この期に及んでさえ、この男には戦う気がないのだ。


「運命なんて知ったこっちゃねぇんだよ。運命なんかで人の一生が決められてたまるか。
 3日で白金貨3枚稼がないと犯罪奴隷に落ちる運命だって、獅子の獣人を倒せなければ殺される運命だって、異世界に飛ばされてたった1人で生きなきゃいけない運命だって、迷宮に入ることが出来ない運命だって、誰からも認められずに力を振るえない運命だって、迷宮の氾濫に巻き込まれる運命だって、伝説の魔物に滅ぼされる運命だって、まずは戦わなきゃ変えられねぇんだよ。
 戦えば負けるかもしれない。傷付くかもしれない。苦しむかもしれない。一生後悔するかもしれない。誰かに迷惑をかけてしまうかもしれない。命を落すかもしれない。
 それでも戦うしかない時ってのがあるんだよ、男に生まれたんならよぉ!!」


 ロンメノの胸倉を掴み、正面から目を見て言ってやる。


「お前がネリレイジュを守れなかったのは、お前が無力だったからじゃねぇ。お前が戦わなかったからだ!!
 お前がトルネと結ばれなかったのは、カルネジア家のせいでも俺のせいでもねぇ。お前がトルネと向き合わなかったからだ!!
 ネリーが導いてくれた? カルネジア家から解放する?
 トルネへの愛を語る時ですら、お前は他人を言い訳にしないと語れていねぇんだよ!!
 お前は戦うことから逃げ続けている卑怯者だ! そんな奴にトルネはやれねぇなぁ!!」


 ロンメノの胸倉を乱暴に離して、トルネの腰を抱く。


「お前なんか出る幕ねぇんだよ。
 トルネは俺が責任を持って幸せにしてやるから、部外者のお前は関わってくるんじゃねぇ」

「ふふ。今よりもっと幸せにしてくれるんですか? とても楽しみですね。
 ロンメノさん、貴方との婚約は、正式にお断りさせていただきますね。
 私の夫は、生涯トーマただ1人ですから。
 今日初めてお会いした貴方に思うことなど、何もありませんよ」


 トルネが両腕を首に回してくる。
 ロンメノに俺たちの関係を見せ付けるように、トルネと静かに唇を重ねた。
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